皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ミステリ初心者さん |
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平均点: 6.20点 | 書評数: 388件 |
No.328 | 6点 | 月明かりの男- ヘレン・マクロイ | 2022/12/19 23:57 |
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精神科医ウィリング博士が探偵の推理小説です。精神科医だけあり、容疑者の心理面の分析の文章がよくでます! また、私の想像よりも大分若いのか(?)ほのかな恋愛要素もありましたね! また、時期が戦時中なためか、途中からスケールの大きい話になっていきました。 本格色が強い作品でした。心理実験の途中の犯行であり、犯人にとってイレギュラーな要素がありました。また、ホールジー君が夢遊病者?なのかてんかんなのか、それも読者や犯人にとってイレギュラーな要素で、複雑な犯行現場でした。その辺は、なんだかカーみたいですね。 また、3人目撃者が居ながら、3人ともまるで違う特徴の犯人を証言しました。これは非常に不可解で、興味をそそられました。 以下、難癖部分。 3人とも食い違う証言や、ホールジーの要素は、カーならば飛びっきりのトリックやドンデン返しに利用されるところですが、この作品ではあまりそういったことがありませんでした。なので、その部分では残念でした。あくまで各登場人物の心理面のヒントのみでした。物的証拠ではないので、純粋な犯人当ての決めてにはならず、また犯人がこさえたトリックもほとんどなかったです。 ラスト、論理によって犯人を追いつめる展開があり、犯人を一人に断定できる作品ではあります。しかし、犯人の証言の地理的な矛盾については地図が添付されていないため非常にわかりづらかったです。また、タイプライターの問題は知識がいる事ですし、現在の私たちではちょっと難しいかと思います。 総じて、本格愛を感じる作品ではあったものの、証言の食い違いは魅力的な謎にならず、大きなトリックもなく…ちょっと地味な印象を持ちました。各登場人物が隠している謎と、その背景が明かされている感じはアガサっぽくて、その部分が好きな人はもっと高評価をつけると思います! |
No.327 | 5点 | 彼女らは雪の迷宮に- 芦辺拓 | 2022/12/11 10:11 |
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読みやすい推理小説を求め、クローズドサークルに惹かれて買いました(笑)。小説中にもクローズドサークルファンの話が出てきますが、あそこまでクローズドサークルにこだわりがないものの、私も大好きです。そして、この作品もまた読みやすかったです。 ただ、この作品はただのクローズドサークルではなく、殺人や死体も出てこないし携帯電話もつながるといった、お約束を破った作品です。殺人が起こらないだけあって、雰囲気は明るく、ちょっとしたユーモアミステリのようです。反対に、殺人が起こらないのでサスペンス性には乏しいです。 推理小説部分について。 推理小説のプロローグほど信用できないものはないですね(笑)。プロローグを信じるなら、クローズドお約束の全滅なのですが、シリーズキャラの新島ともかが死ぬはずもなく…。 私は、状況と雰囲気から新島ともかが偽物だとわかり、そこから結末をいろいろ妄想しておりましたが、まんまと作者の手のひらの上で踊らされた形でした(笑)。作者が本当に隠したかった本命叙述トリック…を隠すための小粒叙述トリックにすぎませんでしたね。 この小説一番の大きなトリックである、映画セットを使った場所移動は面白かったです。前々から私が妄想している、こんなトリックがあったらいいな~と思うものの一つには映画セットを利用した叙述トリックがありました(笑)。この主観人物を運び、いつの間にか場所を移動させているが主観人物は気づかづに読者に伏せられるトリックは、現実的に可能なのかすこし疑問ではありますし、似たような趣向のトリックを他にも読んだことがあります。 一向に殺人が起こらず、この小説はどういうふうに着地するのだろう…と思いきや、すでに大トリックは起こっていました。読みやすかったし、驚きもありました。ただ、もう少し見せ方が良かったら、もっとびっくり仰天させられる小説になったかもしれないという気もします。また、結果、過去に二人殺している犯罪を犯した集団は、結局罰が与えられなかったのはモヤモヤしたかもしれません。 |
No.326 | 6点 | 盗まれた街- ジャック・フィニイ | 2022/12/05 00:22 |
