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ミステリの祭典

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卵の中の刺殺体 世界最小の密室
蜘蛛手啓司シリーズ

作家 門前典之
出版日2021年12月
平均点5.80点
書評数5人

No.5 5点 虫暮部
(2022/03/16 12:04登録)
 ん? 何か登場人物が生き生きしてないかい? 今までの棒人間みたいな書き方に比べて随分と表情が見えて来た。いいねいいね。一人相変わらずの蜘蛛手が相対的に沈んで見える程だ。
 ところが真相にはがっかりだ。問題編の良さをぶち壊して余りあるつまらなさ。諸々の必然性が希薄で、キャラクターが人形に戻ってしまった。これならいっそ “カリスマ教祖に操られていた” とかの方が良かった。あと、物理トリックで引っ張るならメタネタは混ぜない方がいい。

No.4 5点 レッドキング
(2022/03/09 22:26登録)
門前典之第七弾。「龍の卵」内の不可能刺殺死体、同部屋2年連続密室殺人、4体の猟奇屍体オブジェ・・色々出てきて楽しいが、看板の「卵」トリックがつまらない。メインの密室連続殺人と猟奇オブジェ事件の連結もいまいち。でも、「かつてないアイデアの密室トリック」てな探偵の豪語信じて、特許権1点のオマケ付けちゃう。どんどん書いてくれ。

No.3 5点 nukkam
(2022/03/04 07:25登録)
(ネタバレなしです) 2021年発表の蜘蛛手啓司シリーズ第6作の本格派推理小説で、シリーズ前作の「エンデンジャード・トリック」(2020年)と同じく「読者への挑戦状」が挿入されています。「エンデンジャード・トリック」では「犯人名を特定できない」という異質の謎解きになってましたが本書では卵(コンクリート製で高さ1.5m以上)の中の被害者をどのように刺殺したのかと真犯人の名前の2つの謎を解けと読者に挑戦しています。前者については随分手の込んだトリックですが、あのトリックで被害者の身体や衣服に何の痕跡も残らないのだろうかと疑問に思いました。後者については詳しく書けませんが全く感心できませんでした。蜘蛛手と真犯人の心理バトルが最後は子供の喧嘩状態になってしまうのが結構面白かったですけど。

No.2 7点 メルカトル
(2022/02/18 22:43登録)
龍神の卵の中身は白骨死体!
解体され人間テーブルにされた若者!
奇抜な現象連発の“B級本格ミステリー"
宮村は店舗設計を任されているコルバカフェのオーナー神谷から龍神池近くの別荘にコルバカフェの社員たちと共に招待される。しかし、道路に繋がる吊り橋が斜面の崩落によって落ちてしまう。山道を迂回すれば戻ることが出来ることから落ち着いていた一同だが、深夜密室状態の部屋で神谷が殺されていた。
Amazon内容紹介より。

作者はB級本格ミステリを標榜しているという。奇怪な殺人事件、交錯するプロット、繰り返される推理と想像を超える真相等、確かに氏の目指すガジェットが詰め込まれた作品に仕上がっています。まず冒頭に提示される世界最小の卵の密室は意表を突くもので、明らかに『屍の命題』を意識している様に思われます。そしてドリルキラーによる猟奇殺人と本筋となるコルバ館が錯綜し、物語全体を織り成します。これらの独立する三つの事件は果たしてどう関わっているのか、いないのか?それを想像するだけでも楽しめますね。

名探偵蜘蛛手不在の中、建築事務所の共同経営者宮村が一人奮闘する姿が健気で、思わず応援したくなります。更に本作から探偵事務所に勤めることになった公佳も、蜘蛛手とタメ口を聞くなど無謀なところありつつも、なかなか鋭い面も見せる頼もしい仲間が加わり、次作も楽しみです。ただ、『屍の命題』のような衝撃がなかったのだけは残念ではありましたが。

No.1 7点 人並由真
(2022/01/08 14:40登録)
(ネタバレなし)
 2010年。残虐な猟奇殺人鬼「ドリルキラー」が凶行を重ね、世間を騒がせていた。そんななか、関東の一角にある龍神湖では、卵状の物体の中から刺殺された女性の白骨死体が見つかる。その龍神湖は、「私」こと宮村達也が、外遊中の友人かつ名探偵・蜘蛛手啓司にかわって5年前に設計建築デザインの仕事を請け負い、そして密室殺人に遭遇した館「コルバ館」のすぐそばであった。

 名探偵・蜘蛛手シリーズの、長編第6弾。
 評者は2020年の長編『エンデンジャード・トリック』は未読なので、本シリーズで読むのは『死の命題』『首なし男と踊る生首』とこれで3冊目。

 被害者の死体を残虐に加工して異常なオブジェ風に仕立てる謎の殺人鬼「ドリルキラー」の事件、5年前に宮村が体験し、2010年の現在まで後を引く密室殺人、さらには龍神湖で発見された密閉カプセルの中での他殺死体(状況的に殺害後にタマゴカプセルに封印されたのではなく、閉じ込められたのちに殺されたらしい?)という世界最小の密室殺人事件、これら3つの要素がどう絡むかがキモとなる、いかにもこの作者らしい外連味に満ちた新本格パズラー。

 伏線の張り方の一部は見え見え、怪事件の相関の真相もやや強引だが、例によってトリッキィな仕掛けは十全に用意され、特に卵カプセル殺人事件の真相は一度読んだら、頭に浮かんだビジュアルイメージがなかなか薄れない。
 『首なし男』のバラバラ殺人(死体)の真相の方も唖然としたが、こっちの方も同じ意味でイイ線いっている。

 ただし真犯人が発覚すると、そのキャラクターがいきなり「濃く」なってしまった感じもあり、その辺がいかにも帯で謳う通りの「B級本格ミステリー」っぽい。
 トータルとしては、破天荒なところのこの作者っぽさも含めて、期待した感じの面白さ&楽しさ。一方で、容疑者のアリバイの情報を一覧表でしつこく説明するあたりなどは、思いがけない丁寧さであった。
 一晩で半分徹夜しながら読み終えてしまう。 

 最後に(どうでもいいけど)主要登場人物のひとりが「神谷明」ってのは、いいのか? 

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