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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:944件

プロフィール| 書評

No.784 2点 見えない敵
F・W・クロフツ
(2023/12/31 01:54登録)
クロフツ第二十九作。第二次世界大戦下、武器庫から盗まれた手榴弾による遠隔爆破殺人。動機とアリバイ時間表と手段と・・これはもう確実に、"晩(末)期クロフツ"と言うべきであろう・・


No.783 4点 殺人は広告する
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/12/26 23:04登録)
ドロシー・セイヤーズ「貴族探偵」シリーズ第八弾。広告代理店で進行する秘密を探るべく秘匿捜査を行う「貴族探偵」。作者、広告代理店でコピーライターをやってたことがあるとかで、ネタが実にわらける。各章独立した短編としても楽しめて、章によっては「くたばれ健康法」やメリヴェール卿物なみの爆笑譚。が、長編ミステリとしては・・・(~_~;) ま、ユーモア小説として面白かったんで、点数オマケ。 ※ところで、あのオックスフォード出の女コピーライター、あれ、作者の自虐戯画なんだろなぁ・・
浅羽英子て訳者の、常套句慣用句や古典引用の簡潔な補助解説(「毛虫の長靴=最高」!)が分かりやすい。たーだ、ローティーン口調訳の「だもんで」「すんげぇ」「おらっち」は・・ゼッタイ違うなあ。


No.782 5点 ラッフルズ・ホーの奇蹟
アーサー・コナン・ドイル
(2023/12/22 08:18登録)
青年画家が出会った理想家の億万長者と招かれた夢の宮殿。宮殿描写はSFで、「浦島太郎の竜宮城」「パノラマ島奇譚」にも通じる趣があった・・が、その「錬金術」はまんま錬金術で、「理想」は唯の夢想に過ぎなかった。
タイトルの中編の他に、「電気椅子」「飛行機」「エレベーター」黎明期を舞台にした数編と、心霊入替物、陰惨な復讐譚、架空戦記の諸短編が付く。 ※「地下墓地」の話は傑作集恐怖篇に別訳載ってる。


No.781 8点 キャサリン・カーの終わりなき旅
トマス・H・クック
(2023/12/19 00:10登録)
詩と奇怪な小説を残し行方をくらました女、失語症の息子を殺人鬼に殺された男、終末を迎えつつある早老症の少女。あまりにも悍ましい残酷な運命と、気休め慰め全てを拒否する澄み切った水晶の様な冷厳さ。それでも、絶望の深さを止揚するが如きの結末。アガサ・クリスティーの素晴らしいがミステリとは言えない短編「海から来た男」や「翼の呼ぶ声」を、辛うじてミステリに繋ぎ留めた様なメルヘン。


No.780 7点 破果
ク・ビョンモ
(2023/12/15 23:01登録)
" 韓国のサラ・パレツキー、現る "・・ではなくて、反男根主義ニヒリズム(フェミニズムでなく)の作家てとこか。
著名な仏の歴史人類学者が、ドイツ人・ユダヤ人・日本人・朝鮮人を、「権威主義的家族」構造の社会を持つ民族に分類してた。権威への反作用か、日本のみならず韓国やドイツも少子化だしなあ、イスラエル・北朝鮮はどうなんだろう。
社会構造以前の生物レベルの雄-雌-生殖構造を、ペシミスティックに描いた女流SF作家ジェイムズ・ティプトリーJrを思い出した。でも、昆虫等の外骨格生物のみならず、魚類から犬猫に至るまで、この問題はなさそう(?)だが。「腰痛」の如く、種としての人類の宿命ではないのか、雄-雌-構造。人類には、環境問題以前に、遥かに悲観的な未来が待っている様に思う・・・関係のない話になってきた。※別に本格ミステリでもなんでもないが、点数大オマケ。


No.779 2点 木曜の男
G・K・チェスタトン
(2023/12/13 22:51登録)
破壊と秩序、テロルと詩、アナキスト結社のナンセンス活劇に始まり、冗談みたいな弁証法的な冒険が、夢幻的な戯画へと展開し、ヘーゲル言うところの「全てが全てと転倒し合う永遠の喜劇」に収束する・・が、そこはチェスタトン、ヘーゲル同様、耶蘇教カトリックへの肩入れは忘れない。ミステリとしては・・結社メンバーのドミノ的正体明かし。


