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ミステリの祭典

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ギザじゅうさんの登録情報
平均点:6.99点 書評数:238件

プロフィール| 書評

No.198 6点 生存者、一名
歌野晶午
(2004/11/26 23:26登録)
『館という名の楽園で』同様に、中編という枠の中で上手くおさめている。
犯人はバレバレだが、その奥のトリックは上手い。勘のいい読者なら、そこに気づいてもおかしくないだけに難しいところ。個人的な好みから言えば、もう少しカルト宗教を強調してあるほうが良かったかも。


No.197 5点 数奇にして模型
森博嗣
(2004/11/09 13:37登録)
S&Mシリーズでは最もつまらないものの一つだと思う。
このシリーズの後期(封印再度〜今はもうない)は非常にパズラー思考が強かったが、本作は最悪。犯人像が独特なため、論理がねじれている(麻耶作品にあるような気持ちの良いねじれ方ではない)し、何より犯人がバレバレである。プロローグもアンフェアだと言わざるをえない。
本作に近い作品というと、『詩的私的ジャック』だろうが、そのような詩的な美しさも感じとれなかった。


No.196 7点 絃の聖域
栗本薫
(2004/10/31 14:32登録)
ヨコセイへのオマージュか。探偵役の伊集院大介も金田一耕助に似ているし、描かれている舞台も本陣に似通っている。
そういった意味で、本陣に匹敵する密室を期待した割には肩透かしを食ったが、小説としては楽しめた。ラストも非常に印象的。


No.195 7点 マレー鉄道の謎
有栖川有栖
(2004/10/31 14:28登録)
いままで火村モノには代表作といえるものが無かったのだが(あえて挙げるなら『朱色の研究』)、これはよく出来ている。愛すべき本格である。
作例の少ない「目張り密室」に挑んだのも評価できるし、伏線の張り方も上手い。密室以外にも動機不明の殺人を置きながら、それら全てが密室に収束されるラストも圧巻。
前半で「悪」について議論をしたのも、単なる人物を掘り下げるだけかと思いきや、ラストのマニピュレーションと対応させてあったのには、さらなる驚きである。
まさしくアリス流本格の成功作にして、代表作であろう。


No.194 9点 アリア系銀河鉄道
柄刀一
(2004/10/24 21:39登録)
あまりに美しい幻想的本格推理。五編のうち、多少出来、不出来に差があるが、どれも楽しませてくれる。
「言語と密室のコンポジション」は人によっては楽しめないかもしれないが、この空間を作り出しただけでも賞賛物。バカミス的でおもしろく、この作品のモチーフとなるアリスの生みの親、ルイス・キャロルを出したのも流石。
しかし、本書における白眉は表題作。舞台と幻想と本格が一番見事にまとまった超傑作。相変わらずトリックはバカミス的だが、それに使われた道具二つが乱歩の名短編に関係があるだけに、ますます美しく感じられてしまう。
柄刀一を薦めるのに最適な一冊!


No.193 10点 紅楼夢の殺人
芦辺拓
(2004/10/17 14:01登録)
『紅楼夢の殺人』 (文藝春秋)

今年度ナンバー1の大傑作!
相変わらず芦辺らしく殺人トリックのオンパレード。しかし、それらのハウダニットとしては弱く、その点ではいまいちかもしれない。そして第一の真相看破も容易に想像がつきそうで物足りない。しかし、その後に現われる真相があまりに凄い。これを予想できる読者はいないのではないだろうか。本格でありながら、きわめてアンチ的!

