home

ミステリの祭典

login
ことはさんの登録情報
平均点:6.28点 書評数:254件

プロフィール| 書評

No.54 5点 鉄の門
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 01:50登録)
冒頭数ページは、描写が印象的だったが、全体的には、たぶん「好みではない」ということなのだと思う。
登場人物が、みんな少し歪んでいる感じで、あまり魅力を感じなかった。(好きな人はその歪み方が面白いと思うのか?)
ストーリーも淡々とすすむ感じがして、終幕の狂気が見えてくる部分も、迫真性が感じられなかった。(好きな人は身につまされるのか?)
退屈はしなかったので、否定的な評価はしないが。
ロス・マクと共通する家庭の悲劇という評をみて、つらつら考えていたら、ラスト数行が「さむけ」と重なる気がして興味深かった。


No.53 5点 囚人の友
アンドリュウ・ガーヴ
(2020/03/01 18:16登録)
今回は舞台設定に凝った要素がないのが残念。
社会派の要素を入れようとしているのか、保護観察師が主人公。でもストーリーは型通りのサスペンスで、保護観察師の設定は物語の入り口なだけで、社会派風味はあまりなしです。
全編にわたりひとつひとつの段取りが丁寧で、しっかりガーヴ風味です。終盤はもうすっかりクロフツ!(それもガーヴの味だけどね)
でも展開の意外性はあまりない(それもガーヴ)
ガーヴの中では下の方かな。


No.52 5点 兵士の館
アンドリュウ・ガーヴ
(2020/03/01 18:08登録)
意識して読むと、これも3部構成。ちょうど転換点の事象が1/3,2/3で起きる。
今回の舞台設定はアイルランドの遺跡で、他の作品と比べると、ちょっと魅力が薄い。
他に今まで読んだ作品と少し違うのは、心理サスペンスというより社会派サスペンスといったほうがあう作風ということ。社会派風の部分が、ガーヴはつくりものめいてるなぁ。
主人公が戦うモチベーションが正義感だけなのも弱い。
ガーヴの中では、下の方だなぁ。


No.51 6点 カーテン ポアロ最後の事件
アガサ・クリスティー
(2020/02/22 17:57登録)
ん十年ぶりの再読。
これも「攻略作戦」にそそられての再読。「攻略作戦」で指摘されているノワールの味わいは「なるほど」とは思うけど、評価したいとは感じられませんでした。
思いついたのは、クイーンの「悪の起源」との類似。真似した/しないではなくて、たまたま同じテーマに対して物語をつくって、出来上がりがこうなるかという興味。とくに物語の収束のさせ方に、両巨匠の違いがあらわれていて面白いです。


No.50 4点 高い城の男
フィリップ・K・ディック
(2020/02/22 17:46登録)
虫暮部さんの意見にとても共感。付け加えることなし。
これ、世評が高いけど、なんでかなぁ。
「なるほど、好きな人はそういうところを楽しんでるんだ!」と腑に落ちたいんですよね。


No.49 6点 ユービック
フィリップ・K・ディック
(2020/02/22 17:42登録)
後半、読んでいてジョジョを思い出した。こんな敵、ジョジョにいたような? 荒木飛呂彦、ディック好きだったんだなぁ。
実に個性的で、あ、これ好きな人いるのわかる、と思うけど、私の好みと少しちがった。


No.48 3点 死の猟犬
アガサ・クリスティー
(2019/12/12 01:10登録)
これは駄目でした。
「検察側の証人」は、無駄なくよくできた好作だと思いますが、後半のホラーテイストの作品は全く駄目。「最後の降霊会」にいたっては、「どこを楽しめというのか?」と思ったほどです。超常現象をありという設定で、「はい、超常現象が起こりました!」といわれて、どうすればよいのか……。
「検察側の証人」がなければ2点にしていたところです。
「謎のクィン氏」は大好きなのですが、同一人物の作品とは思えない程です。翻訳によるところもあるのかなぁ。


