皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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メルカトルさん |
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| 平均点: 6.03点 | 書評数: 2071件 |
| No.2071 | 5点 | 池魚の殃- 椹野道流 | 2026/09/11 22:22 |
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| O医大法医学教室の大学院生・伊月崇と指導教官の伏野ミチルは、何者かによって拉致監禁された。現場にはミイラ化した腕が残されていたのだが……。誰が何の目的で監禁したのか。ミイラは誰の腕なのか? 魅力的なキャラクターとリアルな医学知識で描く、法医学教室のメディカルミステリー。
Amazon内容紹介より。 これまでは法医学教室に持ち込まれた遺体を解剖し、死因を特定したり凶器を探ったりしていたミチルと伊月が、本作では事件の当事者になるのが目新しいところです。そして何者かの右腕のミイラと云う謎が現場に残されます。警察の捜査はほとんど描かれませんが、その代わり今回は伊月とその親友で刑事の筧、それにミチルを加えた三人の共同生活がかなり克明に描かれています。他のキャラも相変わらずの個性が際立っていて共感が持てます。 ただ捜査側の描写がほぼない為、二人を監禁した犯人が唐突に告白を始めます。この辺りはじりじり犯人に迫っていくアプローチは手法として取っていないので、いささか淡白に感じますね。どうしても舞台が法医学教室なので限界があるのでしょう。探偵が活躍して、推理し解決する典型的な本格ミステリとは一線を画しています。だからでしょうか、読み易いのは良いですが、読み応えがやや足りないと感じてしまうのは私だけですかね。しかし物語としては面白いのは間違いないです、ただ見せ方がちょっとどうかなと思います。 |
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| No.2070 | 4点 | “菜々子さん”の戯曲 小悪魔と盤上の12人- 高木敦史 | 2026/09/09 22:34 |
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| 高校に入学した俺は、文芸部に強制的に入るように脅されちまった。いきなりの大ピンチに颯爽と現れたのが“菜々子先輩”だった。心奪われた俺は、いつの間にか彼女の言葉に誘導されて――この恋は屈辱の味がする。
Amazon内容紹介より。 前作でも書きましたが、どうでも良い描写が多すぎるし、肝心な所の説明不足が目立ちます。特にミステリで言えば解決編が端折り過ぎで、全然納得感がありません。日常の謎が主なテーマですが、その規模が小さすぎて小説自体が矮小化されている様にすら思います。恋愛面にしても中途半端で、何とも言い様がありません。 最大の事件である美少女盗撮が物語全体に横たわります。これもトリックと呼べるほどのものではなく、これが事件の真相かと思うとかなり腹が立ちます。密室からの脱出は半ば予想通りでしたが、これはちょっと気の利いた物だったので、この点数です。これが無かったらショボい暗号の謎も含めてもっと低評価にせざるを得なかったでしょうね。 更なるシリーズ化を断念したのも頷けます。 |
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| No.2069 | 5点 | 失踪HOLIDAY- 乙一 | 2026/09/07 22:23 |
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| 再婚した母が死に、裕福な義父と屋敷で暮らしていた中学2年生のナオ。
迎え入れられた意地悪な継母との喧嘩のすえ、ナオは家出を決行する。 屋敷の離れに住む使用人・クニコの部屋にむりやり居座り、 家族の様子を観察してやることにしたのだ。 ……けれど血の繋がらない家族には狼狽した様子もない。 ナオは狂言誘拐を画策し、家族に身代金を要求するが――(「失踪HOLIDAY」)。 Amazon内容紹介より。 『しあわせは子猫のかたち』は他の短編集で読みましたが、内容はさっぱり忘れていました。なので再読して良かったと心から思います。こんな秀作を忘れていたなんて考えられませんよ。自分の記憶力の無さに絶望です。これぞ乙一と言っても過言ではない切ないホラーとミステリの見事な融合。素晴らしいです。 一方中編の表題作は同じ人が書いたと思えない出来の悪さ。全編物語のテンポが悪く緩慢なペースで遅々として進まない展開と、びっしりとした文字の羅列にページがなかなか進みません。やっと辿り着いた結末にはまあ納得出来ましたが、驚く程のものではなくちょっと残念でした。主人公の少女にも感情移入出来ず、個人的にとても高評価は出来ません。 |
