皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格 ] ホワイトコテージの殺人 |
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マージェリー・アリンガム | 出版月: 2018年06月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 3件 |
東京創元社 2018年06月 |
No.3 | 6点 | ボナンザ | 2022/12/04 00:46 |
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えっ・・・こっちが先なんですか!?な一作。
そこ以外は淡々としている。 |
No.2 | 6点 | 弾十六 | 2020/02/24 12:41 |
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1928年出版。初出Daily Express 1927年の連載。創元文庫で読みました。
シンプルな(悪くいえば、コクのない)文章。それに状況設定や登場人物の発言が所々違和感あり。作者はちょっと世間知らずなお嬢さん(当時23歳)な感じ。父と息子のコンビってかなり難しい関係性です。(ベテランと若き刑事にした方が良かったのでは?) 気軽にフランスに旅立ちますが、感じとしては東京人が北海道に旅行するようなもんでしょうか。(クロフツ『樽』もそんな感じだったような…) 文庫の解説(森 英俊さん)が行きとどいていて大変参考になりました。でもアンフェア部分がどこを指してるのか良くわかりません… 以下トリビア。原文はkindleのサンプル部分だけ参照。この版(Bloomsbury Reader 2011)は翻訳と比べてかなりの省略あり。(本書の解説に、犯人は実妹ジョイス・アリンガムと書いてありました) 作中時間はp40, p195の記述から約6年前に戦争がはじまったものと推察されるので、1920年、秋の初め(p155)の事件。これは発表時よりも過去の話だよ、という記述はずっと後ろの方で出てきます。 現在価値は英国消費者物価指数基準1920/2020(44.99倍)で£1=6383円、仏国消費者物価指数基準1920/2020(671.56倍)で1フラン=€1.02=122円により換算。 p17 散弾銃の銃声(report of a shot-gun): プロなら聴き分けられる? p21 単銃身の散弾銃—かなり大口径(a single-barrel shot-gun): 「かなり大口径」が気になりますが、参照した原文では省略。普通は12番径(=18.53mm)か20番径(=15.63mm)ですが、かなり大口径なら10番径(=19.69mm)かな。銃の発砲数が全く話題になっていないので、シェルを一発ずつ込める中折式(連続発射不可能)ですね。重さ6.5ポンド(3キロ弱)くらいか。 p108 世界一の力… パリ警視庁: まだまだ評判が高い。 p156 マントン: コートダジュール(紺碧海岸)に面したリヴィエラ地方の町。人口18001人(1921) 本書のマントンの描写にはあまり臨場感はありません。この地はマクロイ『死の舞踏』で「物価が安い… マントンは(遊ぶ所ではなく)死ぬところ」と表現されてて気になってました。『クリスティー自伝』でもWWI以前はフランスの物価が安かったので、お金に困ったミラー家(アガサさんの実家)は英国の家を貸してフランスに移り住んでいます。 p179 百フラン札を二枚: 200フランは24457円。情報提供料。当時の100フラン札はtype 1906 « Luc-Olivier Merson » デザインは表が2組の女性&子供、裏が鍛冶屋と女性&子供、天然色印刷。112x180mm。 p221 三百ポンド: 191万円。 p249『グロスの犯罪心理学』: Criminal Psychology(Kriminalpsychologie 1898, 2nd ed.1905) 警部がいつも先々に持ち歩いている本。グロス(Hans Gustav Adolf Groß 1847-1915)は随分と探偵小説に貢献しています。どこかで翻訳されないかな。(英訳版はGutenbergにあり) p250 馬車: 当時はタクシーと共存していたのですね。(パリではなくマントンだからか?) パリでは1905年からタクシーが走っています。(当初はルノーType AG1、1933年以降はType KZ11) p253 アルゼンチン: 当時の人気国。肥沃な国土を背景とした経済成長により、1913年には1人当たり国民所得で世界十指に入る裕福な国になった。しかし1926年の英国の牛肉輸入規制で経済的なダメージを受けることになる。 |
No.1 | 6点 | nukkam | 2018/07/05 05:50 |
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(ネタバレなしです) 英国のミステリー黄金時代の作家の中でドロシー・L・セイヤーズ(1893-1957)は文学的ミステリー作家として評価されていますが、マージェリー・アリンガム(1904-1966)もまたその系列に連なる作家と評価されています。代表作とされる作品が1930年代以降に発表されていることから黄金時代世代以降の作家(江戸川乱歩は新本格派に分類)と認識されていますが、実はデビュー作の冒険小説(但し作者自身はミステリーではないと主張してます)がセイヤーズのデビューと同じ1923年に出版されるというかなり早熟な作家でした。ミステリー第1作は1928年出版の本書です(シリーズ探偵のアルバート・キャンピオンは登場しません)。文学的な要素はまだなく普通の本格派推理小説で読みやすいです。後半になると舞台がフランスに移りますが(最後はまた英国に戻ります)派手な演出のない展開で、探偵役の捜査難航ぶりの方が目立ちます。それだけに某米国作家の名作本格派推理小説を先取りしたかのようなアイデアが披露される最終章はなかなかの衝撃です。 |