No.778 7点 皮膚の下の頭蓋骨
P・D・ジェイムズ
(2023/12/10 23:00登録)
舞台は孤島の館。古典観劇会に集まる人々。猟色家の女優、夫の将官貴族、ピアニストの義理の息子、大富豪の館主、元女教師の従妹、付人の女、演劇評論家、館の執事夫妻、そしてヒロインの女探偵:コーデリア・グレイ。コーデリアシリーズ第二弾・ていっても2作のみだが。女優に送られ続ける「脅迫詩文」に備え、夫の老貴族に身辺警護に雇われた若き女探偵が出会う、孤島の館の殺人。絵に描いた様な本格設定だが、そこはドロシー・ジェイムズ、見どころは容疑者達の人間描写。普通の「島もの」なら、周りの人間が殺されて行き、己に迫る恐怖サスペンスを描くところ、「ここにいる誰かが殺人者であるという人間存在への絶望感そのもの」が濃密に語られる。「女には向かない職業」同様、ラストにハラハラ展開のサービスも付いてる。


No.777 6点 十戒
夕木春央
(2023/12/09 07:36登録)
これも面白かった。 「方舟」「十戒」ときて、次は、「原罪」「預言」あるいは 「黙示」ってあたりか・・・

※2日後追記。なんか「方舟」と同じ匂いが・・思ってたら・・おおサーガ!(ここの諸兄の評読んでナットク(^.^))


No.776 3点 名探偵水乃サトルの大冒険
二階堂黎人
(2023/12/05 23:06登録)
水乃サトル君シリーズ短編集。
  「ビール家の冒険」 空き家の如き一軒家に残された大量の缶ビールの謎。5点
  「ヘルマフロディトス」 女子高生マル文字日記に仕込まれた殺人Who手掛り。3点
  「『本陣殺人事件』の殺人」 本家イチャモン付けと新機軸の提示・・唯の「針糸トリック」だが・・4点
  「空より来る怪物」 天窓以外は密室だった山小屋での密室焼殺トリック。6点
※短編ミステリ集として平均5点。が、第四編キャラ・「宇宙神~」同様・のヘキエキ感と、余計な後書「~が許されるのは島田荘司先生(! °o°) だけ・・」云々にマイナス2点。


No.775 5点 英雄の誇り
ピーター・ディキンスン
(2023/12/04 23:27登録)
ピーター・ディキンスン第二作。対独戦争の英雄将校にして大富豪貴族の一族。その広大な敷地と豪壮な館は、古英国の記念碑に見えて、米国成金達の擬古的観光スポットでもあった・・日光江戸村と変わらん・・。館で起きた自殺と行方不明事件。遠景では勇壮な獅子達も、貪欲にして狡猾な単なるケダモノに過ぎなかった。「栄光ある国軍」 「歴史的勝利」の醜い実像・・敗者日本ならば自虐内攻となる告発も、勝者の大英帝国自身が行うと、苦い諧謔の風味を醸し出す・・ちょっとしたトンデモ銃弾ロジック(トリック)も付いてるし・・


No.774 7点 名探偵のはらわた
白井智之
(2023/11/30 09:55登録)
ラストで突然に名探偵へ飛翔する助手:原田亘(はらだわたる≒はらわた)が主役の四中短編集。「阿部定事件」「津山三十人殺し」「帝銀事件」等、日本犯罪史上のレジェンド達の「魔界転生(!)」トンデモ設定に、目も眩むばかりに豊富なロジックの百花繚乱・・よくぞここまで・・。「阿部定事件」「津山事件」の史実を、フィクションで再構築して新事件に繋げる手管も見事。出て来るキャラはいつも同じ・・人物造形の抽斗小さい・・だけどね。
(※表紙画は、三話の「チェシャ」が、四話の猟銃を持ったコンセプトと思われ。)


No.773 5点 ガラス箱の蟻
ピーター・ディキンスン
(2023/11/28 22:38登録)
ピーター・ディキンスン処女作。ロンドンに集団移住し半ば耶蘇教に改宗したニューギニアの架空種族。酋長が殺され、SF設定でないまでも異世界コードミステリ?と振っといて、現世的なWho・Why落ちだった。同じWhyなのに、「エンジェル家の殺人」の方は何か「面映ゆかった」が、こっちは「腑に落ちた」。邦題の「異生物を観察する支配者」センス以上に、原題(Skin Deep)の醸し出す「どうしようもない宿命感」が痛い。にしても、ニューギニアの原住民もアフリカ系も一緒くたに「黒人」と呼び下す何と「らじかる」な言語センス・・半世紀前といえ・・


No.772 3点 二重の悲劇
F・W・クロフツ
(2023/11/27 22:21登録)
クロフツ第二十八作。狷介な資産家の遺産相続に絡んだ、身代りアリバイトリック付き連続殺人。序盤1/3は倒叙ノワール、中盤にフレンチ「正」叙本格に転回し、終盤は交互カットバックサスペンス。安定のオモシロ(つまらな)さは流石。


