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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:943件

プロフィール| 書評

No.663 5点 孤独な鳥がうたうとき
トマス・H・クック
(2023/01/09 21:46登録)
元末流クラブ歌手の女、女の夫、夫の父親で金貸し小物暴虐ボス、その手下、夫の会社の部下、ニヒルな一匹狼探偵、余命僅かな探偵の取次役、女の臨家の主婦、その母親、ジャズ酒場店主のピアニスト・・10枚のパズルの駒が、女の家出をきっかけに飛び交い始め、慌ただしく元絵・・絶望から諦念に至る元絵を描き換えて行く。メリーゴーランド方式どころか、十視点描写で、苦く滑稽なサスペンスが進行して、ミステリとしては「女の義父のこの異常執着は何?」に絞られ、結局は、それを焦点に、実に見事な拍手パチパチの「ハッピー」エンドに決着する。
ミステリとしては3点、小説としては7点、間とって、うーん、5点。


No.662 6点 鬼蟻村マジック
二階堂黎人
(2023/01/02 19:15登録)
水乃サトル・マジックシリーズ第四弾。 蘭子ちゃんシリーズに比べてイマイチいやニ・サン、ミステリ以前に小説として魅力がウスい、サトルくんシリーズ。が、今回は露骨な「犬神家」オマージュ編にして、密室が三つ。で、密室一つにつき3点満点加点法で採点。
   第一の密室・・「孤島の鬼」完全版として、3点(満点)
   第二の密室・・後出しカラクリ仕掛けで、 2点
   第三の密室・・うーん、このネタはなァ、 0点 密室点計、5点。に、犯人のひねりWhyに、+1点。


No.661 6点 かがみの孤城
辻村深月
(2023/01/01 09:29登録)
不覚にも感動した・・もちろん本格物でなくファンタジーだが、「この世界設定や、如何?」「狼覆面少女の正体、誰?」「第七の封印、何処?」をミステリ要素として・・
( 漫画「ぼくらの」ではなく、アニメ映画「君の名は」「エヴァンゲリオン」風味の救済エンドで、まあ、良かったかな)


No.660 3点 ヴォスパー号の遭難
F・W・クロフツ
(2022/12/30 16:12登録)
クロフツ第十八作。沈没した貨物船の保険金詐欺疑惑を調査する私立探偵。探偵の行方不明事件が殺人事件へ展開し、信じられないまでにストレートな・・十八番アリバイトリックさえない・・船舶爆破陰謀が判明する。船荷「密売」ネタはちょびっとだけ面白かった。


No.659 8点 密室キングダム
柄刀一
(2022/12/28 00:06登録)
密室の、密室による、密室のための、密室。  ・・・「虚無への供物」へと、捧ぐる美酒も数滴、ほんの数滴・・・


No.658 5点 光の雨
立松和平
(2022/12/22 07:30登録)
「マルクス主義」「反スターリン主義」「トロツキズム」「毛沢東主義」「新左翼」「革命」・・・いずれも、どうでもいい。
「連合赤軍」、それは、この世の果てまで行き着いてしまった、無惨にして滑稽な青春群像(ちとセンチメンタルだが)で、その心臓に矢を貫けているのは、こうした連赤テーマの諸作品ではなく、一見無関係に見える、実相寺昭雄の映画「曼陀羅」や、麻耶雄嵩の「夏と冬の奏鳴曲」であったりする。  ※「この老人Who?」のミステリと言える(かな)


No.657 3点 神曲地獄篇
高木彬光
(2022/12/22 07:24登録)
” 書かれている事柄の7(6だったか)割は事実・・” と著者自ら自負した「実録」小説だが、「事実でない3割」の方が問題。該当モデルの「人違い」と言うレベルの話ではなく、本来、ダークヒロイン位置の大槻節子や文学青年:向山茂徳を、単なる組織の被害者として薄っぺらく描くことの俗例から逃れていない事が問題。「連合赤軍」の本質は、派手な鉄球映像「あさま山荘事件」ではなく、「同志十二人リンチ殺人」にあり、その根は、「赤軍派」と連合する以前に「革命左派」が起こしていた「印旛沼事件」に求めるべきで、そこから出発していれば、ひょっとしたら、日本版「悪霊」が書かれていたのかもしれない。  ※「何が起きた?」のミステリとは言えるかな。