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書評を書いたと勘違いしておりました(笑)。ちょっと前に読んだため、少々忘れてしまいました…。 サスペンス・ホラー・SFの要素が入っておりますが、どれもしつこくなく、最小限の説明でテンポが良く、本題に入るのも早かったです。非常に読みやすくスイスイページが進みました。 初めて成り代わる前の莢人間?を見つける→ベッキィのほぼコピーを見つける→マニーが論理的な解決?を主人公に提示する…主人公や街の住民などの集団的な妄想や暗示…?→莢人間の指紋がないことの説明ができない、という流れが非常に面白かったです。一度、超常現象など化学で説明できるバカバカしい!みたいな展開ってありがちですよね(笑) 主人公たちが街に帰ってきたとき、思ったよりもずっと状況が悪く、街の人間すべてが敵になったかのような状態ですね。バットロングやマニーもすでに敵だったときの絶望感ったらないですね(涙)。 知人が入れ替わったように思うという妄想が実際にあるのですね! 勉強になりました。 |
No.325 | 7点 | 黒牢城- 米澤穂信 | 2022/12/04 10:15 |
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戦国時代のミステリです。荒木村重が信長を裏切って籠城したころ。安楽椅子探偵は牢屋に入れられた黒田官兵衛。大河ドラマの軍師官兵衛を見ていたのためか、非常に読みやすくすいすいページが進みました! 荒木村重というと、創作物では、有能ではあるが裏切り者で、妻よりも茶器を優先させる非道な人物! 果ては自分だけ逃げた臆病者! みたいに書かれがちだと思います。しかし、この作品の荒木村重は頭が良く、一個人の武もあり、落ち着きもあり…なんだかかっこよく描かれております。新鮮でよいです。 時代小説としても楽しめるレベルだと思います。籠城の雰囲気はこれまでみた歴史小説ではあまり見てこなかったので、これも新鮮でした。籠城開始直後はよく従っていた将兵たちが、援軍が一向に来ないことで疑いを持つようになって、徐々に村重も追い詰められていきますね。 推理小説部分について。 大きな事件は3つ起こり、いずれも不可能犯罪の連作短編です。最後の1つは、連作短編特有の物語全体を絡めた謎を意外な真犯人(?)、安楽椅子探偵だった官兵衛の真の狙いなどが明かされます。 3つともトリック自体はそれほど独創的な物でもありません。ただ、伏線やミスリードなど、本格度が高いミステリとして楽しめるのに、変にミステリめいていなくて、それでいて歴史小説に大きく偏っていることもなく、それが非常にバランスがいいです。伏線の張り方が歴史小説によくあるちょっとしたことが伏線になっていたり、読んでいてとても自然でした。 私は、節々に出てくる千代保(だし)が露骨に怪しいと思いましたが、各3つの事件の伏線を回収できませんでした;; 総じて、歴史小説としても、推理小説としても楽しめる一冊でした。同作者の折れた竜骨などもそうですが、推理小説以外の部分でも高レベルなところが素晴らしいです。推理小説家としての腕と小説家としての作品の幅がどちらも高いレベルでした。ただ、単純に本格推理小説としてみた場合、3つの事件の謎が既存の推理小説を凌駕するものでなかったため、7点としておきました。 |
No.324 | 5点 | 狂骨の夢- 京極夏彦 | 2022/11/15 09:01 |
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分冊版を買いました。3冊に及ぶ超大作でした…。正直、少し疲れましたね(笑)。 読み進めるたびに謎がどんどん増えてき、明らかに現実ではありえないような状況ばかりになります。すさまじく散らばっている謎たちが、はたしてうまく収束するのか不安でしたが、最後には一つにまとまっていくのが見事でした。 このシリーズは本格推理小説として捉えないほうが楽しめるとはおもいます。しかし、推理小説的要素が無いわけではありません。小説上朱美が一人のように見えて、実は二人という、よくみるオーソドックスな叙述トリックが使われておりました。思えば、大量のヒントがありました。私はこれに気づかずに悔しい思いをしました。登場人物たちは皆、宇多川と朱美の二人をにみていませんし、隣家の親切な夫人などは非常に怪しんでおりました。なのに、この叙述トリックがわかりませんでした(涙)。 1000年や500年に渡る悲願を果たそうとする人たち、父親の病を治そうとする人、勘違いで復讐をする人…。すさまじく多いイベントが絡み合って力作であると感じます。しかし、これらにはいまいち興味がそそられず、途中で読むのが苦痛に感じてしまった部分もありました。 また、前作や前々作と比べ、小説的な厚みは今作が一番ですが、やや質が異なってしまい、それが自分の好みと違ってしまいました。推理小説的な試みは前々作、圧倒的なインパクトとホラー感は前作にそれぞれにあり、それと比べると大分魅力が落ちてしまったように思えます。これは私の好みであり、今作のほうが好きという方も多いと思いますが。 あとは、私の好きな榎木津と関口の登場が少なかったのもやや不満でした。京極堂の関口に対する偉そうで辛辣な態度にもイライラします。 |
