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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 運河の追跡 |
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アンドリュウ・ガーヴ | 出版月: 2014年07月 | 平均: 5.50点 | 書評数: 2件 |
論創社 2014年07月 |
No.2 | 6点 | クリスティ再読 | 2024/11/16 13:26 |
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ガーヴでも「ツートップ」と併称される「メグストン計画」「ギャラウェイ事件」に挟まれて刊行されたはずなのに、なぜか邦訳されなかった作品が、論創社からやっと2014年に出版された。
不思議といえば不思議。まあ後半がイギリスの運河を舞台の追いかけっことなるので、運河や閘門・主人公たちが使う「ナローボート」と呼ばれる個人でレンタル可能なボートなどの、特殊な知識が翻訳に必要だった、というような事情で敬遠されたのかもしれない。ガーヴってそういうデテールの作家だもんね。 ただし、今改めて読むことになって、良かったのかな?と思うこともある。本作の悪役は会社経営者の夫。優秀なセールスマンだが、モラルを欠いた行動をためらわない傾向があり、妻で主人公のクレアは常々危うさを感じていた。社員に対するあまりの仕打ちに憤慨したクレアは、一歳の娘を連れて別居するが、縒りを戻したい夫はなんと娘を誘拐して取引条件にしようとする... もう典型的なモラハラ夫というか、ガチのサイコパスなんだよね。確かに優秀なセールスマンで...とかリアリティがありまくる。そして離婚調停のコジレから娘を誘拐とか、離婚後共同親権問題が今話題になっている状況とか考えると、70年ほど前の外国の話でも、妙なリアリティが今になって出てきたようにも感じる(苦笑) でこの夫は別件もあり逮捕されるのだが、娘の行方だけはガンとして口を割らない。サイコパスらしい意地の張りっぷり。で、クレアと付き合いのあるカメラマンが娘の行方を追って、運河地方を借りたナローボートで駆け回る話。 まあ「ボートの三人男」とか有名なユーモア小説もあるし、ガーヴでも「カックー線事件」がやっぱりボートの探索行の話、またセイヤーズも「学寮祭の夜」でもボートの大きなエピソードがあるし、クリスピンの「消えた玩具屋」もボート遊びが追っかけのテーマになっている。意外にイギリス・ミステリではポピュラーな話題のようにも思うが、どうやら本作の運河地方は、イングランドとウェールズの境界の北部あたりらしい。おそらく「カックー線」「殺人者の湿地」といった話はイングランド南東部の話で方向違いのようだ。イギリスのボート文化は地方色がいろいろあるんだなあ。 まあ、遊びじゃなくて「川上生活者」ともなると少ないのかもしれない。 逆にシムノンにも初期が特に「川上生活者」の話が多い印象があるね。放浪者気質のアウトローに憧れる気持ちがテーマかもしれない。 でも読者は土地勘があるはずもないから、地図とかサービスしてほしかったな(苦笑) |
No.1 | 5点 | kanamori | 2014/09/18 21:47 |
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美人モデルで一歳の娘の母親でもあるクレアは、冷酷で傲慢な性格の夫アーノルドを愛せなくなり、ある事件を契機に離婚を決意する。しかし、アーノルドは同意せず、娘を拉致し何処かに隔離してしまう。クレアは仕事仲間のカメラマン・キャメロンと共に捜索の旅に出るが-------。
デビュー作の「ヒルダよ眠れ」以降、出す作品が次々と邦訳され60~70年代に日本でも人気作家だったガーヴの、最盛期に書かれた中で唯一未訳だった作品。 単行本で200ページあまりのコンパクトな作品ですが、前半は巻き込まれ型サスペンス、後半が冒険スリラーとなっていて、本書もガーヴの典型的なプロットになっています。 ただ、構成として敵役が早々に逮捕されてしまったのはどうだったか。そのため、ミッドランド(英国中部地域)の運河を舞台にした男女2人の捜索行という後半部が(土地勘がないこともあり)読んでいて意外と単調に感じました。娘の所在を絞り込むヒントとなる手紙の文面にある趣向を施していたり、ラストの活劇などはガーヴらしいのですが。 |