| みりんさんの登録情報 | |
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| 平均点:6.66点 | 書評数:518件 |
| No.358 | 6点 | 蜘蛛男 江戸川乱歩 |
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(2024/10/09 11:03登録) 犯人やトリックは見え見えで前半で真相のほとんどが看破できてしまう。犯人の行動には必然性を感じないし、プロットの瑕疵にも突っ込みたくなる………のにどうしてこんなに夢中になって読んでしまうのか分からない。乱歩の卓越したストーリーテリングの力というものを見せつけられた。戦前にこんな特大のエンターテイメントがあれば少年たちが夢中になるのも当然だよねぇ。 |
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| No.357 | 8点 | プロジェクト・ヘイル・メアリー アンディ・ウィアー |
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(2024/10/07 22:26登録) 『星を継ぐもの』と並んでハードSFの暫定ツートップ。なぜそう言い切れるのか?それは私がこの2作しかSFを読んだことがないからである(^^) こんなに面白いジャンルであるならばもっと読もうかなSF。 ネタ改題案『星を断つもの-アストロファージ-』 (上)巻が特に面白い。記憶喪失の男が、徐々に記憶を取り戻しながら、ヘイルメアリー号の目的を思い出していく。己の知と技術を頼りに未知の生物の謎を解析していくプロセスが実にアカデミック。自分自身が普段研究で用いる解析理論や実験の手法が登場したりしてとても楽しい。星が違えど物理法則は宇宙共通。自然科学がいかに普遍性のある学問であるかを思い知らされる。問題が発生し、科学的な思考を重ねて解決に導くというサイクルが宇宙船という閉鎖空間の中でずっと繰り返されているだけなので、読む人によっては単調に感じるかもしれない。 【ややネタバレ】 博学で利発で勇敢でたくましく思えた主人公がその実、死を恐れる等身大の人間であったことが本作の最大のサプライズ。幾度も発生する謎の現象が科学的に解明される知的興奮。協力して困難に立ち向かうバディものとしての面白さ。この二つが絶妙なバランスでブレンドされた素晴らしい作品だと思います。 |
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| No.356 | 8点 | 花束は毒 織守きょうや |
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(2024/09/29 02:24登録) 冤罪をテーマにした探偵捜査小説。中盤は捜査プロセスが冗長的で内容も起伏に乏しく、あくびを噛み殺しながら読んでいると、ひさびさに背筋が凍るような読書体験をしました。それも衝撃は2度やってくるのです。これは油断していて良かった。 周りが敵になっても、たった1人信頼し続けてくれる人がいるだけでどれだけ心が救われるのか。というようなことを想像してしまいました。 【以下ネタバレ】 よくよく考えるとタイトルがあまりにも攻めすぎているため、鋭い方は早々に気付くかもしれません。それでも脅迫手紙の中の1通の内容が実に巧みに真相を覆い隠しています。怪しい人物は指摘できるかもしれませんが、その人物の執念と手紙の真の目的にまで気づけた方はレアだと思われます。私は木瀬と心情が連動しており、衝撃の連続でした(笑) |
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| No.355 | 6点 | 向日葵の咲かない夏 道尾秀介 |
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(2024/09/28 20:25登録) ま、まだ夏なんで滑り込みセーフ… タイトル「向日葵の咲かない夏」は、自分の世界に閉じこもって、結局抜け出せなかった主人公のことだったのかな。 どことなく『夏と花火と私の死体』感があったのでホラーに投票しとこ。 ひとつだけ腑に落ちないのは駅員さんとの会話だね。 |
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| No.354 | 7点 | 喜劇悲奇劇 泡坂妻夫 |
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(2024/09/27 11:08登録) 相変わらず奇術がお好きな泡坂妻夫の第6長編!第5長編『迷蝶の島』に引き続き、船内が舞台。 【以下鋭い方にはネタバレになるかも】 前作にはない楽しみとしては、奇術師集団であることを活かしたハウダニット。奇術師とミステリ作家って、聴衆を欺くトリックを思索し続けなければならないという点で親和性の高い職業ですな。 そしてなにより回文のオンパレード。ミステリの構造が回文そのものだったというところに本作最大の狙いがあるように思えました。ことごとく登場する回文にもよくぞここまで思いつくものだなと感心しましたが、何気に↓の虫暮部さんのオリジナル回文(?)がそれなりに物語の概略となっており、完成度が凄まじいです。 |
