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ミステリの祭典

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将棋殺人事件
牧場智久/ゲーム三部作・狂気三部作

作家 竹本健治
出版日1981年03月
平均点4.40点
書評数10人

No.10 4点 虫暮部
(2024/08/15 13:00登録)
 色々アイデアは詰め込んでいるけれど、使い方が拙い。一つ一つ駒を並べて、しかしそれを動かさないまま、最後に登場人物が作者の意図を代弁してまとめてしまった感じ。
 作中に掲載されている詰将棋 “無双第九十四番”、盤に駒を並べて実演してみた。するとびっくり:盤面全体に駒を配置しているくせに、詰める手順では右半分しか使っていない。これはつまり、本作には謎解きに使われない余計なネタも沢山含まれていますよ、と言う密かな宣言なのである。

No.9 7点 文生
(2022/08/23 08:07登録)
ゲーム三部作のなかでもダントツで評判の悪い作品ですが、個人的には結構お気に入り。
竹本健治なので真相は最初から期待していなかったのがよかったのかもしれない。
五里霧中な謎にゾクゾクしましたし、噂を集めて分析するという趣向もスリリング。

No.8 4点 ボナンザ
(2022/02/15 22:08登録)
あまり本筋に関係ない将棋の蘊蓄が浮いているのはやや残念。むしろおまけのオセロ殺人事件の方が短編ながらミステリとしては好き。

No.7 5点 斎藤警部
(2021/03/24 21:56登録)
時折の小難しい言葉遣いも、凝った構成も、大掛かりで込み入った真相さえ、小説を根底で支配する軽さ浅さに呑まれて、どこ吹く風。。。折角のキャラクター含め、いろいろ活かされてない。バランスおかしい。だが詰将棋の蘊蓄は愉しい。美しい数学的イメージも空を舞う。 出来は良くないと思うが、決してつまらなくない。 さて、犯人消した(!)のはいいけれど。。。(あんな終わらせ方、許されるの?!)

風景も人情も良く浮かぶ併録「オセロ殺人事件」の、されどバランス悪さは、、小味な短篇だから許せる類。最後の最後、推理クイズに化け過ぎで笑う。 こちらも蘊蓄が読ませる。源平碁とオセロの決定的違いとか。。

No.6 5点
(2019/06/14 22:11登録)
 六本木界隈で流行する怪談「恐怖の問題」。それは墓地で拾った紙片の謎に取り憑かれた二人の人間が殺し合い、その生き残りが夜な夜な次の犠牲者を求めて彷徨うといったものだった。だがその内容を裏書きするように、静岡地震に伴う土砂崩れで、掛川市郊外の墓地丘陵から白骨化した遺体が現れる。死骸のひとつは、怪談の内容通りにぼろぼろに腐った本を抱いていた。果たしてこれは単なる偶然なのか?
 重なる暗合に興味を抱いたミステリーマニア・牧場典子は掛川に飛び、噂の根源に迫ろうとする。一方弟であるIQ208の天才少年・牧場智久はファン・グループを使い、六本木全域に広がった怪談のプロファイリングを試みていた。
 だがその一人、三崎祐子の調査により意外な事実が明らかになる。屍体が発見された墓地を調べまわっていた女がその数日後、地下鉄の青山一丁目駅で、飛び込み自殺に見せ掛け殺害されていたのだ。
 その頃典子の恋人・大脳生理学者須堂信一郎は、災禍を逃れて静岡から上京した恩師・藍原充彦と旧交を温め合っていた。詰将棋愛好家でもある藍原は須堂に、彗星の様に出現した期待の新人作家・赤沢真冬の活躍を熱烈に語る。だがその真冬の影が「恐怖の問題」事件に絡んでくるとは、このときの須堂には知るよしもなかった――
 1980年7月からほぼ半年の間を置いて、CBS・ソニー出版から立て続けに発売されたゲーム三部作の第二弾。1981年2月刊行。
 300Pにも満たない分量ながら、序奏部・趣向部・収束部合わせて全四十章という構成。幻想とも妄想ともつかないエピソードから空想を思うままに走らせた短文、将棋の歴史や詰将棋の薀蓄、怪談話から新聞記事、日常生活の一挿話などを取り混ぜ、読者を酩酊感に誘います。竹本氏の小説は大なり小なりそういう部分がありますが、その点に関しては本作が最も極端でしょう。モザイクのように配置された文節を眺めるうちに、おぼろげに内容が立ち上がってくる感じ。カットバックで時系列が前後するのも効果を高めています。
 ただ物語として成功しているとは言えない。作中にも挙げられているエドガール・モラン「オルレアンのうわさ」に触発されて書かれた作品のようですが、噂の伝播・変容の扱いは巧みなものの、最後に開陳される須堂信一郎の推理は牽強付会気味で、彼が取った事件の解決策も、とうてい読者を納得させるものではありません。
 クローズドサークル中心だった作者の嗜好が初めて社会的方面に向かった作例として貴重ではありますが、トータルでは破綻しています。将棋関連の記述の濃さは個人的にプラスですが、客観的に判断すれば5点以上は付けられないでしょう。好みで若干おまけして5.5点。

