皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格 ] サム・ホーソーンの事件簿Ⅲ |
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エドワード・D・ホック | 出版月: 2004年09月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 5件 |
東京創元社 2004年09月 |
No.5 | 5点 | nukkam | 2021/10/17 23:15 |
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(ネタバレなしです) サム・ホーソーンシリーズ第25作の「ハンティング・ロッジの謎」(1983年、作中時代は1930年11月)から第36作の「窓のない避雷室の謎」(1988年、作中時代は1935年4月)までの12作を収めて2004年に日本独自編集の第3短編集(創元推理文庫版)として出版されました。「サム・ホーソーンの事件簿Ⅱ」(2002年日本独自編集版)でも不可能犯罪トリックのアイデアの行き詰まりを感じさせていましたが本書に至っては普通の犯罪の謎を無理矢理に不可能犯罪に仕立てているような苦しい作品が目立ちます。「真っ暗になった通気熟成所の謎」(1987年)のように「あんたがいつも出くわすような密室殺人じゃないな」と割り切った方がずっとすっきりしています。そうはいっても魅力的な謎の不可能犯罪の作品の方に心惹かれるのはどうしようもなく、本書では「ハンティング・ロッジの謎」と「「消えた空中ブランコ乗りの謎」(1986年)が楽しめました。トリック自体はジョン・ディクスン・カーの先例に類似していますが死者による殺人に挑戦してプロットの工夫が光る「防音を施した親子室の謎」(1984年)も悪くありません。惜しいのはサイコサスペンス風な雰囲気が異色の「窓のない避雷室の謎」で、アンフェアに読者を騙しているように感じてしまいました。ボーナス追加の非シリーズのショート・ショートの「ナイルの猫」(1969年)は動機なき殺人(犯人は逮捕済みです)の動機探しの謎解きですがひねった動機がユニークですね。これでは被害者が浮かばれず犯人に同情する余地はないように思いますが。 |
No.4 | 5点 | ボナンザ | 2020/02/10 22:11 |
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前二作とそれほど感想は変わらず。見せ方はうまいと思う。 |
No.3 | 7点 | 名探偵ジャパン | 2015/12/05 14:09 |
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時は移り変わり、禁酒法も解け、サム先生の身辺にも変化が訪れ始めたが、不可能犯罪が頻発することだけは変わらない。
某名探偵の孫や、体は子供、頭脳は大人探偵もびっくりな事件遭遇頻度! 親友のレンズ保安官が、「またあんた(サム)の得意な不可能犯罪が起きたぞ」的なことを言ってきて、もはやノースモント住人にとっては、不可能犯罪は日常茶飯事レベル。 ミステリ的にⅡより持ち直したと感じ、ボーナストラックの「ナイルの猫」が短い中に極上のワイダニットがズバッと決まっていたゆえ、7点にした。 ここで、このシリーズの書評では、個々の事件についてはほとんど触れていなかったな、と思い、印象に残った作品を挙げてみると、何と言っても「防音を施した親子室の謎」だ。例によって、「うん、それしかないよね」という類のトリックだが、その不可能現象が現出するまでが大変魅力的。一件関係のなさそうな事柄が、実は事件の動機に繋がるなどの意外性もいい。 |
No.2 | 7点 | E-BANKER | 2012/09/01 19:13 |
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不可能犯罪を取り扱ったシリーズといえばコレ。アメリカの田舎医師サム・ホーソーンが大活躍する本シリーズ。
第3弾となる本作も相変わらず彼の推理が冴え渡る。 ①「ハンティング・ロッジの謎」=まさに「ジャブ」的な1編。いわゆる「雪密室」(足跡のないやつ)を扱ったものなのだが、雪の上に唯一付いていた細い線というのがミソ。でも、結構難しそう。 ②「干し草に埋もれた死体の謎」=これはアリバイに関する不可能犯罪。トリックの肝はよくある「手」なのだが、こういう種類のトリックに対していつも思うのは、『人間の目ってそんなに節穴なのか?』・・・ ③「サンタの灯台の謎」=一人旅の途中でサム医師が殺人事件に巻き込まれる。トリックは推理クイズレベルなのだが、真犯人については見事に逆転が嵌っている。 ④「墓地のピクニックの謎」=ピクニック最中に突然駆け出した女性が、そのわずか後に溺死体で見つかるという超難問なのだが・・・。解答はまぁこれしかないというものだが、これも②と同種のトリック。まさかサム医師も騙されるとは・・・ ⑤「防音を施した親子室の謎」=これはなかなかの傑作。新装オープンした映画館。その中にある「親子室(=密室)」で町長が銃撃される事件が発生。何とその前日、町長の銃殺を予告した男が先に毒殺されていた・・・。まずはプロットが素晴らしいし、不可能犯罪のレベルも高い。 ⑥「危険な爆竹の謎」=爆竹の1つに仕掛けられたダイナマイト級の火薬で爆死させられた兄と大怪我を負った弟・・・。本作も意外な真犯人とその正体がラストで指摘される。 ⑦「描きかけの水彩画の謎」=事件そのものは単純なアリバイトリックの解明で終結。それよりも、探偵稼業中に患者を死なせてしまうという事態に陥り、深く落ち込むサム医師に同情。 ⑧「密封された酒ビンの謎」=「禁酒法」解禁の日のお祝いで振る舞われたシェリー酒。無作為に選んだはずの1本を呑み毒死させられた被害者。他のビンは無毒だし、ビンに毒を詰める方法もないように思えたが・・・ ⑨「消えた空中ブランコ乗りの謎」=サーカスの最中、5人組の空中ブランコ演者の1人が消えてしまい、次の日に死体で見つかる・・・というのが本作の謎。消える仕掛けはかなり「粗っぽい」し、本当に成功するのか? ⑩「真っ暗になった通気熟成所の謎」=本作は葉タバコ乾燥用の施設内での殺人事件。このトリックも推理クイズ向きだとは思うが、利き腕の問題は、別にサム医師じゃなくても気付きそうだが。 ⑪「雪に閉ざされた山小屋の謎」=本作も①と同様「雪密室」がテーマ。このトリックも物理的には可能かもしれないが、実際やるには相当リスク高いんじゃないかな? ⑫「窓のない避雷室の謎」=新たに雇い入れた看護婦に殺人の嫌疑がかかる。でもこのトリックは「掟破り」ではないか・・・? 以上12編にボーナストラックとして非シリーズもの1編(「ナイルキャット」)。 さすがに似通ったプロットが出てくるし、玉石混交という思いは残るが、それでもミステリーとしての面白さは十分感じられる好編。 人物造形も相変わらず巧みで、何だが自分もノースモント市民になったような気分さえ味わえる(?) でも、たかだか人口千人足らずで、これだけ不可能犯罪が頻発する町って・・・ある意味スゴイっていうか住みたくない! (ベストは⑤。③④あたりも面白い。) |
No.1 | 6点 | kanamori | 2010/05/22 17:15 |
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本格パズラー短編集の第3弾。
ガチガチの本格ミステリを12編続けて読むと、さすがに疲れます。独創的トリックがそうそう案出できる訳もありませんので、過去のヴァリエーションになりますが、既読感を覚えるものもありました。 なかでは、「干し草に埋もれた死体の謎」が伏線の巧妙さで編中のベストでしょうか。 ボーナス・トラックは非シリーズもの「ナイルの猫」。これは動機が意表をつくホワイダニットの秀作でした。 |