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ミステリの祭典

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紅楼夢の殺人

作家 芦辺拓
出版日2004年05月
平均点6.86点
書評数7人

No.7 8点 文生
(2024/04/06 21:21登録)
中国4大名著として、『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』と並び称される『紅楼夢』の世界を舞台にした連作ミステリです。毎回奇怪な不可能犯罪が起き、美少年貴公子・賈宝玉と司法官の頼尚栄がその謎を解いていくという趣向なのですが、個々のトリックは正直大したことはありません。そもそも、本作においてトリックはおまけのようなものであり、より根本的な問題は、なぜ犯人は無駄に手の込んだ犯行を毎回繰り返すのかというホワイダニットにあります。この解答がなかなかに衝撃的です。『紅楼夢』の世界観を活かした仕掛けが素晴らしい唯一無二の傑作。

No.6 6点 ぷちレコード
(2020/07/16 19:16登録)
個々の事件、やや古風な犯罪トリックが、隠れた動機が明らかにされる時、全く新しい必然性を帯びてくる趣向、その動機の普遍性、夢幻的な余韻に満ちた結末まで間然することがない。中国古典と現代の本格ミステリを融合させることで、全く新しい本格をつくり出している。

No.5 5点 makomako
(2012/06/17 10:06登録)
 中国のお話なので名前に普段使わない漢字が多いのは仕方がないが、複雑な家系に似た様な名前が連なり読みにくかった。
 原作を読んでいる方は多分これでよかったのだろうが、登場人物が平坦に書かれているため、ことにきれいなお嬢様各人のインパクトが少なく、なんかお人形さんがたくさん出てきた印象を受ける。
 お話の結論も意外と言えば意外なのだが、どうも共感がもてない。
 皆さんの評価が高いようですが、そして作者の新しい分野への切込みには敬服しているが、この作品はわたしにはあまりあわなかった。

No.4 6点 蟷螂の斧
(2012/01/30 09:10登録)
登場人物が多過ぎ、途中でギブアップ(笑)。中盤からはメイン2名となり、なんとか読了。メタとかアンチとかよく解りませんが、それに分類されるらしい。それがすばらいいと感心するかといえば、そうでもありませんが、一つのアイデアとしては面白いと思います。全体に流れる雰囲気は良かったと思います。

No.3 6点 mozart
(2011/07/23 11:09登録)
年のせいか、登場人物をなかなか覚えられず、一覧表にしおりを挟んで適宜参照しながら読むのはちょっと苦痛だったかも。
殺人「現場」の怪異な様相の背後に潜む「ある人物」の意図には(ひとつひとつのトリックには不満がのこるものの)、しかしながら、十分納得させられるものがありました。

No.2 7点 ロビン
(2009/06/21 15:47登録)
壮大なる、アンチ「本格」ミステリ。
一つ一つの事件の真相はさほど目を見張るものはなく、小粒なトリックを寄せ集めただけの連続殺人の様相です。ただ、この物語の裏に隠されていた仕掛け(叙述じゃないよ)というか、正確には構図なのだけど、これはすごい。
事件の真相自体は個人的に嫌いな部類に入るものだが、この構図なら納得。本格志向の作者が描く、アンチ本格ミステリ。

しかし、いかんせん文章が読みにくく、日本ではなく紅楼夢を舞台にしていることから、「何かあるな」とはかまえちゃうよね。

No.1 10点 ギザじゅう
(2004/10/17 14:01登録)
『紅楼夢の殺人』 (文藝春秋)

今年度ナンバー1の大傑作!
相変わらず芦辺らしく殺人トリックのオンパレード。しかし、それらのハウダニットとしては弱く、その点ではいまいちかもしれない。そして第一の真相看破も容易に想像がつきそうで物足りない。しかし、その後に現われる真相があまりに凄い。これを予想できる読者はいないのではないだろうか。本格でありながら、きわめてアンチ的!

本作では『紅楼夢』を舞台にしていることに必然性もあって、それこそがトリックのようでもある。さらに「本格」としての形式をとる自体がトリックに近く、「本格推理」の地盤を揺るがすほどの凄さは読んでみないとわからない。

その他の点でも、優れた点は目立つ。登場人物も非常に多く、中国らしく名前が独特で読みづらいのに、それらがすっと頭に入ってきて、混乱する事も無い。文章の一つ一つも、非常に考えたのだろうと思われるような文章でもある。「大観園」という舞台も美しく、ラストもまさに幻想的である。この一発アイデアを活かしきり、その他の点でも文句も無い。中国文学ミステリの金字塔、『妖異金瓶梅』も必読の大傑作であるが、本作もそれに劣らない大傑作である。客観的に見ても、この点数をつけるのは、決してできすぎた事だとは思わない。

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