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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:958件

プロフィール| 書評

No.858 5点 深紅の碑文
上田早夕里
(2024/08/25 12:48登録)
「華竜の宮」続編と言うよりも、スピンオフ。更に詳細に物語を担うため、呼び出された多くの登場人物達。面白いが、不満を言えば、ドラマが「人間的(現代人てイミね)」過ぎて、地質学的変動に相応しい、SFレベルの飛躍感がほしく・・少なくとも数世紀異時代なんだしね・・。


No.857 5点 華竜の宮
上田早夕里
(2024/08/25 12:44登録)
海面が250m上昇した25世紀の「再・白亜紀」の地球。体内AIをパートナーに生きる「陸上民」と、海棲生物「魚舟」と双生する「海上民」に分かれた人類。それなりに安定した歴史の後に、近づきつつある地質学的レベルの大破局。避けられない「ラグナロク」に向けて抗いもがく群像。「海上民」と「魚舟」「獣舟」の三様に焦点を当てた、「生物学的」SFを読みたく。


No.856 3点 最後の手段―コナン・ドイル未紹介作品集3
アーサー・コナン・ドイル
(2024/08/23 23:07登録)
ドイルの「未紹介作品集」その三・・は、ほぼ非ミステリの小噺集。
「科学の声」「大佐の選択」「やりきれない話」「告白」・・男女の、痛快笑話・情話・痛い切な話・運命的逸話。
「ウイルキー大尉の思い出話」・・名人スリのちょっとしたピカレスク小噺。 
「連隊のスキャンダル」「デヴィル・ホーカーの最期」・・賭博ネタ痛快譚。
「フラワリー・ランド号の悲劇の真相」・・ドイル得意の海洋冒険奇譚。  「教区雑誌」・・ドッキリ悪戯小噺。
「摂政時代の印象記」「百人隊長」「死の航海」・・近代英国、ローマ帝国初頭、第一次大戦末期を舞台にした・・「死の航海」に至ってはパラレルファンタジーとさえ呼んでいい位の・・フィクション。
「最後の手段」・・怒りと義憤に心を支配された男。その夢想の果ての果てを描く、ちょい寒い小噺。 
※その他「シニョール・ランバートの引退」は、「ドイル傑作集5(ラッフルズ・ホーの奇蹟)」にも収められた。

※冒険譚、奇譚、幻想譚、笑話、この作品集にはないが、SF、ホラー、そして何よりミステリ。コナン・ドイルの短編群には、古びた玩具箱をひっくり返した、塗装が掠れ傷が付き部品が壊れ、遥か流行遅れ様式となったオモチャ達の様な美しさがある。ほぼ、ミステリしてないが、採点してオマケに点数あげちゃう、ドイルだもんね(^^♪


No.855 7点 でぃすぺる
今村昌弘
(2024/08/20 22:28登録)
死亡した女性が遺した「七不思議譚」を手掛かりに、刺殺事件の真相究明に奔走する小学生トリオ。超常現象指向の少年に対する、少女の社会派ミステリ風論破・・今回はバケモン出て来んのね・・と思わせといて、最後の最後に、ウォーっとぉ(ミエミエ犯人は変わらんけどね)。ヒル子ちゃん出て来ないが、四作の中で一番好きだったりする。
※最近、サラ・パレツキー「社会派(政治家・企業・悪徳医者登場)」風を読んでたので、なおさらミスリードされた。
※ホントだ、322ページの4行目、誤植だ(初版)・・初々しくも三角関係はキチッとね(^^)


No.854 5点 ダウンタウン・シスター
サラ・パレツキー
(2024/08/19 22:44登録)
ヴィク・ウォーショースキーシリーズ第五弾。原題「Blood Shot」とは全く離れた邦題・・と思いきや、ちゃんと意味連なる「血」と「妹」だった。幼馴染の妹分からの依頼「私の父ちゃん誰?」捜しが、企業労災と保険に絡んだ巨悪に行き当たり、政治家・企業主・暗黒街ボス・汚れ医者ズラリ揃った分かり安い悪役達と、大立ち回りを演じる羽目に。このヒロイン、出自から知識人系フェミニストではなく、絵に描いた様な体育会系女だったのね。※序章と終章の標題、あきらかにボブ・ディランのアルバムタイトルちなみだが、何の関係あんのかな(別にないような)


