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ミステリ初心者さん
平均点: 6.18点 書評数: 404件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.344 7点 メーラーデーモンの戦慄- 早坂吝 2023/06/01 10:09
ネタバレをしております。
また、過去のシリーズのネタバレもしております。

 本作は、過去作の登場人物達が勢ぞろいした感じがあり、総集編のような趣があります。過去作を読んでいなくても楽しめますが、ある程度ネタバレされるので読んでから本作を読んだほうがより楽しめると思います。

 ユーモアミステリと言っていいほど軽くて面白く読みやすい文章であり、かつ読者の思考の裏を突くドンデン返しや叙述トリックが魅力のシリーズです。私が読んできたユーモアミステリのシリーズ中では、最高クラスに本格度が高く、作者の技術の高さがうかがえます! 本作もそうだったのですが、やや下ネタ度は控えめ(?)な感じで、より読みやすくなってましたね。

 推理小説的要素について。
 序盤、軽いジャブのような叙述トリックの密室殺人(?)がありました。このシリーズを読んできた読者なら、簡単に見破れる類でしたねw

 中盤~終盤、事件の容疑者たちが同じ劇場で鑑賞している際に飛ばし携帯をゴミ箱に捨てたものがいる=事件の黒幕を推理する本格推理小説になりました。
 らいちたちのツイッターの情報と、清掃の証言から一人に断定するのは論理的なのですが、藍川がツイッターの仕様がわからないところからくる叙述トリックのため推理が極めて難しかったですw ヒントは出ておりましたが、そもそも私もツイッターをやっていなくて…。つくづく、論理的犯人当てと叙述トリックの相性は悪いですね。劇場の内容をそのヒントにするのはオシャレでよかったですw
 ただ、ツイッターの情報の順番を正しく並び替えてさえ、私には到底推理できないほど難易度が高すぎましたw 携帯を捨てた人間は拭くものを持っておらず、ゴムが触れて、8番ホールに座っていて、…程度はわかりましたが、清掃員の清掃の順番や、回転型劇場ならびに劇場が舞台の意味までは分かりませんでした。
 ちなみに、通風路に鳴ったバイブ音はなんとなくわかりましたw そういうシリーズなのでもしかしたらみたいなw

 一方で、事件の黒幕の動機についてはめちゃくちゃで、理解できませんでしたw まあ、動機当てではないのですが。

 シリーズ作品の登場人物があつまり、らいちももう藍川とは会っていないようで、もしかしてこれでらいちシリーズも終わりなのでしょうか;; とても悲しいですね…。

No.343 6点 ブードゥー・チャイルド- 歌野晶午 2023/05/26 20:22
ネタバレをしております。

 圧倒的な文章のうまさ…というか、読みやすい文章を書くことで(個人的に)定評のある歌野晶午さんの高評価作品! この作品も圧倒的な読みやすさですいすい読めました。そこそこのページ数があるにもかかわらず、読了までさほど時間がかかりませんでした。
 本格色が強い作品を書くミステリ作家と思っておりますが、本作は他の歌野作品にくらべやや変わり種というか、本格推理小説というより2時間ドラマのような趣がありました。犯人当てやアリバイトリックや不可能犯罪とは違ったような。
 とはいえ、前世を覚えている少年の謎や、それに関連した事件は魅力たっぷりで、ミステリの楽しさを存分に味わえました。

 一方で、第一の事件で残されていた絵の真相についてはやや肩透かしを食らった感じでしたw
 また、ジュリアンの出生が明らかになった時、ボンクラの私も流石に真相に近いものを予想しました(逆に言うと、それまで全く思いつきませんでしたがw)。これは真相を予想するのに必須な知識であり、読者に提示されてなくてはならないデータだと思いますが、これを知るとネタがバレがちですねw 裏返せばフェアということでしょうね。

 総じて、非常に読みやすく、かつ読後感も悪くない作品でした。このタイプであれば、最後にドカンと驚きの展開がもうひとひねり欲しくなってしまいますねw ただ、驚きが多すぎると、現実性が犠牲になったり、読者の予想が困難になりがちで、うまく作品として落とし込むなら本作のような塩梅がいいのかもしれません。
 ちょっと辛めかもしれませんが6点とします!

