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クリスティ再読さん
平均点: 6.39点 書評数: 1432件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.106 6点 子犬を連れた男- ジョルジュ・シムノン 2025/06/21 22:19
タイトルからチェホフの「子犬を連れた奥さん」を連想するけども...確かに不倫があったりストーカーまがいのことしたりとかの共通点はあるんだけど、強い関係はないかな。シムノンは修業時代にロシア文学をよく読んでいた話があるから、ある程度踏まえる意識はあったんだろうか。

まあ確かに日記書いて自身の思考を自己分析したりする構成自体がロシア文学っぽいところもあるかな。主人公は刑務所から出所してパリの街角の古本屋に雇われた初老の男。最初は金魚を飼ったが野犬収容所からプードル系雑種のビブを飼うようになった。刑余者で余命いくばく?の身の上もあって、世間との交流をほぼ断っている孤独な生活だが、その寂しさを紛らわす...というのも違う気もする。とはいえこの犬のビブがこの小説の副主人公みたいなもので、印象的。さらに言えば、刑余者と知りつつ主人公を雇う古本屋の女主人アンヌレ夫人が好キャラ。老齢で体が動かなくなっているために主人公を雇ったのだが、どうやら街娼から娼館を営むまでに成功した過去があるようだ。そんな女性なので人物洞察に長けている。自殺衝動を持て余す危うい主人公の身を案じつつも、主人公の日記を通じて過去の事件が徐々に明らかにされていく...主人公にとって「真の動機」は何だったのだろうか?

こんな小説だから、ホワイダニットと言えばまあそうか。ペットというのは、アニメだったら主人公の秘めた感情を描写するための暗喩的なツールのわけだし、感情の産婆的な役割を果たす老女というのも、「探偵」の一種と見るべきかもしれないね。

というわけで、ミステリとは言い難いが、ミステリ的な雰囲気だけはちゃんとある。ニアミスでいいと思うし、評者は好き。結末は...シムノン、甘くないんだよね。

No.105 5点 メグレと賭博師の死- ジョルジュ・シムノン 2025/06/03 12:24
邦題がアレだから、たまにある暗黒街ネタかと思えばそうじゃない。
賭博師といっても、数学知識と資金力を使ってルーレット賭博で生計を立てるプロの賭博師が被害者の事件。しかもレバノン人でマロン派クリスチャン。ベイルートを根城にして国際的なビジネスを展開するナウール一族の一員である(アンブラー「グリーンサークル事件」の舞台に近いかな)。

大雪の深夜にパルドン医師の元を訪れた男女。女は無言のまま銃創の手当てをさせた。付き添う男はラテン系の美男。その女はミス・ヨーロッパの経歴からナウールの妻になったオランダ娘。そのままアムステルダムに逃亡した男女は意外にも素直に帰国を了解した....三角関係の縺れかと思われるこの展開に、この国際色豊かな事件の背景に政治的な問題が潜んでいないことにメグレたちは安堵する。

まあこんな展開をする話。何かピンとこないなあ。確かにセリ・ノワールなんかでもアラブ系ギャングと抗争したりとか、レバノン人金融ネットワークとか、そういう話はあるものだが、ある意味シムノンのホームドラマへの好みがそういう世界の広がりを狭めてしまっているようにも感じる。まあ一応真相にもそういう国際色があるのかもしれないのだが、掘り下げられているわけではない。

なんかよく分からない話だった。

No.104 7点 メグレ推理を楽しむ- ジョルジュ・シムノン 2025/05/05 09:24
いやこれ「メグレの回想録」に近いファンサービス回だよ。メグレ物を読んでいれば読んでいるほど楽しい作品。くすくすと笑ったり、妙にしんみりしたり、メグレ物の「楽しさ」を存分に味わえた...

ヴァカンス中のメグレの代理としてジャンヴィエが奮闘。それを陰からそっと見守るメグレ。さらに終局場面では別な人物と、事件の終幕を司法警察近くのビストロから見守るけども、この人物に対しても「父性」といった好ましさがビンビンと伝わってくる。

もしメグレ夫妻に子供がいたら、メグレはメグレではなかっただろうなあ。

ヴァカンスのくせに予約不調でどこにも出かけられないメグレ夫妻。思い切ってパリに潜伏することにするのだが、医師二人の間でどっちが妻(愛人)殺し犯人か?という悩ましい事件が起きた。リュカとトランスもメグレ同様にヴァカンスで、残ったジャンヴィエが代理として「宿敵」コメリオ判事の圧力にメゲながら奮闘中...例によって夫婦関係の機微が事件の鍵にはなるんだが、よりにもよってメグレは新聞記事だけで真相を掴もうとする。ここで一般人目線になるというのが、作品の最大のギミック。だからこそ一般人になって推理を「楽しむ」。
それこそメグレ夫人さえも強引にそれに付き合わされる。連れまわされて歩かされて迷惑している(苦笑)その中でパリで過ごしてきた日々がメグレの中に浮かび上がる。

