皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 短編集(分類不能) ] 幻の屋敷 キャンピオン氏の事件簿2 |
|||
---|---|---|---|
マージェリー・アリンガム | 出版月: 2016年08月 | 平均: 5.25点 | 書評数: 4件 |
東京創元社 2016年08月 |
No.4 | 5点 | E-BANKER | 2023/11/18 14:08 |
---|---|---|---|
日本版オリジナル短編集の第二弾。とはいえ、前作の「窓辺の老人」を読了してはや八年強。
もはやすっかり忘れております。どんな雰囲気だったっけ? ということで、原作は1938年ごろの発表(と思われます)。 ①「綴られた名前」=とあるパーティーの会場で起こった宝石盗難事件が本編の謎。キャンピオン氏も当然巻き込まれるのだが、彼が偶然拾った指輪をもとに、持ち主やらそれに基づいた事件の解明やらをあっという間に行ってしまう。スゲえ推理力。神業級。 ②「魔法の帽子」=この帽子をレストランの机に置いておけば、お代が無料になるという不思議な帽子。なんていい帽子なんだ! 欲しい!!って当然裏事情という奴がありまして、それはたいがい犯罪に関わっているわけです。残念。 ③「幻の屋敷」=とある田舎町に存在するというある屋敷。それが「灰色小孔雀荘」。その場所を知っているという老人を案内させると、その屋敷はとっくに壊されたという。でもここに、先週その屋敷を訪れたという若き女性が登場! あれ、なんか変な感じになってきたぞ・・・と思いきや。あっけなくキャンピオン氏が解き明かしてしまう。そりゃそうだ。 ④「見えないドア」=タイトルからして「名作」っぽい雰囲気だったのだが・・・。真相はまさかの「〇が〇〇ない」! そりゃないでしょう。周りも気付くんじゃないの? ⑤「極秘書類」=ひとりのチンケな犯罪者とその正体を知らず、彼に恋をしたひとりの無垢な女性。かの英国でもこんな陳腐な物語が紡がれるのか。犯罪者の言い訳がなかなか笑える。 ⑥「キャンピオン氏の幸運な一日」=まぁよくある手な作品だけど、短い分だけきれいに決まった感じ。 ⑦「面子の問題」=これがよく分からなかったんだよねー。結局、事件のほうはどうなった? ⑧「ママはなんでも知っている」=これってヤッフェの同名の作品集とはまったく関係ない? 根本的な部分では共通してますが・・・ ⑨「ある朝、絞首台に」=意外な犯人。というほどでもない。むしろ、よく見てきたやつだ。 ⑩「奇人横丁の怪事件」=この時代から「空飛ぶ円盤」「UFO」なんてものが話題にのぼっていたんだね。さすがイギリス! ⑪「聖夜の言葉」=キャンピオン氏の愛犬が主人公のお話、だそうです。 以上11編+ボーナストラック1編。 分量はたいしたことはないけれど、結構お腹一杯になりました。 作品によって出来不出来はあるけれど、どれもワンアイデアがキラリと光る、と好意的に評価したい。 まぁ時代も時代なんでねぇ・・・日本だったら戦中戦後の暗い時代。そんな時代にかの大英帝国はこんな洒落た探偵小説が書かれていたのだから、そりゃ勝てるはずありません。 作品の印象としては短い作品ほど切れ味があって高い評価。 個人的ベストは・・・うーん。難しいな。 |
No.3 | 5点 | ボナンザ | 2023/02/15 20:36 |
---|---|---|---|
とびぬけたアイディアはないものの、軽く読めて軽く唸れる名短編集。 |
No.2 | 5点 | nukkam | 2018/01/23 22:08 |
---|---|---|---|
(ネタバレなしです) 2016年に日本独自編集された、アルバート・キャンピオンシリーズ第2短編集です。第1短編集の「窓辺の老人」(2014年)が1930年代の作品をまとめていたのに対して本書に収められた短編11作とエッセイ1作は1930年代から1950年代までと時期的に幅広いです。ミステリーと言い難い作品や結末がすっきりしない作品もありますが「窓辺の老人」に比べると本格派推理小説の作品が増えています。家屋消失というエラリー・クイーンの中編「神の灯」(1935年)を連想させる魅力的な謎にクイーンとは全く異なる真相を用意した「幻の屋敷」(1940年)やショート・ショートながら鮮やかな推理が印象的な「キャンピオン氏の幸運な一日」(1945年)などが私の好みです。 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2016/09/09 22:59 |
---|---|---|---|
英国上流階級の高等遊民にしてアマチュア探偵、アルバート・キャンピオンが登場する、1938年から55年までの作品11編を発表順に収録した日本オリジナル編集の短編集2巻目。
ロンドン警視庁のオーツ警視のアドバイザーとして殺人事件に関わる〈本格編〉や、上流階級の揉め事の処理にあたる〈日常の謎〉〈コンゲーム物〉、さらにはクリスマス・ストーリーまで、今回もバラエティに富む内容になっています。 〈本格編〉を中心に印象に残ったものを挙げていくと、表題作「幻の屋敷」では、”家屋の消失”という大掛かりで魅力的な謎が提示される。序盤の伏線が丁寧で(そのため真相は見えやすいですが)まとまりのいい佳作。 守衛が監視する密室状況下で絞殺死体が見つかる「見えないドア」は、小品ながらも切れ味鋭い不可能殺人もの。この盲点をつく手筋は名作「ボーダーライン事件」に似ている感じがする。 「ある朝、絞首台に」も完成度の高い本格パズラー。凶器の拳銃の隠し場所トリックのアイデア(=他の作家も使っていますが本作が元祖かも)だけでなく、キレのあるラストの処理が抜群に光ります。 本格編以外では、キャンピオンが隠れた犯罪を暴く「魔法の帽子」「極秘書類」が印象に残りました。そのほか、ルーク警部から過去の事件を拝聴する2編をはじめ、後期の作品になると謎解きの妙味が薄れてきますが、全体的には前作より楽しめる作品が多かった。 |