No.342 6点 あなたがいない島- 石崎幸二 2023/05/18 19:35
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 前作に続き、石崎・ミリア・ユリの漫才っぽいものが魅力のユーモアミステリです。石崎が前作に比べ、ミステリマニア馬鹿感が強くなったのは気のせいですかねw 前作もそうでしたが、非常に読みやすいので買いました。
 今作は無人島。クローズドサークルの緊張感やサスペンス性には欠けますが、やはり孤島はわくわくしますね! もともと読みやすい作風に、クローズドサークルが入れば、一瞬で読み終えられます。

 推理小説部分については、前作よりも厚みを感じがありました。
 犯人以外に嘘をついている人物もあり、物語最終盤に明かされる心理実験の真の目的もあり、真相を全て解き明かすのは難しいかと思います。またアリバイ検証もあまりなく、犯人当ても難しいかと思います。消えた凶器…というか、どうやって用意したかもわからない凶器の問題は魅力的に思えましたが、石崎の作中のセリフ通り「そんなことできるんだ」的な豆知識程度でしたねw 私は一瞬、黒曜石的なものを考えたのですが、スルーしてしまいましたw
 犯人当てやどうやって殺したか問題よりも、禁止された持ち込み品や盗まれた物品から推理する心理実験の真の目的のほうが面白かったです。ストーリーに厚みがあった…ような気がしますw 推理小説的というよりも、普通の小説的な趣がありました(そうか?)。
 ミリアがインディアンポーカーで犯人をハメるシーンはクールでしたねw

 総じて、本格度よりも読みやすさを評価したいユーモアミステリでした! ミリアとユリのキャラクターが似ていて、もう少し書き分けできないかな~?とは思いましたがw

No.341 6点 饗宴 ソクラテス最後の事件- 柳広司 2023/05/10 19:48
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 前に、同作者の偉人シリーズのはじまりの島(ダーウィンのやつ)を読んでいました。興味がわき、本作も買いましたw
 はじまりの島と同じく、通常のミステリとは異なり、主人公の時代、その人物の一風変わった感じが楽しめましたw 私はすこぶる無学なため、古代ギリシャやソクラテス、哲学者たちを全くと言っていいほど知りませんでした。しかし、本作はそんな自分でも読みやすく書かれており、古代ギリシャの風俗的なはなしなどは面白く読めました。
 また、古代ギリシャ特有の文化が殺人の謎に絡んでおり、作者のミステリの手腕も高かったと思いました!

 推理小説部分について。
 物語全体的には、アリバイトリックとか犯人当てとかよりも、何が起こったか?がメインの謎となります。これは、物語の序盤に探偵役であるソクラテスが示唆したことでした。すべての推理は難しいと感じましたが、なるほどソクラテスの推理を聞いてみると細かなヒントがちりばめられております。
 また、事件全体を操っていたかのような黒幕の存在は面白かったです。
 ポロスの毒殺の謎も、散々書かれていた古代ギリシャ特有の事柄が絡んでおり、満足でした!

 全体的に雰囲気もよく、哲学者が主人公の割に衒学めいたところもなく、読みやすく面白い作品でした。個人的には、アリバイトリックと犯人当てが好きなので6点としておきますがw

No.340 5点 ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件- 七尾与史 2023/04/27 18:22
ネタバレをしております。

 読みづらい翻訳作品の合間には軽くて読みやすい推理小説が読みたくなりますので、こちらの作品を読みました。半分は当たっていましたが、半分は当たっていませんでしたw
 警察が主人公サイドの小説のため、連続殺人事件を追って少しずつ全容が明らかになっていくタイプです。私はこのタイプがあまり得意ではなく、鬼貫警部ものも若干の読みづらさを感じますw ただ、本作はキャラクターが漫画っぽいこともあり、割とすらすら読むことができました。
 タイトルにもある通り、探偵役(?)の黒井マヤがドS刑事であり、面白かったです。ドSの定義はよくわかりませんが、ドSというよりクソガキ(ガキという年齢ではないが)やわがままお嬢様みたいですね(?)。猟奇的な物を好むようですが、それ=Sって訳でもないでしょうしね。急にデレたのは違和感がありましたw もう少しなにかイベントがあってもよかったのでは…?
 キャラクターはユーモアミステリの様であったのですが、事件の真相は結構暗いものでした。大量の人間が死にますし、どう考えても死ぬには可哀想な人間もいます(というかほぼほぼ全員)。なので、純粋なユーモアミステリを求めて読んだとしてもちょっと的外れかもしれません。

 推理小説的な部分について。
 犯人当てやトリックの類はなく、ミッシングリンクとも少し違うような感じですね。動機当てというか、事件全体のカラクリを当てるタイプなのでしょうか? あまり、当てる・当てないにこだわるよりも、ドラマのようにしてみたほうがいいかもしれません。
 私は、西川が交通事故を起こした時点で、やっと全体像に近いものが見えました。事故をしているのに妙に冷静に腕組みをしている女性を見て、始めとつながった感じがありました…が、もちろん細かいところまではわからず。