パリ市内で、難航したり、しなかったり、評判になったり、ならなかったりした捜査のことを思い出させない場所は、ほとんどなかった。メグレ夫人もそういう場所を、耳できいては知っていた。

メグレのヴァカンスの名所めぐりは、まさに「メグレの事件簿」。雪さんもご指摘だが過去作でのお馴染みの場所が回想される。被害者の出身地コンカルノーの事件なら「黄色い犬」だ。まさにファンサービスで、評者もメグレのヴァカンスに付き合わされて懐かしい場面を思い出し、その雰囲気を追体験していく。

たいていの場合そうだが、ただひとつの解決しか可能でない、ということはない。少なくともふたつの解決がある。とはいえ、ただひとつの解決がよいのであり、ただひとつの解決が人間の真実なのである。だから、事実を論理的に再構成して、厳密な推理によって解決するのではなく、それを感じることが必要なのだ。

まさにこれがメグレが「推理を楽しむ」こと。ファンサービスのついでに、シムノンのミステリ創作技法の根幹部分も教えてくれている。

No.103 5点 マンハッタンの哀愁- ジョルジュ・シムノン 2025/04/24 18:17
シムノンのメグレ物以外の小説って、本当にバラエティ豊かだからバルザックとかになぞらえられるくらいでもある。河出の「シムノン本格小説集」もその「一端」くらいが覗けるくらいのものと捉えるべきなんだろうけども、結構ミステリ的手法とか趣向があったりもするのだが....本作はどうみてもミステリじゃない。自伝的な恋愛小説(苦笑)ごめん。

シムノンは戦争中に対独協力者の疑惑を持たれて、それもあって戦後すぐにアメリカに渡っている。アメリカで書いた最初の小説の一つが本作だ。だから舞台はタイトルどおりニューヨークのマンハッタン。主人公はシムノン自身を投影した一流半の俳優フランソワ。女優志望の妻を業界に紹介したら妻の方がスーパースターに出世。妻の不倫から結婚を解消し、フランソワは失意の中ハリウッドで一旗あげようとするが、どうもうまくいかずにニューヨークで役探しの日々。こんな中でバーで出会った女、ケイ。

午前三時の女なのだ、ベッドに入る決心がつかず、どんな犠牲を払っても刺激を求める必要があるので、酒を飲み、たばこを吸い、しゃべりまくり、しまいには極度に興奮して、男の腕の中に身を投げるのだ

と形容される30過ぎ、離婚歴のある女性。そのままフランソワはケイと同棲を始める....しかし、ケイが前夫との間に儲けた娘の重病の知らせを受け、ケイはメキシコへ旅立つ。ケイは戻ってくるのか?

全体的には虚無的、といえばそうだけど、ほのかな明るさがある。シムノンがアメリカで出会った女性デニーズと恋愛関係になり、妻とも離婚してという自伝的な内容が反映しているといえばそうだろう。夜の街をケイと共にさまようのが何ともムードがある。原題は「マンハッタンの三つの部屋」という意味だそうだが「マンハッタンの哀愁」でマルセル・カルネが監督して映画になっている。1965年の作品で、主演がルイ・マルの代名詞みたいなモーリス・ロネ。晩年のカルネがヌーヴェルヴァーグに対抗意識を燃やして作ったそうだ。この映画の評がまさに小説の評としてもふさわしいかもしれない。

ほとんどがバーや安宿にいる2人が登場するシーンばかりかな。
酒と煙草燻らすばかりで、かなり退屈なのが正直な感想。

こんな小説。

No.102 7点 メグレの財布を掏った男- ジョルジュ・シムノン 2025/03/31 10:59
通勤途中のメグレは、バスの中で尻ポケットの財布を若い男にスリ取られた...「プロの仕業ではない」とメグレは諦めていたが、財布はメグレの元に郵送で送り返された。そして犯人からの電話。誘い出されたメグレは、その男と同行してその妻の他殺死体に遭遇する...

