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ミステリの祭典

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エンデンジャード・トリック
蜘蛛手啓司シリーズ

作家 門前典之
出版日2020年02月
平均点6.60点
書評数5人

No.5 7点 レッドキング
(2022/03/06 20:52登録)
門前典之第六弾。密室建築トリックここに極まれり! 数枚の見取り図の建築士的説得力と無駄のないミステリ使用。嗚呼!なんという超島荘(眩暈・アトポス超えている)
犯人オチでずっこけて・・クマ(サル・ヘビ応用ね)オチだったら、8点行った(かな)。

No.4 7点 HORNET
(2021/06/20 20:25登録)
 長野縣松本市にある名家、宇佐美家が所有するゲストハウスで、ある男の転落死が起きた。事件は雪の降る夜だったのに、まるで天から落ちたように足跡が一切ない。翌年には、本館で男の首吊り死体が。事故・自殺で処理された両件だったが、さらにその5年後、同じ場所で立て続けに殺人事件が起きる―
 不可能犯罪の状況がこれでもかと次々に繰り出され、覚えきれないほど謎が謎が積み重ねられていく。そのうえ真相は…バカミスともいえるような突飛さだが、嫌いではない。氏の得意とする建築系のトリックではあるが、適宜図も挿入されていて、「マニアックな専門分野のトリック」でもない。結局作品全体で6件の殺人が起きるのだが、その山盛りな展開を収斂させる終末と、そこまでに散りばめた伏線は見事で、本格ミステリとして十分に楽しめた。

No.3 7点 メルカトル
(2021/05/31 22:32登録)
百白荘のゲストハウス、キューブハウスから施工業者が転落して死亡した。転落事故として処理されたが、翌年本館で設計者の首吊り死体が発見される。五年後、キューブハウスには多くの客が集まっていた。その中には二件の未解決事件を解明する依頼をうけた蜘蛛手がはいっていた。
『BOOK』データベースより。

最初は建築に関する薀蓄でちょっとうんざりしました。が、これがのちに効いてくるんだろうなと思い、一生懸命読みましたがなかなか理解が追い付きません。でも終わってみれば大満足なのだから、自分自身にも困ったものだと思いますね。どうしてもこうした奇想が秘められた作品に惹かれてしまうんですよ。ただ新味はありません。なのに既存のトリックを組み合わせた力技はそれだけの魅力を備えており、細部に至るまで伏線も張られているだけに、評価は高くせざるを得ません。

まあ文体は読みづらい部類に入るので、いつもの事ですが、それさえクリアしていればもっと一般受けするのにと思いますよ。物語としてはかなりの無理筋というか、リアリティがまったくありませんので、そういった細かい疵を気にする向きにはお薦めしません。しかし本格書きとしてのスピリットは存分に感じられ好感は持てます。と言うか、もっと派手にやってくれと思います。

No.2 6点 虫暮部
(2021/04/16 12:40登録)
 相変わらず文章は硬く、人物の動きは大味だが、建築の話題に限って饒舌になるあたりにはニヤリ。妙な芸風が確立されてはいる。こういう書き方だから成立するトリックだと言う側面もあるし、この人は“本気かどうか判別しがたい大技を使うヘタウマな作家”として自らの道を邁進してもいいのかもしれない。

No.1 6点 nukkam
(2020/04/06 22:29登録)
(ネタバレなしです) 「王道の本格派なのに奇想の本格派」という評価にふさわしい2020年発表の蜘蛛出啓司シリーズ第5作です。好き嫌いは分かれると思います。本書を気に召さない読者は、「読者への挑戦状」まで挿入しながら「犯人名を指摘するのは無理だろうが犯人を特定できる」というメッセージに悩まされ、どうすればこの挑戦に勝てるのかはっきり説明してくれと不満を抱いたかもしれません。トリックに専門的知識を要求しているのも気に入らないかもしれません。「最後の殺人計画」で途方もない悪意が明らかになりますが、そもそも人物の心理描写が上手くないから悪意のインパクトが弱いという指摘もごもっとも。そしてアレ(ネタバレになるので不詳)を集めたことが「ありえない」としか思えないのに更に「もう一度集めるか」には呆れてしまうかも。しかし本格派推理小説に心酔している私としては弱点、問題点を多数抱えながらもこういう作品を嫌いになれないんですよねえ。

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