 がっつりした推理小説ではなく、息抜きに読む推理小説に向いていると思いました。

No.339 6点 メインテーマは殺人- アンソニー・ホロヴィッツ 2023/04/19 20:11
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 前にカササギ殺人事件を読んだことがあり、評判も良さそうなのでこちらを買いました!
 今回は、作者が作者役ででているというユニークさがありました。エラリー・クリーンも、法月綸太郎も、有栖川有栖も、二階堂黎人も、作者名=探偵役やワトスン役なのですが、小説用に用意された架空のキャラクターでした。しかし、メインテーマは殺人では、アンソニー・ホロヴィッツがアンソニー・ホロヴィッツとして出てくるようですw この作品に出てくる映画や小説の話も、一部本当のことっぽいですねw もちろん、おそらくホーソーンや事件については架空でしょうがw
 一方で、アンソニー・ホロヴィッツ自身の話や、己を語らないホーソーンなど、少し読みづらさを感じてしまいました;; 犯人当てについてだけ言えば、不要と思えるシーンも多くありました。スピルバーグと仕事ができるチャンスをホーソーンによってぶち壊されたアンソニー・ホロヴィッツには笑いましたがw

 推理小説部分について。
 非常に細かくて丁寧な伏線とミスリードでした。ダイアナが自身の葬儀のために葬儀屋に行ってからすぐ殺され、過去に起こした交通事故との関連を調べる流れになりますが、ダイアナ自体が大きなミスリードと化しておりますねw しっかりと探偵役ホーソーンも事故が原因ではないと示唆しておりますが。
 動機面で、ダイアナはダミアンを殺すためだけに殺された…という、Bを殺したいがためにAを殺す…といった展開は数作読んだことがありましたが、またもや引っかかってしまいましたw
 難癖点を挙げるとすれば、ややミスリード過剰であり、犯人を示唆するいくつもの伏線があるものの犯人を一人に断定するような強力な証拠に欠けると思います。また、この本ならではの個性がもう少し欲しかったところです。葬儀のためという動機は他にもありましたしね。

 総じて、作者自身が出演する珍しい展開が面白く、また丁寧に伏線とミスリードが張られた本格推理小説と思いました。利点や難点も、どこかアガサ・クリスティーに近いようなw このクオリティならば、他の作者の本も買っていきたいです。

No.338 5点 仔羊たちの聖夜- 西澤保彦 2023/04/04 19:57
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 なるべく前情報を調べずに買ったので、匠千暁シリーズとは知らずに買いましたw たしか、私は過去に解体諸因は読んだ…はずなのですが、今作の匠千暁という名前には見覚えがある程度であり、ほとんど覚えておりませんw 他のキャラクターはほぼ初見の感覚です。
 本当は、シリーズ物は発行順で読んだ方が良いかもしれませんが、推理小説はよく調べてから買うとなにかしらのネタバレがありそうで怖いのですよねw

 さて本作ですが、こてこての推理小説(例えば犯人当てやアリバイ崩し)というよりかは、自殺と思われる人の背景を追ったり、同じ状況での自殺事件の関連性を調べたりすることが多かったです。ただ、ラストにはやはり驚きがありました。
 第二の事件では、プレゼントを買った者の確認が取れていなかったのですね。最初、物語の始まりのきっかけとなったプレゼントでしたが、それが最後のキーになっているのですね。第一の事件とも関連づけられていて、構成も面白かったです。

 物語全体的に重苦しく、やや盛り上がる場面が少なかったように思えます。個人的な好みの問題ですが。
 ほぼ主人公のタカチですが、その他(第三の事件の関係者のカモさんやエリちゃんらを除き)の登場人物が空気と化していたような…。そのタカチですが、私にはあまりも恐ろしい、怖いキャラクターに感じてしまって、それをまるで神のように崇拝している(と、私が勝手に感じる)タックにもいまいち感情移入できませんでしたw

 総じて、意外性のあるラストが良かったものの、ややイヤミス的な暗さを感じた作品でした。また、主要キャラクターはあまり好みではありませんでした。
 私はやっぱり、犯人当てか、アリバイ崩しが好みなようですw

No.337 6点 はじまりの島- 柳広司 2023/03/27 23:18
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 進化論で有名なダーウィンが探偵役で、ガラパゴス諸島が舞台となるクローズドサークルという、かなり特殊な設定に惹かれて買いましたw 私は進化論についてはほとんど無知で、猿が進化して人間になったやつ…ぐらいしか知りませんでしたw
 特殊な状況ではありますが、よくあるクローズドサークルのミステリの流れを踏襲しております。不可解な殺人事件が起きて、連続殺人事件になって、探偵役がいて、ワトソン役と事件を調べていって…。意外な犯人とどんでん返しがあります。
 通常のクローズドサークルと違うのは、合間に進化論的な話や、宗教学、民俗学、生物学?やゲテモノグルメwみたいな話もありました。そのどれも衒学めいてなく、それほど本筋から離れないのでしつこくなく、テンポも悪くなかったです。
 ダーウィンとアールの、伝説のスペイン人ドン・カルロス探し冒険もよかったですねw