本作では『紅楼夢』を舞台にしていることに必然性もあって、それこそがトリックのようでもある。さらに「本格」としての形式をとる自体がトリックに近く、「本格推理」の地盤を揺るがすほどの凄さは読んでみないとわからない。

その他の点でも、優れた点は目立つ。登場人物も非常に多く、中国らしく名前が独特で読みづらいのに、それらがすっと頭に入ってきて、混乱する事も無い。文章の一つ一つも、非常に考えたのだろうと思われるような文章でもある。「大観園」という舞台も美しく、ラストもまさに幻想的である。この一発アイデアを活かしきり、その他の点でも文句も無い。中国文学ミステリの金字塔、『妖異金瓶梅』も必読の大傑作であるが、本作もそれに劣らない大傑作である。客観的に見ても、この点数をつけるのは、決してできすぎた事だとは思わない。


No.192 7点 漱石と倫敦ミイラ殺人事件
島田荘司
(2004/10/03 21:59登録)
これを読むと、本当に島田氏はホームズが好きなんだろうなぁ、と思う。ホームズという人間を夏目漱石という日本人が描いているのだが、それも胴に入っていて面白く読めた。
暴騰の謎の怪奇性もよく、それに対する解決策はだいたい予想がしやすい物だが、その犯人の捕らえ方も非常にホームズらしくて面白かった。
ホームズの人気に寄りかかっているかと思いきや、それを知らない人でも楽しめると思う。ユーモア風に好き勝手書いている割には、後年の大作群の片鱗も見えた(様に感じた)


No.191 8点
麻耶雄嵩
(2004/09/19 22:21登録)
やってくれた!まさに奇想!
ミステリ的な仕掛け(第一の解決ね)としては、アイデア自体は前例がありすぎて困るくらいだが、それをこの様に使用したという時点で、まさにアイデア勝ち。麻耶の奇想がさえる。
そして、ラストの大どんでん返し!叙述が仕掛けられてるなぁ、というのはわかりやすいが、それをあのようにひっくり返してしまうのも凄い!ただ説明不足なのか、納得しづらいのが玉に瑕。
今までの作品にくらべると、ミステリ的雰囲気は多少薄く、トリック自体も目新しい物ではないが、こういった使い方もあるという、奇想の模範的作品!
ただし、同じ年に出版された『メルカトルと美袋のための殺人』の方が楽しめた。


No.190 7点 赤死病の館の殺人
芦辺拓
(2004/09/12 16:23登録)
表題作はポーを元にしながらも、現代に赤死病を復活させた手腕には驚き入る。この様に色彩的(映像的)に印象の強い話は大好きである。トリックには多少疑問が残るが、中編というサイズに上手くまとまっている。
「疾走するジョーカー」は、スマートで切れのいいトリックに、現代の青少年の犯罪をからめたパピッとまとまった好短編。ついにこの様な犯人像を描いたか、芦辺さん。
「深津警部の不吉な赴任」は意外な犯人。この様なトリックはあまり好きでないし、よい効果を挙げているかも疑問。
「密室の鬼」は「困難は分割せよ」のよい見本のような作品。あまり好きな話でもなかったが、ラストのくだりは密室ミステリの現状を捉えているようで面白い。
非常に良質の短編集。「探偵宣言」の様な、ごちゃごちゃした感じもなく、ストーリーテリングも上手くなったと思う。


No.189 6点 失踪症候群
貫井徳郎
(2004/09/12 16:12登録)
なんとなく話が読めてしまうのは興ざめではあるが、男たちが本当に格好良く描かれていて、そういった面ではとても面白い。


No.188 6点 ちょっと探偵してみませんか
岡嶋二人
(2004/09/12 16:08登録)
ショートショートというだけあって、めちゃめちゃ面白いという話もなかったが、よく出来ていて、安心して楽しめる。
(ミステリではないものの、ショートショートでメチャメチャ面白い作品を描いた星新一は本当に凄いと思う)


No.187 6点 蜃気楼・13の殺人
山田正紀
(2004/08/25 22:21登録)
密室状況から13人が消失しただの、トラクターが空を飛んだのとでてくるが、ハウダニット色はかなり弱い。話の中心としては田舎のリゾート化問題などをからめたホワイダニットとなろうか。そう考えると面白みもあるが、やはり残念に感じたことは否めない。
なんとなく小道具などで、正史を意識しているのかな、と思うこともあった。