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| No.353 | 7点 | 人間椅子 江戸川乱歩 |
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(2024/09/24 10:08登録) 可愛らしいデザインの角川文庫のもので読みました。 『人間椅子』は乙女の本棚シリーズで読んでいたので再読。 初読時はよくぞこんなニッチな異常性癖を…と楽しみましたが、あの『芋虫』を読んでしまった後はまだまだ振り切れていないなと。感覚器官欠損の美学として『芋虫』は『人間椅子』の強化版です(私見)。そして、最後の最後でリアリズムというか、著者の中の理智が勝ってしまったような葛藤が読み取れる。 『目羅博士の不思議な犯罪』は鏡(模倣)の恐怖をテーマにしていて、怪奇短編『鏡地獄』が探偵小説寄りになったような感じか?これは両者引き分け。なんだかこの目羅博士、夢野久作の作品にも出てきそうな感じがする(笑) 『押絵と旅する男』も人ならぬものに恋煩った男の話。これもどこか『人でなしの恋』とダブる。老化はやはり人生における最大の敵ですな。 |
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| No.352 | 5点 | ポー詩集 エドガー・アラン・ポー |
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(2024/09/24 00:34登録) 短編『ライジーア』からポーの詩集に興味を持って読んだ。リズムや旋律、韻が大事な詩を翻訳版で読んで、果たして意味があるのか?それは知らん。 『大鴉』は詩人ポーが名声を得た出世作。愛するレノアを失った男はただの鴉を見るだけでも激情に駆られる。亡くなってしまった人はネバーモア(またとない)ゆえに正気ではいられない。うむ、こんな単純な解釈しかできん(^^;) 詩の内容がかろうじて理解できなくもないのは、私からするとこの『大鴉』と『アナベル・リイ』と『黄金卿』あたりか。 ポーは母親や義母、従姉妹の妻など、愛する女性達に尽く先立たれているそうです。その暗澹たる人生のためか、女性に関する詩は神秘的な美しさの陰で底知れぬ寂寥感を伴う詩ばかりですね。愛する女性の死を詠うポーの哀愁と憂鬱を感じ取れたらひとまずは良いのかな。 |
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| No.351 | 7点 | 黒猫・アッシャー家の崩壊 -ポー短編集Ⅰ ゴシック編- エドガー・アラン・ポー |
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(2024/09/23 20:18登録) 【注意】【感想の最後にダフネ・デュ・モーリア『レベッカ』のネタバレのようなものがあると思われる(うろ覚え)】 再読はほぼしない私だが、エドガー・アラン・ポーはお話について行くだけで精一杯なので2周するくらいがちょうど良い。巽孝之氏の解説を読んで結構満足。 『黒猫』は何度でも読める犯罪小説。 『赤き死の仮面』は初読時には雰囲気に惑わされていたが、7つの部屋は一体何を表しているのでしょうかね。最後が「死」を表しているのだとして、人生におけるターニングポイントのようなもの?それともすべて死にまつわる何か?うーんわからん。「仮面の人物に実体がなかった」というのも不思議だ。実体を伴わない方が恐怖が増大するというだけの理由でそうしたとは思えない。うーんわからん。結論:再読してもわからん。 『ライジーア』は意志は肉体を超越するということについてだけど。最後の"奇跡"については、ライジーアの意志なのか語り手の意志なのか、対象が謎ですよね。ポーの詩集も読んでみるかな。 『落とし穴と振り子』は幻想風味はなく、リアリティと臨場感溢れる脱出ホラー。まあまあ。 『ウィリアム・ウィルソン』はドッペルゲンガーを扱った恐怖小説。今読むとよくある話だなあと思ってしまいますが、やはりポーがこのジャンルの先駆者なのでしょう。 私の頭の中でガバガバゴシック方程式ができました。『ライジーア』+『アッシャー家の崩壊』=『レベッカ』 |
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| No.350 | 7点 | 黒蜥蜴 三島由紀夫 |
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(2024/09/20 22:58登録) 『金閣寺』を読んだ時に三島由紀夫が本サイトに登録されていて驚いた記憶があるのですが、『黒蜥蜴』のおかげだったのですね。 謎解き要素や怪奇趣味を薄めてロマンスを主軸にしたため、かなり別物になっています。戯曲版ゆえにセリフや演出がすこぶる洒落ていて、何度も読み返したくなるようなセリフがたくさんありました。 なんといってもルパン三世『カリオストロの城』の誰もが知る銭形警部のあの有名なセリフ!アレですよ!まさか元ネタが三島由紀夫だったとはね…(未調査) 原作だけでなく、こちらも絶対に読むべきですよ。あ〜『黒蜥蜴』の舞台どっかでやってねえかなあ… |
