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ミステリの祭典

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ことはさんの登録情報
平均点:6.19点 書評数:298件

プロフィール| 書評

No.58 4点 点と線
松本清張
(2020/03/07 02:42登録)
最初に……。「文春文庫」版がおすすめ。
挿絵付きだが、この絵が味があるんだよね。
また、解説の有栖川有栖の文章が的確(共感できる部分多々あり)。かなり否定してるんだよね。よく解説にこんな否定的な部分の多い文章をのせたなと思う。
作品は……。
社会派の先駆けという位置づけだが、読んでみると社会派の味わいはそれぼどない。
文体は簡潔できびきびしていて心地よい。無駄な描写はあまりなく、仮説と調査だけで物語がすすむ。これは社会派というより、本格の味わいだよね。
全体の流れでいうと、まず「なんでみんな心中って決めつけてるんだろう?」と思いながら読みすすめました。その結果……。えー、うそー、それだけー!? ここは全面否定。ありえない。
そして、いわゆる「4分間のトリック」。
これは評価します。「4分間のトリック」という言葉のせいで、犯人がしかけたトリックのように語られていることが多いように思うけど、「トリック」というより「手がかり」だよね。
対比されるべきなのは、例えば「エジプト十字架の謎」のあれとかでしょ!
「意外で魅力的な手がかり」として高評価します。
最後の問題は、やっぱりメイン・トリック。愕然としました。そんなの最初に気づけよ!って話です。
歴史的価値のような点でも、「点と線」をリスペクトしてるなぁと評価する作品が無いので、加点は無し。
5点にしようかとも思ったけど、心中の件がやっぱり腹立たしいので4点だ。


No.57 5点 まるで天使のような
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 02:17登録)
形式は私立探偵小説である。
私立探偵小説は、やっぱり「主人公に共感できるか」にかかっていると再認識した。主人公に共感できないのだ。ちょっと風変わりな主人公を眺めながら物語をおっていく感じ。微妙に物語にのれない。
ラストのサプライズは、どうかなぁ。狙いは嫌いじゃないけど、ガツンとこなかった。


No.56 7点 殺す風
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 02:10登録)
ミステリ的「解決」があるので、ミステリにジャンル分けするのは妥当だと思うが、最終盤まで、ほぼ普通小説。
失踪人がいて、どことなく不安感が漂うけれど、サスペンスというほど強烈でない。(佐藤正午の「ジャンプ」を思い出した。ちなみに「ジャンプ」はミステリではないと思う)
世界観としては、心地よいとも感じられる部分もあり、そのバランスがとても独特。
ミラーは代表作といわれることがある4作しか読んでいないが、中では1番好き。多くの人に勧められるとは思わないが、(細々とでも)評価されつづける作品だと思う。
なんとなく、チャンドラーのある作品を思い出した。


No.55 7点 狙った獣
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 01:56登録)
最初に誰がつけたのか、タイトルがいい。「狙った」という言葉の選択がよい。
ミステリをたくさん読んでから読むと、「このパターンか」と思う部分があるが、それは逆に先駆者として評価すべきと思う。
「どこが……」と指摘しづらいけれど、不安がかきたてられる描写もよし。
サスペンスの定番の良策だと思います。


No.54 5点 鉄の門
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 01:50登録)
冒頭数ページは、描写が印象的だったが、全体的には、たぶん「好みではない」ということなのだと思う。
登場人物が、みんな少し歪んでいる感じで、あまり魅力を感じなかった。(好きな人はその歪み方が面白いと思うのか?)
ストーリーも淡々とすすむ感じがして、終幕の狂気が見えてくる部分も、迫真性が感じられなかった。(好きな人は身につまされるのか?)
退屈はしなかったので、否定的な評価はしないが。
ロス・マクと共通する家庭の悲劇という評をみて、つらつら考えていたら、ラスト数行が「さむけ」と重なる気がして興味深かった。


No.53 5点 囚人の友
アンドリュウ・ガーヴ
(2020/03/01 18:16登録)
今回は舞台設定に凝った要素がないのが残念。
社会派の要素を入れようとしているのか、保護観察師が主人公。でもストーリーは型通りのサスペンスで、保護観察師の設定は物語の入り口なだけで、社会派風味はあまりなしです。
全編にわたりひとつひとつの段取りが丁寧で、しっかりガーヴ風味です。終盤はもうすっかりクロフツ!(それもガーヴの味だけどね)
でも展開の意外性はあまりない(それもガーヴ)
ガーヴの中では下の方かな。


No.52 5点 兵士の館
アンドリュウ・ガーヴ
(2020/03/01 18:08登録)
意識して読むと、これも3部構成。ちょうど転換点の事象が1/3,2/3で起きる。
今回の舞台設定はアイルランドの遺跡で、他の作品と比べると、ちょっと魅力が薄い。
他に今まで読んだ作品と少し違うのは、心理サスペンスというより社会派サスペンスといったほうがあう作風ということ。社会派風の部分が、ガーヴはつくりものめいてるなぁ。
主人公が戦うモチベーションが正義感だけなのも弱い。
ガーヴの中では、下の方だなぁ。


No.51 6点 カーテン ポアロ最後の事件
アガサ・クリスティー
(2020/02/22 17:57登録)
ん十年ぶりの再読。
これも「攻略作戦」にそそられての再読。「攻略作戦」で指摘されているノワールの味わいは「なるほど」とは思うけど、評価したいとは感じられませんでした。
思いついたのは、クイーンの「悪の起源」との類似。真似した/しないではなくて、たまたま同じテーマに対して物語をつくって、出来上がりがこうなるかという興味。とくに物語の収束のさせ方に、両巨匠の違いがあらわれていて面白いです。