 推理小説部分について。
 犯人当てよりも不可能犯罪やアリバイトリックの系統のミステリだと思うのですが、その部分はちょっといまいちでしたw 
 亀が死体を運ぶのは何となく予想できたのですが、都合よくちょうど泉まで運搬してもらえるかどうかは運が絡む気がしますし、ややバカミスのノリですねw
 また、紐が縮んで時間差で首を絞める…のは知識がいる問題かと思いますし。

 総じて、推理小説としては微妙だったものの、それ以外の本としての魅力は高く、面白かったです。フエゴ人も初めて知りましたが、あんなにも奇怪な格好をする民族が実際にいたのですね。

No.336 6点 血染めのエッグ・コージイ事件- ジェームズ・アンダースン 2023/03/17 20:55
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 非常に濃厚な推理小説でしたw 
 500を超えるページ数に、多すぎる登場人物で、序盤は人物を覚えるのもストーリーを追うのも大変でしたw ただ、軽く読み返してみても、あまり無駄なページがないです。やや本題に入るのが遅くてテンポが悪い感じもありますが、すべての要素がストーリーに絡んでいます。
 事件の夜が始めってから、一気にミステリ的になって楽しくなりました。あまりにも複雑すぎましたがw 
 大団円…とまで行かないまでも、ラストの展開は同情できる犯人に対しては救いがあるような気がするため、終わり方も爽やかであるのもいいところですね。

 推理小説的には、やはりドンデン返しの真犯人が一番の魅力でした。途中で主観の文章がある人物が犯人だったため、自然と心理的に犯人から外しておりましたw のちのウィルキンズ警部の解説によると、自分の見逃していた伏線も多くあって感心しました。
 あとは、カノン砲をつかった大胆(やや馬鹿ミスw)なトリックも魅力でしたね! ウィルキンズ警部はカノン砲から血痕を発見していたと後から言ってましたが、これはヒントとしてほしいところでしたね(書いたらバレてしまうのですがw)。
 ドンデン返しが素晴らしい一方で、犯人当ては難易度が高すぎて私には無理なように感じました。館に泊まるほぼすべての人間が事件の夜に秘密の行動をしており、嘘つきが多すぎる点、二人の死体に二人の殺害犯、犯人に不幸な・幸運な偶然が起こりすぎている点、どこまで読んだらいいのかわからない本(挑戦状がない)点があります。ウィルキンズ警部が詩でヒントを出しますが、そこからデウルーが真相にたどり着いたようなのですが、あの時点では到底無理なように思えますw 私は警部の詩が登場した時点で先を読むのをやめ、時間を掛けて事件の夜のタイムテーブル的な物を作ってしまいましたw その時間があれば、今頃別の作品をもう一冊読み終えられたところですが;;

 総じて、かなり良く練りこまれた本格推理小説ですが、犯人当ては楽しめませんでした。クイーン国名シリーズとしてではなく、クリスティーの小説だと思って読めばかなり楽しめる本でした。

No.335 6点 愚者のエンドロール- 米澤穂信 2023/03/12 20:15
ネタバレをしております。

 まったく前情報なしで買ったため、シリーズものとは知りませんでしたw 氷菓は名前だけ知っていて、読んだことはありません。これを機に、シリーズを1から読んでいくのもいいですね。

 高校が舞台の話だけあって、青春小説のような、ライトノベル?のような、さわやかな作品でした。ページ数も無駄に長くなく、テンポもよく、一気に読了できました。
 アニメ化されている?のか、二重の表紙になっており、そちらはアニメの絵でした。文章からはアニメのような印象やキャラ付けも若干あるものの、そこまでしつこくないので、アニメ的な小説が嫌いな人でもそれほど抵抗なく読めるかと思います。

 物語の流れは、脚本担当が病気で倒れて解決編がなく未完になっているミステリー映画の解決を試みるというもの。映画製作をしたクラスの人物たちが自説を披露するのですが、その矛盾点をさがして否定する流れです。我孫子武丸の探偵映画のような作中作の展開、バークリーの毒入りチョコレート事件のような多重解決を思い出しましたが、しっかりとあとがきに触れられておりましたw

