北極星号の船長 東京創元社ドイル・コレクション |
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作家 | アーサー・コナン・ドイル |
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出版日 | 2000年02月 |
平均点 | 5.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 6点 | レッドキング | |
(2022/01/09 22:56登録) 怪獣・怪奇・ファンタジー・サスペンス・・「ウルトラQ」「怪奇大作戦」元祖筋。ミステリではない・・半ミステリどころかアンチミステリとさえ言える・・怪獣ものはポー「スフィンクス」解決でこそミステリとなる・・が、面白いからいいや。あと、怪獣出てこない「寄生体」とかのホラーサスペンス具合もなかなかで、点数、おおまけにオマケ。 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | |
(2020/11/17 14:51登録) (ネタバレなし) 2004年12月に刊行の、創元推理文庫版『北極星号の船長』で読了。 幅広い<モンスター譚>を主軸にまとめた、ドイルのホラー短編集。本書収録の短編のいくつかには、初出誌か原書が出典らしい挿し絵が添えられている。それで、とある評者の行きつけのサイトで、巻頭の『大空の恐怖』の印象的な挿し絵=ビジュアルを紹介され、この作品と本の存在を意識した。そうしたら、この本は古書でしばらく前に購入して積ん読になっていたことに気づき(汗・笑)、さっそく少し前から読み始める。 創元文庫版の収録作は以下の12編。各編の「……」以下は、評者の感想&寸評&作品メモのコメント。各エピソードのモンスターの実態(正体)、その詳細については、なるべくネタバレしないようにする。 1 大空の恐怖 (The Horror of the Heights) ……いきなり怪獣大盤振る舞いで、雲の上の成層圏周辺に異形の(中略)の棲息域があったという話。破損した手記ノートから事態の様相が紐解かれていくという王道の構成も良い。 2 北極星号の船長 (The Captain of the Polestar) ……正統的な海洋奇談で(中略)ストーリーだが、荒涼とした極寒の氷地の彼方に見える(中略)の姿がじわじわと読み手を攻めてくる。 3 樽工場の怪 (The Fiend of the Cooperage) ……密林の大河周辺の樽工場。そこからいなくなる人員。窓の向こうの何か。これこそ大物の登場で、クラシックならではのモンスター譚の味わい。終盤のビジュアル的なインパクトは、童心に帰って実に満足。 4 青の洞窟の恐怖 (The Terror of Blue John Gap) ……『バスカーヴィル』に通じるような、英国の辺境地方のモンスター編。主人公が足を踏み入れていく後半の舞台と設定と、そこで出くわす怪物の図は、挿し絵の効果もあってなかなか楽しい。怪物とストーリーのロケーションの設定は、石森(石ノ森)章太郎の某・初期人気シリーズの一本に影響を与えているかも? 5 革の漏斗 (The Leather Funnel) ……主人公が好事家のコレクターである貴族から見せられた中世のアイテムの正体は? モンスター要素の希薄なホラー。まあ(中略)も広義のモンスターかもしれないが。ちなみにこの話は昔、30分枠のアンソロジー形式のホラー洋画番組『オーソン・ウェルズ劇場』の一本で映像化されている。そこではあのクリストファ-・リーが、キーパーソンの変人貴族を演じている。 6 銀の斧 (The Silver Hatchet) ……5の流れを受けた、古のアイテムにからむ怪異ストーリー。真相の処理の仕方が、この本の中ではちょっと異質かもしれない。 7 ヴェールの向こう (Through the Veil) ……愛し合う若夫婦の体験した奇妙な、そして彼らの人生に影を落とす体験とは? モンスター要素はまったくない(中略)を主題にした話。民話風のぞわぞわ感は与えられるが、本書の中ではちょっと印象の薄い一編。 8 深き淵より(デ・プロフンデイス)(De Profundis) ……2とは別の切り口の海洋奇談。モンスターは小物? なんだけれど、日常世界と異界の接点が垣間見えてしまったという感覚の小説の作りは、結構悪くない。肝心の(中略)の挿し絵が載ってないのが残念。 9 いかにしてそれは起こったか (How It Happened ) ……これが本書の中では一番の異色というか、異質な作品かなあ。ホラーというよりは、オチで勝負した古典的ショート・ショートという色合いが強い。その意味では、ちょっと印象に残った。 10 火あそび (Playing with Fire) ……降霊術(のようなもの、かな)で召喚されたその正体は? ああ、こういうものもモンスターの演出で描くのか、という割と当たり前のことを、心のスキをつかれたように読まされて、なかなか良かった。これも挿し絵(あのシドニー・パジェットだよ)の妙味もあって、閉じた扉の向こうの闇の中から迫る(中略)のイメージにゾクゾク。 11 ジョン・バリントン・カウルズ (John Barrington Cowles) ……語り役をつとめる主人公の視界で相次ぐ(中略)に関わる事態の真相は? ドイルのひとりモンスター劇場という気分で読んでいたので、こういう存在もモンスターとして扱ってるのか? という驚き。まるで『事件記者コルチャック』みたいな怪物のバラエティ感だ。まあ作者ドイルはこれをあくまで独立した一編の幻想ホラー奇談として書いたのであって、自分のモンスター作品の系譜を意識したのでもないのかもしれないが。 12 寄生体 (The Parasite) ……長めの紙幅の中で、サスペンス効果を意識した書き方をしているのはよくわかるのだが、これまでの各編でバラエティ感ゆたかなモンスター作品をたっぷり読まされているので、魔性のもののインパクトもあまり感じない。地味な怪物キャラクターで短編小説として興趣あるものをまとめてみたいと狙ったドイルの気分はわかるような気がするが、できたものはその設定の主題に比例して地味だった、という感想。 以上、全12編。イマイチなものもいくつかあるが、何度も言っているように、バラエティ感いっぱいのモンスターもののホラー短編集としてはなかなか楽しかった。正に、半分子供で、半分オトナの読者のための一冊(笑)。 |
No.1 | 4点 | Tetchy | |
(2008/07/11 21:31登録) 本コレクションは、新潮文庫から出ているドイル傑作選ともダブっている作品があり、読むのが二度目という作品もけっこうあった。 高空領域、北極、未開の島、洞窟と未知の領域が多かった19世紀という時代だからこそ、受けたであろう怪物譚も今となっては少年少女の読み物といった感じ。 個人的には最後に読んだ「寄生体」が、かろうじて現代にも通じる怖さを持っていると感じた。 |