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[ サスペンス ]
殺す者と殺される者
ヘレン・マクロイ 出版月: 1959年01月 平均: 7.29点 書評数: 7件

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東京創元社
1959年01月

東京創元社
2009年12月

No.7 8点 あびびび 2015/11/13 11:09
題材はよくある話だと思うが、構成力と専門的筆致力が凄い。語り手のハリーを自分に置き換えてみたら、これ以上の恐怖はないくらい寒気を感じた。

名作中の名作だと思う。

No.6 7点 ボナンザ 2014/07/08 17:52
アイディア以上にマクロイの筆によるところが大きい。
名作。

No.5 6点 蟷螂の斧 2013/07/22 20:48
読者を不安定な気分にさせる一風変わったサスペンスといった感じです。主題はおおよそ予想がつくのですが、この手の題材で、10年間の空白の謎、および○○○と○○○の逆転の扱い方は見事だと思いました。ラストで題名に繋がってくるところも好印象です。

No.4 6点 2012/08/27 10:36
主人公のハリーと、かつての恋人シーリアの周辺に出没する謎の徘徊者はいったい誰なのか。消えた免許証、差出人不明の手紙。そして中盤を過ぎたころには、恐ろしい事件が・・・。

語り手はハリー。この一人称による地の文や、会話文、それに全編を覆い包むような異様な雰囲気、どれをとってもサスペンスに満ち満ちています。
ハリーの語り口は、サスペンスを演出するためのもののようにも、ハリーのやさしさを表現しているようにも思われますし、さらには、ラストに何かとんでもないことが待ち受けているようにも感じられます。思わせ振りで信用ならない感じはありましたね。

驚愕の真相、その仕掛けと見事な伏線にはびっくりしました。テクニック抜群です。あとで気づきましたが、登場人物欄自体も伏線になっているのですよね。
ただ、いまどきのミステリー慣れした読者にとっては驚愕の程度も中ほどなのかもしれません。やはり、特上のサスペンスこそが、多くのミステリーファンに共通して楽しめる材料なのでは、という気がします。

No.3 7点 E-BANKER 2011/07/16 00:12
作者といえば、精神分析学者ウィリング博士シリーズが有名ですが、本作はノンシリーズの1作。
円熟期の上質サスペンス。
~遺産を相続し、不慮の事故から回復したのを契機に職を辞し、亡母の故郷へと移住したハリー・ディーン。人妻となった想い人と再会し、新生活を始めた彼の身辺で異変が続発する。消えた運転免許証、差出人不明の手紙、謎の徘徊者・・・そして、ついには痛ましい事件が起こった。この町で何が起きているのか?~

なるほど! 確かにこれは上質なミステリーです。
メインの「仕掛け」については、今となっては、残念ながら相応のインパクトしか与えられないかなと思いますが、さすがにうまいですね。
特に「時間軸」については気付きませんでしたし、数々の伏線をあからさまに晒しているのもニクイ・・・
精神医療でいうと、これって、重度の「統○○○症」ということなんですよねぇ?
ある日突然、天と地がひっくり返るような「事実」に気付かされる主人公ハリー(もしくはヘンリー)の心の揺れ具合も本作の特徴の1つでしょう。
新聞記事で終わるラストも、かなりの余韻を読者に響かせます。
まずは、読んで損のない1冊と言えるでしょう。
(男って、昔好きだった女性をなかなか忘れられないよねぇ・・・なぜだろう?)

No.2 9点 こう 2010/05/14 22:54
 マクロイは何冊か積ん読があるのですがこれまでまともに読んだのは「暗い鏡の中に」と「歌うダイアモンド 」だけでしたが今回kanamoriさんの点数を見て読んでみました。
 久々に楽しめた作品でした。途中で狙いは大体わかったのですが更なる狙いについてはわかりませんでした。かなりページが残っている所で種明かししていましたが上手くまとめています。kanamoriさんも書かれていますが数々の伏線も見事です。
 未読のマクロイ作品も久々に読み進めていきたいと思わせる作品でした。
 kanamoriさんも言及なさっているヘレン・ユースティスの「水平線の男」もサスペンスとして面白いものですがこの作品の方が個人的には好みです。 

No.1 8点 kanamori 2010/04/10 18:15
英国の某古典怪奇小説が元ネタと思われる騙しのテクニックが冴えたサスペンス・ミステリの傑作。
サスペンス小説といっても本格ミステリの趣向が存分に組み込まれていて、特に冒頭の一行から始まる数々の伏線の敷き具合と回収方法が抜群にうまいと思いました。
中心となる大ネタは、いかにもマクロイが使いそうなものですが、今では使い古されていて、新本格で鍛えられた現代の読者であれば物語中盤で仕掛けに気付くと思われます。しかし、本作の肝は最後の一行でしょう。
読み終えたあと、タイトルの秀逸さに誰もが感動するはずです。
(以下ネタバレ)
「水平線の男」のネタバレもしています。


主人公のハリーが二重人格で、しかも「副人格」の方だったというのがすごい。「ジキル博士(殺す者)とハイド氏(殺される者)」は、二重人格ものではなく薬による変身ものですが、タイトルもシンクロしているので元ネタに間違いないと思います。ハリーとヘンリーとか英米の人名呼称習慣を巧く使っていることにも感心します。
二重人格をトリックにしたミステリの先駆は、東京創元社絶版本の盟友「水平線の男」だと思います。マクロイの10年前に出版されています。
もうひとつの大仕掛けとして、時制の誤認があります。これは、副人格ということを隠蔽するために必要な叙述トリックで、その伏線が尋常でないくらい張られていたことに驚きます。
(2010年4月16日 ネタバレを追記)


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