 私は、カメラマン犯人説はありそうなものだと思いました。それは、過去に似たような発想の推理小説を見たことがあるからでした。ただ、縄の件を失念しておりましたw 縄の件を除いても、「本郷にこの結末は書けない」というレベルでのヒントが多くあり、フェアさを感じました。
 カメラマン犯人説はミステリ映画的には矛盾がないものの、違和感のようなものがのこり、隠された真相によってドンデン返しが起こる…という、多重解決の王道を征くラストなのはよかったです。ただ、隠された真相によるミステリ映画としての出来は悪く、本郷が倒れなくても女帝が動かざるを得ないのも納得ですねw ミステリ映画をこの小説の一番の謎としてとらえた場合、読者からしたらすこしガッカリ…だと思います。

 総じて、非常に読みやすい小説であり、他の作品も読んでみたくなりました。一方で、作中作の映画の結末がどのような物であったとしても、オリジナリティもあまりなく、密室ものとしてもいまいちでした。

No.334 5点 日曜日の沈黙- 石崎幸二 2023/02/22 08:23
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 メフィスト賞受賞作品には、よく"究極"とか"天才"とかいう文字が出てきますねw 
 紹介文には、殺人劇や推理合戦などの文字が書いてあり、また表紙も黒を基調とした重苦しそうな印象のデザインだったため、本の内容の軽さというか明るさに驚きましたw 探偵役石崎と、それを振り回す女子校生ミリアとユリのキャラクターが漫画的であり、ほぼギャグミステリ(ユーモアミステリ?)のノリです。そのため、非常に読みやすく、ほぼ一瞬で読み終えられた気がします。

 メフィスト賞受賞とのことですが、推理小説的にはやや薄味でした。
 殺人劇による推理は楽しむことができません。自殺とのことですし、ミステリになっていませんでした。死んだ人物と死因と凶器による暗示もつまらないですし、それによる推理合戦もやっぱりつまんないです。
 来人の死の真相、究極のトリック、幻の7作目の行方についてが本作品のメインの謎になりますが、これも読者が推理を楽しむ類ではありませんでした。

 総じて、ほぼほぼミリアとユリのキャラクターを楽しむ本でしたw ギャグ(ユーモア)ミステリというと、東川篤哉さんの作品をいくつか思い浮かべますが、そちらはミステリとしてしっかりとしていた(私の読んだ作品においては)のですが、こちらはミステリとして薄味過ぎたのが良くありませんでした。
 とはいえ、楽しく読められるシリーズものを見つけられてよかったです。何作か買って、ページ数の多いミステリや重いテーマのミステリを読んだ合間にこのシリーズを読みたいと思いますw
 関係ない話ですが、ミリアとユリのキャラクターが似すぎていると思います。もうちょっと喋り方や性格に個性を持たせるか、なにかパーソナルデータが欲しいところでしたw

No.333 5点 クリムゾンの迷宮- 貴志祐介 2023/02/15 20:59
ネタバレをしております。

 非常に読みやすい文書で、スリリングな展開のため、ほとんど一気に読了できました!
 前半はサバイバル的な要素が強かったですが、参加者が一堂に会してから別れてから一気にゼロサムゲーム化?してホラーやサスペンス感が強まりました。

 一方で、こういうタイプの王道ストーリーや流れを踏襲しすぎているというか、この作品ならではの個性に欠けるような印象がありました。大友藍は露骨に怪しく、主催者の息がかかっているのはありがちすぎますね。カメラ内蔵義眼は気づきませんでしたが…。

No.332 6点 悪魔はすぐそこに- D・M・ディヴァイン 2023/02/07 21:01
ネタバレをしております。

 大学内の過去のスキャンダルと、現在の2つの殺人事件が発生します。
 主に4人の視点から書かれ、登場人物も多く、またストーリーの大部分は現在の事件よりも過去のスキャンダルに重点を置かれているため、なかなか読みづらさを感じました;; スキャンダルが犯人当てへの鍵になっていることはわかりますが、どうも興味がわかなくて;;

 推理小説的要素について。
 犯人当てのロジックはちゃんとしており、フェア度が高いです。ただ、長編にしてはささやかというか、淡泊というか、もうすこしほしかったところw この作者の作品は、犯人当てに対してのフェア度が高いがロジックは一点集中していることが多いですね。
 犯人当てよりも、意外な犯人、ドンデン返しが持ち味だと感じました。私は頭ではピーターを容疑者から外しておりませんでした…が、やはり犯人が判るシーンでは驚いてしまいました。思えば、ピーターの述懐の「一度父に救ってもらった」や、ピーターの母が手紙を焼いたシーンは極めて重要なヒントでした。読了後、それに気づかず悔しかったですね!

