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ミステリの祭典

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ダウンタウン・シスター
ヴィク

作家 サラ・パレツキー
出版日1989年09月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 5点 レッドキング
(2024/08/19 22:44登録)
ヴィク・ウォーショースキーシリーズ第五弾。原題「Blood Shot」とは全く離れた邦題・・と思いきや、ちゃんと意味連なる「血」と「妹」だった。幼馴染の妹分からの依頼「私の父ちゃん誰?」捜しが、企業労災と保険に絡んだ巨悪に行き当たり、政治家・企業主・暗黒街ボス・汚れ医者ズラリ揃った分かり安い悪役達と、大立ち回りを演じる羽目に。このヒロイン、出自から知識人系フェミニストではなく、絵に描いた様な体育会系女だったのね。※序章と終章の標題、あきらかにボブ・ディランのアルバムタイトルちなみだが、何の関係あんのかな(別にないような)

No.2 6点 クリスティ再読
(2022/05/08 10:28登録)
本作ってハードボイルド、というよりも、評者は「社会派」って呼びたいと思うんだよ。ネタは早い話公害問題のわけで、そうしてみれば「海の牙」みたいなものだ。
本作だとシリーズ第五作になるから、周囲のレギュラーも固まってきている。今回のメインキャラは、ヴィクの亡母との縁が深く、若いのに死期を迎えた女性ルイーザと、その娘でヴィクにも「手間のかかる妹」のようなキャロライン、そして自分のホームタウンである企業城下町の人々を巡る事件だ。両親からの影響を女性は隠さないけど、男性はそれが妙にコケンに関わる風にも感じがちだからね、男性ハードボイルド探偵は....こんなの、手掛けないだろうな。原題は違うが「ダウンタウン・シスター」、要するに「幼馴染の妹分」。だからヴィクもイライラしながらも、ついつい腐れ縁の妹分キャロライン(性格悪し)の面倒を見てしまう。ヴィクにも「故郷を捨てた」弱みがあるからね...

まあだからこの話、社会派ネタとヴィク身辺と興味が二分されてしまっている印象。社会派の方はギャングも出れば、ヴィクも殺されかけるし、最後は意外な相棒と奇襲をかけるアクションもあり。この「相棒」になるキャラがナイスだが、バレない方が面白かろう。社会派は悲惨でヒドい話なんだが、そっちの「工作」に意外性が薄くてややセコい詐欺なのが、たとえば「サマータイム・ブルース」のネタの「社会的興味」ほどではないようにも感じる。

あれ、評者「サマータイム・ブルース」と本作しかまだ読んでいないのだが、とくに選んだみたいに「社会派」ネタの作品に当たっているのだろうか?

No.1 8点
(2013/01/13 12:21登録)
本作は、英国推理作家協会シルヴァー・ダガー賞を受賞したということで、読んでみました。確かにこれはおもしろくできています。邦題のシスターとは、ヴィクに父親探しを依頼してくるキャロラインのことでしょう。ヴィクが子供のころに面倒を見ていたというこの妹分の強烈なキャラがなかなかの見ものです。なお原題は”Blood Shot”で、内容に則したハードな感じ。
ハードさということでは、今回ヴィクは本当に殺されそうに(殴られたり銃を突きつけられたりなんてお馴染みのものではなく)なります。謎解き的には二つの無関係に見える事件がどうつながっているのかというところが中心。
グラフトンのキンジーを自分と対比する場面もありますが、その他に作中で挙げられている名探偵はホームズを始めむしろパズラー系の人たちばかりです。なおジェームズ・レヴィン(40章)という名前も出てきますが、これは実在の指揮者レヴァインのことですね。

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