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ミステリの祭典

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ことはさんの登録情報
平均点:6.28点 書評数:254件

プロフィール| 書評

No.74 8点 死者との対話
レジナルド・ヒル
(2020/04/11 21:59登録)
(厚すぎてヒル初読には勧められませんが)ヒルの代表作だと思う。
複数の話が絡みながら重層的にすすんでいく構成は、この作品が最もよくできている。新人ハット・ボウラーも加わり、さらにチームの群像劇の風味が増してきた。
今回はここ数作の中では最も「事件」にフォーカスされ、謎解きミステリとしては充実している。
ある点は、結末がついていないので(続編「死の笑話集」につづく)、人によっては不満があるかもしれないが、個人的には気にならず、全体的に大満足。


No.73 7点 ただ一度の挑戦
パトリック・ルエル
(2020/04/11 21:41登録)
主人公が警官で、警察小説の趣が強いが、IRAなども絡んできて本筋はスパイ小説。とはいっても、他ルエル作品より、日常的設定なためか、迫真性を感じられた。
展開が読めずに、だいぶ楽しい読書だった。
最終5部で、こんなほうにいくとはという感じで、ルエル名義作では、これが一番好きですね。


No.72 6点 眠りネズミは死んだ
パトリック・ルエル
(2020/04/11 21:32登録)
(タイトルで象徴させた)主人公の女性が、少しずつ世界を自覚(世界から自立)していく様子がここちよい。
スパイ小説らしく、人物像の反転がいくつか仕込まれていて、ついていくのが大変だった。
ラストは腑に落ちず、意味を読み取れていないかも。


No.71 5点 長く孤独な狙撃
パトリック・ルエル
(2020/04/11 21:28登録)
情景描写は雰囲気はいい。
でもどこか、まとまりに欠ける。
主人公の設定、背負っている過去は重く、物語の本筋は、重いスパイ小説だ。しかし、本筋の脇で流れる、恋人と、その家族の話は、非常に家庭的。対象の妙を狙ったのかもしれないが、逆にちぐはぐに感じる。
ラストから考えても、全体をもっと重い感じにしたほうが、よかったような気がするなぁ。


No.70 3点 ミザリー
スティーヴン・キング
(2020/04/06 00:06登録)
これは、「世評」と「自分の評価」に乖離がある作品のひとつ。
最初は、ねっとりした描写が楽しめたが、同じような描写の繰り返しで、物語は進行しないし、ページ数は多いしで、最後には退屈してしまった。
好きな人は、ねっとりした描写を飽きずに最後まで楽しめた人なのかなぁ。
100ページくらいの中編にしてくれたら、切れ味がよくて面白かったのではないかと妄想するが、長すぎる気がするんだよなぁ。好みの問題なのでしょう。


No.69 5点 いま見てはいけない
ダフネ・デュ・モーリア
(2020/04/06 00:00登録)
どの話も不穏な空気が流れているが、どうも焦点が定まらない感じがする。
「レベッカ」では、「レベッカの存在感」、「過去に何があったのかという謎」などが、物語を牽引していたのだなと、あらためて感じる。
比喩、暗喩、皮肉などいろいろ入っていそうで、それらを拾えているかとなると、全然だめだと思うが、好みにあわなかったということか。


No.68 6点 武器と女たち
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 18:14登録)
タイトル通り、女性陣が主人公。特にエリーは、エリーの小説まで挿入される。作者はエリーをいい女として描いているのだろうか? 鼻につくキャラに感じるのだが。
それでも語りの面白さは安定しているが、本作は長さが気になる。シリーズ後期作では、一番下かな。


No.67 7点 ベウラの頂
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 18:06登録)
少女失踪事件とパスコーの家庭の問題が、「親子問題」という切り口で繋がり、重層的に語られていく(出版時はシリーズ最長の)大作。
冒頭に地図があり、謎解きファン心理をくすぐるが、その部分はなあんだという感じ。
パスコーの娘の話が他から浮いている感じはするが、それ以外は安定した語りの面白さ。
内容、作風とも、代表作といっていいと思う。


