智天使の不思議 水乃サトルシリーズ |
---|
作家 | 二階堂黎人 |
---|---|
出版日 | 2009年06月 |
平均点 | 4.17点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 4点 | レッドキング | |
(2023/06/04 07:34登録) 水乃サトル不思議シリーズ第四弾。 操り者の少女漫画家とシモベの男。実行者視点で、三十年を隔てた二つの殺人アリバイトリック・・一つは密室付き、もう一つは少々話が立て込んでる・・が描かれる、ま、倒叙の「白夜行」ね。普通の叙述展開だったら3点。が、倒叙展開面白く、乱歩風かつ「戦前〇〇者(今時チトあぶないか)物」風の外連味もミワク的なので1点オマケ。 |
No.5 | 6点 | ごんた | |
(2014/07/21 18:41登録) (ネタバレあり) 500ページ近い長編ですが飽きずに最後まで読めます。 容疑者Xとの類似が指摘されますが、自分は女黒幕に献身的に従う男実行犯ってことで白夜行を思い出しましたね。 普通に面白く読めますが、以下の2点が不満。 1.メイントリックがわかりやす過ぎる。普段トリックをまったく見破れない私が見破れたので、ミステリ慣れしてる人は簡単に見破るでしょう。 2.告白書の必然性がまったくわからない。時効になった事件や、事件扱いされていなかった事件まで公にして、真犯人の社会的地位を貶めただけに思える。炎上商法にしたってあまりにもやり過ぎ。34年前にあれだけ苦労して工作してきたのが全部パーじゃん(笑) 誰かわかる人説明してくれ~ |
No.4 | 5点 | E-BANKER | |
(2012/04/01 16:31登録) 二階堂蘭子と双璧をなす作者のシリーズ探偵・水乃サトル登場作品。 シリーズ初の倒叙ミステリーとのことだが・・・ ~昭和28年、一人の金貸しが殺された。警察は没落華族の若い女性とその家の元使用人を犯人と断定。だが、2人には難攻不落のアリバイがあり、事件は迷宮入りしてしまう。その女性は後に一躍人気マンガ家になるが、34年後今度は彼女の元夫が不審死を遂げる・・・2つの事件を追う名探偵・水乃サトルは、悪魔的な完全犯罪計画を見破れるのか?~ 可もなく不可もなくといった感想。 倒叙物ということで、犯人視点から事件が語られるわけだが、それが水乃サトルが耳にする事実(伝聞)と微妙に食い違っている・・・ その「食い違い」こそが、作者が仕掛けた「欺瞞」なのだが、如何せんサプライズが小さすぎる。 結構もったいぶって引っ張り、警察が解き明かせず迷宮入りしたという割にはアリバイトリックがしょぼい。 (「紅白歌合戦」ネタの奴ね) 「智天使」とか、悪魔的な犯人と煽るほど、真犯人のキャラ・造形が強くないのもちょっと興ざめ。 まぁ、本シリーズ自体、当初からそれほど面白いわけでもなく、なんでこのシリーズに拘るんだろうと個人的には思ってるんだけど・・・ 特に今回は、いつもの軽いノリではなく、シリアスな作風・展開のため、サトルのキャラにも合ってない。 この手の倒叙ミステリーが好きな方以外にはあまり薦められないねぇ。 (ラストの「大オチ」もちょっと唐突だし、取って付けたような感じ) |
No.3 | 4点 | kanamori | |
(2010/08/26 18:20登録) 百のサークルに所属する大学生・水乃サトルを探偵役に据えた倒叙形式の本格ミステリ。 当シリーズは、1980年代後半を時代背景にしていますが、今回のメインの事件は、1953年(昭和28年)のもので既に時効が成立している殺人事件のアリバイ崩しに一生懸命勤しみます。 これは、紅白歌合戦の豆知識だけで思いついたようなアリバイ・ネタでした。 |
No.2 | 3点 | TOMY | |
(2009/12/29 23:41登録) ネタバレありです。 容疑者Xに対抗してあえて同種のトリックで作者の考える本格を表現したとの話を耳にしましたが、リーダビリティやキャラクターで容疑者Xに比べるべくもないのは致し方ないとして個人的には本学ミステリとしても完全に負けていると思った。単に犯行時間を実際と異なるものと誤認させてのアリバイ工作だけなら、アリバイものとしても特段斬新とはいえないのでは。容疑者Xがすごかったのは、誤認させるためにそこまでするか?という発想の大胆さがあったから。本作では誤認させる時間差が大きいことが珍しいとはいえ、それ自体伏線がわかりやすいので驚きにならなかった。また物語の構造も本格を強調するにしては無駄に錯綜しており謎の解明のカタルシスがない。 |
No.1 | 3点 | 江守森江 | |
(2009/08/24 23:36登録) 作品の書かれた経緯を考えず単なる水乃サトルシリーズ作品として読めるなら、シリーズ平均点(5点)レベルだろう。 シリーズ読者として嬉しいのは、サトルの三番目の姉がバレリーナだと初公開された事に尽きる。 さて、「容疑者X」論争の発端が東野人気に対する作者の嫉みと一般的読者に認識され評価を下げている現状を考えると、私みたいなシリーズ読者かコアなミステリファンしかこの作品を読まない(一般的読者には無視される)と思われる。 ※一応ネタバレ注意 更に、ミステリの骨格が「容疑者X」同様に倒叙での"叙述による日付錯誤と隠蔽"では作者の主張する本格って何?と疑問に思う(しいては、作者の創作姿勢にも疑問を抱く) そして、本格は伏線がキッチリしているべきと主張するかの如く露骨で、トリック及び「献身の真相」も察し易く、結末でのカタルシスは得られなかった。 めったに倒叙を書かない作者が、犯人に逃げ切られるイレギュラーな結末にした事も関心しない。 どの道、大多数の一般読者に無視され続けるのだから、倒叙でない従来の軽いノリなサトルシリーズで書いて欲しかった。 |