こんな導入。この若い男リカンが属する、映画プロデューサーの取り巻きグループと、彼らが集う元スタントマン経営のビストロが舞台。早い話、映画周辺のボヘミアングループの話で、なかなか男女関係も乱れている(苦笑)このリカン、自称ジャーナリスト、コントやシナリオを書いて持ち込んだり、映画監督になろうと売り込んだりする男。住むアパートといえば、床が黒、壁が赤、家具が白と塗り分けられていて、少なくとも「アーチストを気取っている」というのは伝わる。才能はというと、「天才」と評価する声もあれば、「ただの出世欲だけ」と評する声も。メグレとの遭遇についても「不安定さ」だけは確か。

ミステリは一般に「優れたアーチスト」を登場させるのが難しいジャンルでもある。描くのが難しい上に意味ないからね(苦笑)なんだけども、本作、ミステリ的というよりも、シムノン論的にとても面白い作品なので、バレを厭わずにちょっと書きたい。

(バレるかも)
というのか、本作のリカンって、初期の有名作の有名犯人をリライトしたようなキャラなんだ。その有名作では「若さ」についてのめり込むような熱気があって、青年期の終わりを迎えたシムノンの「青春の決算」とでも言いたいようなパッションが伝わる作品でもある。本作執筆は63歳。メグレ後期というか、末期に入りかかるくらいの時期。ここであえての「青春」を取り上げているわけだ。

奴は理想主義者だったんだな。理想どおりの生活ができなかった哀れな理想主義者だったんだ。

本作がある意味、自己を投影して描いた有名犯人についての、シムノンの人生をかけた最終結論のようにも思われる。
こんな「再論」というべき作品があるというのも、長く続くシリーズものならではの奥深い話だ。

No.101 7点 モンド氏の失踪- ジョルジュ・シムノン 2025/02/16 12:45
シムノンらしさは全開だけど、ミステリ色はかなり薄い。でも話は結構シムノンの定番話。パリに住む富裕な中年の商人、モンド氏が突然失踪し、身なりを変えて南仏に逃亡する話。蒸発話といえばそう。乱歩も「二重生活」とか変身願望が強く現れた話が好きだけど、本作気に入るんじゃないかな(苦笑)だったらミステリ周辺という見方もできるかも。

シムノンのミステリと本格小説の違いって何か、と考えたら、「理由を説明する」か「しない」かの違いのようにも感じる。メグレという最高の説明役がいて事件を解明し説明するからこそ、「メグレ警視もの」というミステリが存在する。「シムノン本格小説」と銘打ってもも実は「メグレのいないメグレもの」なのかもしれない。だから、本作ではモンド氏がとくにきっかけもなく失踪した理由も丁寧に説明するわけではない。まあこれ多くのメグレ物を含むシムノンの登場人物の行動そのものだから、シムノン読者には目新しいわけではない。

しかし本作だと、南仏に逃れてホテル隣室で棄てら自殺しかけた女ジュリーと同棲。自ら望んだ委細承知の没落。一緒にダンスホールと賭博が売り物の店に就職し、とある意外な事件に出くわして、再度の「モンド氏の変貌」起きる。これがなかなかの見もの。しかもこの理由をちゃんと説明しない、でもそれが腑に落ちる。意外な再変貌が興味深いのは別にして、この理屈もへったくれもなく「腑に落ちる」あたりが、高評価の理由。
この「説明のしなさ」がハードボイルドのようにも感じられてしまう。
それは「説明しない」潔さのようなものが窺われるからだろうか。「理由が説明できるか」は、実は「人間の自由」ともかかわっている。モンド氏の変貌はこのような「自由」に向き合い、それをモンド氏が主体的に「自由」を解釈し、受け入れることから起きているのだろう。
たしかに「シムノン本格小説」は、しっかりした現代文学なのだと思う。

No.100 6点 メグレの幼な友達- ジョルジュ・シムノン 2025/01/21 23:08
「幼な友達」とはなっていても、実は日本の高校に相当するリセでの同級生。
そんな旧友フロランタンが、メグレの面会を求めた...フロランタンは同居する愛人のジョゼが殺されるのを間接的に目撃していた。ジョゼの死を確認して、自分に容疑がかかることを恐れたフロランタンは、同級生のメグレに救いを求めたのだ....

なんだけども、このジョゼは、妾奉公ならぬ一種の「愛人商売」をして、小金を溜め込んでいる女。フロランタン以外にもオトコは四人いて、それぞれ逢う曜日を変えて鉢合わせしないようにしている。そういう愛人商売が「癒し系」みたいに描写されているのに妙なリアルさを感じたりする。よくある「情痴」の事件でもなさそうなんだ。
フロランタンはかつては老舗菓子屋の息子として、同級生の間でも羽振りがよかったのだが、今では「落伍者」と呼ばれるほどに落魄して、ジョゼのヒモのような立場にあった。

要するにメグレにとってはキャラを知っているだけに、フロランタンは「厄介者の遠縁」みたいな面倒臭い立場にあるわけだ。フロランタンはリセの当時から「嘘つき」であり、悪戯好きの道化者として、面倒を引き起こしがちな男だった。そんなフロランタンは同級生の立場から、ヘンにメグレにも馴れ馴れしく振る舞い、メグレが困惑しながら捜査をする...この関係のヘンテコさが面白い。

ミステリとしては、ジョゼの住むアパルトマンの女管理人が強情にも何も語らないことが鍵となっている。この女管理人のキャラがなかなか「ヒドい」。強情な大女で、この女も狙いがあって喰えない。けども、この女の存在とフロランタンの策動のせいで、話がもつれているのを、メグレは解きほどいていく。

ジョゼ・フロランタン・女管理人とキャラにウェイトが高くて、それで勝負しているあたり、後期メグレっぽいなあと思わせる作品。そう親しいわけではない同級生、という設定が効いている。

(あと、このフロランタンって名前だが、そういう焼き菓子があるんだけども、関係があるんだろうか?)