No.50 4点 高い城の男
フィリップ・K・ディック
(2020/02/22 17:46登録)
虫暮部さんの意見にとても共感。付け加えることなし。
これ、世評が高いけど、なんでかなぁ。
「なるほど、好きな人はそういうところを楽しんでるんだ!」と腑に落ちたいんですよね。


No.49 6点 ユービック
フィリップ・K・ディック
(2020/02/22 17:42登録)
後半、読んでいてジョジョを思い出した。こんな敵、ジョジョにいたような? 荒木飛呂彦、ディック好きだったんだなぁ。
実に個性的で、あ、これ好きな人いるのわかる、と思うけど、私の好みと少しちがった。


No.48 3点 死の猟犬
アガサ・クリスティー
(2019/12/12 01:10登録)
これは駄目でした。
「検察側の証人」は、無駄なくよくできた好作だと思いますが、後半のホラーテイストの作品は全く駄目。「最後の降霊会」にいたっては、「どこを楽しめというのか?」と思ったほどです。超常現象をありという設定で、「はい、超常現象が起こりました!」といわれて、どうすればよいのか……。
「検察側の証人」がなければ2点にしていたところです。
「謎のクィン氏」は大好きなのですが、同一人物の作品とは思えない程です。翻訳によるところもあるのかなぁ。


No.47 7点 針の誘い
土屋隆夫
(2019/12/01 21:35登録)
再読。(ほとんど忘れていた)
無駄なく、ミステリのプロットだけという感じで清々しい。謎解きミステリファンならば、楽しめる作品だと思う。
ただ、もうちょっと試行錯誤があったほうがよい気がする。簡単に真相にたどりついている感はある。
また、土屋隆夫といえば、「一人の芭蕉の問題」の文学論争があるが、この作品の文学味は、ほぼ皆無。土屋隆夫の文学味は好みでないから好感。本作も千草検事の日常風景(特に冒頭数ページ)はまったく無意味に感じられる。
最後の犯人の独白は、現代でも通用する気がする。
気になるのは、真相を知って読むと(ネタバレ)あまりにも偶然が過ぎる目撃者はどうなの、と思う。


No.46 5点 群衆の悪魔
笠井潔
(2019/11/17 13:38登録)
当時のパリを描くことが主で、ミステリはほぼ付け足しの感じがした。
かなり昔の記憶なので、いま読んでどう思うかは疑問だけど、再読するのは気合がいるなぁ。
それにしても、今まで投稿無しとは!?


No.45 5点 熾天使の夏
笠井潔
(2019/11/17 13:35登録)
うん、ミステリではない。
矢吹駆ファンのための、キャラクター出自小説。
それも笠井潔なので、思想的出自。
ま、プロット的なものがなにもないのに読ませるのは流石。


No.44 7点 吸血鬼と精神分析
笠井潔
(2019/11/17 13:27登録)
精神分析の薀蓄は楽しめた。
ニコライ・イリイチの登場など、シリーズの大きな流れとしても面白い。
ナディアの精神状態についても楽しめる。
でもミステリ部分はどうかなぁ。だんだんミステリの楽しみが減じている気がする。
以降の作品も、連載後、単行本化していないけど、いつになるのやら。読みたいんだけどなぁ。
それにしても、投稿が1件しかないって!? 


No.43 7点 オイディプス症候群
笠井潔
(2019/11/17 13:20登録)
哲学者の密室を期待すると、思想部分とミステリ部分が乖離している気がする。
でもこの作品から、ナディアの心情にフォーカスしてきて、小説的な面白さを出そうとしているように思う。
シリーズでは、この時点では一番下と思う。6点と迷った7点。
雑誌連載時は、駆が島にわたっていないとのことで、いつか「初版版」なんてでないかなぁ。雑誌連載時のほうが面白いって意見もあるみたいだしね。


No.42 9点 哲学者の密室
笠井潔
(2019/11/17 13:16登録)
思想対決とミステリ論ががっちり有機的に結びついていて、シリーズ最高傑作でしょう。「竜の密室」「ジークフリートの密室」なんて比喩でミステリ論を展開しつつ、それが作品内の事件にリンクしていくさまは、見事な構築性を感じさせる。
個々の事件のトリックがいまひとつなのが残念だけど、この作品のみの突出した個性を評価します。


No.41 7点 薔薇の女
笠井潔
(2019/11/17 13:07登録)
ミステリ的には、矢吹シリーズ、初期3作では最も面白かった。ただ、思想対決という独特のカラーが薄れて、普通のミステリに近づいていると思う。作者もそれがわかっていて、シリーズが一旦中断したのだと思う。
そういえば、この作品を読んだのは「天使・黙示・薔薇」という合本で、京都旅行で目にして買ったのだっけ。旅行は今で言う聖地巡礼で、その作品は「占星術殺人事件」だった。アゾート殺人に似た本書を、そんな流れで買ったのも、奇妙な縁ですなぁ。


No.40 7点 サマー・アポカリプス
笠井潔
(2019/11/17 13:02登録)
思想対決については、1作目より有機的に絡んでいて、なかなか読ませる。ミステリ部分は、犯行方法が迂遠にすぎる気がするが、許容範囲かな。安定感があるので、矢吹シリーズでは代表作になるのもわかる。


No.39 7点 バイバイ、エンジェル
笠井潔
(2019/11/17 12:58登録)
「推理方法は現象学的還元」というガジェットが、まず魅力的。
翻訳調のかたい文章も作風にあっていて、ヴァン・ダインが好きだった自分としては好感。
ただ、思想対決は、1作目だけあって、まだミステリ部分とだいぶ乖離している気がする。それでも異様な熱量がある作品で、面白い。

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