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[ 本格/新本格 ]
体育館の殺人
裏染天馬シリーズ
青崎有吾 出版月: 2012年10月 平均: 6.65点 書評数: 31件

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東京創元社
2012年10月

東京創元社
2015年03月

No.11 6点 りゅうぐうのつかい 2016/04/26 16:06
事件は、学校の体育館で起こった殺人事件1件のみで、事件を取り巻く状況はいたってシンプル。「読者への挑戦」を付けた本格志向の作品(もちろん、私は真相も犯人も全くわからなかった)。
この作品は、ロジックが売りのようであるが、確かに論理的な推理が示されている部分もあるが、強引な決めつけによるロジックの綻びも随所に見られる。
犯人の密室からの脱出は意外な方法ではあるが、危険すぎるし、この方法が使えるかどうかを記述内容だけでは読者に判断できない。
現場に残された傘の存在が大きな欺瞞になっており、解決編はなかなか読みごたえのある内容であった。


(ネタバレ)
裏染が示した、DVDとビデオデッキのリモコン切り替えの論理だが、他の理由も十分に考えられる。
たとえば、次のような理由だ。
①演劇部員が前日にリモコンでビデオの電源を切った際に、誤ってDVDの切り替えボタンを押した。
②事件のあった直前に、朝島がDVDを見て、それを他人に知られたくなかったので、コンセントをビデオの方に戻した。
また、犯人がDVDの内容を直ちに確認しなければならなかった理由も説得力に欠ける。確認せずに、2枚とも持ち出せば良かったのではないだろうか。犯人が映像関連に重点を置いて捜査が進められることを危惧したから、という理由を挙げているが、まるで説得力がない。
傘の論理に関しても、ブランド品だから置き忘れの傘ではないと決めつけているのは強引だ。たとえば、部室に置き傘をしているようなケースなら、ブランド品でも構わないはずだ。また、傘を2本持って出入りする生徒が防犯カメラに映っていなかったことから、学校の外に出て傘を入手した可能性はないと断じているが、折りたたみ傘で外に出て、戻ってくる時には折りたたみ傘を畳んでバッグに入れれば良いだけではないだろうか。帰りのときだけ、ご都合よろしく、備品室の傘を借用したことになっているのは、どうにもいただけない。

No.10 7点 パンやん 2016/04/07 17:50
大学生が書いた青春ミステリーで、実に読み易くキチッと論理的につくられていて、わかりやすいのが嬉しい。キャラづくりもうまく、登場人物の多いわりにスッキリしているのもいい。叙述ものの口直しには、頭の体操にもなって最適ですなぁ。映像化可能で、Eテレがピッタリ。

No.9 7点 ロマン 2015/10/24 23:36
「使い古されたもの」というのは、それがあまりに優れているがゆえに繰り返し擦り切れるまで使われていく運命にあるのだと思う。ロジックへの執拗なまでのこだわりは、クイーンの時代から変わらずミステリファンを魅了し続けている。体育館を舞台に起こる密室殺人の謎が、やはり歴史を彩る数々の名探偵と同じく変人ぶりを発揮する天才少年によって鮮やかに紐解かれていく様は、とても美しく興奮させられた。キャラクター描写や軽やかな筆致も心地よく、今後の展開にも期待が高まる。

No.8 7点 E-BANKER 2015/08/02 22:00
2012年発表。第二十二回鮎川哲也賞を受賞した作者のデビュー作。
“平成の和製クイーン”との異名も耳にする本格パズラー(とのことだが・・・)
いつものとおり文庫化を待ち読了。

~風ヶ丘高校の旧体育館で、放送部部長の少年が何者かに刺殺された。放課直後で激しい雨が降り、現場は密室状態だった。早めに授業が終わり現場体育館にいた唯一の人物、女子卓球部部長の犯行だと警察は決めてかかるが・・・。死体発見現場に居合わせた卓球部員・柚乃は学内随一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。内緒で校内に暮らしているというアニメオタクのダメ人間に・・・~

いろいろ評価はあるだろうが、これほど端正なパズラーは久々に読んだ気がする。
まさにジグゾーパズルのように、ピースのひとつひとつに拘り、伏線を丁寧に撒きながら組み上げていくミステリー。
他の方もご指摘のとおり、「クイーン」になぞらえるのも、あながち間違えではないと思える。

プロットの中心は実にオーソドックス。
密室殺人とアリバイトリック。そしてその二つが瓦解した時に判明するフーダニットの刹那。
確かにロジックの穴は目に付いたのだが、やはり本格好きとしては、徐々に真犯人が絞り込まれていく緊張感・ドキドキ感は何者にも代え難い瞬間なのだ。
(小道具の使い方もなかなか面白い)
一本の「傘」に纏わるロジックも、“若気の至り”と評することもできるのだが、その心意気を買いたい。
動機については・・・まぁ敢えて触れないでおこう。
(学園ミステリーでもあるわけだから、こんなもんだろう)

真犯人解明後に更なるドンデン返しが判明するラスト。これはやや蛇足感というか中途半端感は残った。
若さ溢れる(?)筆致とともに、その辺りは今後に期待というところ。
とにかく、今時こんなコテコテでロジック全開のミステリーを書いてくれたことには素直に敬意を表したい。
次作も楽しみ。
(さすがに「鮎川哲也賞」はレベルが高いね・・・)