No.771 5点 エンジェル家の殺人
ロジャー・スカーレット
(2023/11/22 22:01登録)
乱歩「三角館の恐怖」の元ネタと言うより、ほぼ原作(「幽鬼の塔」の場合と違って)。見どころは二点。エレベーター刺殺トリック・・島荘「斜め屋敷」より精確度感高いが、カー「仮面劇場」と同様に凶器有効感に乏しく(殺せる?)・・と、Whyダニット・・憧れ女へのストーカーならまだしも、あの執着は、ちとピンとこず・・の二点。面白いが、乱歩の読んどきゃ十分だな、逆でもいいけど。


No.770 6点 サン・フォリアン寺院の首吊人
ジョルジュ・シムノン
(2023/11/20 22:10登録)
意味不明の自殺と大量の首吊り画。怪奇にして貧寒、神秘にして俗臭の謎を追うメーグレ(メグレでなく)警部。行き着いたのは、浪漫的ニヒリスト、ボヘミアン気どりだった嘗ての若者達。残酷な青春の支配から卒業できなかった彼らの、「超俗的行為」の明かされた真相は・・・「ところが、ただの子供だったのさ」 ※「幽鬼の塔」の方は、「青春」ではなく「カルト」だったな。でも、同じ様なもんか、「カルト」と「青春」。それを喝破した「夏と冬の奏鳴曲」は見事だった。


No.769 6点 ナイトホークス
マイクル・コナリー
(2023/11/17 07:48登録)
ボッシュシリーズその一。ロサンゼルス警察の一匹狼刑事:Hieronymus Bosch・・ルネサンス期の有名なシュール怪奇コミカル画家と同姓同名・・が主役のハードボイルド(?) マーロウ直系筋なんだろが、第一人称語りでないのがよい(中高年男の、上から目線グダグダ長語りはウザく・・) 訳題「ナイトホークス」にして原題「The Black Echo=暗闇のこだま」で両方とも意味あるが、「トンネル鼠」「闇よ鼠たちの為に」てのもよく。相棒のFBI女のセリフを、「~だったわ ~なのよ」等、女言葉に訳したのは失敗・・あの女には「~だったんだ ~なんだ」と喋らせねば。ドンデン返し・・見えすいてるけど・・面白かった。愉しみなシリーズが一つできた(^o^) ので、初回サービスで点数オマケしちゃう。


No.768 6点 わが職業は死
P・D・ジェイムズ
(2023/11/14 11:53登録)
犯罪証拠を検査判定する研究所を舞台にした殺人事件。始めから、Whom:被害者が誰になるかは明らかで、容疑者達に如何に納得できる動機があるか詳述されて行く。固陋・頑迷・小心な科学者達より、女達のキャラ・・猟色家の美女、愛されて育った愛すべき娘、愛されずに育った狷介な女、人好きしない女流作家、病的な少女(この娘の将来を憂える)、哀れっぽい街娼・・女達のキャラ描写がユニーク。秘儀的情事・兄妹相姦・レズビアン等の爛熟した珍味を醸しながらも、直球・・「捻り」さえストレート・・で進行するWhoダニットミステリ。


No.767 5点 赤朽葉家の伝説
桜庭一樹
(2023/11/11 06:10登録)
「いつか採点しよ思ったまま数年過ぎた」作品その六。山陰地方を舞台にした、三部構成、女三代クロニカル。ミステリとしては、巻頭と終末の「人体ストップ映像」ドンデン返しに尽きるてのが、逆に凄い。※これも、オマケ点数。


No.766 6点 私の男
桜庭一樹
(2023/11/11 06:06登録)
「いつか採点しよ思ったまま数年過ぎた」作品その五。生ぬるくかつ果てまで行っちゃったダークな男女・・何気に真の父娘(オトろしかぁ)なのね・・のピカレスク。時系列を逆に遡ったところが、ミステリ。※点数オマケ。


No.765 4点 幻の女
ウィリアム・アイリッシュ
(2023/11/11 06:01登録)
「いつか採点しよ思ったまま数年過ぎた」作品その四。「青い鳥はいつも傍にいた」ならぬ「黒い悪魔はすぐ隣にいた」落ちサスペンス。オープニング ” 夜は若く、彼も若かった(シビれるぅ)・・”と、女が被っていたカボチャ帽子のインパクトだけに、この点数あげちゃう。ミステリとしては、うーん・・・

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