No.99 8点 証人たち- ジョルジュ・シムノン 2024/11/22 11:18
シムノンのロマンの中でも、上位に位置する傑作じゃないかな。

ガチンコの裁判劇なのだが、まずは裁判長が主人公、という面でも異色中の異色だと思うよ。弁護士が主役の裁判劇なら描きやすいのもあって世の中に氾濫しているし、検事でもいろいろある。裁判では受動的な役割である裁判官をメインに据えて、「人間を本当に理解できるのか?」「理解したとしても、誤解ばっかりで他人をこういう人と決めつけていないか?」といったテーマを深掘りしている。
その中には主人公の裁判長の妻との関係も含まれている。主人公自身の過去の軽い浮気の話も、その裁判を傍聴する黒衣の女性によって、たびたび主人公の意識に登る。また、ベッドに寝たきりとなっている妻が「意図的に自分を困らせるためにそうしているのでは?」という疑惑もあれば、またこの裁判の被告が、妻のご乱行に怒って殺したのでは、という裁判の行方を自分の妻の引きこもりのきっかけとなった妻の浮気話と、主人公は重ね合わせずにはいられない。

こんな2日間の裁判が、妻の求めによって深夜薬局に妻の薬を買いに行かされ、その結果風邪をひいた主人公の前夜の話から始まっていく。裁判も行方も気になるが、妻との関係にも懊悩するさまが、熱に浮かされた主観の中で丁寧に描かれる。シムノンって一時的な病気・体調不良をちょっとした「きっかけ」につかうのが実に上手だと思うよ...メグレが酷い風邪を引いたのが印象的な短編もあれば、「ビセートルの環」のように入院生活をテーマにしたロマンもあるしね。

(バレかな?)
まあそういう小説だから、この事件の真相について、ちゃんと解明されるわけではない。アメリカを舞台にしてアメリカで書かれた「ベルの死」に続いて、同様のテーマをアメリカ時代最後に書かれたと目される本作が扱っている、ということにもなるだろう。

No.98 7点 死んだギャレ氏- ジョルジュ・シムノン 2024/11/20 11:10
国立国会図書館デジタルコレクションにて。

ロワール川沿のホテルで起きた事件に急遽駆り出されたメグレ。被害者は行商人という触れ込みで、クレマンという名を名乗って何度も泊まっていたが、実はエミール・ギャレという本名で勤め先も偽装だった。格式を見せつけようと虚勢を張るが、貧相さを隠せないギャレとその妻。人生の失敗者にしか思えない、偽りだらけの人生の男のどういう「嘘」が事件を導いたのか?

こんな話。メグレ物第二作と呼ばれるけども、創元文庫の裏表紙の作家紹介では「最初の推理小説」と書かれている。まあ気持ちはわかるんだよね。「怪盗レトン」ってメグレらしくない。「レトン」以前にも脇役メグレの登場作が存在するようで、その延長線で書かれたような印象が今となってはある。ならば本作が「メグレ第一作」。あらすじをまとめたけど、これなら普通にメグレ、でしょ。

そもそもあの男は何ごとかを待ちもうけることに、その生涯のすべてを送ってきたのではなかろうか?....。ごくわずかのチャンス....それさえなかったんだ!

こんな人生とミステリらしいトリックとが融合している。まあ、トリックがあるメグレ、として変に有名な作品かもしれないけど、トリックの扱いで小説としての深みを増すという佳作だ。
入手が難しい作品なのが本当に勿体ない。一部の本格マニアのシムノン敬遠も、本作が読みやすければ解消するんじゃなのか?と思うくらい。おすすめ。

(個人的にはフランス王党派の消長というのも興味ある。今はブルボン本家は断絶していて、オルレアン家vsスペインブルボン家vsボナパルティストで復辟運動が細々と続いているそうだ)

No.97 7点 メグレと政府高官- ジョルジュ・シムノン 2024/11/12 21:38
個人的には大変好み。キャラの深みよりもサスペンスで引っ張っていく3期初めあたりにしかないタイプの作品じゃないかな。重苦しいサスペンスが張り詰めていてそれを買う。