No.66 7点 幻の森
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 17:51登録)
ノヴェロ初登場作。ノヴェロも好きなキャラだなぁ。
ダルジール、パスコー、ウィールドの三人にチーム感ができて、キャラが安定しすぎたため、三人を外からみる視点をいれる必要を作者が感じたのだろう。ノヴェロ視点での三人の描写が、評価も悪口も、読んでいてじつに楽しいのだ。
本作ではノヴェロの出番は少ないが、この後、3人に並ぶ4人目のキャラとなる。
マーヴェル初登場作。これによって、ダルジールに人間的弱みが垣間見えるようになる。
「骨と沈黙」以上に「厚っ!」となったが、この後さらに厚くなっていくとは。この作以降は、厚さと中身(シリーズ・キャラの人生を描く方向性)で、一見さんお断りのような気がする。
本作は、安定の描写の面白さはあるが、他の点では特筆すべきところはないかなぁ。製薬会社の描写は精彩がないかも。


No.65 7点 完璧な絵画
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 17:32登録)
ウィールドの出番が最も多い作。ウィールド・ファン必読。
ダルジール、パスコー、ウィールドがほぼ当分の重み付けで、それぞれの話があり、ミステリより「群像劇」の趣がつよい。
「群像劇」の味わいはこの後もつづき、後期ダルジール・シリーズの型の始まりといっていいと思う。
本作では、「プロットを語る」よりも「(エンスクームという)世界を描く」ことに比重がおかれているようで、この世界に対する好みにより評価が分かれそうだ。
この作品が楽しめれば、この後のシリーズは全部楽しめるだろう。


No.64 8点 甦った女
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 17:19登録)
ダルジール、アメリカに渡り大活躍の巻。
シリーズとしては異色作だろう。
いやあ、でもやっぱりダルジールが活躍する話は面白い。
プロットも(ヒルにしては)直線的にすすみ、一気に読める。ヒル作の中では世評は低く感じているが、個人的にはベスト5に入る。


No.63 7点 骨と沈黙
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 17:06登録)
ゴールド・ダガー受賞で、世評的には代表作です。
ヒル作品としては、ミステリとしてしっかりしているので、そこが評価されたのかな?
でも、ヒルの面白さは、個々のキャラクターの心理/台詞だなぁと思う。
この後の作品のほうがますます面白くなるのでが、個人的には上位の評価ではないです。
発売時は「厚っ!」と思ったけど、これもこの後の作品のほうがますます厚くなるので、いま見ると普通に感じるようになってしまった。


No.62 5点 闇の淵
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 16:41登録)
エリーに焦点があたった作。
エリーはいまひとつ好きになれないんだよなぁ。常に喧嘩腰という感じで、他キャラクターは深みがある感じがするのに、エリーだけは表層的なフェミニストという感じ。ヒステリックな感じも好きになれない。(作者は愛着がありそうだけど)
全体的には、ダルジール、パスコーはいつもの味でいいのだが、シリーズでは「薔薇は死を夢見る」以降では一番下。
(でも「薔薇は死を夢見る」以前よりは面白い)


No.61 7点 子供の悪戯
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 16:27登録)
ウィールドの同性愛に着目された部分が面白い。
ダルジールの台詞が懐が深い。「それはべつに昇進の理由にならんぜ」etc。ヒル、この辺の台詞はうまいなぁ。
プロットとしては、遺産相続、新警察長任命などの、いくつかの話が並行してすすみ、重層的になってきた。かわりにミステリ興味は薄め。


No.60 8点 死にぎわの台詞
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 15:54登録)
三つの事件が同時進行していく。最後には、それぞれの話が見事にからんできて、プロット構成としてはヒル作品では一番だと思う。
ヘクター、シーモアも登場し、群像劇の味わいが増加してきた。この作品から「ダルジール・シリーズ」の味が固まってきたと思う。
最初に読むダルジール物としてお勧め。