No.323 | 6点 | Zの悲劇- エラリイ・クイーン | 2022/10/05 22:50 |
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XとYの悲劇を読んでからすさまじく長い時間が経ってしまいました(笑)。X、Yとそれぞれ趣の異なった名作ですが、ZはややXよりの、もっというと国名シリーズ初期のような細かい論理の積み重ねによる消去法で犯人を指摘するタイプの推理小説でした。本格度は極めて高く、早川版あとがきいあるおうに、国名シリーズに使うはずだったものを流用したのではないかと疑惑がもたれるぐらいです。 珍しい?ことに、神の視点でもなく、レーンの視点でもなく、ペイシェンスという女性が主観の文章でした。それにより、若干のサスペンスや冒険、恋愛の要素も加わり、なんだかみずみずしい小説になっていました(笑)。 殺人が早くに起こるものの、すこし社会派なストーリーが続いたため、社会派が苦手な私にとってはやや読みづらさを感じました。 レーンの推理は見事だったものの、あまりの細かさにピンとこないことも多々ありました(笑)。 また、私の苦手な右手左手問題もありました。これは小説によってまったく異なった話や論理になってしまい、あまり好きではありません。 さらに、医者ならば生死の確認をミスするはずがない…というのは何となくわかりますが、あれって素人でも判断を誤るものなのですかね…? ほとんどの人がそうだと思いますが、そういった経験が皆無なので、なんとも想像に難しかったです。 電気椅子での処刑のシーンは、クイーンがわざわざ書くのなら推理に必要なシーンなのだ…と予感しつつも、1から10までまるでわかりませんでした。私の推理は、推理と呼べるものすら形成できない完敗でした(笑)。 |
No.322 | 7点 | 求婚の密室- 笹沢左保 | 2022/09/25 11:35 |
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非常に読みやすい文章とプロットですいすい読み進められ、あまり時間をかけずに読了できました。 金も権力もある人物が曰く付き(?)な関係の者を多く招待したパーティーで、場所を移さず割とすぐに殺人事件が起こります。余計な部分が少なく、テンポもよかったです。 途中、法廷ではないですが、2人の婿候補による推理バトルが楽しめます(笑)。ページ数や展開からそれが真相ではないことは予想がつきますが、こういうものが取り入れられていると事件の概要がスッと頭に入ってくるのでうれしいですね。 推理小説部分も優れていました。 密室というだけあって、どうやって殺したか?がメインの謎になってきます。共犯であり、子供を使っているので、ややアンフェアなのかもしれませんが、真相を読んだときは思わず膝を打ちました(笑)。ミネラルウォーターのボトルがプラスチックであったことはもっともっと考えなければなりませんでした(笑)。60歳の被害者が人2人分(しかも若子はやや肥満)を壁づたいとはいえ肩車できたは疑問ですが、これは私の思考の盲点をつかれました! 私は富士子の特殊な生い立ちやキャラクター、絵になるとかそういうことで犯人だと決めつけておりました(笑)。しかし、アリバイや密室の謎がまったく解けず、白旗でした(笑)。私もロープで脱出したかと考えましたが、途中の推理バトルでその説が登場してがっかりと安心を味わいました(笑)。 総じて、本格度の強い推理小説で満足しました! 読みやすく、密室らしい密室、意外な(?)犯人と意外な殺害方法。少々ロマンチックな要素もありましたね…私にとってはベッドシーンがしつこくてもう少し軽いほうがよかったですが(笑) |
No.321 | 5点 | 火天風神- 若竹七海 | 2022/09/18 19:21 |