メグレが「救う」ことになる公共事業大臣ポアンと、メグレは自分との共通点をいろいろ感じて「嫌な」事件であるにもかかわらず積極的に介入していく。その共通点の一つがメグレ自身も「政治的な罠」にハメられて一時ヴァンデの機動隊に左遷された経歴があったりすることだ。だからメグレも政治嫌いを公言するのだが、レジスタンスから政治の世界に祭り上げられた、朴訥なポアン大臣が「意図的に証拠を隠ぺいした」とする疑獄から救おうとする。

メグレにしては珍しく敵役風キャラも登場し、正義派風の立場をうまくとって政界を操ろうとする代議士マスクラン。高級レストランでのメグレとの対決場面は腹芸の見せ場で結構。奇矯な正義感から問題の証拠書類を掘り出す変人学者ピクマールは、シムノンは描きにくいタイプだったのかな。ドロップアウトした元刑事というと、どうもシムノンは成功したキャラはいないが、今回もそれほどのキャラではない。
まあ、スカッとした解決ではないのが、シムノンらしいといえばシムノンらしいし、ちょっと松本清張風味のリアルも感じたりする。

トリビア的には、大臣の出身地に在住の友人に電話して、大臣の人となりを聞くシーンがあるが、この友人は「途中下車」に登場のシャボ―。あとこの時代では「最新」の扱いで複写機が登場するけど湿式らしい。青焼の仲間のようだ。懐かしい....

No.96 6点 メグレと田舎教師- ジョルジュ・シムノン 2024/11/01 17:39
メグレの事務室の前「煉獄(水族館)」に居座り、自分が無実の罪で逮捕されかけているとメグレに訴えた男。メグレはその男(田舎教師)に同道し、護送を名目にボルドー地方の海岸沿いの田舎町を訪れた。カキを白ワインに浸して食べるために(苦笑)

というわけで、メグレは「田舎は嫌いだ..」と言いながらも、それが田舎出身者のコンプレックスの裏返しであることが暗示される。田舎町の人々 vs 不倫事件を起こした妻をかばって田舎落ちした学校教師、のありがちな対立の中で、孤立したインテリは、地元民ながら「村の嫌われ者」として爪はじきされる老嬢の死の責任を押し付けられようとしていた。
「メグレあるある」なビジター試合話で、「途中下車」とか「死体刑事」とか連想する作品は多いけど、本作がいちばんまとまりがいいと思う。少し力が抜けているというか、田舎教師の冤罪もどこまで村人がホンキか知れたものじゃないし、3人の子供たちの微妙な関係性がクローズアップされて、シリアスな味わいを意図的に弱めたようなあたりが、変化球になって成功しているのかな。

まあとはいえ、フランス人の「寝取られ亭主」に対する風当たりの強さというのは、外国人にはうかがい知ることが難しい感情みたいだ。挫折したインテリが抱えた不名誉が、この冗談みたいな事件をこじらせたようなものだ。ファンタジーにしては後味が悪すぎるが、それが作品の苦みになっている。

一人の女がこれほどまでに女らしさを放棄してしまっているのはめったに見たことがない。ぼんやりした色のドレスの下の体はやせて疲れていた。二つの乳房はおそらく空っぽのポケットのように垂れ下がっていることだろう。

田舎教師の不倫妻の描写だが、気の毒なくらいに辛辣。でもメグレ全盛期ならではの人間観察。

No.95 6点 闇のオディッセー- ジョルジュ・シムノン 2024/10/21 16:38
大げさなタイトルである。

シムノンがこんな大げさなタイトルをつけるわけもなくて、原題は「くまのぬいぐるみ」という可愛らしいものだ(苦笑)成功した産科医の主人公が自らの築き上げたものに急に「人生的な疑念」を抱きだして、とある悲劇的な結末にたどり着くまでのほぼ一晩の「オディッセー」を描く短い長編。
下層階級から成りあがったうらやむべき成功者の中年男が、一見恵まれた立場にありながらも突如それに反抗して身を滅ぼす話は、シムノンの十八番中のオハコというべきもので、メグレ物でも名作「第一号水門」やら枚挙に暇ないが、とくに一般小説側ではこれが顕著でもある。だからこんな大げさなタイトルにもなるんだろうが、本作の主人公は医者なこともあって、病理的な描写が丁寧になされる。読んでいると一種の離人症状とか、パニック障害っぽいものが描かれて、反抗という意味で「ツッパった」主人公が何か気の毒なようにも感じてしまう。
とくにこの主人公の父が、官吏をしていたが政治的な対立の中でスキャンダルをでっち上げられて退職に追い込まれ、そのまま家に閉じこもって死ぬさまが主人公に重ねられて、悲惨さを感じさせる。そんな中で「くまのぬいぐるみ」は主人公の息子が幼い頃に抱きしめた縫いぐるみと、主人公が半ば強姦するするかたちで手を付けた病院掃除婦のかわいらしさの形容でもある。この女性は妊娠してセーヌ川に投身自殺をしたらしく、それを恨んだ?身内からの脅迫状が届いたりもするが、あくまで背景的で深掘りはされない。
まあそんな小説。ミステリ的な興味は薄いが、シムノンらしさは堪能できるし、あっさり読める。