No.853 8点 ウナギの罠
ヤーン・エクストレム
(2024/08/13 23:47登録)
"北欧のジョン・デイクスン・カー" と聞き、さっそく。けしてカーではないが、かくもユニークな「ウナギ密室」、堪能させて頂きました(^^♪ わが長編採点基準(あくまでも原則ネ)では、密室二つ以上が、8点クリア必要条件なんだが、スウェーデン寒村の、むせる様な体臭・体液臭・獣臭・草木臭・ぬめり臭描写が良く、8点あげちゃう。


No.852 6点 アメリカの友人
パトリシア・ハイスミス
(2024/08/10 23:00登録)
リプリーシリーズ第三弾。今回のリプリーは操り役。自分の利害に無関係な国外マフィア殺人計画に参画し、気まぐれな理由から、余命わずかの男に白羽の矢を立て、実行役として間接的に操る。しかし、いざという場面では、気まぐれに捨て身の手助けをしてしまう。この作では、白血病の英国人・・リプリー同様に仏人女を妻として仏で暮らす男・・が、妻子へ残す報酬目的のニワカ暗殺者として、リプリーと同格の主役を張る。その暗殺者にシンクロするかの様な、リプリーの虚無的な破滅衝動と殺戮衝動。暗殺者の妻が、カトリック的敬虔さから一転して、遺産への執着と含羞の発作的反応を見せるラストの苦さがよい。これも、男二人の「無自覚の同性愛」を間接暗示するエピソードなんだろな。第一殺人の「見えない男」描写が絶品。


No.851 5点 鷲は舞い降りた
ジャック・ヒギンズ
(2024/08/06 22:03登録)
「ジャッカルの日」が対ドゴールならば、こちらは対チャーチル誘拐フィクションで、「抜け穴」とか「失踪変容」とか、不思議なほどにミステリ臭の強い戦闘サスペンス。独の敗色強まる第二次大戦後半、ヒトラーの気まぐれから火が点いた、英首相誘拐というトンデモ作戦の息詰まる様な進行。歴史の悪役ナチス側からの描写という、読者心境上の難関は、二人の主役「鷲A」「鷲B」を、独米ハーフとアイルランド人に設定する事により、更に「鷲A」のユダヤ人少女救済エピソードにより絶妙にクリアして、読み手の心は、鷲たちの冒険行動に操られる。主役のはずの「鷲A」描写より、「鷲B」の、英国村娘との胸キュン浪漫に絡めた物語の方が、小説の主軸として魅力的。ただなあ、あの「遺書の如き恋文」で、ストイックな永訣エンドだったら、冒険小説美学的には良かったんじゃないのかなぁ。
※アイルランドって、英独間において、決して親英ではなく、むしろ、敵の敵は・・て感じで親独に近かったのね。


No.850 6点 自宅にて急逝
クリスチアナ・ブランド
(2024/08/02 22:16登録)
猜疑心とコンプレクスの塊のような、独りよがり老人が振りかざす遺言書の書換えが、足跡密室連続殺人を引き起し、未亡人・孫達遺族の間にわだかまる、葛藤・軋轢を焙り出してゆく。一族間のグロテスクでコミカルなやり取りに挟まれる、発作的な真情吐露の爆発と、ラストの屋敷崩壊を巻き込むカタストロフが見事。足跡トリックは・・カーがやりそうな脱力(*_*;もので、登場人物達が披露するダミー解釈のトンデモ具合の方がファンキーで良く。