 総じて、読みづらさを感じてしまいましたが、本格度・フェア度の高い作品でした。伏線やミスリードがこまかく多くあり、高水準ではありましたが、欲を言えば犯人を断定するロジックが本全体にあるともっと好みでした。

No.331 6点 黒祠の島- 小野不由美 2023/01/28 13:05
ネタバレをしております。

 ほぼ一つの島の中で物語が完結する推理小説です。クローズドサークルとは異なるかもしれませんが、ある程度の閉鎖空間っぽさが楽しめます。
 現代の時間軸の小説ではありますが、舞台となる島では結構特殊な宗教や因習みたいなものがあり、民俗学ミステリーっぽいです。また主人公に対して排他的な態度をとる島の住民もいるため、雰囲気が異様で良いです。ただ、戦前・戦後を舞台とした民俗学ミステリーよりかはその辺の雰囲気がやや普通?というか、異様さやおどろおどろしい感じは欠けます。現代を舞台とした小説でそれをやるとリアリティがないせいでしょうかね? そのため、前半はやや退屈なページもありました。

 推理小説的要素について。
 まず、麻里と志保が本土の時点で入れ替わっていたという、大きな驚き要素がありました。叙述トリックと呼べるのかどうかはわかりませんが、それに近いような仕掛けでした。
 また、入れ替わりのドンデン返しを考慮した論理的な犯人当てがありました。たいがいの小説は叙述トリックと論理的な犯人当てが両立されていませんが、この作品はそれができていて貴重です。
 私は、麻里と志保の入れ替わりは察することができましたが、そこから犯人を当てることはできませんでした。浅緋の推理はなるほど説得力がありましたが、それは犯人のミスが偶然の不幸も絡んでいるので、読者が推理するには難易度が高いと思います(負け惜しみですがw)。

 総じて、小説の雰囲気がよく、かつ本格度の高い良い推理小説でした。ただ、犯人を当てるには難易度が高すぎると思う点、登場人物紹介がなくアリバイ検証もメモが必須クラスに複雑な点(事件も3~4回は起こっているし)、個人的に序盤が退屈だった点がマイナスでした。
 すごい個人的なことですが、式部と葛木の再開シーンを書いてほしかったのですがw いや、恋人というわけでもないし、ないほうがいいのかな…。葛木についてもう少し描いてほしいですねw

No.330 6点 レーン最後の事件- エラリイ・クイーン 2023/01/12 18:36
ネタバレをしております。

 これまで、レーン4部作を読んできませんでしたが、このたび遂に読破しました!
 気合を入れて読み始めましたが、なかなか殺人が起こらず、読み進めるのに苦労しました;; シェイスクピア関連の話は、あまり興味がわきませんでした…。犯人当てに関してだけ言えば、300ページぐらいがほぼ無駄なページとなっており、前半のシェイクスピア関連のトレジャーハント(?)のような歴史ミステリのようなものが楽しめるか否かがこの本の評価につながりそうですw 私はイマイチ楽しめませんでした。

 推理小説的要素について。
 まず、なんといっても、これまで名探偵として君臨してきたレーンが犯人であるというのは、この本だけでなく、4部作を巻き込んだ大ドンデン返しでしたねw 今では探偵役犯人系統の推理小説もよく見るので珍しくはなくなったのですが、当時はみんな騙されたのではないでしょうか? 実は私は、レーン最後の事件というタイトルから、ある程度メタ的な予想をしてしまいましたw ただ、それは事前にいくつかの探偵役犯人系統の本を読んだからです。
 また、探偵役犯人だけにとどまらずに論理的にそれにたどり着けるようになっているのが、エラリー・クイーンが並みの小説家ではない証拠ですね! 国名シリーズ並み…とは言いすぎかもしれませんが、ちゃんと論理的に犯人にたどり着けるようになっております。私はメタ的にレーン犯人の可能性に気づきましたので、アラーム時計のロジックには気づきました。細かい点は少々逃してしまいましたがw

 難癖をつけるとするならば、手斧で暴れまわるレーンがあまりにもドワーフで、名探偵にそぐわない気がするということですw 壊された時計の時間を狂わせておくぐらいはしそうなものですが…。レーンのセリフである、犯罪者は本質的にみんな愚鈍…みたいなセリフは自己に向けたものかもしれませんが。

 総じて。
 探偵が犯人であるようなドンデン返し系統の小説は論理性が犠牲になるか、叙述トリック一本釣りな作品が多いです。しかしクイーンの作品はちゃんと論理的に犯人を指摘できるつくりになっており、ドンデン返しと犯人当てが両立した良い作品と思います。ドンデン返しと犯人当ては相性が悪く、両立する作品は少ないと思います。
 ただ、もう少し小説全編にわたって犯人当てのヒントがちりばめられていたらもっと高評価でした。前半は好みではなく、やや退屈でした。
 ちょっと厳しめかな?と思いますが6点で!