No.94 6点 メグレと老外交官の死- ジョルジュ・シムノン 2024/09/23 15:45
う~ん、評者は結構この作品好きだなあ。
シムノンにはありがちだが「ミステリとしてはどうよ?」な面があるんだけども、舞台設定の妙もあってそれが「人生こんなこともあるんだよね」といった方向に印象が流れる結果になっているようにも思う。ミステリとしては?でも小説としてはギリギリ成立するあたりに、評者は面白味を感じてしまう。
でもさ、この面白味というのも、両親の老いを見て悲しみ、介護とか頭に入れつつも、自分の老いも感じてしまうようなあたりに醸されるようなものだから、若い人にはピンとこない話だと思う。原題だって「メグレと老人たち」だよ。そんなもんさ。

でこの舞台設定の妙、というのが、メグレ物にしては珍しい上流階級が舞台。中の上~上の下あたりに成りあがった下層出身者が疎外感を抱く話はシムノンの定番だけど、この事件の被害者は外交官を引退した老伯爵、そしてその人生を賭けた思い人は公爵夫人。政略結婚で結ばれた夫の公爵が事故死し、ようやく結ばれることも可能になった?その夜に老伯爵は4発の銃弾に見舞われて死んでいるのが見つかる...この老伯爵と公爵夫人の恋がホントにプラトニックなもので、公爵に義理を立てて間接的にしか関係を持たない(でも毎日お手紙!)というもので「十八世紀から抜け出してきたか?」とメグレがボヤくようなもの。でも生まれつきの貴族の話だから....でメグレも納得。それには出身の村でのサン・フィアクル伯爵夫人のイメージとか、メグレ自身が抱えるコンプレックスにも理由があることに気がついて、メグレも苦笑い。
上流相手だと勝手が掴めないのはたとえば「かわいい伯爵夫人」もそうだけど、ムリしないのが「メグレ流」でもあり、メグレというキャラに品位が感じられるあたり。
(まあだからメグレ物を系統的に読むつもりがあるならば、少年時代のメグレに言及がある「サン・フィアクルの殺人」は早めに読むべきだと思うよ)

No.93 4点 メグレと匿名の密告者- ジョルジュ・シムノン 2024/08/15 15:24
さてお二方が低評価で一致しているメグレ物ラス2作。怖いもの見たさ、みたいな気持ちで今回セレクト。

ヤクザ上がりのレストラン経営者の死体が発見された。シャトーの美術品をごっそり頂く空巣事件と被害者の年若い妻が気になるあたりで、「喪服刑事」ルイが持ち込んだ匿名の密告。この密告はヤンチャなヤクザ兄弟を指していた...

確かに既視感はいろいろあるなあ。メグレ物には暗黒街(ミリュー)が背景にある事件も数多いし、財産狙いの若い妻とか、密告で話が動くあたりとか、今までのメグレ物のモチーフがいろいろ展開されて、飛行機で南仏出張も色を添える。
最終的にはメグレの取り調べがクライマックスに来るわけで、型通りのメグレではあるし、描写もはっとするような生彩があるところもないわけではない。

でもさ、「何やりたかったの?」と言いたくなる話。確かにメグレ物でも「キャラを動かしていると何となく話になってくる」と「手癖」で書いていると思しい作品もあるわけだけど、本作はキャラを動かしても何の化学変化も訪れなくて、そのまんまの話でしかない。充実していた頃はそれでも話になったのだけど、さすがにシムノンの老化をうかがわせることになってしまっているようだ。

それでもリーダビリティがしっかりある、というのは凄いことなのだろうか?

No.92 6点 重罪裁判所のメグレ- ジョルジュ・シムノン 2024/07/13 17:26
まあ確かに意外性とかないんだけどもねえ。
しかし、この小説は「ミステリ」として見たときには、かなりの破格があるようにも感じるんだ。

メグレは自分が捜査した二重殺人の被告の証言のために、重罪裁判所に赴いた。重要な物証はある。動機もある。でも...メグレは疑問を隠すことができずに、被告の額縁職人ムーランに有利な証言をする。はたして裁判は証拠不十分で無罪。メグレは関係者の動向に注目し続ける...

