切断島の殺戮理論 |
---|
作家 | 森晶麿 |
---|---|
出版日 | 2024年03月 |
平均点 | 7.17点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 5点 | 蟷螂の斧 | |
(2024/09/09 15:09登録) (ネタバレしています) 今、流行りの特殊設定もの。高評価の皆さま申し訳ございません。私には体質的に受けつけない作品でした。アレルギー源(3点セット)の揃い踏み(苦笑)。読み終わって3作品を思い出しました。「ダレカガナカニイル」井上夢人(人格もの~評価3点)「毒入りチョコレート事件」アントニイ・バークリー(多重解決もの~5点)「火刑法廷」ジョン・ディクスン・カー(オカルトの可否~5点)。本サイトのジャンルは「本格/新本格」(投票は1票のみ)です。もし「ホラー」「SF/ファンタジー」であれば、その心づもりで読むので、主人公の当初の人格への違和感は許容できたはず。しかし、本格ものと思っているので、どうやって説明するのか気になって気になって仕方ない(笑)。途中で「ああ、これは完全にSFもの」と判明。それはいいとして、ラストがなんとも?!。これを受け付けつけられない私は少数派だとは思うのですが・・・。 |
No.5 | 7点 | みりん | |
(2024/08/15 04:36登録) 江戸時代の囚人の流刑地「鳥喰島」で起こる因習村系ミステリ。奇妙な因習とか謎の儀式とか複雑な家系図とか、こういうの1番心踊っちゃう。設定を見ると『凶鳥の如き忌むもの』が完全強化フルリメイクされて戻ってきたような嬉しさ。設定だけでなく、ぶっ飛び具合もこちらの方が上。犯人は結構わかりやすいけど、そのさらに上をいく終盤の<あの一撃>には眠気が吹っ飛んだ。わがままだけど、あとはトリックさえあれば… ※ 本サイトの新着書評を四六時中監視していると良い事尽くめですね^ ^ 【以下微ネタバレ】 で、途中から突如現れた謎人格はいったいなんやねん |
No.4 | 8点 | 虫暮部 | |
(2024/08/01 13:35登録) おっと麻耶雄嵩かと思ったら白井智之だった、と思ったら実は小林泰三かも。何処までも逸脱した無謀な飛躍を、私はポカンと見上げるしかない。この発想は大好きだ。 “欠落” を抱えた島民達があまりに記号的なのは如何なものか。様々な不便さがあったり、それを補う慣習が生まれたり、と言った生活感が皆無。ポリコレ的に身体障害者を描きづらい、みたいな事情だったらつまらない。しかし題名通り “理論” の物語ならば、必要なのはまさに “記号” なのだろうか? ところで “鷹丘裂季” の発音が “高岡早紀” なのはわざと? イヤ、法月綸太郎じゃあるまいし……。 |
No.3 | 7点 | レッドキング | |
(2024/07/16 23:08登録) おお、ピーター・ディキンスンに触発された麻耶雄嵩「木製の王子」系の、構造主義ミステリ?と思わせといて、最後の最後に一気に、SFファンタジーへ飛翔して・・それがまた本格ミステリの根幹に居座っちゃって・・ぶったまげた。麻耶がこれやったら怒っちゃうけどね(*^-^*) ※このタイトル、ちと生硬やねぇ、こんな改題どお?・・「鷲と鴉の葬送曲」「鷲と鴉と神々の島と」「鳥と島の神話」「そして鳥を見た」・・(無断使用OKよ(^o^)丿 ) " |
No.2 | 8点 | 人並由真 | |
(2024/06/26 15:40登録) (ネタバレなし) 「僕」こと「帝旺大学」人文学部人類学科の四年生、22歳の岩井戸泰巳は憧れの美人教授・植原カノンとの縁で、学内有数の頭脳集団「桐村研」のフィールドワーク調査に参加する。一行が向かったのは、地図にも載ってない、わずか二十数人の島民が暮らす孤島で、怪異で陰惨な人体の切断儀式がいまも続く「鳥喰島」だった。だがそこでは、予想もつかない凄惨な殺人事件が。 それなりの冊数を書いている作者ですが、たぶん評者は初読み。 今回は本サイトのメルカトルさんの激賞に背中を押されて一読しましたが、いや、最後まで(というか特に最後が)非常に面白かったです。 印刷媒体ミステリの構造上、クライマックスに突入してから謎解きが行なわれても、まだまだ紙幅が残っているので、このあとなんかまだあるな、とか予想がついてしまうのは、ナンですが。 広義のクローズド・サークル系ではあろうけど、限定状況ながらネットでの通信ができるという設定も特異でした。 切断儀式の描写の方は不快感を覚えそうな人も多く、実際に自分も読む前はそうでしたが、現物の作中ではほとんど凄惨さや陰惨さは感じませんでした(まあ、それでもその辺は人を選ぶかもしれませんが)。まあ、どこまでいっても(中略)な作品ではありますが。 伏線のバラまき方、わかりやすい謎解きロジックの開陳、そして……と非常に充実した作品だと思えます。良い意味で昭和のB級パズラーの優秀作といった質感も認めます。 とはいえ最後のアレは就眠前に読んでぶっとんだ。 寝て起きてみたらいささか頭が冷えてしまって、考えを見直したところもないではないですが(汗・笑)、アレがアルかナイかといえば、もちろん、アリでしょう。 ただ一方、読者が十人いたら、そのうちのひとりかふたりには、私の代わりにたっぷりと激怒してもらいたい、そんなところもあります(笑~大笑)。 本サイトをふくめて、中身の割に世の中の反響はいまひとつ地味なような気もしますが、メルカトルさんのおっしゃるように、今年の国産パズラー系のなかでは上位に評価されてほしいですな。 ところで、最後に出てきた名前って……? (こう書いても、特にネタバレにはならない、と思う。) |
No.1 | 8点 | メルカトル | |
(2024/05/19 22:28登録) 帝旺大学人文学部文化人類学科の最強頭脳集団・桐村研が現地調査に赴いたのは、国家に隠匿された地図にない島ーー鳥喰島。 江戸時代に囚人の流刑地とされたその孤島には、身体を切断する成人儀礼を始めとする奇習を存続させた〈鷲族〉と〈鴉族〉が存在していた。 “欠落を美と見做す”彼らの閉鎖世界で発生する連続殺人……これは無計画の連鎖か、計画された虐殺か? 惨劇を追認する推理の果て、異形の真実が剥き出しにされるーー! Amazon内容紹介より。 どこまでも続くグロテスクな道、どこまでも続くロジカルな道、並行して交わることの無い両者を結び付けるのは名探偵の仕事ですが、本作には探偵役が見当たりません。勿論いずれは登場する訳ですが・・・。 これは思った以上の素晴らしい出来で、本年度の各ランキングに食い込むのではと個人的に期待しています。特に本格ミステリベスト10には上位に入りそうな気がします。 誰も読んでいないし世間にも知られていない様ですので、こちらで啓蒙していきたいです。読みなさいよ、後悔させないから。読め読め詐欺ではなくてですね、図書館で借りてでも良いので、読んで下さい。 ぶっ飛んだ話が好きな私でも、それはやり過ぎじゃないかと思う程、完全にイッちゃってます。それじゃ折角のトリックが・・・。まあ多くは語らない方がいいですね。グロ好きも論理好きも納得の傑作です。まるで進化を遂げた新本格の様な。 |