No.849 4点 ジャッカルの日
フレデリック・フォーサイス
(2024/07/27 22:05登録)
シャルル・ドゴール、ヒトラー毛沢東スターリンより格落ちするが、チャーチルケネディには同列する二十世紀レジェンド大統領。アルジェリア独立騒動に、仏愛国者の顔として君臨するも、「仏のアルジェ」テーゼを廃棄して独立の道筋を作り、フランス右翼達から、許しがたい裏切り者として命を狙われる羽目に。数度の失敗の後に、暗殺模索者たちが採った方法は、プロの英国人スナイパー雇入れ。ただただ、報酬の為だけに、ドゴール狙撃を企図する英版ゴルゴ13、対する治安機構のエースは、コロンボの様に風采が上がらずフレンチの如く平凡な恐妻家刑事。「逃げ隠れトンデモない・フランスは私だ」ムッシュプライド大統領に、治安機構内部にたむろする保身家・野望家たち。憎まれ役ヤナ奴官憲にハニートラップ女まで出て来て、スナイパーとハンターの虚々実々攻防が、映画超えて劇画タッチの面白さ。ゴルゴ並みの精確度にルパン顔負けの変装述を駆使し、仕事成功後は高額報酬による快適安楽余生まで夢見る殺し屋って設定がユニーク。これが複雑進化した果てに、ジェフリー・ディーヴァーとかがあんのね・・あんな風に捻くれると素直な面白さはなくなるがな。このストレートさ、ホント面白いんで、ミステリとしてはなんてことないんだが、オマケして点数4点あげちゃう。
※それにしても、なんかこの話、某あ元首相暗殺事件や某T前大統領射殺未遂事件と重なり過ぎ。


No.848 5点 サロメの断頭台
夕木春央
(2024/07/24 22:32登録)
大正の超美形元泥棒が探偵役の第三弾。己の作品の盗作者を捜す画家と、画壇グループ内で明らかになる贋作。盗作と贋作、二つの事象は、連続「サロメ見立て」殺人へと展開し、驚くべき殺人事件のWhyが明らかになる。やっぱり、この作者の本領は「驚愕Why」・・「Whoロジック」以上に・・であった。面白かったけど、ミステリ要点としては、都築道夫「砂絵」シリーズの、短編1.5作(1作とは言わんが)内に収まっちゃうかなあ。


No.847 6点 孤島の来訪者
方丈貴恵
(2024/07/20 22:22登録)
孤島もの倒叙で始まり、1/3まできて、突如、「プレデター」「遊星からの物体X」風SFホラーに転じるも、展開はひたすら、Who(犯人=化け物)本格ロジックミステリ。読者挑戦状(「データ全て出したよ」)と、ダミー2段階解決+ハーフサイズどんでん返し付き。処女作のテクニカルトリック(あれ、よかった)ないのが残念。


No.846 5点 犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー
早坂吝
(2024/07/19 22:08登録)
AI探偵シリーズ第二弾。このシリーズ、らいちシリーズよりキャラ造形ナイスで面白い。本格ミステリとしては、庭密室(+不可能アリバイ)と公邸密室(-_-;)、そこに、マザコン三つ子ネタと国際陰謀ネタ、全部ひっくるめて、3~4点。でも、アニメ受けしそうなくらい面白いんで、1点オマケ。


No.845 7点 切断島の殺戮理論
森晶麿
(2024/07/16 23:08登録)
おお、ピーター・ディキンスンに触発された麻耶雄嵩「木製の王子」系の、構造主義ミステリ?と思わせといて、最後の最後に一気に、SFファンタジーへ飛翔して・・それがまた本格ミステリの根幹に居座っちゃって・・ぶったまげた。麻耶がこれやったら怒っちゃうけどね(*^-^*)
※このタイトル、ちと生硬やねぇ、こんな改題どお?・・「鷲と鴉の葬送曲」「鷲と鴉と神々の島と」「鳥と島の神話」「そして鳥を見た」・・(無断使用OKよ(^o^)丿 ) "


No.844 6点 レディ・ハートブレイク
サラ・パレツキー
(2024/07/14 00:37登録)
フェミニンハードボイルド第四作にして、更に露骨な構図・・フェミニズム=リベラリズム=善玉 vs 宗教右翼=男根保守主義=旧悪・・、ええぞええぞ、断固支持!(しちゃう)