こんな話。いや無罪をメグレが証明する話ではなくて、裁判後の額縁職人のムーランにスポットを当てて描くという、「ミステリの書法」を意図的に無視したような書き方の小説になるんだ。まあもちろん、捜査としてどうよ、というような批判はあるのかもしれないけど、そういう辺りを含めて「メグレ」なんだよね、とも感じる。

いやかなり「ヘンなミステリ」をそう感じさせずに読ませるシムノンの筆の達者さというものが、批判を許さないレベルに達しているということなのかもしれないや。

No.91 7点 メグレの退職旅行- ジョルジュ・シムノン 2024/05/19 12:31
実は意外なくらいにメグレ物短編って本数が少ないようだ。雑誌に載っただけで未収録の作品やら雑誌掲載時に訳題がバラバラなこともあって混乱することが多いようだが、基本的には第二期短編集としてフランスで出た「メグレの新たな事件簿」が底本であり、これの訳本が角川文庫の「メグレ夫人の恋人」「メグレの退職旅行」に相当する。しかし、底本には収録でもなぜか訳書からは収録が漏れた「メグレと消えたミニアチュア」があり、また同時期執筆作でこの短編集に収録されなかったものが「メグレと消えたオーエン氏」「メグレとグラン・カフェの常連」の2作。
この一連の短編に続いて書かれたが戦後の「しっぽのない小豚」に収録されたメグレ物が「街を行く男」「愚かな取引」、「メグレ激怒する」と合本で収録された「メグレのパイプ」が戦前に出た第二期の短編になる。
そして戦後のメグレ物短編集で完訳されている「メグレと無愛想な刑事」収録の4作、そして単発のクリスマスストーリーとして後年に書かれた「メグレのクリスマス」があるだけだ。そうしてみるとシムノンの短編小説はかなり多いのだが、メグレ物短編は数が少ない。

なので特にこの角川の2冊は読み逃せない短編集になる。「メグレ夫人の恋人」も良い短編集だったが、初期仕様のパズラー風のものもあって、魅力十分とまではいかない。2冊目のこの短編集はパズラー的な「月曜日の男」でも、絶妙のキャラ設定があって興味深い(毒物がヘンテコだがw)。リアルなトリックがあるといえばあってコンパニオンの女性が女主人の謀殺を訴える「バイユーの老婦人」、娼婦のフリをする良家の子女とメグレが対決する「ホテル北極星」、お針子が引退後のメグレを振り回す「マドモアゼル・ベルトの恋人」、そしてメグレ夫人の魅力が全開する「メグレの退職旅行」と、女性キャラにリアルと生彩ががあるのがいいあたり。
確かに第二期のカラーである上出来なエンタメらしさをシンプルに出した短編集だと感じる。キャラに魅力を与えることにシムノンの腕力が発揮されて、それをメグレの父性と呼ぶべき個性が支えて趣きが深くなっている。粒揃い。

No.90 6点 倫敦から来た男- ジョルジュ・シムノン 2024/05/12 18:36
奪った金をめぐる仲間割れを目撃した主人公の転轍手。ふと手に入ったその大金。そして片割れの犯人との神経戦....でも、シムノンって「説明」しないんだ。主人公の心理は日常の出テールに霧散して「何をどう」が極めて曖昧なままに最後まで走り抜く。
言い換えるとシムノンの登場人物は「その場に生きている」。プロットの綾に(それは大金の誘惑でもあるが)翻弄されるのを、自ら拒んでもいる。あくまで頑固に「自己の運命」と信じるものに忠実に、ロバのように頑固に従う。
一瞬だけ「運命」の前に歩み出た男の姿を描いた小説と呼ぶべきだろう。

(そういえば同じくディエップを舞台とする「メグレの退職旅行」=「海峡のメグレ」なんだなあ。近々やろう)

No.89 7点 メグレとしっぽのない小豚- ジョルジュ・シムノン 2024/03/27 17:35
大昔の早川「シメノン選集」で唯一の短編集。全9編収録で「しっぽのない子豚」という短編が巻頭なんだけど、これにはメグレは出ない。メグレが出演するのは「街を行く男」「愚かな取引」の2作だけで、他の7編には登場しない。えっ?と思って調べたが、実は本書の底本は「Les Petits Cochons sans queue」であり、底本みたいに表示されている「Maigret et les Petits Cochons sans queue」が嘘?というのが面白い。訳書は1955年出版で、底本は1950年刊のフランスで編まれた短編集。直輸入みたいな感覚で底本そのままに訳したが、「メグレ」を表題にしないのは営業上まずい、という判断があったんだろう。