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台風によりリゾートホテルが閉鎖空間になり、死体や暴漢や火事などスリリングな要素が多数登場するオーソドックス(?)なパニックものでした。 登場人物がかなりおおく、主要キャラクターに関してはその背景も書かれるため、かなりのページ数があります。しかし、あまり読みづらさを感じなかったです。 よく映画に出てくるような要素が多数あり、ツボを押さえている作品だと思いましたが、ページは進むもののなぜだかあまり面白さを感じませんでした…。映画でパニックものというと、無条件で面白いような感じなのですが(笑)。それとも、この本が映画化されれば印象が違ってくるのでしょうか? ミステリが映画よりも小説の媒体のほうが向いているのに対し、パニック物は小説より映画のほうが向いているのでしょうかね? ラストは大団円とはいかないまでも、多くのキャラクターに希望のあるエンディングなのはよかったです。ただ、丁寧に背景を書かれているキャラクターに関しては、意外なほどあっさりと終わってしまったのが気になりました(笑)。 |
No.320 | 7点 | 危険な童話- 土屋隆夫 | 2022/09/06 18:52 |
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個人的には警察が主観の文章の小説が苦手で、読見進めるペースが遅くなってしまうことが多いのですが、この本はそれほど苦もなく読み進められました。登場人物が適度に絞られていて、小説的には犯人が分かり切っており、余計なアリバイの捜査などがカットされているところが良かったです。 作風は極めて本格度がつよい推理小説でした。細かくて数が多いアリバイトリックが主で、それほど大がかりな大トリックではないのですが、考えてもなかなかわからない工夫を凝らしたもので、大変満足しました。 凶器や警察への手紙など、逮捕されることをトリックに組み込んだ犯人はあっぱれでした。 危険な童話というタイトルにもある通り、童話を用いて子供を操り、遠隔操作のようなトリックが印象的でした。警察は子供にも注目していたので、犯人にとっては危ない橋ではありますが、虹の色などで出す順番を指定していたりするところもアイディアを感じました。また、小説内で少しずつ童話が書かれており、それがヒントになっている構成もセンスを感じました(笑) 総じて、細かくて緻密なトリックを味わえる、本格推理小説でした。大トリックやドンデン返しがないものの、それが逆にシブく感じます。より読みやすく、よりドラマティックな感じがある鮎川作品のような(笑)。唯一、好みで無い点を挙げるとすると、犯人に同情してしまう事件の背景や、ラストがやりきれません。執念で犯人を追いつめた木曾刑事も無念でしょうね(涙)。 |
No.319 | 6点 | 殺意の集う夜- 西澤保彦 | 2022/08/30 19:28 |
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西澤保彦さんの作品は、読みやすいものが多いです。本作もかなり読みやすく、かつクローズドサークルなのもあり、読了までにさほど時間がかかりませんでした。 本格推理小説というよりかは、テンポが良すぎるサスペンスの色が濃いです。登場人物全員がいわくあり気であり、なにかしらの嘘があります。そのため、あまり犯人当てを楽しむことはできません。まさに、殺意の集う夜といったところ。ただ、ラストに大きなドンデン返しがありました。 ドンデン返しについて。 私は、登場人物の名前(特に主人公格のマリ)がはっきり表記されてないので、露骨に怪しんでいました。しかし、なぜか性別の錯覚トリックに行きつきませんでした(涙)。これだけ多くの性別の錯覚トリックを用いた本を読んでいるのに…。どうやら私は、男性→女性より、女性→男性のパターンのほうが苦手で当てられないようです。 警察・三諸の視点の智恵殺しの犯人である男が出てこないのも疑うべきでしたね。あとは、登場人物の名前に漢数字が使われていますが、六が出てこないのもヒントなのでしょうね。 総じて、読みやすくテンポが良く、衝撃の展開でサスペンスチックな良い作品でした。ただ、推理小説としては、性別の錯覚からのドンデン返しは非常によく見るトリックであり、既視感がつよいです。もうすこし、個性が欲しかったところです。 |
No.318 | 5点 | 死者はよみがえる- ジョン・ディクスン・カー | 2022/08/22 22:47 |