No.329 5点 鍵のかかった部屋- 貴志祐介 2022/12/29 06:12
ネタバレをしております。

 読みやすくい密室がテーマの短編集です。驚きが大きい物理トリックが多いです。また、最後の1編を除いて、犯人が狙った通りの(偶然の余地がない)密室なのでフェア度が高いです。ヒントも適度に出ています。
 ただ、総じて、密室の謎が明らかになった時の感想は、「それって本当にできるの?」という感じです。物理法則的な話ではなく、私がいまいち想像できないような感じでした。

・佇む男
 なかなか強固な密室です。男の子の目撃者のカーネルサンダース発言から、死後硬直が利用されたことはわかりましたが、私の死後硬直に対しての知識が浅くて本当にできるのか疑問でした。また、寝かせた状態し死んだ人が、死後硬直が解けて座ると、検死でわからないのか?とも思いました。

・鍵のかかった部屋
 これも、部屋内部の気圧を高めたことだけはわかりましたw なぜ気圧が高まったのか、またガムテープを静電気で張り付けたか…などは一切わからなかったのですが。

・歪んだ箱
 やや、トリックのために用意した家といった感じですが、欠陥住宅にしたことはなるほどと思いました。ちょっとバカミスっぽいですね。

・密室劇場
 全体的にユーモアミステリのノリがあります。すこし毛色がちがう作品ですが、榎本と純子のあらたな一面が見られたようで良かったです。純子はその前の歪んだ箱で、大分アホっぽくなりましたがw

No.328 6点 月明かりの男- ヘレン・マクロイ 2022/12/19 23:57
ネタバレをしております。

 精神科医ウィリング博士が探偵の推理小説です。精神科医だけあり、容疑者の心理面の分析の文章がよくでます! また、私の想像よりも大分若いのか(?)ほのかな恋愛要素もありましたね!
 また、時期が戦時中なためか、途中からスケールの大きい話になっていきました。

 本格色が強い作品でした。心理実験の途中の犯行であり、犯人にとってイレギュラーな要素がありました。また、ホールジー君が夢遊病者?なのかてんかんなのか、それも読者や犯人にとってイレギュラーな要素で、複雑な犯行現場でした。その辺は、なんだかカーみたいですね。
 また、3人目撃者が居ながら、3人ともまるで違う特徴の犯人を証言しました。これは非常に不可解で、興味をそそられました。

 以下、難癖部分。
 3人とも食い違う証言や、ホールジーの要素は、カーならば飛びっきりのトリックやドンデン返しに利用されるところですが、この作品ではあまりそういったことがありませんでした。なので、その部分では残念でした。あくまで各登場人物の心理面のヒントのみでした。物的証拠ではないので、純粋な犯人当ての決めてにはならず、また犯人がこさえたトリックもほとんどなかったです。
 ラスト、論理によって犯人を追いつめる展開があり、犯人を一人に断定できる作品ではあります。しかし、犯人の証言の地理的な矛盾については地図が添付されていないため非常にわかりづらかったです。また、タイプライターの問題は知識がいる事ですし、現在の私たちではちょっと難しいかと思います。

 総じて、本格愛を感じる作品ではあったものの、証言の食い違いは魅力的な謎にならず、大きなトリックもなく…ちょっと地味な印象を持ちました。各登場人物が隠している謎と、その背景が明かされている感じはアガサっぽくて、その部分が好きな人はもっと高評価をつけると思います!

No.327 5点 彼女らは雪の迷宮に- 芦辺拓 2022/12/11 10:11
ネタバレをしております。

 読みやすい推理小説を求め、クローズドサークルに惹かれて買いました(笑)。小説中にもクローズドサークルファンの話が出てきますが、あそこまでクローズドサークルにこだわりがないものの、私も大好きです。そして、この作品もまた読みやすかったです。
 ただ、この作品はただのクローズドサークルではなく、殺人や死体も出てこないし携帯電話もつながるといった、お約束を破った作品です。殺人が起こらないだけあって、雰囲気は明るく、ちょっとしたユーモアミステリのようです。反対に、殺人が起こらないのでサスペンス性には乏しいです。

 推理小説部分について。
 推理小説のプロローグほど信用できないものはないですね(笑)。プロローグを信じるなら、クローズドお約束の全滅なのですが、シリーズキャラの新島ともかが死ぬはずもなく…。
 私は、状況と雰囲気から新島ともかが偽物だとわかり、そこから結末をいろいろ妄想しておりましたが、まんまと作者の手のひらの上で踊らされた形でした(笑)。作者が本当に隠したかった本命叙述トリック…を隠すための小粒叙述トリックにすぎませんでしたね。
 この小説一番の大きなトリックである、映画セットを使った場所移動は面白かったです。前々から私が妄想している、こんなトリックがあったらいいな~と思うものの一つには映画セットを利用した叙述トリックがありました(笑)。この主観人物を運び、いつの間にか場所を移動させているが主観人物は気づかづに読者に伏せられるトリックは、現実的に可能なのかすこし疑問ではありますし、似たような趣向のトリックを他にも読んだことがあります。

