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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:943件

プロフィール| 書評

No.643 5点 絞首商會
夕木春央
(2022/11/17 19:01登録)
超美形・高学歴にして元泥棒の大正青年が主役探偵。初老の博士を裏切者として処刑した、アナキスト集団:絞首商會の覆面メンバーは誰か。容疑者達から犯人を探すフーダニットと見せかけて、犯人の驚くべきホワイ・ハウと、容疑者達の啞然とさせられるホワイ・ハウが、物語の主幹であった。面白かったが、せっかく大正の世が舞台なんだから、もちっとそれなりの「時代考証」描写もほしく・・


No.642 4点 諏訪湖マジック
二階堂黎人
(2022/11/14 20:58登録)
水乃サトル・マジックシリーズ第二弾。旅行会社の亜愛一郎:サトルが主役探偵。時刻表ミステリに歴史浪漫チト加味して、テーマは「死体はなぜ(二度)殺される」。そのWhyと手の込んだHowの構成の巧みさは認めるが、費用対効果的にちょっとねぇ(-"-)・・・もし、「密室」見せてくれてたら、固いこと言わずに6~7点あげてたけどねぇ・・・


No.641 7点 死の記憶
トマス・H・クック
(2022/11/11 20:32登録)
母と兄と姉を射殺して失踪した父、一人生き延びた末っ子の少年。数十年後、彼の前に現れたのは、同様の"父親による家族皆殺し事件"の研究に情熱を抱く美女ジャーナリスト。記憶に潜む事件想起の産婆役を彼女に委ねながら、現在の妻・息子との日常に、かつての家族の絶望的な情景が塗り重ねられて行く。物語は、女が下した結論・・灰色の日常に復讐する男の狂気的浪漫発作・・に絡み取られる文脈と見せかけて、アッと驚くような・・と言うより、ウぅーと呻かせられるような・・だまし絵的反転を遂げて終わる。ミステリとしては見事で、家庭悲劇としては破滅的に痛い。


No.640 7点 闇をつかむ男
トマス・H・クック
(2022/11/07 17:03登録)
40年前の死体無き少女殺し事件。犯人として電気椅子処刑された男の裁判を追う犯罪ルポライター。40年後の追調査に、猟奇殺人鬼達とのおぞましき交流が甦り、彼自身の生い立ちと、彼以前に事件を追い、死んだ幼馴染への追想が絡み、挙句の果てに、驚くべき事件の真相が明かされる。彼が追い求めた少女の屍体と真犯人は・・・

「謎」=ミステリとは、「答」という「生の停止」を延命させる救済装置に過ぎない。それでもミステリは解決され「わかったほうがいい、だろ?」・・まあ、たぶん・・


No.639 4点 軽井沢マジック
二階堂黎人
(2022/11/03 00:46登録)
水乃サトル・マジックシリーズ第一弾。ホテル部屋と列車内で同じ凶器で刺殺された夫妻、眼球を抉り抜かれた作家に、屋根上で怪死したジャーナリスト、繋ぐ「環」はカルト教団。凶器移動・眼球・屋根上・うーん、この作者にしてはいずれもイマイチのネタで、骨格も捻りも「女王国の城」言うに及ばず「弥勒の掌」と比べても、スナオ過ぎかな、と。


No.638 5点 サウサンプトンの殺人
F・W・クロフツ
(2022/11/01 19:07登録)
クロフツ第十六作。二つのアリバイトリック自体は凡庸で、殺人トリックは輪をかけて退屈。が、犯行サスペンス倒叙と、犯罪者たる「倒叙」者が、欺かれる「叙述」者に転倒する、とんテン・・ドンデンでなく・・返しが読ませどころ。


No.637 6点 ラン迷宮
二階堂黎人
(2022/10/29 18:34登録)
二階堂蘭子シリーズ、第三短編・・いや中編集。
   「泥具根博士の悪夢」 奇矯なマッド博士の五重密室・・四重正方形密室+雪足跡密室・・の刺殺事件。7点  
   「ランの家の殺人」 12年前の夫婦飲毒死事件の再検証。毒混入解決鮮やかだが、密室ネタがぁ(>_<)・・またも
            出ました「液体窒素」・・6点
   「青い魔物」 胃袋抜き取り連続殺人と青い怪物。これも「戦前癩者物」のバリエーションかな。3点
なんだか、だんだん好きになってきちゃったゾ、蘭子ねえさん (^^) ・とりあえずシリーズ最後なんで点数オマケ付き


