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ミステリの祭典

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世界推理短編傑作集2【新版】
江戸川乱歩編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日2018年09月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 弾十六
(2021/05/01 11:19登録)
『世界短編傑作集2』(初版1961)の一部改訂版『世界推理短編傑作集2』(2018)は、こちらに、という事なので引っ越しました。古い方も持っていますが、書庫の奥にあるらしく出てきません… この企画、古い本を持ってる人には優しくない対応(一部だけが新訳?だし、全く新味のない巻もあるし、今ごろ乱歩編集を謳うならもっと何か工夫しても良いのでは?まー音楽業界ならもっと酷いリニューアル盤がたくさんあるから、書籍はまだ良心的か)
改訂版解説の戸川さんの書誌でも、情報が不十分な感じなのでFictionMags Index(FMI)により訂正しました。とは言え全面的にFMIに依存してるのでこっちが正確だという保証はありません。(以上2021-5-1追記)
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(1)The Absent-Minded Coterie by Robert Barr (初出Saturday Evening Post 1905-5-13) 宇野利泰 訳: 評価7点
実に素晴らしい流れ。フランス人が最先端の探偵というのが時代を感じさせます。リアルな1904年の大統領選挙はセオドア ローズヴェルト対アルトン パーカー。銀価格は1864年の1オンス2.939ドルから長期の下落傾向に入り、1902年の0.487ドルまでほぼ一直線に下落していた。当時のシリング銀貨や半クラウン銀貨はエドワード7世の肖像。消費者物価基準1905/2019は120.58倍なので1ポンドは現在価値17500円、1シリングは875円。
(2021-5-1追記: 創元『ヴァルモンの功績』を読んでて気づいたのだが、ここで話題になってる大統領選挙は1900年のもの。確かにウィリアム・ジェニングス・ブライアンが候補者だったので、小説内の記述は正しい。なので作中年代は選挙の結果が出た日の1900年11月6日で確定)
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⑵Die Seltsame Faährte by Balduin Groller (単行本 1909) 垂野 創一郎 訳
多分、初出は雑誌。創元文庫の単行本『探偵ダゴベルト』と一緒にまとめて読もうと思ってるので、今回はパス。
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(3)The Queer Feet by G.K. Chesterton (『童心』の書評参照)
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(4)L’Écharpe de soie rouge by Maurice Leblanc (初出Je sais tout 1911-8-15) 井上 勇 訳: 評価5点
大体ネタが想像できてしまう話。肝心なところで乱暴な口調になっちゃうのがラテン的か。フラン・ポンドレートは金基準1911で0.039、英国消費者物価基準1911/2019で116.81倍なので100フランは現在価値66132円。結構気前の良い手数料ですね。(2019-6-8追記: 仏国消費者物価指数1911/2019で計算できるサイトを見つけたので再計算。2304.71倍で、当時の1フラン=3.51ユーロとのこと。こちらで計算すると100フランは現在価値43131円。)
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(5)The Case of Oscar Brodski by Austin Freeman (初出Pearson’s Magazine 1910-12) 大久保 康雄 訳: 評価7点
犯罪に至る描写がとてもスリリング、冷静とドキドキの波が心地よい。家の購入価格250ポンド(set of houses had cost two hundred and fifty pounds apiece)は消費者物価基準1911/2019で116.81倍、現在価値424万円。家賃週10シリング6ペンスは現在価値8900円。随分と安い感じ。(2019-5-3付記: 実はアパートの家賃かも?と思ったら1882年コナンドイルが年間40ポンドでポーツマスに一軒家を借りています。これを週に直すと約15シリング5ペンス。消費者物価指数基準1882/1911で1.02倍。一軒家でもおかしくないようですね) ところで戸川さんは「McClure’s Magazine 1911年12月初出」と書いてますが、FMIだとPearson’s1910-12が初出です。(米初出はMcClure’s1911-12) さらにFMIを調べると作者の倒叙初出版はA Case of Premeditation (McClure’s 1910-08)のようです。Singing Boneの序文では「(倒叙が作品として成立するという)信念で試しに書いたのがブロズキ」と作者は言ってるのですが… (as an experiment to test the justice of my belief, I wrote “The Case of Oscar Brodski.”)
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(6)Sir Gilbert Murell’s Picture by Victor L. White church (初出Royal Magazine 1905-12) 中村 能三 訳: 評価5点
戸川さんは「1912ピアスンズ初出、同年単行本」と解説してますが、FMIでは上記が初出(雑誌の版元はピアスン、ただし目次データ欠) 文中に「1905年6月以前の話」とあるのでFMIが正しそう。ノウゾーさんの訳が生固くて何故今回新訳にしなかったかが疑問。物語自体は鉄道ネタが楽しい鉄道好きのための作品。(論創社の単行本が欲しくなりました) 菜食主義者でへんてこ体操好きという探偵のキャラ付けはいかにも20世紀初頭の英国らしい感じ。プラズモン ビスケット(Plasmon biscuit)は当時結構流行してたらしい…
(ここまで2019-5-1)
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(7)The Tragedy of Brookbend Cottage by Ernest Bramah (初出News of the World 1913-9-7) 井上 勇 訳: 評価6点
初出誌は英国のタブロイド誌(1843-2011)で1912に200万部、1920年初頭には300万部に達する人気。毎週日曜発行。(wiki) FMIでは初出に(+1)と書いており2回連載なのかも。
なぜ姉がそんな男と結婚を続けてるのか?という謎の方が面白そうなのに、そっち方面は全く触れないのがある意味興味深い。(当時はそんなの当たり前ということか) ●●会社の無用心さが話の都合とは言え、そこまでルーズかなぁ。探偵と助手たちとの関係性にちょっと興味を引かれました。(単行本買おうかな。すっかり創元の罠にはまってますね…) 500ポンドは消費者物価指数基準1913/2019で114.43倍、現在価値830万円です。電報1通4ペンスは277円(たぶん語数による)トマト1ポンド(454g)も同じ値段。
(2019-5-3記載)
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⑻The Doomdorf Mystery (初出Saturday Evening Post 1914-7-18) 宇野 利泰 訳
アンクル アブナーの第一作はThe Broken Stirrup-Leather (The Saturday Evening Post 1911-6-3)のようです。おじさんの活躍も後日まとめて読みたいので今回はパス。
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⑼The Mystery of the Sleeping Car Express by F.W. Crofts (初出The Premier Magazine 1921-??-??) 橋本 福夫 訳: 評価6点
事件は1909年11月上旬の木曜日に発生。鉄道会社の技師らしさが出てる作品。(仕事の合間にアイディアをこねた感じ) レポートっぽい文体は、実は職業人ハメットと共通するものを感じます。トリックは映像になれば面白そうですが文章ではキツいですね。寝台一等車には喫煙室(コンパートメント)が2つ、婦人専用室が1つある、などの鉄道ネタが沢山盛り込まれて興味深いです。銃は「近代的な形の小型の自動拳銃」が登場。FN 1900が有力候補。ただし1920年ごろなら「近代的な形」はモダンデザインのFN 1910がふさわしい。年代設定には会いませんが作者の脳内イメージは後者かも。
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鉄道が登場する話が多い第2集。20世紀初頭は鉄道の時代だったのですね。
(以上2019-6-8記載)

