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[ 警察小説 ] ソフト・センター 警察署長フランク・テレル |
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ハドリー・チェイス | 出版月: 不明 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
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No.1 | 6点 | 人並由真 | 2025/03/02 06:55 |
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(ネタバレなし)
フロリダ州マイアミの一角、スパニッシュ・ベイ。億万長者チャールズ・トラヴァースの娘ヴァレリー(ヴァル)・バーネットは、2年前の交通事故で脳に損傷を負った夫クリスの静養に付き合っていた。夫妻はマイアミの豪華ホテルに長期滞在していたが、ある日、クリスがそこから姿を消した。やがて近隣のモーテルで、売春婦ショー・パーネルが何者かに殺害される事件が発生。警察が、探偵が、そしてパーネルの元情人だったギャングのノミ屋がそれぞれの思惑で動き出す。 1964年の英国作品。 現状のAmazonの書誌データ表記&登録は不順だが、創元文庫の初版は67年12月。評者が読んだのは、75年8月の第6版。 警察側のメインキャラクターは、おなじみパラダイス・シティ署長のフランク・テレル(本書ではフランク・ターレル表記)だが、本文中には一度も「パラダイス・シティ」の名前が出てこない。 これがシリーズ第一作らしいから、文芸設定がまだ固まっていなかったのかも? (あるいはまさか、シリーズ第二弾という『クッキーの崩れるとき』~たしか評者はまだ未読~から、舞台となる町の名が、作中のリアルで改名したか?) 内容に関しては、特に推理の要もない警察捜査小説、さらにカメラアイがあちこち柔軟に切り替わる群像劇で、読者はその成り行きに付き合わされるだけだが、それはそれとしてなかなかハイテンポで面白い。登場人物はネームドキャラだけで50人ほど。前半でチラッと名前が出た警官が後半でそれなりの活躍をしたり、やっぱりメモを取りながら読むことをお勧めする。 プロットやミステリとしてのギミックとしては、突出したところは決して多くない作品だが、妙に印象に残りそうな見せ場は少なくない。 殺人現場の目撃者の少女(8歳)が証言と引き換えに巨大な熊のぬいぐるみ(テディベアか?)を要求し、ターレル署長が自腹で安くない出費を負担するところなんか実にゆかしい(笑)。 クロージングもねえ、たぶんこう書いても特にネタバレにまったくならんと思うから書くけど、なんかウールリッチぽい感じで、へえ、となった。 作者のベストワンでは決してないし、上位に入るかどうかも微妙だけど、チェイスという作家の持ち味は十二分に満喫できる。そんな一冊ではある。 |