No.186 7点 砂漠の薔薇
飛鳥部勝則
(2004/08/25 14:56登録)
傑作変態ミステリ。
この変態というのがなかなか曲者で、多くの伏線が張ってあるにもかかわらず、見事に騙されてしまう。思わず安吾の傑作『不連続殺人事件』を思い出してしまったものだ。
氏の作家的飛躍を示す作品(なのだろう)


No.185 6点 将棋殺人事件
竹本健治
(2004/08/25 14:52登録)
前作、囲碁殺人事件がスマートな本格だったのに対し、怪奇小説なのかミステリなのかというのが第一印象。
しかし、ラストで多くの謎が一気に収束してから、フィナーレまで突っ走るところが楽しめた。最後の真相はいまいち納得しづらいが、怪奇的なところにも非常にこなれた様に見えて魅了された。詰め将棋史も楽しく読めた。


No.184 6点 朱色の研究
有栖川有栖
(2004/08/20 21:52登録)
有栖川有栖中期(思索期)の作風、心理的な面の重視が一番良く出た作品ではないか?
犯人を導きだすロジックはいまいち納得しづらい物もあったし、二回殺された被害者の謎の解決もいまいちに感じた。(笠井氏の『サマーアポカリプス』を期待していたのだが・・・)
しかし、動機やそれの描き方など、パズラー重視の初期の氏では書けないような上手さがあるのも事実。特に『朱色』のイメージなど非常に印象に残った。


No.183 8点 人それを情死と呼ぶ
鮎川哲也
(2004/08/10 01:43登録)
鮎川哲也初期の傑作!
事件やそれにまつわる登場人物も非常に丁寧に書き込まれているのは、好印象。
さらに、このアリバイトリックも非常に楽しめたのだが、何と言っても強烈な印象を残すラストのシーンと、このタイトルは秀逸。先に述べた登場人物なども、この美しい物語を成立させる、重要なファクターでもある。
見逃しがちだが、『黒いトランク』『黒い白鳥』『憎悪の化石』に決して見劣ることは無い。


No.182 7点 和時計の館の殺人
芦辺拓
(2004/08/10 01:36登録)
犬神家へのオマージュ作品。ラストの謎解きなんて金田一を意識しすぎ。
和時計の薀蓄は読んでて非常に楽しめたし、非常に念の入ったトリックもなかなか。ただし、和時計の(というか昔の暦の)素養が無いためか、トリックを聞かされても、理解しがたいものがあった。それだけでなく、事件の構図自体が何とも複雑なため、よけいに混乱してしまう。だから、このトリックを元にシンプルに仕上げた方が良かったのかもしれない。
あとは、遺産をめぐる争いはもっとドロドロしたほうが楽しめたし、包帯男ももう少し効果的に使えたのではないかとも思える。


No.181 6点 薔薇の女
笠井潔
(2004/08/02 13:52登録)
アンドロギュヌスの悪魔的犯罪には唸らされるものもあるし、トリック自体なかなか良く練られているのだが(最近では加賀美さんが似たようなこともしてますね)、バイバイ、アポカリプスと比べて、物足りなさが残ってしまう。ミッシングリンクテーマでなかったのも、残念な理由の一つだが、もっともっととてつもない大風呂敷を広げてもらいたかった。


No.180 7点 ふたたび赤い悪夢
法月綸太郎
(2004/07/29 22:39登録)
『頼子のために』『一の悲劇』に連なる三部作のラストをかざる力作。長さの割りにグイグイと引きこまれ、話の展開の仕方も非常に面白いものだった。トリックや犯人という点では多少わかりやすいという瑕疵はあるものの、後期クイーン問題に真正面からぶつかるのだから、大したものだ。法月こそが真のクイーンの後継者か?


No.179 6点 七年目の脅迫状
岡嶋二人
(2004/07/18 11:32登録)
事件の発端はまずまずだったのだが、展開の仕方がいまいちだった。最後のラストも大体予想通りの所に落ち着いてしまった感もある。
氏の競馬ミステリとしては、あした〜や焦茶色〜に比べ物足りなかった。

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