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| No.2068 | 5点 | 吸血鬼カーミラ- シェリダン・レ・ファニュ | 2026/09/05 22:19 |
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| 幻想文学の古典、57年ぶりの完全版新訳
1872年に発表され、ブラム・ストーカー『ドラキュラ』にも影響を与えた怪奇小説。レズビアニズム色の濃密な作品でもあり、「百合族」のバイブルともされる本作が、平井呈一訳以来の完全版として美麗装幀でよみがえる!にしざかひろみによるカバー画・挿画。 Amazon内容紹介より。 『吸血鬼ドラキュラ』より若干楽しめました。しかしこちらも児童書の為か、あまり過激な表現は控えられている気がします。それでも、このカーミラの存在を知れただけでも話のネタにはなりそうなので、まあ良かったのではないかと思います。百合族がどうこうと云うのはそれほど感じさせませんが、美女たちが主役であるのは間違いありません。 ドラキュラに似ているのは確かです。ではなくて、ドラキュラがカーミラに似せた訳で、その意味で歴史的価値はあったのでしょう。本作で既に吸血鬼の弱点や生活様式なんかが確立されていたのも貴重だと思います。吸血鬼と言えばドラキュラと世間では思われていますが、実は本家では女だったというオチも個人的には面白かったです。 |
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| No.2067 | 5点 | 吸血鬼ドラキュラ- ブラム・ストーカー | 2026/09/05 22:03 |
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| 中世ヨーロッパの伝説から忽然としてよみがえった恐るべき吸血鬼の跳梁か? ヨーロッパの辺境トランシルヴァニアに、無気味な謎に包まれて住む城主ドラキュラ伯爵の秘密。昼は眠り、夜は目覚め、永遠の生命とともに人血を求めてさまよう呪われた吸血鬼の宿命。現代の恐怖と怪奇を描いて百万読者の心胆を寒からしめる、名作怪異譚!
Amazon内容紹介より。 最初から最後まで漫然と読みました。新訳のせいか日記や文書等が出て来なくて、かなり端折って脚色されていると思われる為、全然怖くありませんでした。雰囲気が伝わって来ず、むしろポップな読み物として翻訳されています。やはり平井呈一訳で読むべきだったかも知れません。ドラキュラ伯爵そのものは想像していた通りでしたが、あまり存在感が感じられませんでした。 全般的に平板で盛り上がりに欠けると云うか、これと言って特筆すべき点が見当たりません。まあ私の読解力などこの程度なので、これを読んでいる方は是非編集版ではなく、完全版の作品で楽しんで頂ければと思いますね。そうすれば恐らく本作の本当の魅力が分かるのではないでしょうか。 |
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| No.2066 | 6点 | 夜宵- 柴村仁 | 2026/09/04 22:38 |
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| 大晦日までの僅かな期間にだけ立つ「細蟹(ささがに)の市」。そこで手に入らないものはないという。 ある者は薬を。ある者は行方不明の少女を。ある者はこの世ならぬ色を求めて、細蟹の市へと迷い込む。 異形の者たちが跋扈(ばっこ)する市で、市守りのサザが助けたのは記憶を喪った身元不明の少年・カンナだった。呪われた双子の少女は唄う。「ああ、不吉だ、不吉だ」「おまえがもたらす流れ、その循環は、混沌を呼ぶわ」……
Amazon内容紹介より。 時は現代、所は石骨地区の湖上の小島。細蟹の市に様々なものを求めて訪れる者達。しかし、ここには普通の人間が入り込むと魔に魅入られその後とんでもない目に遭うと言われている。と云う設定で完全なホラーですが、文章は飽くまで詩的で妖しく美しいです。一方でグロ表現が若干目立ち、インパクトを与えます。 個人的には単行本の二段組みで構成されている一の経、二の経、四の経がミステリ要素もあり、大変感銘を受けました。と言うと感動的なラストかと思われるかもしれませんが、そうではなく非情な結末が恐ろしかった訳です。 どこかネジの外れた双子の少女、隻脚の細蟹様、市の警備役のサザ、記憶障害を負ったカンナ、カンナに心を寄せるまことら多彩な人ならざる者や人々が織り成す奇矯なドラマに酔いしれるべき、風変わりなホラー小説の佳作だと思います。 |
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| No.2065 | 6点 | 009 RE:CYBORG- 神山健治 福島直浩 | 2026/09/01 22:38 |
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| 名作「サイボーグ009」を現代に甦らせた劇場アニメ「009 RE:CYBORG」。神山健治監督によるオリジナルストーリーを完全ノベライズ! 小説ならではの描写力で、ストーリーとキャラの心情をさらに深く描き出す!!
