レッドキングさんの登録情報 | |
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平均点:5.28点 | 書評数:943件 |
No.443 | 4点 | 動く指 アガサ・クリスティー |
(2021/03/25 16:54登録) 療養のために田舎の旧館を借りた若者と付添いの妹。都会風な裕福兄妹を待っていた村中巻き込む醜聞怪文書騒ぎ。騒ぎはやがて自殺・殺人事件へと発展し・・。本来は一番に怪しまれる立場の人物に煙幕をはる為の「いかにも~が行いそうな」偽装行為。加えて一人称叙述・・「アクロイド」以降、読者にとっては拭い切れない疑惑・・の二重煙幕。 ※「女はたいがい、自分の子供のことを、あまり好きではありません」・・嗚呼、何という「残酷な真理のテーゼ」 |
No.442 | 2点 | まほろ市の殺人 冬 有栖川有栖 |
(2021/03/23 14:08登録) 架空都市「まほろ市」お題シリーズ「冬の巻」 偶然手にした大金を巡り、双生児兄弟を殺めてしまった男の倒叙サスペンス。殺したはずの兄弟が現前するミステリの真相は・・双生児ネタのひねり損ねだった。 てことで、このお題シリーズ。秋:麻耶雄嵩>春:倉知淳>>夏:我孫子武丸>冬:有栖川有栖、て、とこかな。 |
No.441 | 6点 | まほろ市の殺人 秋 麻耶雄嵩 |
(2021/03/23 14:05登録) 架空都市「まほろ市」お題シリーズ「秋の巻」 屍体の左耳を焼く連続殺人鬼に対するは、妻:耿(秋ならず)子の「あなた優しくない」冷眼に憂える刑事。どぎつい赤の様な女流作家探偵とのドタバタ道中と「普通の殺人」に目を眩まされたあげく、いかにも麻耶らしいトンデモな(だが変に説得力ある)動機のミステリが待っていた。殺人鬼が己の「作品」たる屍体に記す「署名」のイカれ具合は、「神様ゲーム」の猫文字と並ぶ麻耶の二大(何と言うべきか)・・。 |
No.440 | 3点 | まほろ市の殺人 夏 我孫子武丸 |
(2021/03/23 14:04登録) 架空都市「まほろ市」お題シリーズ「夏の巻」 双子ネタを半ひねりしたミステリアスホラーファンタジー。犯人が出所して、主人公に再会し・・もう一ひねりしていれば・・ホラーファンタジックミステリになれた(かな)。 |
No.439 | 5点 | まほろ市の殺人 春 倉知淳 |
(2021/03/23 14:00登録) 架空都市「まほろ市」お題シリーズ「春の巻」 マンション7階ベランダからの人間消失、殺害時刻と目撃時刻の齟齬、二重の不可能トリック。高校生探偵によるトリック解明の解釈は・・.・嫌いじゃないぞ、こういうの。 |
No.438 | 7点 | カッティング・エッジ ジェフリー・ディーヴァー |
(2021/03/21 15:54登録) ライムシリーズ第14弾。今回の敵はダイヤ原石へ異常に執着する「約束人」・・ダイヤのカット宝石化への憎悪から、指輪を手にする男女を襲撃する、イカレているが、どこか「人間臭い」猟奇殺人鬼。客観叙述と独白倒叙を交ぜて犯行が描写されるが、こんな単純な進行のまま終わるわけない、どこでどうツイストするんだ?思ってたら・・新エネルギー開発とエコ運動、地震兵器にメキシコ麻薬王ネタと続々出てきて、真の目的・影の主役(分かりやす過ぎ)、さらに裏の裏の目的・真の操り者へと多重に捻って発展して・・見事に収束。 ※やっぱり最後に出てきた「あいつ」をここまで完璧なものにして、いつか来るであろう「ライム最後の事件」うまく完結できんのかチト心配。 |
No.437 | 5点 | ブラック・スクリーム ジェフリー・ディーヴァー |
(2021/03/19 13:32登録) ライムシリーズ第13弾。今回の敵は、犠牲者の声で奏でるワルツを伴奏に、ジワジワと絞殺仕掛けを施すサイコ殺人鬼「作曲家」・・と読者を誘導しておいて、操り者による真のホワイ意図展開へとツイスト・・と思わせて、操り者Bによる別のホワイ企図割込みへと再ツイスト。本拠地ニューヨークからイタリア古都ナポリへ舞台を移し、何でナポリ?目先変え?観光オマケ?と思ったが、そのホワイ展開自体に密接に絡んだ場所なのだった。 ※ところでディーヴァー、リベラルとは言え米国白人。難民・テロへのスタンスは、左翼でなく中道左派だった。 |
No.436 | 5点 | スティール・キス ジェフリー・ディーヴァー |