No.47 7点 針の誘い
土屋隆夫
(2019/12/01 21:35登録)
再読。(ほとんど忘れていた)
無駄なく、ミステリのプロットだけという感じで清々しい。謎解きミステリファンならば、楽しめる作品だと思う。
ただ、もうちょっと試行錯誤があったほうがよい気がする。簡単に真相にたどりついている感はある。
また、土屋隆夫といえば、「一人の芭蕉の問題」の文学論争があるが、この作品の文学味は、ほぼ皆無。土屋隆夫の文学味は好みでないから好感。本作も千草検事の日常風景(特に冒頭数ページ)はまったく無意味に感じられる。
最後の犯人の独白は、現代でも通用する気がする。
気になるのは、真相を知って読むと(ネタバレ)あまりにも偶然が過ぎる目撃者はどうなの、と思う。


No.46 5点 群衆の悪魔
笠井潔
(2019/11/17 13:38登録)
当時のパリを描くことが主で、ミステリはほぼ付け足しの感じがした。
かなり昔の記憶なので、いま読んでどう思うかは疑問だけど、再読するのは気合がいるなぁ。
それにしても、今まで投稿無しとは!?


No.45 5点 熾天使の夏
笠井潔
(2019/11/17 13:35登録)
うん、ミステリではない。
矢吹駆ファンのための、キャラクター出自小説。
それも笠井潔なので、思想的出自。
ま、プロット的なものがなにもないのに読ませるのは流石。


No.44 7点 吸血鬼と精神分析
笠井潔
(2019/11/17 13:27登録)
精神分析の薀蓄は楽しめた。
ニコライ・イリイチの登場など、シリーズの大きな流れとしても面白い。
ナディアの精神状態についても楽しめる。
でもミステリ部分はどうかなぁ。だんだんミステリの楽しみが減じている気がする。
以降の作品も、連載後、単行本化していないけど、いつになるのやら。読みたいんだけどなぁ。
それにしても、投稿が1件しかないって!? 


No.43 7点 オイディプス症候群
笠井潔
(2019/11/17 13:20登録)
哲学者の密室を期待すると、思想部分とミステリ部分が乖離している気がする。
でもこの作品から、ナディアの心情にフォーカスしてきて、小説的な面白さを出そうとしているように思う。
シリーズでは、この時点では一番下と思う。6点と迷った7点。
雑誌連載時は、駆が島にわたっていないとのことで、いつか「初版版」なんてでないかなぁ。雑誌連載時のほうが面白いって意見もあるみたいだしね。


No.42 9点 哲学者の密室
笠井潔
(2019/11/17 13:16登録)
思想対決とミステリ論ががっちり有機的に結びついていて、シリーズ最高傑作でしょう。「竜の密室」「ジークフリートの密室」なんて比喩でミステリ論を展開しつつ、それが作品内の事件にリンクしていくさまは、見事な構築性を感じさせる。
個々の事件のトリックがいまひとつなのが残念だけど、この作品のみの突出した個性を評価します。


No.41 7点 薔薇の女
笠井潔
(2019/11/17 13:07登録)
ミステリ的には、矢吹シリーズ、初期3作では最も面白かった。ただ、思想対決という独特のカラーが薄れて、普通のミステリに近づいていると思う。作者もそれがわかっていて、シリーズが一旦中断したのだと思う。
そういえば、この作品を読んだのは「天使・黙示・薔薇」という合本で、京都旅行で目にして買ったのだっけ。旅行は今で言う聖地巡礼で、その作品は「占星術殺人事件」だった。アゾート殺人に似た本書を、そんな流れで買ったのも、奇妙な縁ですなぁ。


No.40 7点 サマー・アポカリプス
笠井潔
(2019/11/17 13:02登録)
思想対決については、1作目より有機的に絡んでいて、なかなか読ませる。ミステリ部分は、犯行方法が迂遠にすぎる気がするが、許容範囲かな。安定感があるので、矢吹シリーズでは代表作になるのもわかる。


