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ミステリの祭典

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死は万病を癒す薬
ダルジール警視

作家 レジナルド・ヒル
出版日2009年11月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 5点 nukkam
(2022/02/27 23:13登録)
(ネタバレなしです) 2008年発表のダルジールシリーズ第21作の本格派推理小説です。ハヤカワポケットブック版の巻末解説では「黄金時代の探偵小説さながら、ひねりにつぐひねりの謎解きを堪能できる」と紹介してありますが、全体の1/3を占める第一巻は事件がなかなか起きず黄金時代どころかミステリーらしささえほとんど感じられないプロット展開が辛かったです。第二巻以降からようやくミステリーらしくなり、21世紀に書かれたシリーズ作品では最も本格派らしい作品だと思います。とはいえ黄金時代の多くの本格派のように名探偵が容疑者たちを一堂に集めて名推理を披露して事件解決というパターンにはなりませんけど。またkanamoriさんのご講評で指摘されているように、アガサ・クリスティーの「ホロー荘の殺人」(1954年)の犯人の正体に直結するネタバレをやってしまっているのが残念です。下品な言葉遊びを多用しているのがこの作者らしいですが、本書ではダルジールだけでなく女性たちにも(何と10歳の少女にまで)そういう発言をさせています。その1人のシャーロット・ヘイウッドがダルジールと初めて出会った時にダルジールが「アンディ・ディールです」と自己紹介するのに読者は違和感を覚えるかもしれません(他の場面ではダルジールと名乗る)。それは会話の締め括りで「ディー・エル。間違えないようにな」と語るのでこうなってます。「四月の屍衣」(1975年)でも「Dalziel」をディーエルと発音することが正しいと説明されていましたが、初めにダルジールと翻訳して紹介したからその後の翻訳出版もダルジールのまま押し通した国内出版社の方針(個人的には作者の意向に反する方針だと思ってます)のおかげでややこしいことになってます。

No.3 7点 ことは
(2020/04/14 00:34登録)
ダルジール・シリーズで、クリスティ的なクローズド・サークルをやるとこうなるのか。
前半は、シリーズ・キャラでない人物視点がかなり長く(退屈ではないけど)いつもの楽しみとちがって、ちょっと戸惑った。
ダルジールは、まだ調子がいまひとつで、まるでパスコーが上司のよう。
ルートの件やら、ダルジールの暗躍(?)など、飽かずに楽しめたけど、長さの割にはインパクトはないかな。これは、(厚さのため)シリーズ・ファンでないと途中で飽きてしまうかも。

No.2 7点 八二一
(2019/10/25 15:28登録)
J・オースティンの未完の小説を下敷きにした、コージーでいて陰惨な探偵おとぎ話。ヒルの前にヒルはなく、ヒルのあとにヒルはなし。現代本格の前衛派。

No.1 7点 kanamori
(2011/01/03 13:48登録)
ダルジール警視シリーズの21作目。
前作で九死に一生をえたダルジールが療養する医療施設がある中部ヨークシャーの町を舞台にした、アガサ・クリスティの作品世界を髣髴とさせる遺産相続がらみのフーダニット・ミステリです。
事件が発生するまでの200ページを費やして、土地の名士である老夫人を巡る人々のプロフィールをたっぷりと読まされます。町に滞在する女子大生と、ダルジール視点で交互に語られるこの部分が軽妙で面白かった。おまけに、あのパスコーの「旧友」が車椅子で登場し意外な役割を果たすとあっては。
なお、作中でパスコーが「ホロー荘の殺人」のネタバレを語っていますので注意が必要です。

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