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新訳版を買いました。新訳にもかかわらず、やや読みづらさを感じてしまいました(笑)。訳が悪いというよりかは、場面の移り変わりが急だったり、本の始まりの時点ですでに2つの殺人が終わっているためかもしれません。 推理小説部分について。 かなり意外な犯人でした(笑)。これは当てようがないと思います(笑)。フェアかアンフェアか言われれば…まあアンフェアなのかもしれませんね(笑)。 被害者の首にタオルが巻かれていたり、ジェニーが特殊な方法で絞殺(?)されているのを見て、逆に両手が使えない人間が犯人ではないかと一瞬だけおもいました…。が、すぐに犯人候補から外してしまいました。ロドニー殺しの際に使ったベッドのくぼみは、ヒントがありましたかね…? また、非常階段からリネン室の窓へ行けるなど、思いもよりませんでした。かなり大きなミスリードであり、私もまた7階に居た人々の中に犯人がいると錯覚しました。たしかに、リネン室には誰も入られませんから、犯人が入ったとするならば外から…なのでしょうが、あの図から外から入られるなどとても想像できませんでした(笑)。これもなにかヒントがあったらよいのですが、ありましたかね? 極めつけは、留置所に隠し抜け道がある点(笑)。ここの部分はカーも困ったでしょうね(笑)。強引さを感じました。 既読の方に少しヒントをもらいつつ読みなおしましたが、ロドニー殺しにおけるベロウズの犯人の証言から、「証言の犯人の容姿が警察に似ているな?」と思い、警察官と勘違いしたのではというところまで考えました。画像検索すると、なるほどベロウズの証言と警察の容姿が似ております。ただ、登場人物に載っている警察はハドリー警視だけですし、到底犯人とは思えない…。私の思考はそこで止まりました(笑)。 総じて、読者が犯人を当てるにはかなり難しい…アンフェアに近い小説でした。しかし、カーらしいドンデン返しや意外な犯人が存分に楽しめる作品でもあります。私の好みは本格推理小説ですので、5点としておきましたが、もっと高い点でも納得できる本です。 |
No.317 | 6点 | 図書館の死体- ジェフ・アボット | 2022/07/29 18:41 |
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裏表紙アガサ賞受賞作品と書いてありましたが、なんとなくプロットが似ている気がしなくもなかったです。事件を追うごとに、登場人物たちに隠された秘密が暴かれていって…最後に意外な動機と犯人があきらかになる系です。 緻密なロジックによる犯人当てや、アリバイトリック的なものはありませんでしたが、2時間ドラマのようなテンポの良さを感じました。非常に読みやすかったです。 自身の指紋しかついていない凶器など、不利な状況に追い込まれる主人公が素人探偵になって事件を推理することや、恋愛要素、姉や甥や本当の父との家族愛など、どこかD・M・ディヴァインを思わせるような要素もありました(他の方も書かれていることですが(笑)) 推理小説的要素というと、本格推理小説としてみた場合、やや薄味でした。先にも書いた通り、ヒントが少ないため犯人当てができないことや、アリバイトリックを解く楽しさはありませんでした。あくまで、動機当てや意外な犯人を楽しむ作品でした。 総じて、さまざまな人間模様、感動的なラストなど、物語的な厚みを感じる作品でした。ただ、本格好きの私からすると、もう少し、読者に解ける問題を提示するような作品がみたかったです(笑)。 |
No.316 | 5点 | 「ナイルの甲虫」殺人事件- 吉村達也 | 2022/07/20 00:36 |
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タイトルにワンナイトミステリーとある通り、中編ぐらいのページ数です。すぐに本題に入るし、エジプトの旅行記もしつこくなく、大変読みやすく仕上がっております。 推理小説的な「どうやって殺したか?」についての問題は、ちょっと推理が難しいです。デパートで売っているマジックグッツ的でした。 それよりも、伏線が張ってあるドンデン返しのほうが楽しめました。 中編程度のボリュームなので、そこまで凝ったトリックや犯人当てはさすがに無理ですが、読みやすくドンデン返しが楽しめる本格としては良い作品でした。 |
No.315 | 6点 | 偽のデュー警部- ピーター・ラヴゼイ | 2022/07/14 19:30 |
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非常に特殊な状況のミステリでした。自分の妻を殺そうとした犯人が警部と間違えられ、別事件での名探偵役になってしまうのは面白いですね。 ただ、船に乗る前までがやや退屈な展開でした。船に乗ってからはそれほど苦も無く読了できました。 本格推理小説としてはやや薄味というか、犯人当てやアリバイトリックなどはありません。ドンデン返しのある、広義でのミステリーといった感じです。 ラストがそこそこ大団円で終わるのは爽やかでいいですね(?)。 私はリディア殺害シーンがない、ぼやかされて書かれているので、絶対生きていると思っていました。なにかの叙述トリックになっていると思ったのですが、どちらかというとドンデン返しのための要素だったようですね(笑)。なるほど、船に乗っていなかった(すぐに降りてしまった)とは思いつきませんでした。 総じて、海外翻訳特有の読みづらさは前半以外ではありませんし、明るくて読みやすい本だと思いました。本格度がもう少し高ければもっと好みなのですが、楽しめたので6点としました。 |