Amazon内容紹介より。 これは子供の読む本ではないですね。正直舐めてました、もっと娯楽性の高い大人も子供も楽しめる作品かと思っていましたが、意外とハードで小難しいです。“彼の声”を聞いた者はテロを計画すると言われていて、他にも“天使の化石”や“思考する脳”など曰くありげなパーツが出て来ます。勿論バトルシーンやアクションにも力を入れていますが、どちらかと言うと、正義とは何か、人間が生きるとはどういう事なのか等を問いかけている様です。 サイボーグ戦士の中ではやはり009の島村ジョーが主役です。人間関係としては彼と002のジェット・リンクとの確執が露わになって、しかし最後には二人の友情とサイボーグ戦士たちの結束の強さが克明に描かれて感銘を受けました。アニメを観て育った人にとっては違和感を覚えるかもしれません。まあ、ゼロゼロナンバーサイボーグが解散した後の物語なので新味を出したかったのはあるでしょうね。 |
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| No.2064 | 5点 | 古い骨- アーロン・エルキンズ | 2026/08/31 22:18 |
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| 導入部は大した説明もなく登場人物が出て来て、それもかなりの人数に上る為初手から誰が誰だか分らない状況に陥りました。どうでもいい会話が続き、とてもミステリとは思えません。このゴタゴタが落ち着くのはスケルトン探偵であるギデオンが登場してからでした。やっと興味が湧いてきました。
それにしても展開が地味で、これと言ったトリックもなく、本格ミステリとしての魅力に欠ける印象を受けます。 解決編ではまずまずのロジックを披露しています。ただバラバラだったはずの古い骨の理由が曖昧になっているのが気になりました。これがアメリカ探偵作家クラブ賞受賞作とはねえ。アメリカの本格ミステリもこの程度かと思わざるを得ません。国内の本格ミステリの新作をボチボチ読んでいる身にとっては、いささか物足りないと感じました。余計な描写も結構ありますし、お世辞にもテンポ良く読めたとは言えませんね。 |
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| No.2063 | 7点 | 楽園- 夕木春央 | 2026/08/29 22:11 |
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| 亡き両親から不動産を譲り受けた康之は、失踪した賃借人・海原の遺留品整理の際に、群馬の山奥の謎の物件の存在を知る。そこは、切り立った岩壁に囲まれた、「楽園」と呼ばれる奇妙な場所だった。恋人の沙織と一緒にそこを訪ね、探索をはじめた康之たちは、すぐに六人の“住人”に拿捕された。脱出のための条件はーー
Amazon内容紹介より。 三部作の最後とあってか、夕木春央力が入り過ぎじゃない?読むこちらまで肩に力が入ってしまったではありませんか。前二作に比べて何だか読み難くなっているのは気のせいでしょうか。特に序盤がヌルくてこれってそんなに面白いのかなあと思いながら読みました。これじゃせいぜい6点止まりだなって感じでしたね。本格ミステリとしても、二つのトリックは斬新さがなく平凡であまり感心しません。 しかし、終盤と言うかラストの畳み掛ける展開に唖然呆然。そうだったのかと、あれこれ腑に落ちる思いがしました。結局騙された私は作者の掌の上で踊らされていただけだったとは、はぁ。これは受ける筈だと深く納得しました。評点ももしかしたら今後考え直して8点にするかも知れません。無論傑作『方舟』には及ばないものの、『十戒』よりも面白かった気はします。 |
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| No.2062 | 7点 | 少女は殺人の夢を見る- 阿津川辰海 | 2026/08/27 22:16 |
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| サークル<月夜のお茶の会>の読書会に参加した俺・獏田格は課題本のミステリー小説に酷似した「事件」に巻き込まれる。そこは二年生の先輩・夢見灯が作り出した「夢の世界」で、謎を解かなければ俺は現実に戻れない⁉ カー、クリスティー、クイーン、そして……。本格ミステリー界の若き旗手が先人たちを徹底オマージュ。