「街を行く男(街中の男)」ならこの表題のフランスミステリアンソロがあるくらいの「メグレらしい」短編。尾行された容疑者が家に帰れず金がなくなって窮迫していくのをメグレがじっと見つめるスケッチ風の話。「愚かな取引」は珍しくナントの機動警察にメグレがいた時期の話。
本書収録作のどれもシャープな切り口が楽しめる。いうまでもなく、シムノンの筆に脂がノリに乗った時期。その中でも最初の3作が長めの作品で、読み応えがある。
「しっぽのない子豚」は新妻が夫のオーバーのポケットから見つけた、しっぽのない子豚の置物に、古美術商の実父の秘密ビジネスとの関わりを察知して心配する話。視点設定が素晴らしいけど、このアイデアならメグレ物で使っても面白いだろう。
「命にかけて」はコンゴでの過去の因縁を引き継いだ男二人の対決! なんちゃってなオチが皮肉。
「しがない仕立屋と帽子商」は「帽子屋の幻影」の元ネタ短編。とはいえ、この短編はシリアルキラーの帽子商の犯行を察知した、小心な移民の仕立屋が訴えようかどうか懊悩する話を、仕立屋視点で描いている。長編が帽子商視点でうまくネタバレしないように描いているのと対照的で、同じ話なのに「二度美味しい」。全盛期のシムノンの切り口のシャープさと腕前に感服する。
他の作品も切り口のうまさ、いきなり核心に話を持っていく語り口のうまさに惚れる。
(国会図書館デジタルコレクションで。巻末の予告には「メグレと不運な刑事」が載っているけど、これは出なかったんだよなあ。祝「シメノン選集」コンプ)

No.88 5点 メグレとひとりぼっちの男- ジョルジュ・シムノン 2024/03/11 12:26
メグレ物というと、戦前の作品から「もうすぐ停年」と言い続けて最終的には1972年まで勤め上げたことになる。戦中戦後のメグレ物には引退後のメグレを描いた作品もいくつかあるが、要するに「サザエさん時空」に突入してしまい、メグレ周辺の人間関係はずっとそのままで、世相風俗だけ時代に沿って動いていくことになる。本作は1971年作品で晩期の作品になるが、珍しくも事件が起きた年が1965年と明言されている。そして、メグレが戦後すぐに地方に左遷されていて、パリで起きていた事件について知識がないことが、話のキーになっている。

過去の事件と、その事件の影響で人生を捨ててルンペンになった男の話。徹底的に人間関係を捨てて、誰ともロクな会話をせずに、あばら家に一人住む男が殺された。この男の過去をメグレが追っていく。そういう大枠だから、やはり年代を明記する必要もあるわけだ。そして、訳者の野中雁氏があとがきで「メグレも老いた」と書くように、「サザエさん時空」であってもメグレの人格には、相応にシムノンの老いも反映していく。そういう意味で「枯れた」作品には違いない。

逆に言えば、プロット的にはややアラが目立つのも否定できない。いうほどにこのルンペンの人格と過去の事件が深堀りされるわけではないし、過去の事件とはいえ20年前で、メグレと同世代の刑事なら何となく過去の事件に気がついた可能性も高くて、やや捜査が雑、という印象もある(バカンス中の事件という設定はその言い訳?)。そして密告がきっかけで局面が簡単に打開するのは、ご都合が見えて芳しくはないなあ。

全体的に「粘り」みたいなものが失せてきているようにも感じる。我が身に引き換えても、これが「老い」というものか。

No.87 7点 メグレと殺人予告状- ジョルジュ・シムノン 2024/02/02 15:13
う~む、これ後期の秀作じゃないかしら。
どっちかいえば評者は「猫」あたりに近い世界に感じていたなあ。
今風に言えば、オタクな夫とそのオタクな趣味を嫌ってコレクションをゴミに出す妻。妻は夫のオタクな趣味を「気持ち悪い」「頭おかしい」と決めつけるが、そんな妻の姿に子供たちは辟易する...
まあシムノンだから通例に乗って、これを厳めしい法律家の家に婿入りした庶民出身の弁護士の話として描いている。でもシムノン自身のこのパランドン夫人への嫌悪感が見え隠れするあたりも興味深い。殺人予告状に導かれてメグレがこの一件に事件前から介入することになるのだが、ミステリ的には「誰が被害者になるか?」というのが主軸の「謎」になるというユニークな構成。さらに予告状の意味もしっかりこの一家の病理に根差していて、「運命の修繕人」メグレらしい事件でもある。
海事事件専門の弁護士として成功していても、オタクで気の利かない小男なのを妻にバカにされ続ける夫が、なかなか類型を離れたリアルな造形で興味深い。そして所有意識が強すぎるために自他境界が曖昧になっているかのような妻.....いやいや、この手の人間には評者も閉口しているところだったりするんだ。そんなこともあって、推したい作品。
(あ、あと法文インサートは「片道切符」で効果をあげた手法だなあ)

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クリスティ再読さん
ひとこと
大人になってからは、母に「あんたの買ってくる本は難しくて..」となかなか一緒に楽しめる本がなかったのですが、クリスティだけは例外でした。その母も先年亡くなりました。

母の記憶のために...

...
好きな作家
クリスティ、チャンドラー、J=P.マンシェット、ライオネル・デヴィッドスン、小栗虫...
採点傾向
平均点: 6.39点   採点数: 1432件
採点の多い作家(TOP10)
ジョルジュ・シムノン(106)
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