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[ 本格 ]
白い僧院の殺人
HM卿シリーズ  別題「修道院殺人事件」
カーター・ディクスン 出版月: 1951年01月 平均: 6.76点 書評数: 25件

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雄鶏社
1951年01月

早川書房
1956年02月

東京創元社
1977年10月

東京創元社
1977年10月

東京創元社
2019年06月

No.5 8点 ミステリー三昧 2009/11/23 00:18
※ネタばれあり<創元推理文庫>H・M卿シリーズの2作目(長編)です。
テーマは「足跡のない殺人」ですね。どうやって犯人は「雪密室」状況下で別館から脱出したのかが最大の謎になります。その謎は18章のラスト一行によって見事に氷解されるわけですが、そこから展開される事件の全貌は予想以上に複雑でした。複雑故に納得できない部分もありますが「〇〇」が創り出した奇跡的な密室状況という点が秀逸です。その全貌に凄みを感じさえすれば、高評価でも良いのでは?
余談ですが、私的には同じく雪密室をテーマとした有栖川有栖の『スウェーデン館の謎』の方が好きです。まぁ雪密室のオリジナル(?)が読めたので満足です。故に採点はかなり甘めです。












(ここからネタばれ感想)
「殺害現場が別だった」という真相には驚きでした。マーシャが別館から本館へ移動したという事実を「暖炉の燃えカス」や長時間ジョンに待たされた彼女の「心理状況」などを伏線として説得力を与えていた点もGOOD。
「マーシャ殺害」・「死体移動」と2人の犯人がいたことも驚きです。ですが突っ込み所が満載です。まず「マーシャ殺害犯」ですが、言い当てることが難し過ぎます。彼の言動にもヒントがあったようですが、存在感なさ過ぎ故に察することが難しい。車の相違点も絶対一読目では気づけない。そこから派生するH・M郷の実験の狙いも見抜くことは無理。読者の方を向いているようで向いていない微妙な伏線に正直何一つカタルシスを感じていません。次に「死体移動」の犯人ですが、彼の心理状況が理解し難い。彼は「奇跡的な密室状況」を創り出すために筆者によってご都合主義に動かされたといっても過言ではない。
一番の驚きは2人の犯人が全くお互いを関与せず自らの意思によって行動していた点です。なので、共犯者と呼べるものは存在しない。しかし、二つの歯車は偶然にも絶妙な噛み合いをみせながら、(マーシャ殺害犯にとっての)不可能状況を形成していく。その全貌を「ご都合主義」の一言で片付けてしまっては面白みがない。この作品では「ご都合主義」は禁句です。

No.4 8点 測量ボ-イ 2009/06/03 20:09
雪に閉ざされた密室殺人、有名な作品です。
現在でもこの設定で時々新作がでますが、その場合必ずといっ
ていいほどこの作品が引き合いに出されます(この謎は「白い
僧院の殺人」の知識があっても解けない・・だとか)。
それほど、雪に閉ざされた密室殺人というシチュエ-ションで
はバイブル的作品なのでしょう。

No.3 8点 2009/02/02 20:41
密室講義と言えばまず『三つの棺』ですが、その前年に発表された本書でも密室(不可能)殺人一般についての講義が行われます。ただしH・M卿による分類は方法面ではなく、密室にする「理由」に注目したものです。本書の事件について、さまざまな理由をすべて否定した後、最後の理由として「偶然」を挙げますが、足跡をつけないということに、どんな偶然が考えられると言うのか? と疑問をつきつけ、不可能・不可解興味を盛り上げてくれます。
方法面でも途中で嘘の解決を2通り示すなど、謎と推理でがちがちに構成された作品で、解決の意外性も申し分ありません。これは確かに、初心者にも、読み残していた上級者にも安心して薦められる謎解きミステリです。

No.2 10点 ロビン 2008/09/18 01:02
H・M卿の一言に驚愕!考え方の視点の転換がものすごく効いている。こういった密室トリックは好きですね。
一つ一つの出来事や伏線がラストのH・M卿の推理によって収束されていく。これぞロジックの素晴らしさ。

No.1 9点 Tetchy 2008/08/29 20:39
久々に本を読んで「あっ!」と声を上げてしまった。
各種推理クイズ本にもネタとして挙げられている本書のトリックだが、そんなことはすっかり忘れてしまっていて、18章の最後の一行を読んだときには霧が晴れる思いがした。

しかし、訳が古すぎる。名作なのに勿体無い。

点数はこの驚きに敬意を表して、ちょっとオマケした。


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カーター・ディクスン
2001年09月
第三の銃弾<完全版>
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1959年01月
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墓場貸します
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1951年01月
白い僧院の殺人
平均:6.76 / 書評数:25