Amazon内容紹介より。 あとがきを含めて、この小説に載っている本を全て読んだ人は、正真正銘のミステリマニアに認定されるべきでしょう。それ程本格ミステリに淫した作品です。各名作のオマージュである夢の中の事件は勿論注目に値しますが、そこに至るまでに<月夜のお茶の会>で交わされるミステリ談議が楽しく、マニア度の高い人程より楽しめる事は間違いありません。 最初は現実に起こる事件ではない為、ある種の緊張感に欠けると感じましたが、読むごとに慣れました。私の一押しは法月綸太郎の『死刑囚パズル』をもどいた『女死刑囚パズル』です。本家を超える勢いのホワイダニットには唸らされました。趣向を変えた『三階の窓』もリレー小説のぎこちなさを再現しながらも、その仕掛けに深く肯きました。ただクリスティーの『そして誰もいなくなった』へのオマージュは正直ややこし過ぎて、私の頭では付いて行けませんでした。情けないことです。 |
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| No.2061 | 8点 | 完全密室のマトリョーシカ ミステリ・イン・ザ・ミステリ - 黒田研二 | 2026/08/24 22:23 |
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| ミステリ作家・猪龍錠を父に持つ「朔史」が悪夢から目覚めた時、そこはエッシャーの絵画が無数に飾られた父の別荘だった。父のミステリ作品を愛する縁者たちと、予期せぬ訪問者を前に猪龍錠が語り始めたのは、新作小説のプロットーー
謎解きを迫る父の挑発と、繰り返し襲い来る悪夢のうちに谺する母の断末魔の「迷宮」の果てで、朔史が辿り着いた驚きの真実とは!? Amazon内容紹介より。 黒田研二の十五年ぶりの新作ミステリ。うーん、実に面白い。しかし、飽くまで個人の感想です。高評価を信用して、裏切られたーとなる可能性もあります、責任は取れませんので悪しからず。まず問題は語り手の「僕」こと朔史の存在。多くは語りませんが、読み始めれば直ぐにああ、あれねと頭にインプットされると思います。次に朔史の父親で超人気ミステリ作家の父親猪龍錠が語る新作のプロット。物理トリックを中心にした三作品ですが、これが余り世評が宜しくないです。子供騙しとかの意見もある位です。しかし私には、特に最後の作品が刺さりました。トリックは兎も角物語自体が面白いのです。これも好き嫌いがかなりはっきりするものと思われますが。尚、本人によるらしき図解が挿入されていますが、絵が上手いしそれ以上に字が達筆です。まるでお手本のような美しい字で吃驚しましたね。 そして終盤の荒唐無稽な展開。この真相を予想出来た読者は恐らくいないでしょう。しかし、ここが賛否両論を生む最大の原因となり得ます。果たして、素晴らしいと拍手するのか、壁に叩き付けたくなるのか、それはあなた次第です。ただ言えるのは本書が問題作であるのは間違いないこと。無茶苦茶な話が好きな私は勿論賛成派ですが。 |
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| No.2060 | 7点 | 処刑館殺人事件- 西式豊 | 2026/08/22 22:21 |
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| 群馬県北部の山奥に建つ豪奢な洋館「岨景館」に招かれた、ミステリ作家養成講座出身の男女6人。恩師である宇宿部彬の招集に応じて、売れっ子から新人、デビューできていない者まで、久しぶりに同期全員が集まった。宇宿部の到着を待たずに彼らが敷地へ入ると、入口の跳ね橋が上がり外界から隔絶した閉鎖空間となってしまう。やがて〈黒衣の処刑人〉により、ミステリ作家たちは自身の著作を彷彿とさせるやり方で、一人また一人と殺害されてゆく――。
Amazon内容紹介より。 又してもクローズドサークルもの。しかし、閉じ込められたミステリ作家達6人はよく書き分けられており、読み応えもあります。どこか違和感を覚える部分はありました。しかしいつもの館ものね、と思ったら大間違いです。連続殺人事件が完成され、一応の終結を見てからが本番です。まだまだページ数が残っていますからね。 目新しいトリックはありませんが、解決編ではかなり入り組んだ仕掛けが施されており、瞠目させられました。一見典型的な館ミステリですが実は・・・。という訳でこれは巷に溢れる本格ミステリに一石を投じる、新たな挑戦と受け止めるべき作品なのだと思いました。いやー、それにしてもネタバレせずに書評を書くのがこれほど難しいミステリもなかなかないですよ。 あとどうでも良いですが、作中で「他ありません」と言う表現が多用されていますが、「他なりません」の間違いではないでしょうか。 |