 追記:処女作「匣の中の失楽」があまりに鮮烈なので中井・小栗・夢野らと併せ語られがちな竹本ですが、本書を読み終えた後、コリン・デクスターの「森を抜ける道」が頭に浮かびました。パズル趣味の強烈さや暗号方面への執着など、幻想方面やゴシック要素を除けばデクスターと竹本初期作品の共通項は意外に多いように思います。

No.5 4点 E-BANKER
(2016/07/16 22:52登録)
1981年発表。
「囲碁」「トランプ」と並び、牧場智久を探偵役とするゲームシリーズのひとつに数えられる作品。

~駿河湾沖を震源とする大規模な地震が発生し、各地に被害をもたらすなか、土砂崩れの中から二つの屍体が発見された。六本木界隈に蔓延する奇妙な噂=「恐怖の問題」をなぞったかのような状況に興味を覚え、天才少年・牧場智久は噂の原型と発生源を調べ始めるのだが・・・。すべてが五里霧中の展開に眩暈を覚える異様な長編~

まさに蜃気楼のような作品だった。
つかめそうで、つかもうとするとするりと逃げていくような感覚・・・
いろいろな謎や奇妙な現象がそこかしこにばら蒔かれていて、普通のミステリーならば、ストーリーの進展に伴ってそれらが徐々に回収・整理されて、最終的には収束していく・・・
のだが、本作はそれがないまま進められていくのだ。

終章は「収束」というサブタイトルがつけられていて、探偵役(牧場ではなく須堂が看破するのだが・・・)が一応筋道立てた解決を示しはする。
示しはするのだけど・・・これって全然納得できないんですけど!
この解法なら正直なんでもありだと思ってしまう。
まぁ本作にまっとうなミステリーの考え方を当て嵌めるのもどうかとは思うけど、私のような小市民的ミステリーファンにはモヤモヤ感しか残らないんだから仕方がない。

将棋、特に詰将棋に関する薀蓄はかなりのページを割かれている。
将棋に興味のない方にはツライ読書になる可能性が大なのでご注意を!
評価はなぁ・・・高くはできないな、当然。
(これだけの詰将棋なら芸術の域に達しているのは確か)

No.4 4点 nukkam
(2016/03/27 14:13登録)
(ネタバレなしです) 奇書として国内ミステリー史に名を残した「匣の中の失楽」(1978年)、比較的まともな本格派推理小説の「囲碁殺人事件」(1980年)を発表した作者が次にどんなミステリーを書くのか気になった読者も多かったでしょうがどうやら前衛路線を選んだようです。1981年出版の本書は、牧場智久シリーズ第2作(但し謎解き主役は前作同様須藤です)、ゲーム・ミステリ三部作の第2作、そして狂気三部作の第1作と色々な呼称が付いているようです(笑)。角川文庫版の巻末解説でも「読者を混乱の迷路に陥れようとしている」と紹介されていますが、意図的に話の筋道をねじ曲げたかのようなストーリー展開は難解極まりなく、一応最後は須藤が謎解き説明をしていますがそもそも解くべき謎が何だったのかさえ私にとってはよくわからないままに読んだので、すっきり感は得られませんでした。300ページに満たない分量だったのと、難解さのおかげで特に恐怖も感じなかったのがせめてもの救いでしたが(笑)。

No.3 1点 Tetchy
(2008/01/21 22:55登録)
文章が合わなかったなぁ。
幻想小説風味の章と普通の章が交じり合っているが、なんとも奇妙な感じがした。
真相も今ではそう目新しい物でもないし。
今敢えて読む必要は無いのでは。

No.2 6点 ギザじゅう
(2004/08/25 14:52登録)
前作、囲碁殺人事件がスマートな本格だったのに対し、怪奇小説なのかミステリなのかというのが第一印象。
しかし、ラストで多くの謎が一気に収束してから、フィナーレまで突っ走るところが楽しめた。最後の真相はいまいち納得しづらいが、怪奇的なところにも非常にこなれた様に見えて魅了された。詰め将棋史も楽しく読めた。

No.1 4点 RYO
(2001/07/04 16:27登録)
カットバックががんがん使われていて、視点が定まらないので読みにくかった。詰め将棋が好きな人は楽しめるかも。

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