home

ミステリの祭典

login
たかだいさんの登録情報
平均点:5.08点 書評数:162件

プロフィール| 書評

No.62 2点 ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!
深水黎一郎
(2024/12/21 07:13登録)
文庫本の「最後のトリック」の方を読みましたが、いまいち納得はいかず…
古今東西、ミステリー小説のパターンは数あれど未だ誰も成し遂げていない『読者が犯人』というパターンに果敢に挑戦した意欲作ーというのは評価に値すると思います
作中におけるその実現方法(やり方)はミステリーという分野に一石を投入する物だとは思うのですが、面白かったか?と問われると個人的には、否
前提条件が難しいから仕方ないんでしょうが、そんな真相で被害者が死んだと言われても…


No.61 6点 虚空の糸
麻見和史
(2024/12/21 07:02登録)
今回の敵(犯人)は、都民を人質に警視庁を脅迫する凶悪な恐喝殺人犯「MH」
東京都民を1日1人ずつ殺害していく事を宣言し、身代金2億円を払えと要求する大胆不敵な奴です
現場に残された不可解な偽装工作、被害者が殺害かれた理由、身代金2億を巡る犯人と警察の攻防
見所の多い話で、リアリティとフィクションの塩梅が丁度いいのか程良い緊迫感が持続して楽しめる良作かと思います
(厳密には毛色がちょっと違いますが)ジェフリー・ディーヴァーの「リンカーン・ライム」シリーズに通じるものがあるなと思っており、新米女性刑事とぶっきらぼうなベテラン刑事のコンビ、さらにその仲間たちの活躍には今後も期待したい所です


No.60 7点 石の繭
麻見和史
(2024/12/21 06:47登録)
被害者をモルタルで固定した「トレミー」を名乗る猟奇殺人鬼と、それを追う警察の熾烈な攻防を描いた警察ミステリー物
監禁した被害者をモルタルを用いて殺害していく残忍性、わざわざ警察に連絡を取って挑発を繰り返す大胆さ、周到な準備で尻尾を掴ませない慎重さ。それらを兼ね備えた異常者「トレミー」のキャラクター性が話を盛り上げます
また、それに対する新米女性刑事と、寡黙でぶっきらぼうなベテラン刑事のコンビや、彼女らが所属する十一係の面々も個性豊かで、作中に度々ある係内での操作会議で要点・疑問点の洗い出しが行われる為に状況を理解し易いのも良かった
個人的に堅い警察ミステリーは苦手な方ですが、こちらは程よく読み易く、手に汗握る展開にも満足できる作品でした


No.59 4点 十戒
夕木春央
(2024/12/20 07:48登録)
犯人を見つけてはならない。島を出てはならない。30分以上人が集まってはならない。外部に事態を漏らしてはならない。etc.
島を吹き飛ばす大量の爆薬を盾に10のルールを課されるメンバー達。そして、メンバーが1人、また1人と殺されていく…
あらすじ的には満点に近いサスペンス小説として、前作「方舟」の事もあって期待は大きかったのですが、正直期待し過ぎたかもしれません
作中そこそこの緊迫感はあるものの、その真相はちょい肩透かし感がありました
大筋の流れは納得出来るし面白いと思うのですが、(私の読解力の問題かも分かりませんが)結局何だったの?って箇所もあって、結末にモヤモヤ感が残りました
とりあえず孤島に爆弾という舞台装置だけ整えて、それ有りきのストーリー展開って感じが拭えなかったです