No.2 6点 蟷螂の斧
(2021/04/30 18:19登録)
8点、9点ものがないのが寂しい。
①「放心家組合」ロバート・バー 5点 「奇妙な味」との謳い文句ですが、そのイメージとは違うような。詐欺グループと自惚れ探偵の騙し合いのような話。高評価のようですが、どこがいいのか分かりません
②「奇妙な跡」バルドゥイン・グロラー 5点 探偵の切れ味なんでしょう。古典の評価は難しい
③「奇妙な足音」G・K・チェスタトン 5点 「ブラウン神父の童心」で書評済
④「赤い絹の肩かけ」モーリス・ルブラン 7点 ルパンシリーズを代表する短篇とのこと。ルパンものの短篇はまったく未読なので新鮮でした
⑤「オスカー・ブロズキー事件」オースチン・フリーマン 6点 倒叙小説の嚆矢とのこと。当時としては科学的分析が特徴ですね
⑥「ギルバート・マレル卿の絵」V・L・ホワイトチャーチ 5点 貨車の真ん中の一両が消える。まあ子供騙しのような
⑦「ブルックベンド荘の悲劇」アーネスト・ブラマ 6点 有名物理トリックのお手本
⑧「ズームドルフ事件」M・D・ポースト 7点 こちらも有名物理トリックのお手本
⑨「急行列車内の謎」F・W・クロフツ 4点 列車内の密室。このトリックはよくわからん

No.1 6点 ことは
(2020/05/04 23:12登録)
元版からは、「放心家組合」が1巻から移動してきて「奇妙な足音」が追加。かわりに「好打」と「窓のふくろう」が抜けています。
「好打」の発表年は、1913から1937に変更。どんだけ違ったんだよ!
作品としては「ホームズの追随者」という感じが強い。ホームズの型を刷新するにはまだ時間がたりなかったのでしょう。
1作選ぶとすれば「オスカー・ブロズキー事件」ですが、訳者が元版から変わっています。読み比べてみましたが、私は元版のほうが好き。ソーンダイク物では最も好きな作品だったのですが、井上勇訳による部分があったのだなぁと実感。

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