ローラ・フェイとの最後の会話 |
---|
作家 | トマス・H・クック |
---|---|
出版日 | 2011年10月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 5点 | ことは | |
(2024/10/06 21:27登録) 久しぶりに読むクック。 本作は、記憶シリーズと同じで、過去の事件を少しずつ周辺から語っていく構成。ミステリ的興趣としては「ホワットダニット」になる。 読者は、なにがあったかをまったく知らずに読みすすみ、登場人物たちは、表面的に起きたことは知っているが、そこにどんな事情があったかを知りたくて追求していく。 そういう構成なので、ミステリ的興趣は少なく、面白さのポイントは登場人物たちのドラマだ。記憶シリーズと比較すると、ドラマのインパクトがやや弱い。まあ、記憶シリーズが強すぎるのだが……。 記憶シリーズよりよい点は、本作、かなりわかりやすく区切りがつくので、読みやすい。連続ドラマに合いそうだ。あとは、ラストが記憶シリーズより明るい印象。そんなところなので、記憶シリーズのほうができがいいと思う。 |
No.3 | 5点 | レッドキング | |
(2023/06/01 21:39登録) かつて神童と目され、偉大な歴史家となる将来を夢見たハーバード大卒の男。齢四十を前にした実像は、著作はパっとせず講義にも人気のない、離婚歴のある冴えない学者に過ぎなかった。父親の店の店員だった凡庸な見てくれの中年女との数時間の「対話」を通し、今は亡き不器用な田舎者だった両親と、女と、女の夫との間に起きた事件が回想され、男の生涯の痛い「真実」が焙り出される・・これが、クックのいつもの奴より地味に、でも、イタいんだなぁ(;O;)。 それでも、「人生の最後の希望は、己の犯した全ての誤りが、ふいになすべき良きことの全てを教えてくれること」てな救済エンドへ。最後の"Happy"割愛すれば、「惑星ソラリス」や「父、帰る」等、暗く美しいロシア映画。 一言で言えば、ミステリ妙味を犠牲にした・・もはや読者を釣るテクに過ぎず・・人生の「苦い文学」。 |
No.2 | 6点 | 小原庄助 | |
(2017/11/25 08:48登録) 大学教授である主人公のルークが、新しい著書の宣伝のために訪れたセントルイスで、故郷の町出身のローラ・フェイと再会するところから始まる。 いまや47歳の中年女性になっているローラ・フェイだが、かつては肉感的な若い女性で、ルークの運命をある意味で左右した存在でもあった。なぜ今になって彼女が自分に会いに来たのか、と内心動揺するルークだったが、誘われるままに酒を飲み昔話をする。 物語は、現在の二人の会話に過去の回想が挟み込まれる形で進み、やがてルークの父親にまつわる過去の真相が少しずつ明らかにされていく。途切れぬ緊張感といい、過去と現在の職人芸的な切り替えといいクックの腕はさえわたっている。 人生の汚点はぬぐえるのか、そして、いかにして「人生の最終的で最大の希望」を得られるのか。読み終わった時にそんなことを考えた。その判断は読者一人一人に委ねられているに違いない。胸にしみる作品である。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2011/11/17 17:37登録) 主人公である冴えない歴史学者ルーカスと、20年前の殺人事件の中核にいた女性ローラ・フェイとの、男女二人の会話場面のみでポケミス2段組み300ページというユニークな構成ですが、ルーカスの回想が自然な形で挿入され、過去の人間関係の絡み合った糸が徐々に解かれていくプロットは、版元が変わっても、やはり90年代に書かれた”記憶シリーズ”の延長線上の作品という印象です。 ただ最後は、こういった構成のミステリから予想できる結末をあえて外しているのは意外でした。これは、あまりクックらしい終り方ではないように思う。 |