No.58 7点 ファラオの密室
白川尚史
(2024/12/19 21:45登録)
当初、古代エジプトに想いを馳せる考古学物かと思い込んで食指が伸びなかった作品ですが、勘違いに気付いて改めて手に取ってみた
そんな本作は実際の所、古代エジプトを舞台に、当時の宗教感や死生観に基づいた特殊設定ミステリーの怪作である
死後の世界が明確な世界観の中、期間限定で現世に甦る事となった主人公が自らの死の謎を追い、やがて国を揺るがす陰謀が明らかになる壮大な物語です
密室トリックにしても、とある仕掛けの謎にしても「ん?」と思わずにいられない馬鹿馬鹿しさが孕んでいて若干馬鹿ミスの匂いもありつつ、終始真面目なミステリーというギャップが個人的には面白かった
特に主人公自身の秘密に対する解答は、さらっと書かれていた割に驚きもあり、叙述が効いてると思います


No.57 2点 学生街の殺人
東野圭吾
(2024/12/19 18:08登録)
東野圭吾としては初期の作品
読み易さはそこそこですが、いかんせん話が地味過ぎる気が…
特筆して語るような特徴に弱く、個人的にあえて語るなら人気がなくなってしまったかつての学生街の物寂しさと、そこに息付く人間関係くらいだろうか
そうゆう空気感の中で引き起こされる連続殺人の真相は決してつまらなくはなかったが、地味という印象を拭い去る事は叶いませんでした


No.56 7点 聖女の救済
東野圭吾
(2024/12/19 07:31登録)
「ガリレオ」シリーズとしては「容疑者Xの献身」に次いで好きな作品
被害者に毒を飲ませた方法が今回の肝となるわけだが、その毒殺トリックが非常に秀逸なのが理由です
秀逸というか執念が凄いというか…むしろ、忍耐力が凄まじいのか
ともあれ、このトリックが有り、それを踏まえた話の流れも完璧で、読み応え抜群で面白かったです


No.55 5点 魔弾の射手 天久鷹央の事件カルテ
知念実希人
(2024/12/19 07:16登録)
廃病院を舞台に、そこで立て続けに起きた飛び降り事件の真相を追う「事件カルテ」シリーズの一つ
勿論、真相は自殺ーーという事はなく殺人なわけで、被害者を突き落とした「不可視の弾丸」が事件の肝となる
結果的に、指先一つで人間を突き落としてみせた今回の「病」はなかなか興味深かったです
そんな病気があるんだ、と毎回知識欲というか好奇心がくすぐられる本シリーズですが、本書の病も人体の不思議という意味で非常に面白かった


No.54 5点 警察庁ノマド調査官 朝倉真冬 米沢ベニバナ殺人事件
鳴神響一
(2024/12/19 03:12登録)
疑惑の地へ秘密裏に派遣される特別調査官の役割を担う主人公が、現地を満喫しつつ事件を解決し、地元警察に蔓延る不正も暴く旅情ミステリーシリーズの3作目になります
山形県米沢市が舞台となっており、鉄壁のアリバイに挑むミステリー的な面白さがある一方で、温泉や観光施設の紹介を通じて現地の楽しみを読み手に伝えてくる旅行記的な面白さもある作品
ミステリーとしてのメイントリックがあまりパッとしない印象で正直弱い点や、山形県警の不正に関する部分が駆け足気味だった気がして、そこはミステリー好きとしては残念に感じた部分
とは言え、トラベルミステリーとしては比較的質が高いように感じたし、読み易い文章も相まって手軽に読める点は魅力かと思います


No.53 6点 天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟
知念実希人
(2024/12/19 02:36登録)
以前のレビューで、殺人事件を扱った「事件カルテ」と比べてあまり好みではないと言った「推理カルテ」の2冊目にあたる本書
毒を盛られたと訴えるトラック運転手、病棟を徘徊する吸血鬼の謎、病室に降臨した天使といった不思議な現象に対して、本シリーズの探偵役「天久鷹央」がズバリと診断を下します
相変わらず、病気とは一見関係なさそうな謎から驚きの病巣が指摘される辺り、シリーズ独特の面白みが感じられる
それに加えて本書の場合、性格というか人間性に難がある鷹央の意外な弱さ、人間臭さが描かれている点でもポイントが高いと思っています
あまり好みではない「推理カルテ」の中では例外的に好印象な1冊です