No.59 9点 薔薇は死を夢見る
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 15:37登録)
ヒルの既読では最も好きな作品。
「ひとりの男の過去に、いくつもの”疑惑の死”が……」という話。
この手の話、普通は後半にすすむにつれ、少しずつ事件の輪郭が見えてくるものだが、この話はどっちにすすむのか(作者の思惑すら)よめない。
後半に入ってもよめない。ラスト近くになってもよめない。
その綱渡りみたいな感覚に、独特のハラハラ感があって、とても好き。
傑作というよりは、個性的な味わい(珍味?)というのがあう。
ヒルの代表作(典型的な作)ではないし、ひろく好かれる作でもないと思うけど、わたしは大好き。


No.58 4点 点と線
松本清張
(2020/03/07 02:42登録)
最初に……。「文春文庫」版がおすすめ。
挿絵付きだが、この絵が味があるんだよね。
また、解説の有栖川有栖の文章が的確(共感できる部分多々あり)。かなり否定してるんだよね。よく解説にこんな否定的な部分の多い文章をのせたなと思う。
作品は……。
社会派の先駆けという位置づけだが、読んでみると社会派の味わいはそれぼどない。
文体は簡潔できびきびしていて心地よい。無駄な描写はあまりなく、仮説と調査だけで物語がすすむ。これは社会派というより、本格の味わいだよね。
全体の流れでいうと、まず「なんでみんな心中って決めつけてるんだろう?」と思いながら読みすすめました。その結果……。えー、うそー、それだけー!? ここは全面否定。ありえない。
そして、いわゆる「4分間のトリック」。
これは評価します。「4分間のトリック」という言葉のせいで、犯人がしかけたトリックのように語られていることが多いように思うけど、「トリック」というより「手がかり」だよね。
対比されるべきなのは、例えば「エジプト十字架の謎」のあれとかでしょ!
「意外で魅力的な手がかり」として高評価します。
最後の問題は、やっぱりメイン・トリック。愕然としました。そんなの最初に気づけよ!って話です。
歴史的価値のような点でも、「点と線」をリスペクトしてるなぁと評価する作品が無いので、加点は無し。
5点にしようかとも思ったけど、心中の件がやっぱり腹立たしいので4点だ。


No.57 5点 まるで天使のような
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 02:17登録)
形式は私立探偵小説である。
私立探偵小説は、やっぱり「主人公に共感できるか」にかかっていると再認識した。主人公に共感できないのだ。ちょっと風変わりな主人公を眺めながら物語をおっていく感じ。微妙に物語にのれない。
ラストのサプライズは、どうかなぁ。狙いは嫌いじゃないけど、ガツンとこなかった。


No.56 7点 殺す風
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 02:10登録)
ミステリ的「解決」があるので、ミステリにジャンル分けするのは妥当だと思うが、最終盤まで、ほぼ普通小説。
失踪人がいて、どことなく不安感が漂うけれど、サスペンスというほど強烈でない。(佐藤正午の「ジャンプ」を思い出した。ちなみに「ジャンプ」はミステリではないと思う)
世界観としては、心地よいとも感じられる部分もあり、そのバランスがとても独特。
ミラーは代表作といわれることがある4作しか読んでいないが、中では1番好き。多くの人に勧められるとは思わないが、(細々とでも)評価されつづける作品だと思う。
なんとなく、チャンドラーのある作品を思い出した。


No.55 7点 狙った獣
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 01:56登録)
最初に誰がつけたのか、タイトルがいい。「狙った」という言葉の選択がよい。
ミステリをたくさん読んでから読むと、「このパターンか」と思う部分があるが、それは逆に先駆者として評価すべきと思う。
「どこが……」と指摘しづらいけれど、不安がかきたてられる描写もよし。
サスペンスの定番の良策だと思います。

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