No.314 | 6点 | あした天気にしておくれ- 岡嶋二人 | 2022/07/01 19:49 |
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私は競馬については無知だったのですが、それでも大丈夫でした(笑)。非常に読みやすい文でテンポもよく、一気に読み終えられました。 始めは倒叙形式のような感じで、主人公達が狂言誘拐を企てますが、別の犯人が誘拐の乗っ取りをして…といった流れです。競馬という特殊な設定を活かした意外な方法での身代金奪取と、意外な犯人が楽しめます。 私は、セシアが怪我をする前にもう入れ替わっているかもしれない…とうっすら頭によぎったぐらいで、後のことはわかりませんでした。いろいろな偶然も絡みますし、推理小説としては読者が全て推理できないとは思います。 |
No.313 | 7点 | ジャンピング・ジェニイ- アントニイ・バークリー | 2022/06/24 19:19 |
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アントニイ・バークリーの本はまだ3冊目なのですが、明るい作風にユニークな設定が面白いですね。本作も非常に面白い設定でした。 探偵が犯人を庇って証拠を隠蔽したり、ミスが発覚して自分の首を絞めたり、たの推理小説では見られないような設定でした。もちろん、それとは別に、犯人がだれであるか?という検討も楽しむことができます。 また、海外翻訳物にしては非常に読みやすかったです! 最初のパーティーのシーンでは、多い登場人物に扮装もあり、読みづらさを感じました。しかし、ロジャーが椅子についての発見をしてからはかなり読みやすくなり、そこからは一気に読み終えることができました。 推理小説的要素について。 推理小説的には、やや薄味というか、犯人当てにはなってはいなかったです。私は、イーナが梁に登れるシーンから、自殺だと決め込んでいました(笑)。結末はあまり予想できるものではないですね。 ただ、ガチガチの本格推理小説としてではなく、広義のミステリーとして読んだ場合、大変楽しむことができました。 総じて、単純に読みやすく面白い本でした(笑)。イーナは自己顕示欲が強くて面倒な女性だったにしても、ややかわいそうな気がしますが(涙)。 |
No.312 | 6点 | 卍の殺人- 今邑彩 | 2022/06/14 20:57 |
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ネタバレをしています。
同作者の他作品も読んだことがありますが、それと同様に非常に読みやすかったです。全くストレスなく読み終えることができました。 さらに、ギスギスしている(?)旧家の館ものであり、連続殺人があり、クローズドサークルではないものの一つの館で話が完結します。これらの要素により、ほぼ一瞬とも思えるほど早く読み終えられました。 推理小説的要素について。 大きな事件は2度。殺人事件は3度起こります。 私は館の地図を見た途端、嫌な予感がしました。そして、亮子が付き合って3カ月であること、宵子が亮子を連れて醸造所を解説して回ったシーンなどを見て、ある程度は真相と同じものを予想しました(笑)。最初の事件が起こったのを見てからはもう確信しました(笑)。やや、予想されやすいというのは欠点かもしれません。ただ、それはフェアさの現われでもあると思います。 不満点はあまりないのですが、亮子が良い人過ぎましたね。ラストがちょっと淡泊に終わります。亮子と宵子の対決、匠の葛藤を描いても面白かったかもしれません(笑)。 総じて、読みやすい文と、館ものらしいダイナミックなトリックが持ち味の作品です。作者あとがきにかかれたような「酷評された」のは信じられません。本格推理小説への愛も感じられる一冊でした。 佳作と呼ぶにはトリックがパンチ不足感が否めませんが、楽しめました。 |
No.311 | 6点 | 扼殺のロンド- 小島正樹 | 2022/06/09 19:47 |