No.39 7点 バイバイ、エンジェル
笠井潔
(2019/11/17 12:58登録)
「推理方法は現象学的還元」というガジェットが、まず魅力的。
翻訳調のかたい文章も作風にあっていて、ヴァン・ダインが好きだった自分としては好感。
ただ、思想対決は、1作目だけあって、まだミステリ部分とだいぶ乖離している気がする。それでも異様な熱量がある作品で、面白い。


No.38 4点 倒錯のロンド
折原一
(2019/11/17 01:35登録)
叙述トリックは大好きです。
しかし、これはだめだった(面白く感じられなかった)もののひとつ。
なにがだめかって、叙述トリックが明かされるまでのストーリーが全くのれない。陰鬱なサイコ風の話で、仕掛けだけを楽しみに読みましたが、だめでした。仕掛けは悪くないんだけど、仕掛けだけのために(私の好みでは)つまらない話を読まされても、なんだかなぁという感じです。
ううむ、折原一は何作か読んでいるけど、こっち系(サイコ系)の話はまったく相性が悪くて、楽しめないなぁ。パロディ色の強い密室ものは楽しめるんだけどなぁ。


No.37 3点 七回死んだ男
西澤保彦
(2019/11/17 01:26登録)
世評では高評価だけど、自分はまったく楽しめなかった作品って、結構ありますが、このサイトでの点数と、自分の読後感で、一番乖離があるのがこの作品。
まず、何度も似たような話が続く展開が飽きるし、なにしろ、語り口が受け付けない。上滑りな口調で、事件がどうなってもどうでもよくなってしまった。(語り口に対するコメントがまるでないのが意外。これってわたしだけ?)
そのせいか、全体の趣向も「あ、そうなの」といった感じでまったくひびかない。
やはり作風の相性ってあるんだなぁと思う。


No.36 8点 午前零時のフーガ
レジナルド・ヒル
(2019/11/12 00:34登録)
あぁ、とうとう(既訳の)ダルジール・シリーズを読み終わってしまった。
今回も(タイトル通り)フーガのように重層的なプロット。同一時間を並行的に4つくらい進行させる。作者が70歳過ぎの作品なのに、全然耄碌していないなぁ。もっと生きて新作を書いて欲しかったよ。
ダルジールは、前々作の怪我から少しずつ調子を取り戻し、本作のラストで完全復活という感じ。次作があれば、またダルジールの活躍が見れたのにと思う。
最終章は、ノヴェロとの会話でしんみりして、パブで締めくくりと、いい感じだし、エピローグも「そうくるかぁ」という感じでよい。
シリーズでも上位の出来です。
でも、なんであまり読まれていないかなぁ。このサイトで(ヒル作品全体で)この投稿数なのは寂しい。英国小説らしい皮肉めいたユーモアが全編にきいていて、読んでいる間、実に楽しいのに。
例えば、7年前の事件に関わりを持たされたダルジールの台詞がこう。
「このショーは7年もロングランを続けていて、わたしはたった今、舞台の袖から迷い込んだばかりだ」
ジャンル小説にくくれないからかもしれない。「完璧な絵画」以降のシリーズは、謎解き/警察小説のテイストの群像劇になっているからなぁ。
ここはひとつヒル推しで、こつこつ書評を書いていこう。


No.35 6点 忘られぬ死
アガサ・クリスティー
(2019/11/04 00:48登録)
これも評価が難しい。
最後に明かされる真相の構図は、確かに予想外で驚かされた。でもそれが心地よい驚きか、肩透かしかは微妙なところ。否定的な人も出そう。私はやや肯定的。
各登場人物の心理の描きこみもされているが、私には少し冗長。(冗長に感じるところがクリスティー好きではないところですな)
トリックについては「誰か気付くよ」と思うので、かなり否定的。
5点とまよった6点。

254中の書評を表示しています 201 - 220