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[ サスペンス ] 貧乏くじはきみが引く 改題『この手に孤独』 |
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ハドリー・チェイス | 出版月: 不明 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
東京創元社 |
東京創元社 2000年11月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2021/07/02 15:16 |
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(ネタバレなし)
カリフォルニアのパーム・シティ。「わたし」こと「ヘラルド」紙の記者ハリー・バーバーは、地元に進出する大手暴力団がらみの汚職の事実を掴み、賄賂と引き換えに沈黙を要求された。だが自社の社長J・マシュー・キュービットを含む悪党たちの要求を固辞したハリーは、警官を過失致死させた冤罪を着せられて3年半の懲役をくらった。その年の7月ようやく出所したハリー(30~31歳くらい?)は愛妻ニーナ(25~26歳)、そして幼なじみで警部補のジョン・レニックに温かく迎えられるが、一方でキュービットの嫌がらせでなかなかまともな職業につけないでいた。そんななか、大富豪フェリックス・マルルーの後妻の美女リアが、ハリーに接近。リアは彼女の継子である16歳の美少女オデットを紹介し、このオデットが誘拐されたように見せかけて、母子共謀でマルルーから50万ドルの身代金をせしめたいので、ハリーに5万ドルの報酬で計画の協力者になるように要請するが。 1960年の英国作品。 純朴(愚直)な正義漢ゆえに思わず人生が狂った主人公が、さらに今度は人間的な弱さから深みにはまっていくサスペンス・ストーリー。 なお創元推理文庫版の巻頭のあらすじには、このあとの中盤のイベントまでネタバレで書いてあるので、これから読む人は警戒した方がいいかもしれない(本レビューのあらすじでは、もちろんそこら辺までは触れていない)。 思わぬ事態のなかで自分と身内を守り、さらに逆境から脱しようとあがくハリーの一挙一動がスリリングかつサスペンスフルに語られ、今の目で見ると良くも悪くもお約束のクライシスの連打という感じもするが、さすがにその分、全編のテンションは高い。 良い意味で一時期の2時間枠ドラマにぴったりハマりこみそうな、中粒のエンターテインメント。 後味の良い悪いを言ってしまうとクロージングの方向性が透けてしまいそうなので、そういう感想は控えるが、3時間みっちり楽しんで、適度に充実した読後感でページを閉じられた一冊。この時代のサスペンスもの(ちょっとだけノワール風味込み)としては、教科書的な佳作~秀作であろう。 ところで翻訳の一ノ瀬直二ってあんまり聞かない名前だな? って思ったら、奥付の訳者紹介のところに、ほかの翻訳担当書でクリスティーの『ひらいたトランプ』とかある。あれ? あれって加島~ラニアン&ラードナーの~祥造でしょ? と思ってWikipediaを調べたら、加島と一ノ瀬直二、それぞれの記事項目に、当人の死後、実は同一人物と判明したという主旨の記述がある。 ……いや、死後もなにも半世紀も前からこうやって半ば公然の秘密、お約束程度に正体バレバレでの別名義を使っていただけじゃないの?(たぶん版元か何かへの、形ばかりの仁義でかなにかでか?) といいつつ当方も、これまで知らなかった訳ではあるが(汗)。 |