No.52 5点 狩人の悪夢
有栖川有栖
(2024/12/19 02:20登録)
良かれ悪かれ安定感のあるシリーズだと思います
今は使われていない廃屋で殺害された被害者、切り落とされた手首、落雷による倒木で道が塞がれるという不測の状況、そこにきて被害者のストーカーという最有力容疑者が見つかり解決は時間の問題かと思われる
手堅い謎が提示され、作中のセリフで言うところの「散らかった」状態を徐々に解きほぐしていく過程が楽しめる
正直、そこまで派手なトリックがあるわけても真相が意外という程でもない一方、場当たり的な対処でこの状況を作り出した犯人像はある意味でリアリティがあるなと思ったりもする
なにより「有栖川有栖」の話の作り方、語り方が良いからなのか一度手に取るとグイグイ読めてしまう魅力はあるように思います


No.51 3点 向日葵の咲かない夏
道尾秀介
(2024/12/19 02:02登録)
いわゆる「嫌ミス」を語る上で真っ先に挙げられるレベルで、その手の界隈ではかなり知られた作品
その辺りは踏まえた上である程度の覚悟を持って読んでみたが、若干、気分が…
主人公の少年含めアクの強い登場人物、被害者が○○に転生するSF的な展開、良かれ悪かれ作中に流れる不穏な空気等々、総じて作品としての雰囲気は独特です
しかも、話がクライマックスに向かうに連れてキャラクター(特に主人公)の性格的なヤバさが際立ってくるので余計に読むのが辛くなってくる
嫌ミスの名作と名高く、作中の雰囲気含めて合う合わないが両極端に分かれる作品ですが、私にはキツかったです


No.50 6点 カササギ殺人事件
アンソニー・ホロヴィッツ
(2024/12/19 01:38登録)
上巻のほとんどを費やす長編の作中作と、それを踏まえた現実の謎を追う下巻といった構成
近代における海外ミステリーの傑作としてミステリー好きからの評価も高い作品ですが、実際読んでみるとそのような評価にも納得がいく出来栄えに、ひとまず満足
「アガサ・クリスティ」の作品を思い起こさせる古き良き古典ミステリーの雰囲気を堪能出来る作中作、調べれば調べるほど癖の強さが浮き彫りになる著者の不審死
その両方に関して、上質なフーダニット(「誰がやったか?」)を楽しめるのが本作最大の魅力かと思います


No.49 7点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2024/12/19 01:21登録)
特殊設定のミステリーは数あれど、ゾンビ映画と殺人事件の組み合わせは異色な気がする
しかも、カプコンの有名タイトル「バイオハザード」を彷彿とさせる人災かつ、イカれた科学者(むしろテロリスト?)も登場するオマケ付き
そんなこんなでゾンビが溢れ出した極限状況下で、立て籠った建物内で人が死んでいく
一見取り合わせが悪そうに思えて、上手い具合にミステリーに落とし込まれており、特にメインのトリック辺りはシチュエーションを十全に活かした唯一無二の代物として満足感もあった
個人的に意外な人物が開幕早々に退場してしまう展開にも唖然としつつ、特殊設定物としてシリーズ通して今最も好きなタイトルの一つです


No.48 4点 葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
(2024/12/17 20:36登録)
綾辻行人らと同時期に新本格と呼ばれる作品を発表したミステリー作家・歌野晶午の代表作と言われ、叙述トリックやどんでん返しの分野において度々傑作と紹介される作品
その感想としては、確かに叙述トリックそのものは見事に決まっていると思います
ただ、一つの長編ミステリーとして面白かったか?と問われると正直言って微妙な所…
ミステリー的というよりサスペンス要素が強いストーリーで、前述のような仕掛けも加味して一読の価値ありだとは思いますが、二度三度と読み返したくなる魅力があるかと言われると私はNOです


