home

ミステリの祭典

login
すみせごの贄
比嘉姉妹シリーズ(番外編含む)

作家 澤村伊智
出版日2024年03月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 パメル
(2025/10/22 19:10登録)
比嘉姉妹やオカルトライターの野崎昆が怪異に遭遇するなど、独特の不気味さが味わえる6編からなる短編集。
「たなわれしょうき」滋賀県のある村に伝わる民族伝承と、それに絡む人間の嫉妬と欺瞞が描かれる。後味の悪さと恐怖が巧妙にブレンドされている。
「戸栗魅姫の仕事」霊能者・戸栗魅姫が、迷宮化した温泉ホテルから脱出を試みる物語。閉所的な空間での心理的駆け引きや、過去の告白が緊迫感を生んでいる。虚言癖の少女との交流を通して浮き彫りにされていくドラマが印象的。
「火曜夕方の客」毎週火曜日に、決まってカレーを二人前買い、一口だけ食べて持ち帰る客の正体を探る物語。真相は重く悲しい現実であり、読後に無力感を覚える。
「くろがねのわざ」特撮映画の造形師が遺した秘密と、それを褒める者へと降りかかる呪いを描いている。芸術家のこだわり、業界への複雑な思いが描かれる人間模様。釈然としない部分もあるが個性的で印象に残る。
「とこよだけ」野崎昆が先輩ライターと共に訪れた無人島で、奇妙なキノコによる幻覚現象に巻き込まれる物語。幻覚の中に現れる大切な人の姿が、恐怖と切なさを同時に呼び起こす。
「すみせごの贄」料理研究家・辻村ゆかりが招かれた教室では、不気味な事件が相次ぎ、講師の料理人が謎の失踪を遂げていた。ゆかりが教室内の歪んだ人間関係を炙りだし、彼女の恐ろしさとカリスマ性が際立つ作品。

No.1 6点 人並由真
(2024/05/06 06:10登録)
(ネタバレなし)
「比嘉姉妹シリーズ(正確には、比嘉姉妹がいる世界観での連作シリーズ)」の短編集第三弾。

 今回は6本収録。

「たなわれしょうき」
……「僕」こと不登校の中学生・稲葉翔太は、父の指示でフリーライターの野崎崑に同行。ある村で彼の取材の助手を務めるが……。

「戸栗魅姫(とぐり みき)の仕事」
……「私」こと、中野に事務所謙店舗を構える霊能者・戸栗魅姫は、兵庫の老舗旅館「六輔光陽閣」を訪れた。だがそこで私は、二人の少女とともに不思議な体験に遭遇する。

「火曜夕方の客」
……高円寺の駅近くに、幾原青年が開いたカレー店「いくお」。そこには毎週の火曜日に奇妙な客があった?

「くろがねのわざ」
……80年代の日本映画界に、伝説的な仕事を残した特撮美術アーティストの鉄成生(くろがねなるお)。彼にはある秘話と、そしてジンクスがあった。

「とこよだけ」
……「俺」ことフリーライターの野崎崑は、先輩の心霊ライターの築井とともに、いわくのある四国周辺の小さな孤島・床代(とこしろ)島に向かうが……。

「すみせごの贄」
……「わたし」こと羽仁鈴菜は、元・銀座の高級料亭の料理長だった父・孝夫とともに、田舎で料理教室を開いていた。そして今日は不在の父のかわりに、実技講師の辻村ゆかりを迎えるが……。

バラエティ感に富んだ怪談連作。個人的に、ホラーショッカー度が特に高いと思うのは「とこよだけ」。ちなみにこれはできるなら本シリーズの現状までの長編をひととおり読んでからの方がいい……かも? 表題作はミステリ的な要素が強く、ちょっと感じが違うような……あんまり言わない方がいいね。
 シリーズファンなら、世界観の広がりも含めて、買いの一冊。

2レコード表示中です 書評