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ミステリの祭典

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灰王家の怪人

作家 門前典之
出版日2011年06月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 6点 E-BANKER
(2023/03/03 19:07登録)
シリーズ探偵の登場しない作者の長編四作目。
古いタイプのコテコテ本格ミステリーの書き手として注目された作者だが、さて・・・
単行本は2011年の発表。

~「己が出生の秘密を知りたくば、山口県鳴女村の灰王家を訪ねよ」という謎の手紙をもらい、鳴女村を訪れた慶四郎は、すでに廃業した温泉旅館灰王館でもてなされる。そこで聞く十三年前に灰王家の座敷牢で起きたバラバラ殺人事件。館の周囲をうろつく怪しい人影。それらの謎を調べていた慶四郎の友人は同じ座敷牢で殺され、焼失した蔵からは死体が消えていた。時を越え二つの事件が絡み合う~

“なかなかの怪作”という表現でよいのだろうか?
個人的には、まさか連続して“〇〇ム〇生〇”が出てきて、それがもろにトリックのカギとなる作品を続けて読むなんて考えもしなかった。
いま2023年ですよ! こんなご時世にねぇ・・・随分と時代錯誤なことだ。

本作の「表」のテーマはもちろん「密室内でのバラバラ殺人」となる。で、この解法がスゴイ。
確かに、伏線というかヒントはそこかしこに撒かれているし、ミステリーファンだったら「こうかな?」と思い付いてもおかしくない。まぁ医者がグルだとか、都合の良い条件の甚だご都合主義なので、こういう手の作風を好まない方には徹底的に嫌われそうな作品だと思う。

過去の殺人事件の真相が判明し、現代の事件もひと段落つき、本作もようやくケリがつくのかと思っていた矢先、実はこれからが本作の「裏」のテーマが詳らかにされる。これがかなりエグい。
主人公の秘密に関しては想定の範囲内としても、まさか〇子ではなく〇〇子とは・・・
ここまで来ると、もはや何でもありで、何が現実で何が空想なのかも判然としなくなってくる。
これが作者の特性ということだろうか。島田荘司の系譜はてっきり小島正樹の詰め込みすぎミステリーだと思っていたら、こっちにも有力な後継者がいた、っていう感じだ。
まぁリアリティなんて概念を持ち出したらダメなんだろうな。摩訶不思議な状況を現実ギリギリの線で作り上げる。

でも、いくらなんでもなぁー。「手記」って便利だよね。仕掛けし放題なんだから・・・

No.3 7点 レッドキング
(2022/02/28 19:09登録)
門前典之第四弾。前二作の建築ネタを離れ、今回は廃温泉館が舞台のバラバラ殺人密室もの。「孤島の鬼」「シャム双生児の謎」(両方とも好物)に「ドグラマグラ」「姑獲鳥の夏」混ぜて煮込んだミステリシチュー。密室からの犯人消失より「被害者なぜ出られなかったか」がユニーク。グロ風味は悪くないが、人面瘡展開はちとくどすぎ。もう一つ薄味の解離性人格云々でまとめた方が美味しかったかな。
※第一人称叙述「~」で虚偽を記せばミステリしてアウトだが、叙述者が「~」を確信している場合そうとも言えず、京極「姑獲鳥」は傑作と思うが、その塩梅は難しく。
※見取り図に鏡あるんだから「三つの棺」ネタもほしく・・思ってたら最後にチョビッと・・。

No.2 5点 nukkam
(2016/05/08 01:45登録)
(ネタバレなしです) 2011年発表のシリーズ探偵の登場しない本格派推理小説です。物語の大半は鈴木慶四郎という男の視点(1人称形式)で描かれますが、この描写がしばしば不自然さを伴って回りくどく、読者を混沌に陥れるところは綾辻行人の「人形館の殺人」(1989年)や京極夏彦の「姑獲鳥の夏」(1994年)に通じるところがあるように思います。そのためか(トリックの成立条件がかなり特殊なこともあって)謎解きのすっきり感を得られにくい印象を受けました。

No.1 7点 黒い夢
(2011/09/22 08:22登録)
おそらく意図的に作者が一部の真相をとてもわかりやすく示しているため、そのさらに先の部分にはまったく気づけませんでした。物語としても登場人物の悲しみや葛藤が読んでいてつらすぎる程に描かれており満足しました。

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