(2021/03/16 18:20登録) ライムシリーズ第12弾。今回の敵は、家電重機に内在するコントローラーにハッキングし誤作動させ、凄惨な事故を生じさせる殺人鬼「民衆の守護者」。シリーズ中、ウォッチメーカー登場以前の分かり安い展開の倒叙や手記で、スンナリと犯人御用に・・・しかし、いくらなんでもあれでライムものが終わるわけなく、どんなツイスト待ってんのかな、と期待してたら、何か古典的な真犯人操りと叙述トリックおちが待っていた。 ※それにしてもディーヴァー、「リベラル派」ての分かるが、「ネーダー風消費者運動」はチト未練かな。 |
No.435 | 6点 | スキン・コレクター ジェフリー・ディーヴァー |
(2021/03/13 20:04登録) ライムシリーズ第11弾。今回の敵は、骨執着「ボーン・コレクター」ならぬ、皮への執着「スキン・コレクター」。 被害者に猛毒タトゥー施して惨殺する連続殺人鬼。猟奇行為それ自体のホワイ展開が、他の目的のハウへとツイストするのはいつものパターンたが、そのハウが別のハウへと横ずれし、最後は鮮やかにフーダニットへと収束する。 たーだ、「あいつ」による操りってオマケは、さすがにもうクドくて・・・ ※ところでディーヴァー、親「リベラル」ての分かるが、こんな露骨に「宗教右翼」おちょくって、身辺大丈夫か? |
No.434 | 5点 | フロスト始末 R・D・ウィングフィールド |
(2021/03/07 20:31登録) シリーズ第六弾にして最終話は、フロスト追放を目論む「フロスト殺し」の話。第一作よりの憎まれ役マレット署長は、めっきり精彩を失い、新たなる敵役は他署より上司として転勤してきた主任警部スキナー・・汗はかかず手柄だけ狙う露骨にヤナ奴。物語は相変わらず、軽重の多重犯罪が、立て続けに手に汗握る平行展開で進み、決して本格物のごとく一つ焦点に綺麗に収まる訳でないが、複数事件が微妙に重なり、最後には見事な全解決を見る。で、圧倒的に追い込まれたフロストの対敵役戦果は・・最後の一頁での驚くべき土俵際うっちゃり痛快勝利。 ※あーあ、これでシリーズ終わっちゃった。 |
No.433 | 5点 | 五つの箱の死 カーター・ディクスン |
(2021/03/01 23:01登録) 飲料毒混入の不可能トリック。①大容器に入った酒に毒は混入してなかった。②各グラスにも混入しておらず、③グラスに注がれる際にも混入は無かった。にも拘らず、酒を口にした全員に毒がまわった・・どうして? 昨日、4点採点したものの、書評に、このトリックはカーのオリジナルとあり、それ信じて、特許権の1点を加点。 ※仲間由紀恵「トリック」に、同じ物を口にした一族の一人だけが毒死するって話あったなあ。 |
No.432 | 3点 | パンチとジュディ カーター・ディクスン |
(2021/02/25 21:11登録) 「パンチとジュディ」ってドタバタ人形劇のことなのね。ドリフ大爆笑みたいなんかな。結婚前夜にH・M卿から怪しげな任務を命じられた元諜報員。殺人死体二体と偽札事件に出くわし、警官隊に追われて、女連れで逃げ惑うドタバタ劇を演じる羽目に。フー・ハウよりも、そもそも一体何が起こってたの?ホワットダニットだった。劇のカラクリ解体は鮮やかだが、早川文庫の二階堂黎人解説「カー初心者向け作品」てのには・・・大いに異議あり。 |
No.431 | 5点 | もの言えぬ証人 アガサ・クリスティー |
(2021/02/21 21:28登録) ヴィクトリア朝の生き残りの様な狷介だが情誼あふれる大富豪老女。莫大な遺産を巡る遺族達・・小賢しい甥、傲慢な姪、いじけた姪、温柔な外国人医師の婿、無垢で鈍重なメイド・・。事故死と判断された老女の怪死と書き換えられた遺言。配達の遅れたポアロへの事件解明依頼の手紙。最小限の容疑者で老女殺害フーダニットを引っ張るが、ちとズッコケるハウダニット小粒ネタ・・ヒモと燐光って・・のオマケが付く。ポワロのポロリ「スタイルズ荘」「アクロイド」等ネタバレおまけも付く。老女の友人の毒舌老婆の諧謔が実にいい。「当たり前の事でしょ。誰か死んだら必ずゴタゴタがあるに決まってますよ。死人が棺桶の中で冷え切らないうちに、生き残った連中はお互いに爪を立てて財産争いさ」 ※ところで、あの犬、ヘイスティングスに貰われるんだね。 てことで、アガサ・クリスティー30年代の長編ミステリ全17作の採点修了したので 私的「30年代アガサ・クリスティー」ベスト5(6) 第一位:「ポワロのクリスマス」 第二位:「シタフォードの秘密」 第三位:「メソポタミヤの殺人」 第四位:「そして誰もいなくなった」 第五位:「死との約束」 同五位:「ABC殺人事件」 |
