zusoさんの登録情報 | |
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平均点:6.25点 | 書評数:199件 |
No.199 | 7点 | 妻は忘れない 矢樹純 |
(2024/05/09 23:25登録) 人と人が織り成す綾が、見事にミステリとして結実している5編からなる短編集。 表題作は、夫にいずれ殺されると怯える妻の心を彼女の視点から掘り下げつつ、思わぬ着地点へと誘う。第二話と第四話では、価値観の相違や人との距離感の相違に起因するいら立ちや怖さが、伏線の効いたミステリに鮮やかに昇華されている。第三話は、我儘な青年の物語が一変する様がスリリングに描かれている。第五話では、恋に悩む大学生の息子を持つ母親を襲った惨事と、彼女がそれに対峙する姿を描き、驚かせつつ温もりも感じさせてくれる。 |
No.198 | 7点 | 神薙虚無最後の事件 紺野天龍 |
(2024/05/09 23:17登録) 二十年前のベストセラー「神薙虚無最後の事件」。実在した名探偵の活躍を記したシリーズの最終作で、未完のまま謎が残されていた。大学生の白兎と志希は、たまたま出会った作者の娘・御剣唯に頼まれて、大学の「名探偵倶楽部」のメンバーとともに謎解きに挑む。 作中作に多重推理、奇妙な構造の館と、数々のギミックを堪能できる。一方で、そうした技巧を取り払ってみると、そこには極めて真っ直ぐな物語が浮かび上がる。最初の一行に結びつく素敵な結末が、幸福を感じさせてくれる。 |
No.197 | 5点 | 化け物心中 蝉谷めぐ実 |
(2024/04/28 22:15登録) 冒頭から漂う異様なムード。一度取り憑いたら離れない鬼気迫る迫力。 中村座で起きた不可解な事件を通じて浮かび上がる、演じることに魅入られた者たちの業。読後しばらく放心状態。 |
No.196 | 7点 | 黄色い家 川上未映子 |
(2024/04/28 22:12登録) 様々な束縛によって歪んだ善意。そして絶望の闇に渦巻く悪意。 どんなに呪われたような日々であっても、そこには光が射し込む祈りもある。破滅に向かいながらも寄り添い生きる姿が激しく胸に迫る。 |
No.195 | 6点 | 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 山本巧次 |
(2024/04/15 22:23登録) 現代人がタイムトンネルを出入りして、江戸時代の目明として二重生活を送るという設定のシリーズもの。 現代人であることを隠すため主人公が努力するのが読みどころだが、意外なところでタイムパラドックスの話題が出ることもあり楽しい。 |
No.194 | 10点 | 白夜行 東野圭吾 |
(2024/04/15 22:20登録) 十九年前の事件が発端で、その頃小学生だった人物に、ずっと付きまとう事件の影が、ある周到さをもって次第に実態を現してくる。そして多様な登場人物が、それぞれに鎖状に絡まり、ほつれ合い最後には犯人へと繋がる。 そこまでの過程が、映画のカットバックのように経過していく。その時の流れが、タイトルの「白夜行」と調和しており素晴らしい。 |
No.193 | 6点 | アクセス 誉田哲也 |
(2024/04/01 22:34登録) 登録すれば携帯電話の料金が一切無料になるという不思議なプロバイダーから始まる物語で、タガの外れたドタバタ劇が小気味よく描かれている。キャラクターも個性的なライトタッチパニックホラー。 |
No.192 | 6点 | 闇祓 辻村深月 |
(2024/04/01 22:29登録) 謎の高校生・要へ親切に接した委員長・澪。そんな澪へ不自然な行動をとる要。部活の先輩・神原が澪の身を案じるが。悪意を持って人の心に宿る闇を増幅し、家族ごと追い詰める恐ろしい存在がすぐそばに。心の奥底まで入り込む恐怖に震えた。 |
No.191 | 6点 | 赤い部屋異聞 法月綸太郎 |
(2024/03/19 22:54登録) 作者が各媒体に発表した、古今東西の傑作ミステリにオマージュを捧げた短編を集成した作品集。 江戸川乱歩の有名短編を基にした表題作のように、オリジナル作品を捻りに捻ったものが勢ぞろい。元ネタと読み比べながら鑑賞すると楽しみは倍増するだろう。 |
No.190 | 6点 | 赤朽葉家の伝説 桜庭一樹 |