No.636 7点 バラ迷宮
二階堂黎人
(2022/10/27 19:08登録)
二階堂蘭子シリーズ第二短編集。
   「サーカスの怪人」 サーカス小屋に突如現れた子供のバラバラ屍体。が、テント内は密室状態で・・7点
   「変装の家」 雪降る断崖の屋敷での足跡無き雪密室殺人。5点
   「喰顔鬼」 顔面を剥ぎ取る殺人鬼女。風呂場密室に「癩者物」パロディのオマケ付き。7点
   「ある蒐集家の死」 ダイイングメッセージと死体移動ロジックと証拠捏造の華麗なるモザイク。8点
   「火炎の魔」 突然に自家発火する身体。凄惨な連続焼死事件のHow。3点
   「薔薇の家の殺人」 二十年前の毒殺事件。毒混入トリック鮮やかで半ドンデン返しオチも良く。9点
で、平均、6.5、四捨五入で7点。
※この作者らしくなく、密室ネタ以外の方が良い。「真空装置」「液体窒素」「濃縮酸素」って・・東野圭吾「卒業」レベルの・・何という脱力トリック。


No.635 4点 クロイドン発12時30分
F・W・クロフツ
(2022/10/25 21:26登録)
クロフツ第十五作。こう丁寧な倒叙をされると、犯人の主観・・「冷血」や映画「フレンジー」でさえそうだったが・・に情緒が巻き込まれてしまい、官憲側へ部分的に拒絶感さえ感じてしまう。が、そこはクロフツ、情状酌量とはいかないキャラの主人公に仕上げてくれてはいる。点数は、倒叙でない普通の描写だった場合の点数3点に、1点オマケ。
※刑事物が嫌いだった父が、格別に嫌ってた公僕がコロンボと古畑任三郎だった事をふと思いだした。


No.634 6点 熱い街で死んだ少女
トマス・H・クック
(2022/10/20 16:37登録)
1963年アラバマ。キング牧師指導の黒人運動と白人治安部隊の争乱下、射殺死姦された黒人少女の事件を追う白人警官。左翼イデオロギーにもリベラル主義にも無縁の、既に心朽ち人生を半ば諦めた・・この作者お馴染みキャラの・・警官が、主義からでなく情動から引きずり込まれる黒人への執着。それでも「想像はできるが、わかる事はできない」壁の向こう側の情景。悲惨な黒人スラム描写とキング牧師の熱いアジと白人達の残忍な言動、読者の心象に煙幕を張りながら、その裏で運動を利用して進行する連続殺人犯達の思惑。冷え切った心を焼く黒人への思いと、犯人を追う冷めた捜査が、事件の真相解明へと反転収束する。

半世紀以上が経過し、黒人差別はタブーとなり、右派・保守的発言がウリの前大統領でさえ「この私に人種差別の血は一滴も流れてない」とアピールせざるを得ない現在の米国。それでもなお根底において変わる事のない、恐怖・嫌悪と建前・偽善の錯綜混乱・・そして我が国、外見では識別できない隣国民族を侮蔑して来た我らにしたところで、邦内に「白人」「黒人」等、肌の色が違う人間が多数混入して来れば、似た様な状況となる事に違いなく・・・


No.633 4点 ホッグズ・バックの怪事件
F・W・クロフツ
(2022/10/17 12:14登録)
クロフツ第十四作。寒村に隠遁した老医師と遠地の看護婦の、駆落ちを連想させる唐突な失踪。さらに一人の女の失踪が続き、過去の毒殺疑惑を巻込む連続殺人事件へと急転するが、容疑者達には結構なアリバイが・・・共犯者達のアリバイトリック・・略図付き、分単位時間表付きの、眩暈を誘うようなトリックは緻密だが、車の「手押し」てのは・・・


No.632 6点 ユリ迷宮
二階堂黎人
(2022/10/12 21:35登録)
二階堂蘭子シリーズ第一短編集。と、言っても「劇薬」は、長に近い中編。
   「ロシア館の謎」 雪上館の完全消失物。が、錯視トリックの類ではなく、麻耶雄嵩「夏と冬の奏鳴曲」並みの
           啞然超絶トリック 6点。
   「密室のユリ」 完全な密室物。わお、敢えてそのトリック使うか! 「皇帝のかぎ煙草入れ」風味の犯人指摘
          のロジックが良い。7点。
   「劇薬」 トランプゲームスコアからの毒殺事件の犯人指摘。4点。


No.631 7点 巨大幽霊マンモス事件
二階堂黎人
(2022/10/12 08:08登録)
二階堂蘭子シリーズ第十弾。 題名からして「双面獣」類の化け物話・・ではなく、ちゃんと本格復活!
    首切り足跡トリックに、3点(満点)。※これ、足跡でなく完全密室にできたのに・・・そうしたら、
                     麻耶雄嵩「翼ある闇」のバカみすトリック完成形に成れた・・・
    雪館の皆殺し足跡トリックは、1点。
    叙述トリックに、2点。※手記「…」中で虚偽を記すのはアウトだが、手記叙述者の主体を巧妙にずらすのは、
               傑作「殉教カテリナ車輪」「首無の如き祟るもの」の如く、立派なトリック。
    怪物トリックは、1点。※ドイル怪獣物や「双面獣」の妙ちくりんなSFバケモノ話よりミステリしてる。