No.430 | 7点 | メソポタミヤの殺人 アガサ・クリスティー |
(2021/02/17 23:37登録) 舞台はイラク(首都名バグダッドの方が雰囲気出る)だが、建物の見取り図と容疑者達の行動時刻表がしっかりした「本格館もの」。犯人のアリバイトリックを構成する殺人トリックが単純明晰に決まり、「アクロイド殺し」等より、これとか「ポアロのクリスマス」「シタフォードの秘密」等の方が素晴らしいと思っている。 プライドとマゾヒズム、支配欲と異性愛、憎悪と挺身・・男女間の情念錯綜の物語が、ミステリの型式を粉砕してしまうことなく、むしろ構成しているところも見事。 |
No.429 | 4点 | なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? アガサ・クリスティー |
(2021/02/13 17:07登録) ラスボスわかり安すぎ。にしても、植民地経営を約束された貴族令嬢と退役軍人青年なんて・・こっちこそ悪役設定にせんとねえ。 |
No.428 | 7点 | シタフォードの秘密 アガサ・クリスティー |
(2021/02/11 06:07登録) 雪の山荘での招霊会遊びと同時刻の遠隔地での殺人。遠隔超能力殺人トリックがGood。ただ、この手のトリックとしては飛鳥部勝則「レオナルドの沈黙」の方が面白い・・とか書こうとして、ふと気付いたら早川文庫の解説、その飛鳥部勝則が書いてて驚いた。そっか!まんまこれに影響受けてあのトリック拵えたのか。 坂口安吾がこれ称賛したのは、あのトリックではなく、ヒロインの最後の男の選択・・「できすぎ君」でなく「のび太」を選ぶ「シズカちゃん」・・が、安吾の心の琴線に触れたからだと睨んでる。 「あの人は一人で立派にやっていける人」「でも、もう一人の方は、あたしが世話焼かなければ、どうなるか分からない・・」無頼派にとって、こんな涙が出そうなセリフはなかろう。 |
No.427 | 4点 | アラビアンナイトの殺人 ジョン・ディクスン・カー |
(2021/02/08 18:10登録) 三章とエピローグから成る長いミステリ。一、二章で別視点からの殺人事件の丁寧な証言が語られ、三章で仮探偵による実に詳細な解明がなされ、エピローグ・・それも文庫本わずか十数頁ほどで、真探偵フェルによるドンデン返し真相が明かされる。実に十一人の容疑者・・実際は九人・・の5~15分刻みの行動時間表の丁寧なアリバイロジック展開と幾つかの物証が良い。たーだ、最後の最後に殺害場所の出入口が一個増えちゃうってのはまあ良いとして、元々、出入り口が複数あるってのがねえ。毎度、書いちゃうが「密室」こしらえてほしかった。 |
No.426 | 4点 | 剣の八 ジョン・ディクスン・カー |
(2021/02/06 12:40登録) これも複数者の犯行企図の重なりが引き起こす「?」の話で、こんがらがった「現」況から、「元」況を解き分けるフェル博士の解釈が見事。「何故に諸料理の中から大好物のスープだけ食べ残したのか?」てなロジック展開よいなあ。残念なことに、この現象、フェル以外の一般人には別に「不思議」には見えないんだよな。あの部屋が密室だったら、人間消失していたら・・さらにポルターガイスト現象やタロット「剣の八」カードと有機的に結び付いていたら・・「三つの棺」に近づいていたかも。※探偵マニア聖職者やミステリ作家とフェルの推理マウント合戦が笑える。 |
No.425 | 5点 | 七つの時計 アガサ・クリスティー |
(2021/02/04 21:03登録) 題名からして本格もの?と期待させといて、読み始めたら「続チムニーズ館」で、まーたスパイ・秘密結社ものか、と辟易させながら、結局は、叙述・人間関係トリックものだった。多重に騙され、その分面白かったので点数1点オマケ。 ※これで、アガサ・クリスティーの1920年代の全長編9作の採点修了したんで、 私的「20年代アガサ・クリスティ」ベスト3(4) 第一位:「ゴルフ場殺人事件」 第二位:「アクロイド殺し」 第三位:「七つの時計」 同三位:「スタイルズ荘の怪事件」 |
No.424 | 3点 | チムニーズ館の秘密 アガサ・クリスティー |
(2021/02/03 20:58登録) 架空のバルカン小国の政権争いと失われた宝石を巡り、冒険家、凄腕政商、大物外交官、怪盗、豪邸貴族、いい女、元気娘、謎の女、探偵、英仏刑事etc入り乱れてのクリスティー「スパイ冒険活劇もの」の集大成。幾つかの人物入代りネタの他、ほんのちょびっと宝探し暗号物のオマケも付く。 |