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[ サスペンス ] 陶人形の幻影 キャンピオン氏 |
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マージェリー・アリンガム | 出版月: 2005年09月 | 平均: 4.00点 | 書評数: 1件 |
論創社 2005年09月 |
No.1 | 4点 | 人並由真 | 2022/05/18 14:58 |
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(ネタバレなし)
第二次大戦の戦禍の傷痕がまだうっすらと残るロンドン。陶磁研究家ユースタス・キニットの息子で22歳のティモシー(ティム)は、同じオクスフォード大学に通う後輩の美少女で18歳のジュリア・ローレルと婚約した。そんなティモシーは実はキニット家の養子だった。独身のユースタス、そしてティモシーの母代わりのおばで同居人でもあるアリソンは多くを語らないが、ティモシーは実はユースタスの亡くなった弟の遺児の可能性もあるようだ? ユースタスは自分の出自探しに尽力するが、同じころ、ロンドンの一角の中流~下流階級向けのフラットでは怪事件が起きていた。 1962年の英国作品。アリンガムの19番目の長編。キャンピオンシリーズだが、彼はほとんど脇役。 本作の主人公ポジションのティモシー青年が自分のアイデンティティに迫っていく作劇の主題はクリスティーの一部の作品などを思わせるが、並行して語られる事件の猥雑さ、なにかいわくありげに描かれた登場人物のじれったさ(特に名探偵キャンピオンの知人でもある、キニット一族の縁者の酔っぱらいバジル・トーバーマン)など、悪い意味でいつもの後期アリンガム。 二代に渡る私立探偵一家、現在は三兄弟で連携とか、心優しいがしたたかなティモシーの元子守役のマーガレット・ブルーム夫人とか印象的で存在感のある登場人物もいるが、ごちゃごちゃしたお話にひたすら疲れる。 それでも眠い目をこすりながら、なんとかティモシーの出自探しドラマに食いついていくと、終盤で忘れていたのをいっきに片づけるようにミステリっぽく転調。作者のマイペースで語られる説明には、読み手は半ばどうでもよくなり、最後は、ああ、やっと終わったとページを閉じた。『葬儀屋の次の仕事』も似たような感じでダメだったけれど、こっちも負けず劣らずダメだ。 とはいえこーゆーアリンガムを面白いと言っている人もいるみたいなので、ダメなのはこっちかもしれん(苦笑)。 アリンガムも面白いものはそこそこ楽しめるんだけどな。まあ私には合わなかった作品ということで。 【追記】 言い忘れたけど、本作は翻訳もかなりひどい。日本語になってない。 「ルークは熟練した眼差しで長々と彼を見つめてから」(P10) ……「熟練した眼差し」って何だよ? 「実用性と使い勝手のよさでは申し分のない、老人にふさわしい家財で溢れる老人にふさわしい家は、几帳面といえるほどの周到さで徹底的に破壊されていた。」(P15) ……。 調べたら、この佐々木愛って翻訳家サン、私がいつか読もうと楽しみにとってある、あの『悪魔の栄光』(ジョン・エヴァンズのポール・パインもの)も訳しているみたいで(冷や汗)。そっちとは相性がいいことを願うばかりである。 |