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[ 本格/新本格 ]
中途半端な密室
東川篤哉 出版月: 2012年02月 平均: 6.50点 書評数: 8件

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光文社
2012年02月

No.8 8点 mediocrity 2019/07/24 06:00
東川氏のデビュー前からデビュー間もない時期にかけて書かれた短編5つ。
『謎解きはディナーのあとで』とそれ以後の短編集より、出来も面白さも上だと思った。
一番好きなのは、いかにもこの作家らしい作品の2作目『南の島の殺人』でしょうか。他の作品も建物消失トリックなど、なかなか魅せます。『有馬記念の冒険』だけはそれほどでもないか。
2作目以降の大学生コンビ、いやトリオはかなりいいキャラだと思う。この短編集以外に出ていないのならちょっともったいない。

No.7 7点 makomako 2015/01/30 07:50
 東川氏の初期の短編集。作家としてデビュー前から、氏がユーモアと本格物を合体させた作品を目指していたことが読み取れて好ましい。
 トリックを主体とした短編なのですが、丸太小屋が10分で消失するなど大規模なトリックもあり、なかなかのものです。これに怪奇色を付けて、わけのわかったようなわからないような話を織り交ぜて長編とする作家さんもいるでしょうが、読みやすい文章できちんとした短編としているのは若い作者の資質を感じさせるものでした。

No.6 7点 白い風 2012/09/01 19:59
「中途半端な密室」「南の島の殺人」「竹と死体と」「十年の密室・十分の消失」「有馬記念の冒険」
安楽椅子探偵の短編5つですね。
東川さんらしく軽いテンポで読み易かったですね。
題名になった「中途半端な密室」の他に「南の島の殺人」が面白かったかな。
特に事件以外にS島の存在を暴く辺りが。

No.5 6点 メルカトル 2012/07/06 21:49
何だろう、この読み心地の良さは。
どの作品も臨場感があり、脳裏に情景が浮かんでくる辺りは、さすが売れっ子作家だと感心させられる。
突出した短編はこれといって見当たらないものの、どれも及第点をクリアしていると言って良いのではないだろうか。
まだ本格的にデビューする前の作品のわりには、なかなかの完成度の高さを誇っているし、肩の凝らない程よいユーモアも保たれていて、非常に読みやすい。
これは評価されるべき点であろう。
これだけ褒めておいて、この点数は低すぎるかもしれないが、全体的にやや物足りなさを感じるのは否定できないからやむを得まい。

No.4 6点 まさむね 2012/04/14 15:10
 プロデビュー前の作品を中心とした短編集。ユーモアや文章は,完成途上(?)との印象も受けましたが,内容自体はまずまず楽しめました。
 良かったのは,表題作と「南の島の殺人」。前者はロジカルな展開が楽しく,後者は巧妙な仕掛けが楽しい。
 「十年の密室・十分の消失」は,興味深い設定ではありますが,「そこまでやるか」感も。ラストの人物像の反転は結構好み。

No.3 6点 kanamori 2012/04/02 23:06
プロデビュー前の作品を含む初期短編集。いくつかの作品は既読でしたが、連作物をまとめて読むと若干味わいが異なり今回の方が楽しめた。

個々に見ていくと、表題作は伏線がやや分かり易いが、真相に至る丁寧なロジック展開がいい。家屋消失トリックの「十年の密室・十分の消失」は、なぜ”このタイミングなのか”という説明が弱いと思った。個人的ベストは「南の島の殺人」で、破天荒な騙りの部分が一番面白かった。
作中に、安楽椅子探偵ものに対する作者の持論(=”少ない情報”からロジックを展開させるのが安楽椅子探偵ものの醍醐味)があって共感できるのですが、収録作は必ずしも実践できてると言えないのはご愛敬か。

No.2 6点 こう 2012/03/25 23:53
 デビュー当時の短編もこういうユーモアミステリだったんだなあとちょっと感動した短編集でした。
 表題作の中途半端な密室のロジックが一番気に入りましたが2作目以降のミキオと敏ちゃんのコンビの作品たちも楽しめます。最後の有馬記念の冒険だけはいわゆる初歩アリバイトリックの転用でちょっと面白みに欠けましたが東川作品は楽しい読書が満喫できれば満足なので個人的には全体として満足でした。 

No.1 6点 E-BANKER 2012/03/13 22:47
光文社から出版された、鮎川哲也編「本格推理」と二階堂黎人編「新・本格推理」に編入された作者の短編を1冊にまとめた作品。
東川人気にあやかった文庫オリジナル。

①「中途半端な密室」=十川一人が唯一探偵役として登場。四方を高いフェンスに囲まれ、ただ1つの出入口に鍵のかかったテニスコート内で刺殺された男が発見される。十川が解き明かす真相(?)はなかなかロジカルで切れ味がいい。
②「南の島の殺人」=これ以降は、岡山の大学生・敏ちゃんとミキオのコンビが探偵&ワトスン役として登場。本作は2人の友人である柏原がバカンスに出かけた「とある南の島」で起きた殺人事件の謎。死体が「全裸」ということで、E.クイーンの「スペイン岬」が作中でも引き合いに出されてますが、真相とは一切関係なし。それよりも「南の島」の件がなかなかバカバカしい・・・
③「竹と死体と」=ふとしたことから昭和11年の古新聞から興味深い事件を見つけた2人がまさに「安楽椅子型探偵」に乗り出す1編。高さ20メートルを超える竹で首を括った状態で発見された老婆の謎。ある歴史上の有名な事件が真相解明のヒントになる。
④「十年の密室・十分の消失」=本作のメインテーマは「建物の消失」。このテーマというと、クイーン「神の灯」や泡坂妻夫「砂蛾家」、はたまた折原一「鬼首村」などが思い浮かびますが、トリック自体はオリジナリティあり。ただ「こんなことするかぁ!」というツッコミは想定済みなんだろうなぁ・・・
⑤「有馬記念の冒険」=有馬記念の走破時間約2分30秒がアリバイトリックに・・・というと興味深いように聞こえますが、要はあるAV機器の機能を利用しただけのワンアイデア。でも見せ方はさすが。

以上5編。
作者の思いとは違った形で突然の大ブレイクを果たした作者ですが、本来は本作のようなロジック&ユーモアを基調としたマニア向けの作品がメインのはず。
でもまぁ、売れるだけの力量は十分に感じられますねぇ。
長編デビュー前の小品をまとめただけの作品集ですが、やっぱりキラッと光る原石のような印象は残りました。
どれも短くまとめられてるだけあって、短編らしい切れ味を感じる作品ですし、いい意味で手軽に読める作品という評価ですね。
(やっぱり表題作である①が一番いい。後は②④辺りか)


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