home

ミステリの祭典

login
でぃすぺる

作家 今村昌弘
出版日2023年09月
平均点6.78点
書評数9人

No.9 7点 レッドキング
(2024/08/20 22:28登録)
死亡した女性が遺した「七不思議譚」を手掛かりに、刺殺事件の真相究明に奔走する小学生トリオ。超常現象指向の少年に対する、少女の社会派ミステリ風論破・・今回はバケモン出て来んのね・・と思わせといて、最後の最後に、ウォーっとぉ(ミエミエ犯人は変わらんけどね)。ヒル子ちゃん出て来ないが、四作の中で一番好きだったりする。
※最近、サラ・パレツキー「社会派(政治家・企業・悪徳医者登場)」風を読んでたので、なおさらミスリードされた。
※ホントだ、322ページの4行目、誤植だ(初版)・・初々しくも三角関係はキチッとね(^^)

No.8 6点 パメル
(2024/08/10 19:32登録)
舞台は奥郷町という小さな田舎町。クラスの掲示係に立候補したユースケ(木島悠介)はオカルト好きの小学6年生。製作する壁新聞にオカルト記事を書いて人気者になりたいと思っていた。そこへいつもは、学級委員長を務めている優等生のサツキ(波多野沙月)が、なぜか掲示係に立候補するという予想外の展開によって危機を迎え、ユースケは壁新聞の行く末を心配する。そしてサツキは、「町の七不思議」を調べることを提案する。しかし彼女の目的は、雪密室の状況下で殺害された従姉の死の真相を探ることだった。
人間の犯罪という前提で事件の謎を追うサツキと、あくまで怪異の存在を信じるユースケ。そして二人の推理に対し理性と論理によって、その勝敗を裁定する転校生のミナ(畑美奈)という構成がユニーク。ミステリとホラーが不可分に混じり合ったあわい掲示係三人の冒険が辿り着く、町の恐るべき秘密とは。
優れたホラーミステリであるのと同時に正統派の捜査小説でもある。現場を検証し、小さな糸口を辿って聞き込みをし、時にぶつかり合いながらも、協力して七不思議の謎に迫っていく。オカルトを取り入れつつも、論理性が重視されているため、本格派推理小説としても読める。
物語は二転三転し、町に隠された秘密があるのではないかと疑われる事態に発展していき最後のページまで予断を許さない。冒険と推理の果てに待つ景色は残酷だ。ミステリとしての謎、ホラーとしての怖さと、学校という狭い世界の生きづらさと、それを打破する3人の児童の成長を丁寧に描いていて、青春小説という側面もありエモーショナル。

No.7 7点 まさむね
(2024/05/25 14:36登録)
 剣崎比留子シリーズ以外の初長編。「ジュブナイル×オカルト×本格ミステリ」という謳い文句。
 壁新聞作成を担う「掲示係」に属する3人の小学6年生(ユースケ、サツキ、ミナ)が「奥郷町の七不思議」の謎を追う…。ちょっと眉唾で読み始めたのですが、これがなかなか面白い。グングン読まされました。
 結末としては、驚き半分、煮え切らなさ半分といったところ。3人それぞれの成長が清々しい一方で…という気がしないでもないかな。

No.6 6点 メルカトル
(2024/02/10 22:09登録)
残念ながら期待を上回る事はありませんでした。小学生が主役のせいか、ジュブナイル寄りな為か、折角の七不思議という魅力的な題材を上手く料理出来ていない気がしてなりません。もう少し怪談話らしく禍々しさを強調して欲しかったです。その謎に挑む三人の小学六年生の男女は中途半端に謎を残しながら、少しずつ真相に迫りますが、手付かずの疑問を残し過ぎではないでしょうか。結局最後にはその疑問点は全て解明される訳ですが、道中何だかモヤモヤする気分が抜け切れず、あまり乗れませんでした。

そして最大の不思議な点が最後に残った感じでしたね。何故そんな事をしたのか、もっと他に最善手が無かったものかと個人的に思ってしまいます。私の読みが甘いせいかも知れませんが。いずれにせよ、あまりスッキリした読後感ではありませんでした。ただ、なかなかの反転や、ミステリとオカルトの境界線を渡り歩きながら子供たちが協力して過去の事件の謎解きをしていく姿はまずまず描けていたと思います。それとミナの意外な活躍のシーンには感動しました。