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| No.2059 | 6点 | さよなら、ムッシュ- 片岡翔 | 2026/08/18 22:30 |
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| 小さな出版社で校正の仕事をしている森星太朗は、幼いころ他界した作家で母の文子が残してくれたコアラのぬいぐるみを大事にしていた。
ムッシュ、と名付けられたそのぬいぐるみは、母が亡くなったその日、なんと突然しゃべりだし、以来、無二の親友になっていた(もちろん、世間には内緒のままにして)。 そんなある日、しゃっくりがとまらなくなった星太朗は、自分が母と同じ死に至る病に罹っていることを知ってしまう。ムッシュは、星太朗に思いがけないある提案をした。 温かで、名付けようのない思いに満たされる感動作。 Amazon内容紹介より。 面白かったけれど、残念ながら泣けませんでした。感受性の強い読者ならまず泣くでしょう。感動はしましたし勉強にもなりました、こんなんで宜しいでしょうか。それにしてもしゃっくりっていうのは厄介な上に、死に至る病が隠れているサインの場合があったとは、怖いですねえ。 本作は幼くして母を亡くした森星太朗と、喋ったり動いたりするコアラのぬいぐるみの一種の友情を描いています。この二人の掛け合いが楽しくも切ない、心温まるストーリーです。チョイ役として登場する女子達にもそれぞれ味があり、印象に残ります。その中でも夢子と看護師の花本さんが名バイプレイヤーぶりを発揮していたりします。 しかし、もう途中からムッシュの存在がぬいぐるみとは思えなくなってくるのが何とも言えません。完全に人間としての人格を持っているとしか考えられなくなりますね。勿論感情移入するのはやはり星太朗でしょうけど。死の病に冒されながら目標に向かって前に進もうとする姿が、痛々しくなく描かれているので、ある意味安心して読み進められます。 |
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| No.2058 | 6点 | 人間溶解- 森村誠一 | 2026/08/17 22:15 |
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| 粘着力を帯びた不気味な液体はしきりに瘴気を立昇らせていた…。究極の完全犯罪を目論む表題作をはじめ、満員電車の人間関係の暗部を映す『殺意』など、日常の中のなにげない恐怖が滲み出る傑作短編集。
Amazon内容紹介より。 森村誠一の登録された作品一覧を見ると、殆どが本格なのね。という訳でジャンルは一応ホラーとしましたが、サスペンスやミステリ等が混在している為、「分類不能」か迷いました。しかし解説を読んでまあホラーで良いかなと考え直しました。全体的にトーンは暗く、意外な結末があるものが多く、しかも一々読み応えがあるので、『殺意』以外は結構長く感じられました。 内容は、居直り強盗と主婦のやり取りや痴情の縺れ、美少女に耽溺してしまった男の末路、樹齢300年と言われる楠を伐採した後に訪れる惨劇、有能で将来を約束された男を殺害しようと企む三人の男女など様々で、流石の抽斗の多さ幅広さを見せています。いずれも追い込まれた人間の心理がよく描かれており、短編ごとに目先を変えているので、読んでいて飽きることはありませんでした。どうでも良いけど全て昭和30年代から60年代の作品ですが、女性の名前が○○子ばかりなのが今では不思議に感じられます。 |
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| No.2057 | 6点 | 三角の距離は限りないゼロ - 岬鷺宮 | 2026/08/15 22:20 |
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| ネタバレをしています。