※それにしても、これ、一部に、短編「ロシア館の謎」を入れて、二部で、シャム多重児の首無殺人を、密室トリックに作りこむことに特化していれば、「人狼城」に次ぐ傑作になれたんじゃないか・・・実に残念


No.630 6点 モース警部、最大の事件
コリン・デクスター
(2022/10/08 13:32登録)
デクスター短編集。 長さからしても、本格より小噺・ファルス・コントの匂いがして・・・
   「エヴァンズ、初級ドイツ語を試みる」 超ルパン級脱獄名人のテク噺し。6点
   「ドードーは死んだ」 半世紀昔の幻の女を求めて・・知らぬが華とも言うが・・6点
   「世間の奴らは騙されやすい」 懐かしき映画「スティング」思わせるカモり譚。5点
   「近所の見張り」 警部・博士・怪盗、三つ巴の「赤毛連盟」合戦 7点
   「花婿は消えた」 ドイル「(花婿の)正体」の変奏曲「女の正体」に、二重ツイスト楽章が追加され・・8点
   「内幕の物語」 夫・妻・夫の愛人・妻の愛人、作中作をはめた二重騙し絵パズルが見事。8点
   「偽物」 堀の中でしか生きられない囚人のドンデン返し小噺。5点
   「最後の電話」 教授、妻の学者、高級娼婦の愛人・・殺人ドンデン(でなくトントン)返し劇。5点
その他、「信頼できる警察」「モンティの拳銃」及び表題作は・・うーん、採点対象外。


No.629 6点 死の鉄路
F・W・クロフツ
(2022/10/05 15:11登録)
クロフツ第十三作。海沿い鉄道作業現場での連続不審死事件。作業量の嵩増し偽装「社会派」風ネタ巻き込んで、地味なアリバイトリックで収束する。が、クロフツでは、この作まではなかった「意外な真犯人」感があってなかなかにGood。あと、「製材所の秘密」「紫色の鎌」よりも不正行為の費用対効果感がランクアップしててよいネ。


No.628 6点 神の街の殺人
トマス・H・クック
(2022/10/04 08:32登録)
ユタ州ソルトレイクシティ。モルモン教と呼ばれる教団・・カルトと見なすにはメジャーすぎるが、耶蘇教一宗派と言うには異端すぎる教団が、残酷な弾圧と過酷な逃亡の末にたどり着いた約束の土地。驚異的な労苦の末に打ち建てた、「美しく穢れなき」街。そこでは起こるはずのない、起きてはならない血に汚れた連続殺人が起きて・・。黒人娼婦、老人記者、教団幹部、モルモン教史学者・・被害者達の「環」を追うのは、ニューヨークから移住して来た、心は既に朽ち果てつつある警官。荒廃した東部の大都会も、美しき南西部の神の街も、彼にとっては、いずれも、それぞれに冷酷な絶望の光景に過ぎなかった。


No.627 7点 二つの密室
F・W・クロフツ
(2022/09/29 17:20登録)
クロフツ第十二作。どーせ、クロフツ「密室」なんて、ドイル・チェスタトンの類レベルだろ、て高をくくってたら・・あらら、ちゃーんと密室してて、しかも「黄色い部屋」なんかより、面白いじゃん! (^.^)


No.626 5点 覇王の死
二階堂黎人
(2022/09/27 20:02登録)
二階堂蘭子シリーズ第九弾。かつvs魔王ラビリンス最終編
    首くくり密室に、1点。(3点満点で採点) 
    少女射殺密室に、2.5点。(新機軸ありとの自賛付き)
    人間はやにえトリック(なんちゅう島荘)は、0点。
    村ごとホラー幻覚ネタ明かしに、1点。(狂犬病こええ)
で、4.5点だが、ラビリンス編決着で、0.5点オマケ付けちゃう。双面獣と女ラビリンス、もっと見たかったなあ・・


No.625 6点 鹿の死んだ夜
トマス・H・クック
(2022/09/24 19:28登録)
クック処女作。定年を前に妻を亡くし、弁護士の息子一家とのワザとらしい親交ごっこと、心底の静謐な絶望に辛うじて耐えて生きるアラシクス(<60)のニューヨーク刑事。任された事件の被害者は、体中57ヶ所を斬られ惨殺された二頭の鹿と、同じく57ヶ所を斬られ惨殺されたレズビアンのカップル。サイコホラーの如きWhoダニット物語が・・不思議な事に・・リアリティを持った真相解明と、変に説得力ある苦い結末で終わる。ウディ・アレンにビル・クリントン、ドナルド・トランプを加味した如きキャラが、如何にも分かり安いラスボス風味で登場。


No.624 4点 英仏海峡の謎
F・W・クロフツ
(2022/09/21 21:40登録)
クロフツ第十一作。英仏海峡に漂うヨットには屍体が二体。大証券会社の倒産と役員達の逃亡劇が殺人事件へ変貌し、殺人者の時間アリバイ不可能トリックが、シンプルかつリアルに解明。※タイトル、「小指の曲った男」てのどお?

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