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ミステリの祭典

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八二一さんの登録情報
平均点:5.76点 書評数:431件

プロフィール| 書評

No.31 5点 占領都市ベルリン、生贄たちも夢を見る
ピエール・フライ
(2019/10/25 15:21登録)
ナチスから敗戦直後にかけてのドイツの世情を切り取っている。ミッシング・リンクの謎は平凡だが、被害女性5人の個性的な人生が興味深く描かれている。それにしても表紙はひどいな。


No.30 7点 川は静かに流れ
ジョン・ハート
(2019/10/16 21:09登録)
一度入った亀裂は、他人同士よりも身内の場合の方が深いもの。本作は、主人公の心の中の時が静かに流れてほしいと祈りたくなる家族小説である。
人間関係のジレンマを抱えた主人公の成長が感動的。お涙頂戴にとどまらない計算されたプロットは素晴らしい。


No.29 5点 忙しい死体
ドナルド・E・ウェストレイク
(2019/10/16 21:04登録)
ウェストレイクの作品には、時に笑わそうとするあまりの気負いがありがちですが、この作品は力を抜いて書いている感じがする。楽しいコミック・クライムなのだが硬い訳文で損している。ウェストレイク版「ハリーの災難」か。


No.28 9点 愚者(あほ)が出てくる、城塞(おしろ)が見える
ジャン=パトリック・マンシェット
(2019/10/16 21:01登録)
ロマン・ノワールの頂点。クールな狂気という作風がより鮮明になった新訳により傑作がよみがえった。中条氏の解説が丁寧。もっといい題名がありそう。これでもギリギリ許せるけど。


No.27 5点 TOKYO YEAR ZERO
デイヴィッド・ピース
(2019/10/11 19:54登録)
イメージを楽しむ作品。癖のある文体は読者を選ぶが、この文章が病みつきになる。史実とその背後で蠢く暗黒の世界を描ききった作品。


No.26 4点 15✖24
新城カズマ
(2019/10/11 19:52登録)
15人の視点から24時間の経過を追い、ツイッター的なスピード感で表現したスタイルが面白い。膨大な人物と物語が交差、交錯、衝突、並行の末に一つに収まる。最終章は知性と感情の双方を感動させる。


No.25 5点 庵堂三兄弟の聖職
真藤順丈
(2019/10/11 19:47登録)
第十五回日本ホラー小説大賞受賞作だが、いわゆるホラーを期待して読むと肩透かしを食らう。グロテスクに装飾された、兄弟の再生の物語。題材の選択、設定のふくらませかた、キャラクターなど、全てが奇跡的にうまく噛み合って生まれた、他に類のない作品。


No.24 6点 ルシアナ・Bの緩慢なる死
ギジェルモ・マルティネス
(2019/10/06 20:35登録)
ミステリのためのミステリをメタ方式で熟考する邪推する喜びの書。心理サスペンス調だが、一種のホラーとしても読める。南米は馬鹿にできないと思った作品。


No.23 4点 夢で殺した少女
ベネット・ダヴリン
(2019/10/06 20:31登録)
出だしからは予想もつかない着地点。薬の謎とトリップ中の映像がリンクし、疾走感に富むサスペンスに仕上がっている。ややオカルトがかった設定で、物語半ばで明かされるネタに思わず本を落としそうになる、衝撃のバカミス。人物造詣は今ひとつ。


No.22 5点 無伴奏
太田忠司
(2019/10/06 20:25登録)
ミステリの幅と奥行きを思い知る、しみじみと味わい深い作品。ハードボイルドだが、故郷へ帰った元警察官の感慨に情緒あり。


No.21 5点 死を騙る男
インガー・アッシュ・ウルフ
(2019/10/01 20:33登録)
小さな街の警察署が、広域殺人事件に巻き込まれる。心理描写、キャラ設定が秀逸。独創的な設定と圧倒的な迫力で物語に引き込まれる。主人公は六十代の女性警部補。痛む体に鞭打っての捜査は、つい応援したくなる。


No.20 5点 リトル・ブラザー
コリイ・ドクトロウ
(2019/10/01 20:30登録)
国家権力の横暴に若い力で対抗する、反骨精神あふれた青春小説。「自由」であることの意味を再確認させられる重いテーマでありながら、青春小説としてのライトな部分もしっかり残したエンターテインメント。


No.19 5点 冷血の彼方
マイケル・ジェネリン
(2019/10/01 20:27登録)
中年の女刑事ヤナと、ロシアのお坊ちゃん刑事の取り合わせの妙。「驚愕の」などという形容詞がつくような派手なストーリーではありませんが、地味なのに読ませる。スロヴァキアが身近に感じられるようになった。


No.18 4点 コンラッド・ハーストの正体
ケヴィン・ウィグノール
(2019/09/26 22:15登録)
あれよあれよという間に意外な方向に進む物語が、非常に皮肉で面白い。殺し屋の自分探しの旅。謀略・暗殺物語のみならず、純愛ものとして読めばまた一興。


No.17 5点 この世界、そして花火
ジム・トンプスン
(2019/09/26 22:12登録)
禁断の愛を描いた表題作他、暗黒ノワール作家のエッセンス満載。どん詰まり感に酔い、奇妙な味を愉しみ、ホラー作家としての可能性を再認識。


No.16 6点 極限捜査
オレン・スタインハウアー
(2019/09/26 22:10登録)
鋼鉄のワイヤーを張り詰めたような緊迫感が全篇を覆う、中年男の懊悩を描いた警察小説。とにかく最後の三十五ページが強烈。国家の独裁化が進む中で、アイロニーと恐怖に彩られた主人公の運命に固唾を呑んだ。


No.15 5点 ポルトガルの四月
浅暮三文
(2019/09/23 10:29登録)
シリアスで濃密な文体が、タッチはそのままスラップスティックと化していく奇妙さ、人の五感の奥深さが作者らしい変態さで表現されていて良い(誉め言葉です)。記憶を巡って右往左往する悪党たちがコミカルで楽しい。


No.14 5点 TOKYO BLACKOUT
福田和代
(2019/09/23 10:23登録)
一流のプログラマーが書き上げたかのような、無駄も無理も余剰もない精緻にして機能美に満ちたサスペンス。犯人の行動に納得できない点はあるが、アクション小説としても楽しませてくれる。


No.13 5点 緑の毒
桐野夏生
(2019/09/23 10:19登録)
男性優位社会の愚かな一面を連続レイプという犯罪を通して描く、滑稽小説。連続レイプ魔と被害者たちの大戦争。誰かが口をつぐんだり保身に走ったりは一切なしの自爆戦。怖いです。


No.12 5点 バイロケーション
法条遥
(2019/09/20 07:31登録)
緊密なルールに基づくホラーサスペンス。ロジカルに制御された緊迫した展開が全編を覆いつくす。ホラー的題材をSFミステリに仕立てており、幕切れも美しい。

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