人前で「偽りの自分」を演じてしまう僕。そんな僕が恋したのは、どんなときも自分を貫く物静かな転校生、水瀬秋玻だった。けれど、彼女の中にはもう一人――優しくてどこか抜けた少女、水瀬春珂がいた。 一人の中にいる二人……多重人格の「秋玻」と「春珂」。彼女たちの秘密を知るとき、僕らの関係は不思議にねじれて――これは僕と彼女と彼女が紡ぐ、三角関係恋物語。 Amazon内容紹介より。 二重人格の転校生のヒロイン秋波に片思いし、春珂とは親友になると言うややこしい三角関係の陥る主人公の「僕」こと高校生の矢野。成程これは新しいパターンじゃないでしょうか。その目新しさ引き摺られてテンポよく読み進められました。 秋波は勉強も出来てスポーツも万能な、ちょっとクールな少女。一方もう一つの人格の春珂は控えめで自分に自信がない。この二つの人格の入れ替わりを知っているのは矢野だけ。彼はそれを他人に知られない為二人(特に春珂)をサポートします。 しかし上手く行かないもので、矢野が好きなのは秋波なのにどうやら春珂の方に想いを寄せられている様なのです。その辺りのジレンマに悩む矢野の内面がよく描かれています。ラノベらしいラブコメな雰囲気はあるものの、ちょっと切ない三人の心の揺れ動きが読みどころですかね。秋波の出番がやや少なく、その点少々残念ではありましたが、最後でヒロインらしさを発揮しそれを解消、キッチリと役割を果たしました。彼女の過去に何があったのか等気になる所はありますが、それは次巻以降という事でしょうね。 |
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| No.2056 | 6点 | 見晴らしのいい密室- 小林泰三 | 2026/08/13 22:30 |
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| タイトルから想像される様な本格ミステリの短編集かと思っていたら、痛い目に遭いました。確かに表題作は素晴らしかったと思います。通常のミステリにない、○○オチと異次元の解決法に吃驚しました。続く『眼を擦る女』もなかなか面白い趣向で、SFというよりホラーに近い内容です。この二作を読んだ時点で7点は堅いかと思いましたが、残念ながら残りの5篇(『探偵助手』以外)はハードSFであり、理屈っぽいものが多く、SF慣れしていない私には理解不能と言うより理解を放棄したいものに近い感想を抱き、難解と感じました。
中には不毛なトークバトルを繰り広げる作品が含まれており、特に『囚人の両刃論法』はジレンマを論じ、『忘却の侵略』はシュレディンガーの猫を『未公開実験』はタイムマシンを扱っています。タイムマシンを「タイムマスィ―――ン」と連呼しかなりウザいです。結局表題作は何だったのかと云う位、これでもかとハードSFの連打となっており、私の欲求は満たされませんでした。本作を本格ミステリだと勘違いしている方には期待を裏切る結果になると思いますね。 |
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| No.2055 | 5点 | 月光とアムネジア- 牧野修 | 2026/08/11 22:09 |
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| レーテ性認知障害症候群。ある日突然、直径数キロメートルから数十キロの愚空間と呼ばれる場が生じる自然災害<レーテ>。愚空間に入った人間は、ほぼ三時間ごとにその記憶を失い、長時間その中に居れば永久的な記憶障害を起こす。この愚空間に逃げ込んだ謎の暗殺者「月光夜」を元殺人課の刑事である他山が追う物語。
ちょっと難解なホラー風のファンタジーです。牧野修は病を扱った作品が多いけれど、今回は「月光夜」と呼ばれる人間の頭脳に次々と憑りついていく生物なのか何だかよく分からない存在を追って、県警の刑事達がバトルを繰り広げながら、命懸けのミッションを遂行していくというストーリーです。途中、そこはもっと詳しく書いてくれないと、と感じる説明不足な点が幾度かあり、やや不親切だと思いました。ラストはいきなりテイストが変わり、ああっと叫びそうになる間もなく呆気なく終わりました。 |
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| No.2054 | 7点 | 本を読むのが超速い人の頭の中ってどうなってんの殺人事件- 白井智之 | 2026/08/10 22:13 |