(2024/03/19 22:50登録) ミステリであると同時に「赤朽葉家」という旧家の女性たちの三代に渡る壮大な大河小説である。その豊饒な物語性は通常のミステリとは異質の強力な牽引力となって、未曽有の結末へと誘っていく。 |
No.189 | 7点 | 水車館の殺人 綾辻行人 |
(2024/03/07 22:21登録) トリックがクラシカルで美しいし、現在と過去の視点が交錯するところも良い。結末も幻想的な味があって、地味ではあるが作者の持ち味がストレートに出ている。 |
No.188 | 5点 | 匣の中の失楽 竹本健治 |
(2024/03/07 22:18登録) 登場人物の名前がみんな人形からとられているといった遊戯性や、記述の虚実が入れ子のように反転する構造など、極めて意欲的な作品。作者が24歳の時に書いた処女作であり問題作。 |
No.187 | 6点 | 太平洋の薔薇 笹本稜平 |
(2024/02/23 22:21登録) 灼熱のマラッカ、ベテラン船長の引退航海に、日本の老朽貨物船が謎のテロリスト集団に乗っ取られる。 冷戦時代に開発された、最強のウイルス兵器の謎、荒天の下、男たちの野望と憎しみが錯綜する海洋冒険小説で、複雑怪奇な国際事情が巧みに取り込まれている点も抜かりない。 |
No.186 | 6点 | パーフェクト・プラン 柳原慧 |
(2024/02/23 22:18登録) 「身代金ゼロ!せしめる金は5億円!」というそそる文句をキャッチフレーズに、誰も殺さず誰も損をしない誘拐計画を描いた、極めて前衛的なミステリ。 オンライン・トレードやハッキング、代理母などのキーワードがふんだんに散りばめられ、スピード感ある痛快さが最大の特徴。 |
No.185 | 6点 | 午前三時のルースター 垣根涼介 |
(2024/02/08 22:21登録) 旅行代理店勤務の主人公が、少年のベトナム行きにつきそい、彼の失踪した父親を捜し求める物語。 何者かによる妨害の中、主人公の親友とベトナム人運転手、ガイド代わりの娼婦らとチームを組んで冒険を繰り広げる展開がスリリング。車やバイクのこだわりが渋く、少年と父親の再開後の態度に感動させられる冒険小説。 |
No.184 | 6点 | 雪密室 法月綸太郎 |
(2024/02/08 22:15登録) 雪の離れで女性が殺されて、足跡は彼女のものと思われる一組しかない、という雪の密室トリックもの。 非常に洗練され最適化されており、ほとんど無駄なものがない。探偵の動きもよく描かれているし、トリックの出し方も際立っている。地味ではあるが、オーソドックスな本格ミステリの魅力が詰まっている。 |
No.183 | 5点 | 九度目の十八歳を迎えた君と 浅倉秋成 |
(2024/01/26 22:12登録) 主人公が、かつて思いを寄せた同級生が、ずっと十八歳を繰り返し続けているという謎をめぐるミステリ。彼女はなぜ十八歳のままなのか、なぜ周囲はおかしいと思わないのか。 時間SF的な解決が与えられるわけではないが、異常な設定を生かして鮮烈な青春小説とほろ苦い大小の小説が同時に進行する。二つが重なり合う結末が美しい。 |
No.182 | 6点 | 最悪 奥田英朗 |
(2024/01/26 22:05登録) それぞれの事情で精神的、経済的に追い詰められた町工場の社長、女性銀行員、パチプロの三人が、物語のある点で交わり、さらなる狂気の世界へと突入する。 三人が出会うまでの、エピソードを一つ一つ積み上げて、一人の人生がほんの些細なところから狂いだし、どんどん壊れていく様を諧謔味をきかせて描く部分もいいが、三人の主人公が出会う中盤以降のオフビートな展開もいい。 |
No.181 | 6点 | ダイヤル7をまわす時 泡坂妻夫 |
(2024/01/15 22:59登録) 元刑事が語り手となる犯人当て、貴重なトランプに飾られた死体の謎、同じ名前に惹かれ続ける女性、アトリエの主が殺された事件など、様々な謎をめぐる常識を一段も二弾も超越した論理展開に魅了される。 思わぬ角度からの衝撃は、いまだに色褪せていない。 |
No.180 | 7点 | 背の眼 道尾秀介 |
(2024/01/15 22:56登録) 猟奇殺人と心霊現象をを等価に置き、ふたつながらに論理で解き明かしていく。京極作品の影響も見られるが、主人公が心霊現象を探求する動機の切実さ、その心霊現象や陰惨な心象風景の描写などには、ホラーとしても読みどころがある。 |