No.843 5点 贋作
パトリシア・ハイスミス
(2024/07/07 20:58登録)
「太陽がいっぱい」の続編にしてリプリーシリーズその二。今回は、既に亡き伝説画家の死を隠し、ゴースト絵描きの贋作で世間を謀る、詐欺グループの片棒を担ぐリプリー。付け髭で画家の影武者を演じるまでは良かったが、あれよあれよ言う間に・・またも・・殺人に手を汚す羽目に。にしても、人殺しも、それを打ち明けるのも、無造作と言うか行き当たりばったりというか、やらかした事の重さに比べ何と軽い精神。そんな己の、「存在の耐えられない軽さ」に、自己消滅の衝動さえ明滅する描写が凄い。この「存在」はアラン・ドロンには演じられないな・・そもそも、映画「太陽がいっぱい」のラストシーンには、漫画「あしたのジョー」同様、およそ続編など考えられないし(それに、アランドロンの付け髭変装なんて、一目瞭然だし^^;) ・・。


No.842 6点 領主館の花嫁たち
クリスチアナ・ブランド
(2024/07/05 21:17登録)
荒地の呪われた旧名家、衰弱した若き当主、屋敷を仕切る遠縁の外国人女、双子の美少女、顔面に傷を持つ美人教師、痩せこけた管理人青年、数百年にわたり一族代々の花嫁に憑りつく姉弟亡霊・・ん?ミステリ作家生涯の白鳥の歌は、「嵐が丘」・・悍ましくも美しい陰惨な悲劇・・やりたいのか?思わせて、そこはクリスチアナ・ブランド、入代りトリックネタで亡霊(なんと!)を嵌める、耽美ホラーファンタジーを決めてくれる。


No.841 4点 真夜中の客―コナン・ドイル未紹介作品集2
アーサー・コナン・ドイル
(2024/06/29 21:39登録)
ドイルの「未紹介作品集」そのニ いくつかはミステリっぽいが、ほとんどは、チョビっとサスペンスな小噺的冒険譚。
  「ダレンマハウリー村の跡とり娘」 謎の富豪娘の屋敷に侵入した二人の若者の冒険のオチは・・
  「辻馬車屋の話」 老御者が語る三つの犯罪ショートショート奇譚。
  「悲劇役者」 シェイクスピア悲劇役者達の勧善懲悪喜劇。
  「ハンプシャー州の淋しい家」 落魄した初老夫婦と家出息子の落し噺。
  「エヴァンジェリン号の運命」 ちょっとした海洋奇譚に乗った男女浪漫。
  「危機一髪」 三人の少年少女の海難スペクタクル奇譚。面白い。
  「ボックスマンズドリフトの宝石」 宝石採掘に夢をかけたコンビのハッピーエンドお伽噺。
  「真夜中の客」 北海孤島を舞台に謎の船難者と強欲な老人の宝石を巡る悍ましき執念の行き着く果ては・・
※その他、「ジェレミー伯父の家」「田園の恐怖」二編は、その後、「ドイル傑作集1(まだらの紐)」に収録され、既にそっちの評で取り上げてしまってた。先に、この「未紹介作品集」評で挙げるべきだったなぁ。


No.840 6点 赤い霧
ポール・アルテ
(2024/06/26 22:32登録)
二部構成のミステリ。第一部(分量にして2/3あるが)は、娘の誕生会に手品を披露する父親の衆視「密室」刺殺事件と、その10年後にぶり返される不可解な連続刺殺事件。第二部(分量は1/3だが)は一部の続編にして、その上に、十九世紀英国の2大スーパースター・・あの名探偵と、あの名殺人鬼・・を登場させて、あの名事件を「解決」して見せる。なんと、サービス満載な一冊(^.^)。密室・消失トリックは・・(*_*;)、まあ、アルテだし。※そう言えば、島荘もあの事件を解決させてたなぁ。


No.839 6点 猫とねずみ
クリスチアナ・ブランド
(2024/06/20 22:30登録)
婦人誌の相談欄に常連の投稿女。その女の嫁ぎ先を訪ねる担当者の女。投稿家が嫁いだ山地古屋敷に住まうは奇怪な三人の男女。彼らは女の存在を否定するが、女の居る痕跡は明らかだった・・・。ホラー風味からドタバタ落ち、幻想ロマンからホラー急転、またもやドタバタ展開・・ちょっとしたジェットコースター・ディクスン・カー。「殺人鬼青髭」風味の男の真情に浪漫を抱く女、女の幻想を打ち砕く真相の証拠、その真相のどんでん返し、そして更なる・・・て、作家十八番の多重改釈解釈の波状展開がミステリアス。

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