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ミステリの祭典

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残虐記

作家 桐野夏生
出版日2004年02月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 7点 レッドキング
(2024/02/03 18:16登録)
十歳の時に、町工場住込みの男に誘拐され、その部屋に一年(実際にあった元ネタ事件では9年)にわたり監禁された少女が、長じて女流作家となり、事件の手記を残し行方をくらませる。作品は、作家の夫と名乗る男から編集者に送られた原稿の体をなしている。女の出奔のきっかけは監禁犯人から送られた手紙で、それも作品の冒頭に付く。未熟に歪んだ情緒の男として描かれる犯人のみならず、元少女の作家、その母親、男の同僚、義手の検事それぞれが、己の空想・・現実崩壊に至る程の夢想・・の逃れられない罠に閉じ込められている。「甘い」までに「残虐」な幻想譚、どこまでが「真相」でどこから「虚構」なのか曖昧な、ハーフミステリ文学。面白い。

No.2 6点 ぷちレコード
(2022/07/14 22:51登録)
題材は、十歳の少女の誘拐・監禁事件。作家になった彼女の元に、出所した男から手紙が舞い込みb、これを機に彼女は事件を「残虐記」と題して小説化する。手紙、作中作となる手記、小説の草稿などが入れ子状に組み込まれ、「真相」を追えば追うほど、虚実の境が後退していく。少女がある事実を世間に隠し通したのはなぜか。本当に復讐したかった相手とは誰か。覗き見ることの罪。想像することの残虐さ。誰が被害者で加害者なのか。
語り手が実は犯人というミステリは時にあるが、本作には読み手にお前こそ加害者だと切っ先を突き付けるような恐ろしさがある。実在の事件をモデルにしてその真相を暴くかに見せながら、本書で暴かれるのは虚構の本性である。

No.1 7点 itokin
(2008/08/14 08:56登録)
相変わらずの的確な文章で読む人を引きずり込むのは流石。
最後の盛り上がりは若干欠けるが十分楽しめた。表題で受けるほどの残虐性はない。

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