 一向に殺人が起こらず、この小説はどういうふうに着地するのだろう…と思いきや、すでに大トリックは起こっていました。読みやすかったし、驚きもありました。ただ、もう少し見せ方が良かったら、もっとびっくり仰天させられる小説になったかもしれないという気もします。また、結果、過去に二人殺している犯罪を犯した集団は、結局罰が与えられなかったのはモヤモヤしたかもしれません。

No.326 6点 盗まれた街- ジャック・フィニイ 2022/12/05 00:22
ネタバレをしております。

 書評を書いたと勘違いしておりました(笑)。ちょっと前に読んだため、少々忘れてしまいました…。
 サスペンス・ホラー・SFの要素が入っておりますが、どれもしつこくなく、最小限の説明でテンポが良く、本題に入るのも早かったです。非常に読みやすくスイスイページが進みました。
 初めて成り代わる前の莢人間?を見つける→ベッキィのほぼコピーを見つける→マニーが論理的な解決?を主人公に提示する…主人公や街の住民などの集団的な妄想や暗示…?→莢人間の指紋がないことの説明ができない、という流れが非常に面白かったです。一度、超常現象など化学で説明できるバカバカしい!みたいな展開ってありがちですよね(笑)
 主人公たちが街に帰ってきたとき、思ったよりもずっと状況が悪く、街の人間すべてが敵になったかのような状態ですね。バットロングやマニーもすでに敵だったときの絶望感ったらないですね(涙)。

 知人が入れ替わったように思うという妄想が実際にあるのですね! 勉強になりました。

No.325 7点 黒牢城- 米澤穂信 2022/12/04 10:15
ネタバレをしております。

 戦国時代のミステリです。荒木村重が信長を裏切って籠城したころ。安楽椅子探偵は牢屋に入れられた黒田官兵衛。大河ドラマの軍師官兵衛を見ていたのためか、非常に読みやすくすいすいページが進みました!
 荒木村重というと、創作物では、有能ではあるが裏切り者で、妻よりも茶器を優先させる非道な人物! 果ては自分だけ逃げた臆病者! みたいに書かれがちだと思います。しかし、この作品の荒木村重は頭が良く、一個人の武もあり、落ち着きもあり…なんだかかっこよく描かれております。新鮮でよいです。
 時代小説としても楽しめるレベルだと思います。籠城の雰囲気はこれまでみた歴史小説ではあまり見てこなかったので、これも新鮮でした。籠城開始直後はよく従っていた将兵たちが、援軍が一向に来ないことで疑いを持つようになって、徐々に村重も追い詰められていきますね。

 推理小説部分について。
 大きな事件は3つ起こり、いずれも不可能犯罪の連作短編です。最後の1つは、連作短編特有の物語全体を絡めた謎を意外な真犯人(?)、安楽椅子探偵だった官兵衛の真の狙いなどが明かされます。
 3つともトリック自体はそれほど独創的な物でもありません。ただ、伏線やミスリードなど、本格度が高いミステリとして楽しめるのに、変にミステリめいていなくて、それでいて歴史小説に大きく偏っていることもなく、それが非常にバランスがいいです。伏線の張り方が歴史小説によくあるちょっとしたことが伏線になっていたり、読んでいてとても自然でした。

 私は、節々に出てくる千代保(だし)が露骨に怪しいと思いましたが、各3つの事件の伏線を回収できませんでした;;

 総じて、歴史小説としても、推理小説としても楽しめる一冊でした。同作者の折れた竜骨などもそうですが、推理小説以外の部分でも高レベルなところが素晴らしいです。推理小説家としての腕と小説家としての作品の幅がどちらも高いレベルでした。ただ、単純に本格推理小説としてみた場合、3つの事件の謎が既存の推理小説を凌駕するものでなかったため、7点としておきました。

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ミステリ初心者さん
ひとこと
 有名な作品をちょこちょこ読んだ程度のミステリ初心者です。ほとんど、犯人やどう殺したかを当てることができません。


 高評価・低評価の基準が、前とは少し変わってきました。
 犯人を一人に断定で...
好きな作家
三津田信三 我孫子武丸 綾辻行人 有栖川有栖 鮎川哲也
採点傾向
平均点: 6.18点   採点数: 404件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(17)
三津田信三(14)
歌野晶午(13)
綾辻行人(11)
エラリイ・クイーン(11)
東野圭吾(10)
東川篤哉(10)
鮎川哲也(10)
西澤保彦(9)
ジョン・ディクスン・カー(8)