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| No.349 | 7点 | 心理試験 江戸川乱歩 |
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(2024/09/13 01:47登録) 本サイトに登録されている乱歩作品の中で最高評価を受けているのが本作。この雑味のないシンプルさと心理分析の納得感に起因しているのでしょう。罠の引っかかり方だけを抽出すれば犯人はただのアホにしか見えないところなのだが、犯人の行動原理を的確にプロファイリングした明智の賢さを実に巧みに示している点が流石乱歩だと思います。 【ネタバレのようなもの】 お金を半分だけ盗む→自演で交番に届ける もし仮に強盗目的であることが発覚しても、逮捕には繋がらない。これ何気に賢いなと思いました。これのせいで疑われたことを差し引いても、なかなかのトリックじゃあないですか? |
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| No.348 | 6点 | D坂の殺人事件 江戸川乱歩 |
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(2024/09/13 00:08登録) 日本最古の密室もの(1925)らしい。ソースはwikipedia(^^;) 海外ではポー、ドイル、ルルーなどが既に優れた密室を生み出していた中、本作の功績は「日本の家屋で密室を成立させるのは不可能」という定説を覆したことらしい。ほんとですか?じゃあ+1点しとくか。 全体的に『モルグ街の殺人』の影響が色濃く出ているのを感じますが、真相のぶっ飛び具合で遠く及んでいないという印象。明智小五郎という探偵が有名になりすぎてしまったのも一つの弊害か。 密室ものだけどその構築方法は肩透かしで、HowよりWhyの方がはるかに印象に残りました。 |
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| No.347 | 6点 | 黒蜥蜴 江戸川乱歩 |
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(2024/09/11 13:15登録) 明智ィ〜さすがにモブ盗賊の命の扱い酷くねえか?笑 流石に誘拐犯対名探偵の頭脳戦はご都合主義で子供騙しに感じてしまいましたが、私は好敵手から想い人へと変わってしまう黒衣婦人のヒロイン小説として楽しみました。最後のキスシーンで、毒を口移しにして共倒れエンドにしていたら、私の好みの結末でした。 三島由紀夫ってこういうのも好きなんだ、意外。三島由紀夫版も読まないとねえ… |
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| No.346 | 8点 | 芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション2 江戸川乱歩 |
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(2024/09/10 17:27登録) 表題作『芋虫』はあまりにも凄惨を極めた内容で衝撃を受けました。評点は『芋虫』だけの評価。 外界からの(性的)刺激を受信する感覚器官の欠損という点で『人間椅子』に通ずる異常性愛の形であると読み取ることもできます。 『人でなしの恋』は性愛の異常さでいえば、『芋虫』には遠く及びません(我基準)が、両作ともに残された妻は生涯罪の意識に苛まれることでしょう。 探偵小説的趣向が強いのは『夢遊病者の死』とせいぜい『双生児』くらいで他はほぼ怪奇小説。 『芋虫』と『人でなしの恋』以外は正直4〜6点ほどで、『踊る一寸法師』が結構よかったかな。元ネタのエドガー・アラン・ポー『ちんば蛙』も読まねばならん。 あと巻末の三津田先生の解説が良い。未収録の『陰獣』で解説を〆るほどお気に入りなのが面白い。 |
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| No.345 | 6点 | 暗黒星 江戸川乱歩 |
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(2024/09/10 01:57登録) このレベルのミスリードにすっかり騙されてしまうのは私くらいなものか…(苦笑) 手垢のついたプロットかもしれないが、少年の気持ちになって雰囲気を存分に楽しんだ。「暗黒星」とは明智小五郎にとってだけではなかった。伊志田一家にとっても、十年以上目に見えぬ脅威として鳴りを潜めていた。まさに隕石級の底知れぬ執念がそこにはあったということか。 |
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| No.344 | 6点 | 屋根裏の散歩者 江戸川乱歩 |