No.47 6点 007 白紙委任状
ジェフリー・ディーヴァー
(2024/12/16 20:39登録)
「イアン・フレミング」が生み出した国際的な諜報部員"ジェームズ・ボンド"の活躍を描いたスパイ小説シリーズ「007」を、アメリカのミステリー小説第一人者「ジェフリー・ディーヴァー」が書くという一種のコラボ企画による作品
数千人規模の死傷者を見込んだ大規模テロを画策する謎の男〈アイリッシュマン〉。攻撃予定日とされる金曜日が迫る中、ボンドは〈アイリッシュマン〉の企みを止める事が出来るのか
ジェフリー・ディーヴァー自身、こういったクライム小説やサスペンス小説を多く手掛けている為か、この手のスパイ小説とも相性が良かったように思える
007の小説は本家はあまり読む機会に恵まれず、その意思を継いだ作家の作品の方が読む機会はあったのだが、「ジョン・ガードナー」が描いた007より緊迫感があり、「レイモンド・ベンスン」の映画に寄せたアクション要素多めの007とも一線を画す
個人的には今まで読んだどの007より007していた気がする


No.46 6点 殺した夫が帰ってきました
桜井美奈
(2024/12/16 00:17登録)
タイトルがすべてを物語っているように、DVに耐えかね崖から突き落とした筈の夫が5年後に姿を見せた事から始まるサスペンス
シンプルだが秀逸なタイトルで、読む前から興味を惹かれる役得(?)な作品だと思います
肝心の内容はと言うと、記憶喪失を自称する夫の不審な行動、それら一つ一つに過去が合わさり疑心暗鬼になる主人公の心情がじめっと描かれ、最後までほどよい緊張感が続く良作です
サスペンスと言えどもあまりハードになりすぎてないのが、逆に雰囲気に合ってたのかなと勝手に推測しています


No.45 5点 仮面山荘殺人事件
東野圭吾
(2024/12/16 00:05登録)
とある山荘に銃を持った銀行強盗が押し入る所から始まるサスペンス、身内の中の何者かによって妨害される脱出計画、そこにきて遂に殺人まで起こって混迷を極めていく二転三転のストーリーが楽しめる作品
東野圭吾の読み易い文章も相まって、スラスラと読めるのも魅力の一つ
ただし、個人的にはオチというか真相がそこまで好きになれなかったので満足とまでは評価出来ない
ミステリーというよりサスペンス物として、話の経過自体は面白かったです


No.44 7点 星降り山荘の殺人
倉知淳
(2024/12/15 23:51登録)
一時期、久しく離れていたミステリー小説に再度ハマるきっかけとして個人的な思い入れもある作品
典型的なクローズドサークル物で、雪山の山荘を扱った(いい意味で)古典的な作品です
さらにそこにミステリーサークルも絡んできたりして、いい塩梅に謎が提供される
また、作中には作者の註釈も随所で入りつつ物語が進行する為、話を理解し易いのもポイント
読書に馴染みが薄い層でも楽しみながら読み進められる作品で、ラストの推理パートで明らかにされる全てをひっくり返す真相も良い
いまだに根強く評価され続けるのも納得の名作かと思います


No.43 4点 乱鴉の島
有栖川有栖
(2024/12/15 23:25登録)
はっきり言って、派手なトリックがあるわけでもなければ、そこまで複雑怪奇な謎があるとも言い難い
招かれざる客という立場から深入り出来ないが、確実に『何か』を隠している島の人間達。その後、立て続けに殺人が発生するものの、話全体から見たら本書の謎はこの『何か』に集約されます
…が、どこか中途半端な印象があり、作品としての雰囲気は悪くなく、読者を読ませる力はある(と思う)だけに、インパクト不足が浮き彫りになっている感じがあります
ボリュームに中身が伴ってないというか、中編もしくはばっさり短編として本作が世に出ていれば評価は違ったかも知れないです

162中の書評を表示しています 101 - 120