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ミステリの祭典

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真鍮の家
エラリイ・クイーン

作家 エラリイ・クイーン
出版日1976年03月
平均点5.00点
書評数7人

No.7 4点 HORNET
(2024/07/15 15:41登録)
貴金属商の資産家、ヘンドリック老人が、お互いに面識もない6人に、自分の遺産を譲りたいと提案し、一堂に呼び寄せた。そのうちの一人は新婚のクイーン警視の妻・ジェシイ。大いに猜疑心を抱えながらも招待に応じたクイーン夫妻だったが、ヘンドリック老人が何者かに襲われる―

 手垢のついた、というかある意味定番の舞台設定。それなりに雰囲気も作られていて、前半はなかなか面白かったのだが、今回の探偵役・クイーン警視のやきもきする立ち回りと、次第にメインになって来る「真鍮はどこに?」の謎にイマイチ興趣が乗らず、後半は惰性で読むような気分になってしまった。
 事件のからくりもそれなりに工夫を凝らしてはあると思うが…もってまわった解決への道のりに、ちょっと疲れてしまう感じだった。

No.6 7点 虫暮部
(2021/01/21 12:05登録)
 実はEQの長編を一気読み出来たのは初めてだ。鋭さには欠けるが妙に読み易い面白さがある。殺人事件の調査より遺産探しを優先しているようで、クイーン元警視の態度にイライラ(ニヤニヤ?)。殺人の真相には結構驚いたけど遺産のオチはなんだそりゃ。
 招待状の文面は変。“来着または不参をもって返事と承知”と言っても、日時指定が無いから“不参”の判断が出来ないでしょう。

No.5 4点 レッドキング
(2020/12/08 00:59登録)
朽ちかけた暗鬱な古豪邸。謎の招待を受けた客達。莫大な遺贈を申し出る怪鳥の如き盲主人とフランケンシュタインの様な従者・・おお何と堂々たる超本格ミステリの構え、屋敷連続殺人物の匂い・・でも、あまり評判聞かないタイトルだから、きっと「竜頭蛇尾」なんだろなと期待せずに読んだら・・・蛇は蛇でも「ツチノコのしっぽ」位の面白さはあった、かな。

No.4 3点 ことは
(2019/09/07 00:53登録)
ン十年ぶりの再読。
これはいまひとつだなぁ。うん、クイーン長編38作中で最低評価確定です。
前半はひねくれた設定で退屈しないけれど、中盤、殺人と宝探しとで興味が分散してしまうし、クイーン警視の推理で盛り返しても、ラストの解決が説得力がないなぁ。初期の鮮やかな論理や、奇抜な手がかりはどこへいった……。中期の小説としての厚みもないし……。

No.3 5点 クリスティ再読
(2017/02/04 12:28登録)
奇人の老大金持ちの「真鍮の家」に集められた6人の男女。それはこの老人の遺産600万ドルを誰に与えるか、を決めようとする試験だった...集められた男女の身元と選ばれた真の目的は?遺産はどこに隠されているか?老人を襲撃&殺害したのはだれか??
というわけで、プロットは「おっ」となるくらいにキャッチー。エラリイじゃなくて父親の警視(退職後)が、遺産のありかをめぐっていろいろアクティブに推理&駆け引きしていくのも、興味深く読める。エラリーみたいに名探偵の色が付きすぎているキャラっていうのは、意外にアクティブに動かしにくいものだから、これは好判断だと思う。というわけで、こりゃ「いい作品では?」と思わなくもない。けどね、一応のオチが付いたあと最終章で、家に戻るとエラリイがいて、安楽椅子で真相を推理、という仕掛けになっているんだけど....これがちょいと無理があったようだ。やはり「奇人の遺産はどこに?」ってテーマで「イズレイル・ガウの誉れ」を越えるのは難しい気がするなぁ。

(大したことではないですが少しバレます)
最後にエラリイがいろいろ解きあかすけど、面白い殺人の真相か、というとそうでもない(まあこれはよい)。本作は結構いろいろな謎があるんだけど、6人は老人の隠し子だったのか?それとも復讐対象だったのか?600万ドルの遺産はどこにいったのか?とかオチのうまくついていない要素が目立つようだ。
なので頑張って引っ張ったわりに、がっかり感を否定できない。「マルタの鷹」なら石膏の模型でもいいんだけどね。やはり「愚者の金」が「ほんものの金」に、「ほんものの金」が「真鍮」に転化するようなスペクタクルを期待してしまうのは、読者のさがというものだ...

No.2 7点 Tetchy
(2012/11/26 19:58登録)
まず驚きなのがリチャード・クイーン警視が結婚したという幕開けだ。退職した警視のお相手は『クイーン警視自身の事件』で慕うようになったジェシイ・シャーウッド!いやあ、あの結末から7作目で結婚だとはまさに想定外。その間の作品でジェッシイとの付き合いが書かれていなかっただけに驚きだ。

さてこのリチャード・クイーン警視とその仲間たちが挑む謎は3つ。
1つはヘンドリック・ブラス氏は何故面識のない6人の人物に遺産を相続しようと決めたのか?
2つ目はブラス氏が云った600万ドルの遺産とはいったい何処にあるのか?
3つ目は一体誰がブラス氏を殺したのか?

今回鳴りを潜めていたエラリイは最終章で登場し、一気に事件の真相と真犯人を突き止める。『クイーン警視自身の事件』ではエラリイの登場無しで警視のみで解決していただけに今回も同趣向だと思っていただけにこれには驚いた。つまり作者はシリーズそのものをミスディレクションに用いたとも云える。そう思うと本当にクイーンは本格ミステリの鬼だな。

ただ識者による情報によれば本書もまた代作者の手による物らしい。『第八の日』、『三角形の第四辺』を手掛けたエイブラハム・デイヴィッドスンが書いたとのことだが、全く違和感を覚えなかった。プロットはダネイを纏めているとはいえ、リチャード・クイーン警視を主役に物語を進める技量はよほどクイーンの諸作に精通していないと書けないだろう。特に『クイーン警視自身の事件』のエピソードを膨らませてクイーン警視が本作で結婚をするという長きシリーズの中でも大きなイベントがあり、しかも終章でようやくエラリイが登場して事件の真相を解き明かすという憎い演出など晩年期のクイーン作品の中でも非常に特徴ある作品だと思う。また5Wで表現される各章の章題もまさにクイーンならではではないか。

もはやライツヴィルシリーズを読み終えてこれからの作品は前作読破に向けて、消化試合的読書になるかと思っていたが、こんな佳作があるからクイーンは全くもって侮れないと思いを新たにした作品だ。

No.1 5点
(2011/05/07 13:00登録)
『クイーン警視自身の事件』の続編となる作品です。警視が退職して再婚した話は、同時期の他作品との整合性を全く無視しています。まあ、クイーンは個々の作品の内部では非常に論理的であるにもかかわらず、ニッキー・ポーターの設定等、作品間では平気で矛盾したことを書いているのが、妙なところです。本作でもクイーン元警視夫妻が活躍しますが、今回は最終章で出てくるエラリーに、事件の謎の全面的な解明はゆだねられます。
最初に読んだ時はあまり冴えないように思ったのですが、再読してみるとクイーン警視の推理にも説得力はありますし、さらにそれをひっくり返していく構成はなかなか楽しめました。不思議な雰囲気もある館モノですが、その館自体を慎重に解体していくことになるというところにもひねくれぶりは見られます。殺人未遂に続いて殺人が起こるのに、中心的な謎はむしろ宝探しだというのも、妙なところです。ただし、事件の元になる館の主人の行動心理が分析されていない点は不満です。

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