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| 殺人計画を立てる男たち、宇宙人を監視する小学生。
本好き刑事が挑む不可解な殺人の真相は? 前代未聞のA7サイズ本格ミステリ! Amazon内容紹介より。 小さい、小さすぎる!掌にすっぽりと収まるサイズの単行本とはねえ、こんなのは初めてです。しかし、それには訳があります。タイトルの長さにも勿論。その事実を知った瞬間、この小さな本が凄く愛おしく感じられました。短い割には中身がぎゅっと詰まっており、ちゃんとした本格ミステリに仕上がっています。本好きの刑事だからこそ解けた謎の解答は宇宙人を監視する小学生の証言を聴いた後に訪れます。謎が解けた時にはささやかなカタルシスが得られました。 尚、本商品は立ち読み対策の為か、透明のビニールでキッチリと梱包されており、慎重に剥さないと本を傷める可能性があるので注意が必要です。カッターで優しく切り目を入れて下さいね。 |
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| No.2053 | 6点 | 最後の一行 black- アンソロジー(出版社編) | 2026/08/09 22:22 |
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| 市塔承「プカプカ島」
言語をめぐる冒険譚。 伝染病を治癒する卵を産み落とす鳥を追い、一行は島へと向かうーー。 歌野晶午「邪魔者」 仲の良い母娘を襲った悲劇。 愛憎の物語が迎える、戦慄の幕切れーー。 麻耶雄嵩「雷鳴と稲妻」 「曰く」が集まる山間のペンション。 銘探偵メルカトル鮎の犯人当てが導くのはーー。 東川篤哉「そして世界がひっくり返る」 『黒月ノ輪熊の会』を主催する蔵持金蔵の別荘で殺人が起こる。 しかし犯人の条件に合う者は一人もいない......。 Amazon内容紹介より。 内容は上述の通りです。補足すると、『プカプカ島』は船長、副船長、医師の三人が先住民の言葉に響きを見出し、その意味を次第に解明して行きます。ある程度話が通じた後に起こった意外な結末。 『邪魔者』は成程のタイトル。そう来るのかと読後唖然。歌野晶午らしい作品だと思います。 『雷鳴と稲妻』はメルカトル鮎が大活躍。既に真相を見破っているのに勿体付けてます。しかし最後は捻り過ぎてまさかの結末が。 『そして世界がひっくり返る』はこの中では一番面白かったですね。容疑者には全員共通点があり、それを逆手に取っての犯人のある行動が予想外の展開に。クローズドサークルの中での伏線回収とロジックがお見事です。 全作に言えるのは、最後の一行と云うより、最後の数行でしょう、反転を味わえるのはって事です。最も異色だったのは市塔承ですが、面白かったかというとそうでもない感じでした。正直麻耶雄嵩に期待したのですが、ちょっと無茶したなと思いますね。 |
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| No.2052 | 6点 | 水上都市の冒険- 島田荘司 | 2026/08/08 22:21 |
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| 惜しい。6点か7点で迷いましたが、最後の書下ろしが謎がやや強引だったのが気になり、評価が落ちました。しかし、御手洗潔ファンは必読の書だと思います。御手洗くん中学生の時の事件簿で、謎の規模は小さいものの全体的にまずまずの好篇が続き、昭和30年代の横浜の雰囲気が肌で感じられます。又少年少女の個性が際立っており、特に鈴木えり子の別れ際の「さみしいよー」の台詞がジーンと来ます。
私の一番のお気に入りは『火事マニア』。他は江口くんの一人称で語られますが、これに限ってはえり子目線で描かれています。途中で事件の大筋は見えて来ますが、容疑者の野本君が頑なに口を閉ざす気持ちが分かり過ぎて、うーんそうだよなと同情を禁じ得ません。他は正直どれも平均的な出来で、事件の規模が小さいので、あまりドラマティックとは言えません。が、少年少女達の揺れ動く心情が切なく描かれており、本格ミステリでありながら青春ミステリの一面も見逃せません。それにしても、この頃から御手洗潔は警察を信用していなかったんですね。いや、それは幼稚園の頃からか。 |
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