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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
プレイボーイ・スパイ1
マーク・ガーランド
ハドリー・チェイス 出版月: 1968年01月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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東京創元新社
1968年01月

東京創元社
1982年01月

No.2 6点 人並由真 2022/03/10 05:24
(ネタバレなし)
 CIAのパリ支局長ジョン・ドーレイのもとに、謎の女「マダム・フシェール」から情報の売り込みがあった。手ごたえを感じたドーレイはその対応を、パリ在住の中年の部下ハリー・ロスランドに任せるが、ロスランドはさらに実際の相手の女との接触を、外注スパイで30代後半のマーク・ガーランドに依頼した。だがガーランドがその任務を請け負った直後、ロスランドは何者かに惨殺され、一方でガーランドの方も、町でハントした別の若い娘に家探しをされた上、姿を消されていた。そんなガーランドに、今度は危険な雰囲気の富豪ハーマン・ラドニッツとその部下が接触してくる。

 1965年の英国作品。
 主人公マーク・ガーランドはフランス人の母とアメリカ人の父を持つハーフで、10年近くロスランドの外注仕事を請け負う身。だがロスランドが末端の現場CIA局員で、しかもあまり有能でないため、報酬も少ない。長年の活動の間に、もともとは何人もいたガーランドの同僚たちもみな、待遇の悪さから足を洗ったり、あるいは命を落としたりしたようである。
 60年代半ばなら、ボンド映画ブームの影響で、スパイ(スーパースパイ)が社会階層的にも余裕のある成功者然として見られる風潮もあったとも思うが、チェイスはその裏をとって、そこそこ女にモテる二枚目だが、金もなければ、諜報世界での大した立場もない、そんな外注スパイというタイプの主人公を創造したのであろう。
(現実の職種に例えるなら、大手テレビ局の下請けの零細番組製作プロダクション、さらにそこから仕事をもらう、便利屋的に使われる二流のベテラン俳優かフリーの外注スタッフみたいなイメージだね。)

 実際、ガーランドはすぐに、CIAのケチな外注仕事よりも、多額の報酬を提示した富豪ラドニッツ側についてしまったりする。
 やがて富豪ラドニッツがどういう対象(人物? 案件?)に関心を抱き、ガーランドに何をさせようとしてるのか、はっきりしてくるが、それでも最後まで、その依頼の根幹にあるものが何なのかはなかなか語られない。
 そんななかで、さらにメインヒロインの一角といえる女性がまたひとり登場、一方でにぎわう登場人物たちもバタバタ死んでいく。

 中盤の展開は丁寧な筋運びの分、地味な印象もあり、チェイスにしては、ちょっぴりかったるい感触も覚えたが、クライマックス、キーパーソンといえる人物にガーランドが接触し、ラドニッツの狙いがわかってからは結構なハイテンションぶり。その流れのなかで、なかなか心を揺さぶられる描写があるが、詳しくはここでは書かない。なんにしろ、とにもかくにもガーランド、ちゃんと最後には主人公らしい益荒男(ますらお)ぶりを見せた。

 従来のほかのチェイスの諸作っぽい、かどうかは、あまり評価や楽しむ上での基準にしない方がいいような感じの作品。それよりは、60年代当時の、欧米活劇スパイ小説ブームの頃に登場した、やや変化球の一シリーズと思って楽しんだ方がいいような感じ。

 シリーズの2、3作目もすでに買ってあるので、そのうちに読もう。パラダイスシティ警察と世界観がリンクするという『その男 凶暴につき』も楽しみじゃ。

No.1 6点 2021/05/05 14:46
邦題から何となく想像していたほど、主役のマーク・ガーランドはプレイボーイではないように感じました。もっといろんな女性に積極的に手を出していくのかと思っていたら、最初に出てくる謎の女と、二重スパイのジャニンの2人だけ、それもむしろ相手の方から思惑があって彼に近づいてくるのです。また普段は小金で仕事を請け負うかなり貧乏くさい男であったところも、予想外。
話はパリから、ガーランドとも知り合いだったソ連を抜け出したスパイが潜んでいるセネガルへと移り、CIA、悪徳大富豪、ソ連スパイが入り乱れてのスリリングな展開になります。チェイスらしく、最初にガーランドを雇った男を手始めに、次々に人が殺されていき、最後の方には、ほとんど無意味と思える無差別殺人まであります。
最後の砂漠地帯での派手なアクションは楽しめますし、決着の付け方も説得力のあるものになっていました。


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