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ミステリの祭典

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プロジェクト・ヘイル・メアリー

作家 アンディ・ウィアー
出版日2021年12月
平均点8.00点
書評数4人

No.4 9点 rosebud
(2026/06/18 15:14登録)
<ネタバレ>
最近のSFはディストピアものや異星人と遭遇したら戦闘や戦争になり勝った負けたみたいな話が多いような気がする。特に映画なんかは。そんな中この小説のストーリーは極簡単に言うとディストピアになりそうな世界(宇宙)をファーストコンタクトした異星人と協力して回避するというものである。
この作品の作者アンディ・ウィアーはスタートレックの影響を強く受けているに強く感じる。
スタートレックTNG(The Next Generation)以降の作品は艦隊の誓いというものが物語の中核を担っている。艦隊の誓いの中で一番重要なのは「内政不干渉: いかなる文明の内部事情、政治、戦争にも介入してはならない」というもので、これにより異星人との紛争よりもいかに回避することが物語のクライマックスになる場合が多い。(それでも戦闘になる場合もあるのだが)
この作品で異星人とファーストコンタクトした際に無防備な相手に暴力を与えるのかとヒヤヒヤしたが、お互いが必死に意思疎通を図る行為は微笑ましかった。SFでこういうのを見たかったんだよという感じ。
物語が進むにつれて異星人のロッキーが献身的である意味どらえモン的で愛おしく感じるようになる。他民族と接した際に自分たちの価値観を押し付けるのではなく、相手のことを理解しようと努力する姿勢が素晴らしかった。この他民族との友情がこの作品のテーマの1つになっていると感じる。
私の場合、SFといえばスタートレックなのだが、スタートレックの価値観で描かれた作品はあまり見たことがない。
映画でもヒットしてかなり高い評価を得ているようだが、TNG的な価値観が受けたのではないかと思う。他民族に対し戦闘よりも融和なのである。

No.3 7点 メルカトル
(2024/11/28 22:33登録)
グレースは、真っ白い奇妙な部屋で、たった一人で目を覚ました。ロボットアームに看護されながらずいぶん長く寝ていたようで、自分の名前も思い出せなかったが、推測するに、どうやらここは地球ではないらしい……。断片的によみがえる記憶と科学知識から、彼は少しずつ真実を導き出す。ここは宇宙船〈ヘイル・メアリー〉号――。
Amazon内容紹介より。

もうSFは当分読まなくてもいいやと云う位堪能しました。特に前編は非常にエキサイティングな体験が出来ます。こういうのはSFならではですね。
筆致は誰にでも受け入れられやすく、リーダビリティに優れていて、難解になりそうな内容をエンターテインメントに昇華させています。長いですが、途中でダレることなく、読者に圧力を加える程の圧迫感がなく、程良いユーモアをも含んで飽くまでも中道を往くことに徹していると思います。

時に我々の科学的探究心や知的好奇心をくすぐり、ハードな面を見せますが、それでもストレスなく読み切る事が出来るのは原書と翻訳が上手い所以でしょう。過去と現在が行き来する構成もストーリー性を高める上で一役買っていると思います。最後の一行も良いですね。
希望と絶望の狭間に揺れる主人公に感情移入出来る事必至で、その意味でも良く出来た小説です。

No.2 8点 みりん
(2024/10/07 22:26登録)
『星を継ぐもの』と並んでハードSFの暫定ツートップ。なぜそう言い切れるのか?それは私がこの2作しかSFを読んだことがないからである(^^) こんなに面白いジャンルであるならばもっと読もうかなSF。 ネタ改題案『星を断つもの-アストロファージ-』

(上)巻が特に面白い。記憶喪失の男が、徐々に記憶を取り戻しながら、ヘイルメアリー号の目的を思い出していく。己の知と技術を頼りに未知の生物の謎を解析していくプロセスが実にアカデミック。自分自身が普段研究で用いる解析理論や実験の手法が登場したりしてとても楽しい。星が違えど物理法則は宇宙共通。自然科学がいかに普遍性のある学問であるかを思い知らされる。問題が発生し、科学的な思考を重ねて解決に導くというサイクルが宇宙船という閉鎖空間の中でずっと繰り返されているだけなので、読む人によっては単調に感じるかもしれない。

【ややネタバレ】


博学で利発で勇敢でたくましく思えた主人公がその実、死を恐れる等身大の人間であったことが本作の最大のサプライズ。幾度も発生する謎の現象が科学的に解明される知的興奮。協力して困難に立ち向かうバディものとしての面白さ。この二つが絶妙なバランスでブレンドされた素晴らしい作品だと思います。

No.1 8点 糸色女少
(2022/07/13 22:21登録)
道の生物の影響で太陽に異変が生じたために、急激に氷河期に突入しそうな近未来の地球。人類存続の危機に際して全世界規模での対策が始動するが、宇宙船ヘイル・メアリー号で宇宙へ送り出され、唯一生き残ったのは半ば記憶喪失状態にある一人の男だった。
どう考えても悲惨な状況だが、主人公は前向きなチャレンジ精神とユーモアを失わず、次々と起こる難問を前に、冷静な計算と科学的思考によって解決し、さらなる難問へと立ち向かっていく。
次第に記憶を取り戻しながら、恒星間飛行を続ける主人公は、やがて異星人と最初の接触を果たすことになる。苦労しながら意思の疎通を図るうちに、次第に両者の間には友情のようなものが芽生えていく。一方地球でのプロジェクトは、権力を集中させて強権的に推し進められていくが、指導者はその責任も十分に自覚している様子だ。物語の最後には目頭が熱くなる感動が待っている。

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