No.7 5点 haruka 2015/06/30 20:07
意外な結末や大掛かりなトリックはないものの、謎解きに論理の飛躍がなく、しっかりと作り込まれた作品。ただ、お話としての面白さは感じられず、ドキドキ、ハラハラもないので、採点はこの辺で。

No.6 7点 メルカトル 2015/03/18 22:00
平成のクイーンの名は伊達ではない。面白味には欠けるものの、端正なロジックを積み重ねて真相に迫る作風は、現在の軽いミステリが蔓延しているシーンに一石を投じる意味で貴重と言える。
一本の傘から、これだけの推理を展開させて一人の女生徒を救い、密室を打ち破る手法は見事の一言に尽きる。そればかりか、久しぶりの「読者への挑戦」を挿入している辺りは作者の自信と意気込みを感じる。
ただし、登場人物が多すぎて頭の中で整理が十分つかないのはマイナス要素か。これは読者にもよると思うが。私のような頭の弱い者にはちょっと辛かった。
さして勉強もしないのに群を抜く成績を上げ、天才的な探偵能力を発揮する一方、アニメオタクで自堕落な生活を送る高校生探偵は、魅力的とは思うが、やや双方向に極端すぎる気もする。
いずれにしても、これだけらしい本格ミステリを今読めるというのは、幸せと言えるだろう。

No.5 7点 名探偵ジャパン 2015/03/16 09:38
今どき、こんなコテコテの本格を書く人がいたとは。
しかも、クイーン好きをこじらせたオールドファンかと思いきや、作者は、隔世遺伝的まさかの平成生まれ!
無愛想で失礼、しかもアニメオタクという名探偵は好き嫌いが分かれるだろうが、これが、奇抜で変人、という名探偵のお約束を新世代が解釈した形なのだろうか。
大胆なトリックや叙述などの仕掛けもない、ファンタジックな特殊設定もない、あくまでロジカルに犯人を追い詰めていくクラシカルなスタイルは、今時の若者にはあまり受け入れられないかもしれないが、それを書いているのがまた読者に近い若い作家だというのは希望だ。
青崎有吾、本格ミステリの救世主となるか?

No.4 6点 HORNET 2013/08/30 19:56
 赤川次郎のような(そこまでではないか)、ユーモアも交えた軽快なテンポで、いかにも新人らしいフレッシュな感じが好感をもてる。とはいえ、真相解明に至るまでのロジックは非常にしっかりとしていて、本格ミステリに憧れをもった若者の渾身の作というのがよく伝わってくる。ラストの真相も、ある程度予想の範疇だったが、これによって作品の深みも一段増している。
 今後の活躍に期待がもてる新人の登場。

No.3 6点 アイス・コーヒー 2013/06/12 17:46
高校の体育館で起こった密室殺人を学年一の天才であり変人オタクが解決するという鮎川哲也賞受賞作。
エラリー・クイーン的な論理推理で一本の傘から犯人を絞り、あらゆる疑問点を検証していくやり方は本格的だ。ただ巻末の審査員の作家人陣のコメントにもあるように検証に穴がありやや無理やりなところもあった。しかし、本作はそれと同時に深く練られた所も多くあり、青崎氏の将来には期待が出来そうだ。
ちなみに本作の題名は綾辻行人の「館」シリーズのパロディだ。おもしろい考えだと思ったが、館シリーズとは、ほとんどつながりが無かったのは残念。

No.2 6点 まさむね 2012/12/31 17:12
 「エラリー・クイーンを彷彿とさせる論理展開+抜群のリーダビリティ」という触れ込みの,鮎川哲也賞受賞作。
 選評にもあるとおり,突っ込みたくなる穴はありますねぇ。ハウ(密室)についても分かり易すぎるかなぁ…と。
 しかし,一本の傘からのロジック展開に拘り,真っ向勝負に挑んだ心意気は買います。鮎川哲也賞史上初の平成生まれだそうで,今後の更なる飛翔に期待します。
 ちなみに,タイトルについては,様々なご意見がありましょうが,内容とは確かにリンクしているし,まぁスルーしておきましょう。次作は「図書館」あたりでどうでしょうか(笑)。
 来年も良い読書ができますように。皆様良いお年を。

No.1 6点 kanamori 2012/10/26 18:40
今年の鮎川哲也賞作品。出版前からベタなタイトルで綾辻”館ミステリ”のパロディかと、あちこちでネタにされていましたが、ライトな学園ミステリに緻密なロジックを持ち込んだ意外とオーソドックスな本格パズラーでした。
ロジックは確かに強引で粗もありますが、現場に残された黒い傘という一つのアイテムから、密室状況下の殺人の”ハウ”だけでなく、真犯人を絞り込んでゆくロジック展開はクイーンの国名シリーズを髣髴とさせます。かなり漫画チックな探偵役の設定や意味のないアニメネタの連発には苦笑を禁じ得ないものの、現役大学生だという作者の将来性に期待して採点はやや甘めに。
なお、重大なネタバレがあるので選評を先に読んではいけません。


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