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ミステリの祭典

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夢野久作全集 2
ちくま文庫 夢野久作全集

作家 夢野久作
出版日1992年06月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 みりん
(2024/10/15 00:36登録)
夢野久作が記者時代に記した関東大震災の1年後の東京のルポルタージュ。前半には江戸っ子の人口減少問題について論じられます。そこには「一般に或る人種が文化の絶頂に達すると人口が減少する」と書かれています。これには驚きました。この言説が1924年で既に議論の的になっていることにです。現代において、少子化の原因は様々ですが、先進国の大半が抱える問題であることを考慮すると、やはり文化の絶頂であることかなあと。文化の発展によって人間がゆとりを持ち、子孫の繁栄以外の方法で幸福を追求できるようになったことが1番なのではないでしょうか。と、こんな黴の生えた議論が丁度100年前から既に交わされていたのだと考えると感慨深いです。そして結婚相談所(当時は結婚媒介所)が存在していたことにも衝撃です。入会料5円、会見料5円、結婚成立料30円。現代基準ではどのくらいなのでしょう。本書を読まなければ、私は100年前の東京の姿など知る由もなかったでしょう。100年で科学技術は恐ろしく進化を遂げましたが、人間の性質というものはたいして変わりません。今とは何もかも違う、大昔だと思っていた100年前の日本にも現代とさほど変わりのない生活や慣習があったのだと大変勉強になりました。
いつもの怪奇小説をお求めの方はスルー推奨の巻です。

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