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文章が非常に読みやすく、あまり話が脱線しないため、すいすい読むことができました。また、キャラクターがややコピペ感が否めないものの、あまり癖もなく、読書をじゃましないいい塩梅でした。 推理小説的要素といえば、サービス精神旺盛な密室3連発です。また、随所にミスリードがちりばめられており、全力で読者を欺いてきます。プロローグからしてそうですね。ある程度推理小説を読んだ読者なら、推理小説のプロローグが全く信用のならない紛らわしいものというのは周知のことでしょうが(笑)。 密室はというと、これはやや偶然の要素や、共犯による工作、犯人の失敗などでできたものであり、読者が論理的に真相へたどり着くのは難しいものでした。しかし、腹が割かれた死体と高山病の死体の二重密室はインパクトが強く惹きつけられます。 手を切る→手を縫合するといった、狂気的なアリバイ作りもよかったですね。 総じて、叙述トリックなどがあまり用いていない、正道?のドンデン返しが楽しめる作品です。 文庫版あとがきに島田荘司の名前が挙がっていましたが、読者が論理的に当てられない作品というのが共通しておりますね。島田作品のほうがもっとインパクト重視なのに対し、本作のほうがやや本格チックな分、インパクトの面では劣っているかもしれません。しかし、馬鹿ミス度は島田作品のほうが上でしょうかね(笑) |
No.310 | 6点 | 時間島- 椙本孝思 | 2022/05/31 18:44 |
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読みやすそうなクローズドサークル系をチョイスして買いました(笑)。 表紙がスーツ姿の志々雄真実のような漫画っぽい絵なので、ライトノベルのような雰囲気です。しかし、特にライトノベルというわけでもなく、標準的なよくあるクローズドサークル系のミステリとして読むことができます。 それでいて文は読みやすく、またSF要素が入っておりますがそれほどしつこくなく、説明なども必要最低限であり、キャラクターの書き分けもうまくて、読了まで時間がかかりませんでした。 クローズドサークル系のミステリだけあって、ラストはドンデン返しが用意されています。ミステリとしても満足な出来だと思いました。 私は、ミイラ男が記憶喪失なのをみて、犯人はまゆ=ミイラ男か?と思いましたが(しかしアリバイはある(笑))、なんと犯人らしい犯人はクローズドサークル内にいないという、ミステリ好きの特性を逆手に取ったようなアンチミステリ的トラップにまんまと引っかかりました(笑) ミイラ男のメールでの指示が100%成功するとは限りませんが、このアイディアは面白く感じました。 初めて5年後皆にメールを送ったまゆは、何を考えて送ったのでしょうね? 本作の物語上では、アイドルとして成功した現在をの状態を保つために5年前へメールを送ったことになっております。それは、事件の際に佐倉からメールの存在を明らかにされたから出た行動です。佐倉が死ぬシーンでは、すでの本作の物語上ですべての登場人物にメールを出していた(たぶん)ことがわかります。本作の物語ではすでに何周かした世界だと思いますが、最初に送ったのはどういった状況だったのでしょうか? 本当に怪我をして、奇跡的に助かって、事件を止めたいとしたら、全員を殺害させるようにコントロールするようなメールは出さないと思いますし…。 |
No.309 | 6点 | 黒龍荘の惨劇- 岡田秀文 | 2022/05/25 19:01 |
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明治時代が舞台の推理小説です。伊藤博文など、実在の人物も多少出てきて、すこし壮大な話もありますが、基本的には横溝正史の金田一シリーズのような楽しみ方のできる作品でした。 黒龍荘という、かなり大きな館が舞台であり、クローズドサークルかは微妙ですが、ほぼ館で話が完結するので読みやすくテンポもよかったです。 また、キャラクターに癖がなく、最近の推理小説に登場しがちな漫画やライトノベルのようなキャラクターは出てきません。ただ、逆に言うとあまりキャラ立ちしていない人物が多く、特徴的な名前の探偵である月輪も凡人のように見えます。しいて言えば、偉そうな態度をとってもいざとなるとポンコツ気味な谷越警視、たおやかな女性かと思ったら緊急時には江戸っ子の啖呵をきって棒を使う蘭子がよいキャラクターでした。 推理小説部分について。 非常に大がかりな大トリックが楽しめます。ただ、2014年発売にしてはすこし既視感があり、個人的に大きな驚きは感じませんでした。 また、大トリックをするとやはり無理がでてきます。不可能犯罪も、ここまで多くの共犯者がいてしまっては、謎でも何でもありませんね(笑)。 総じて、佳作にはあと一歩足りない作品ですが、文は読みやすく雰囲気はよかったです。本格度も高く、読んで損はありませんでした。 |