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(2024/09/09 22:40登録) 犯罪のもつ魅力に取り憑かれてしまった男。狂人の異常心理を扱った犯罪小説パートが80%、シンプルなトリックと明智小五郎の冴え渡る推理を楽しむ本格探偵小説パートが20%。どちらかというと前者が乱歩の持ち味かな〜という風に思います。こういうトリックも好きですけどね そういえば『陰獣』にもこんなやついたなあ。というか元ネタか。読む順番逆だったな。 |
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| No.343 | 7点 | 迷蝶の島 泡坂妻夫 |
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(2024/09/08 21:31登録) 長編は極めて本格プロットだった泡坂妻夫(たぶん)、第五長編ではじめてサスペンスに舵を取る。 清涼感あふれる青春の幕開けかと思いきや愛憎渦巻く三角関係へと発展し、中盤以降は船と孤島でのサバイバル。本格成分薄めでありながら、小説として大変面白くて一気読みしてしまいました。そして毎度アーサカさんに騙される私。 精神科医の分析がいい味出しています。逆にこれがなかったらアンフェアとまではいかなくても不満だったかも。 |
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| No.342 | 7点 | 煙の殺意 泡坂妻夫 |
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(2024/09/08 12:26登録) うーんこの人今のところハズレがない。すごい。 いつもの泡坂流逆説が楽しく、なかでも『椛山訪雪図』は芸術的な域の"騙し"に仕上がっています。『歯と胴』は短編集の中では一風変わった倒叙もの。某技術は1980年頃には既にあったのか…現代ほど浸透していたら、逆に特定には繋がらないだろうなと。『開橋式次第』の鮮やかな伏線と論理は『亜愛一郎の狼狽』を彷彿とさせ、読後清々しい気持ちになります。特に上記の3つが気に入り、泡坂短編集の最高傑作との評価にも頷けます。まだ短編4作しか読んでないけど。 |
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| No.341 | 7点 | 信仰 村田沙耶香 |
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(2024/09/07 13:20登録) 世の中には虚業(超広義)があまりにも多すぎますよね。コンサル、銀行、商社、保険、広告代理店など挙げ始めるとキリがありません。そして虚業ほど儲かるのがこの世の中です。 財やサービスで挙げるとブランド服・高級腕時計・葬式・結婚式などは私の中ではカルト宗教と変わりありません。商品の価値は材料、機能性、利便性などで評価されるべきであると切実に願っています。目に見えない幻想に金を使いたがらず、口癖は「原価はいくら?」である主人公ミキの考え方には甚く共感してしまいました。しかしながら、この考え方は『現実』を信仰している一種のカルトであるとこの作品は問いかけてきます。そうか、私も『幻想』を信仰できたらどれほど良かったのだろうかと思いを馳せるのです。まだまだ青臭い考えを捨てきれません。 |
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| No.340 | 6点 | チョコレートゲーム 岡嶋二人 |
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(2024/09/01 03:46登録) 昭和の推理作家協会受賞作。 ずっとひた隠しにされていた"チョコレートゲーム"が私にも馴染みのあるものだったとは… 中学校は社会から隔絶した閉塞空間。そんな歪な環境が時には大人も驚愕するほどの闇を生むことも…将来子育てをする際に心がけるべきなのでしょう。 いやしかしこの作家はやたらめったら読みやすい。会話中心だからかな? |
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| No.339 | 7点 | 殺人出産 村田沙耶香 |
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(2024/08/31 22:15登録) 『コンビニ人間』で衝撃を受けた村田沙耶香の奇想・異常・狂気の詰まったSF短編集。「10人出産すれば1人を殺すことが許される」という異次元の少子化対策を打ち出した日本。その制度に対する意見の割れ方が現代における死刑制度の比ではないことは想像に容易いですね。あまりにもショッキングなラストは『コンビニ人間』の狂気のラストを連想せずにはいられない。異常の描き方に著者の信念のようなものを感じる。 他にも生殖や生死に関する短編が3つ。1時間半ほどで読める満足度と完成度の高い短編集。 非ミステリ作家の中で今最も気になっている作家です。 |
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