皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 手をやく捜査網 キャンピオン氏/改題『ファラデー家の殺人』 |
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マージェリー・アリンガム | 出版月: 1957年01月 | 平均: 5.50点 | 書評数: 2件 |
六興出版部 1957年01月 |
論創社 2023年09月 |
No.2 | 5点 | 人並由真 | 2019/11/22 18:31 |
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(ネタバレなし)
自称「職業的冒険家」アルバート・キャンピオンは、友人の弁護士マーカス・フェザーストーンの紹介で、その婚約者である娘ジョイス・ブラントから相談を受ける。両親と死別したジョイスは、血縁のない親族で金持ちの老婦人キャロライン・フライデーの後見を受け、彼女の世話をしながら邸宅「ソクラテス屋敷」に同居していた。キャロラインの亡き夫ジョン博士は大学の学長で、妻に多大な財産を遺して他界。そして現在の屋敷には、キャロラインの3人の子供や甥など4人の中年と老人が同居していたが、その誰もが財産も生活能力もなく、キャロラインの資産にたかって十年単位で生活している状況だった。そんな家族の中の一人、甥のアンドルー・シーリーが二週間前から行方をくらましており、何か厄介事があると外聞が悪いので警察沙汰にしたくないというキャロラインの意向を受け、ジョイスはキャンピオンに相談に来たのだった。だがその直後、行方知れずだったアンドルーが、銃弾を受けた死体となって川の中から発見された。続いてソクラテス屋敷では、新たな犠牲者が……。 評者がアリンガムの長編を読むのはこれで三冊目。作風に幅がある(らしい)作者としては、これはかなり正統的な館もののパズラー。 が、主要登場人物の総数がそんなに多くないこと、館の外というか周辺でいかにも怪しげな人物が序盤から動き回ること、それぞれの要素に作者の狙い所をこっちに感じさせ、その辺のわざとらしさがかえって微妙。 屋敷内の人物描写も、相応に焦点的にしっかり描きこまれる人物と、ごくざっと簡単に語られる人物の扱いにも明らかな差異が発生。よくいえばその辺にメリハリがあり、悪く言えばバランスがあまりよろしくない。 最後に明かされる真相も、1932年当時の長編作品としてはまあ意外なような……この時点ですでにどっかで前例があるような……。 (ただ、このあとに同じ英国で登場する某大家の名作の構想に、この作品が影響を与えていた可能性はある……かも。) メイントリックを補強するロジックと状況証拠の処理など光るものもあるんだけれど、いまひとつこなれがよくない謎解き作品。 終盤ギリギリまで事件の真実と真犯人を引っ張る外連味は、好きだけどね。 |
No.1 | 6点 | nukkam | 2016/09/24 16:43 |
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(ネタバレなしです) 1932年発表のアルバート・キャンピオンシリーズ第4作で、キャンピオンが「私立探偵でなく職業的冒険家」と自己紹介していますが本書においては私立探偵と見なしてよいのではないでしょうか。ソクラテス屋敷(何て名前だ)に住む家長(女性)と彼女に頭の上がらない居候状態の家族たちという、よくありがちな人間関係の中で起こる殺人事件の謎解きのストレートな本格派推理小説です。アリンガムというと文学的な作風が評価されることが多いですが本書はそういった面はない代わりにパズルとして大胆な仕掛けがあることに驚かされます。基本的なアイデアはコナン・ドイルの某作品でも見られますがこれをもっと複雑に発展させたものです。六興推理小説選書版は半世紀以上前の古い翻訳の割には読みやすいのですが、それにしても登場人物リストの人物紹介が「ビー公」って...(笑)。 |