No.5 7点 mozart
(2024/01/24 19:29登録)
最初はちょっと……となりましたが(所謂特殊設定モノを含む)従来のミステリー的価値観と常識(?)を一旦捨てて再読するとこれはこれで作中に「魔女」からの助言で示された前提条件に対して「ロジカル」に合致する解になっていることに気付いてすこぶる納得させられました。三人が登場するシリーズ物として続編を読みたいところですがなかなか難しそうではありますね。
ちなみにジャンルは「その他」となっていますが「『新』本格」としても良いのかも。

No.4 8点 sophia
(2024/01/21 19:10登録)
ネタバレあり

謎が多すぎるよ!と悲鳴を上げつつメモを取って読み続けましたが、頑張った甲斐がありました。この手の作品はリドルで終わるのが常だと思うのですが、まさかの完全決着で新鮮でした。それに伴いジャンル投票がネタバレになってしまいかねないという、このサイト特有の問題が発生していますね。「ノックスの十戒」が出てきたのにもびっくり。そしてただ出しただけではなく、謎解きの重要なファクターだったのにもびっくり。小学校の卒業を間近に控えた少年少女のセンチメンタルな冒険譚としても読めます。ラストの主人公の心情描写が素晴らしかったです。この方の例のシリーズ以外の作品は初めて読みましたが、作家としての底の深さを思い知らされました。ただ、ジュブナイルというには少々難解に過ぎるでしょうか。

No.3 7点 虫暮部
(2023/12/29 15:22登録)
 これはジャンル不明で読むのが得策だと思う。推理合戦の形態からも、どちらへ転ぶのか最後まで明かさず引っ張ろうと言う意図を感じる。
 語り手の内省がしっかり描かれていて良い。ただそのせいで、小学生の限界が物語の壁になってしまったかも。
 あと、マリ姉の回りくどい伝え方のおかげで無用な誤解が生じて被害が拡大した側面もあるよね。本作に限らず “策を講じ過ぎ” な話には若干乗り切れない部分が残ってしまう。

No.2 7点 人並由真
(2023/11/05 14:16登録)
(ネタバレなし)
 とある地方の三笹山(みさまやま)の周辺。「おれ」こと小堂間(こどうま)小学校の6年生の男子「ユースケ」(木島悠介)は、前期まで学級委員長だった女子・波多野沙月(サツキ)そして4月に転向してきた女子・畑美奈(ミナ)とともに、二学期から、学級新聞を編集製作するクラス内の「掲示係」になる。オカルトマニアのユースケは、学級新聞の紙面を借りて自分の知識や知見をアピールしたいという狙いがあったが、サツキの方にはまた別の目的があった。それは先に変死したサツキの年長の従姉妹の「マリ姉」こと波多野真理子がパソコンの中に書きのこしていた「七不思議」の怪談にからむものだった。

 ローカル・ホラーの大枠の中で、いろいろ謎解きミステリ好き向けに仕掛けて来る、ジュブナイルっぽい(ただし目線は大人向けだろう~ませた子供にも、読んでほしい気もするが)ハイブリッド作品。
 
 作中作のような感じで語られる複数の怪談の秘密、世界観の深淵、そして終盤のサプライズの連打と、かなりよく出来ている一冊。楽しく読んだ。
 ジャブ的に繰り出される小技の連打で稼ぎまくる、そういう形質の作品でもある。
 
 シリーズものになってほしいような、これ一本での完結感を大事にしてほしいようなそんな味わいの長編でもあった。

 一か所だけ惜しいのは、322ページの4行目
ユースケとサツキは(誤)
ユースケとミナは (正)
だね。
 まさかのいきなりの叙述トリックの仕込み? かと思ったが、ただの誤植または誤記であった。再版か文庫化の際に、直しておいてください。

No.1 6点 文生
(2023/10/03 07:04登録)
小学生の少年少女が謎解きを通して成長していく姿を描いたジュブナイル的な作品です。その点はよくできているのですが、探偵役が普通の小学生なのであまり込み入った推理をさせるわけにもいかず、剣崎比留子シリーズに比べると謎解きが軽量級に感じます。一方、地元の怪談話が事件の鍵を握るホラーミステリとしては節々にぞっとするシーンをちりばめているものの、こちらもイマイチ振り切れてない印象を受けました。全体としてはそれなりに楽しめたものの、やはり剣崎比留子シリーズと比べると一歩及ばずといったところでしょうか。

9レコード表示中です 書評