No.656 2点 赤い雪
角間隆
(2022/12/22 07:14登録)
" 高邁な理想を抱いたが故に低劣な行為に追いやられるのは、何故か?"  「悪霊」作者の問いの「高邁さ」の欠片もない、かと言って、「黒い報告書」レベルの下世話好奇心満足感には到底及ばない犯罪「実録」もの。残虐・猟奇行為を劇画チックに描くのもよいが、誇張・戯画化に至る貶めは、逆に連赤事件の言いようのない「おぞましさ」を薄めてしまう事に、このジャーナリズム作家は気付いてない。  ※「何が起きた?」のミステリとも言えんかな。


No.655 4点 さらば長き眠り
原尞
(2022/12/16 20:36登録)
私立探偵一人称語り=ハードボイルド文体が、眼に心地よい。初っ端登場の浮浪者が、和製マーロオ:沢崎のレノックス・・マロイでもよいが・・役になる「男同士の交情」展開かと思いきや、「女同士」物語が真相であった。
刑事とヤクザの似た者強面描写ナカナカだが、前二作と比べ、彼らとの関係、何か軟弱化してない? ラストの劇画チック展開ともかく、暴力団から5万円寸借しちゃう場面は・・チトおもはゆく。
※三十年前と今とで大きく変わった事・・喫煙が「悪癖の美学」でさえなくなり、単なる少数者の嗜好となってしまった事。それから、当時は珍品だった「携帯」でさえ「ガラケイ」という過去の遺物になりつつある事・・


No.654 6点 闇に問いかける男
トマス・H・クック
(2022/12/13 21:33登録)
少女殺し容疑者の若き浮浪者。男の有罪確証を得るリミットの朝までは12時間、その一夜の群像劇。取調室で浮浪者と「対話」を続けるユダヤ人刑事、妻を亡くし病床の娘を気遣う清掃業者、殺された少女の母親、4年前に自身も娘を殺された刑事、理想ではなかった息子を拒否し駄目にしてしまった刑事部長、ジャンク品売買業者、病身の妻子を持つ「無能」な巨漢刑事、スラムから叩き上げ登り詰めた本部長、ノミ屋の男・・・ハードボイルドな「ニヒル」人物設定を超えた、ブンガクな「痛ましい」人物造形は相変わらずだが、それまで直接には交わらない清掃業男とユダヤ人刑事を、真実解明エンドで繋げる等、なかなかなミステリテクを披露してくれる。が、なんといっても「主役」の浮浪者・・半異形半妖精の様な・・がミステリで、映画「グリーンマイル」落ち予想を超えて、最後までブンガクしてくれてる。あとは、真犯人がちゃんとフクセン登場してくれていたら・・本格してた。


No.653 4点 猪苗代マジック
二階堂黎人
(2022/12/11 11:22登録)
水乃サトル・マジックシリーズ第三弾。10年の時を隔てて再発した、汚職公僕の連続惨殺事件の犯人「処刑魔」捜し。
メインは完全防備マンションの密室殺人解明と、「驚き」の共犯者Who。密室は・・結局、クロフツ級アリバイトリックに過ぎず、「驚愕の最後の一行」の出来は・・うーん、惜しい(-"-) 叙述工夫してんの分かるんだけどねぇ。

※いっそ、共犯者Who主筋の方が良かったんでは?  もっとダミーAのキャラ造形に工夫凝らして、読者をダミーBに巧妙に誘導してさ、ほんで、共犯者Whoの「最後の一行」を効果的に生かせてたら・・


No.652 7点 心の砕ける音
トマス・H・クック
(2022/12/08 00:40登録)
" もしも地獄の光景が冬ならば、メイン州の冬景色そっくりに違いない・・・" 
凄惨な過去を持つ緑色の瞳の女、理知と冷血の兄、浪漫と熱血の弟・・いったい、誰が何を行い何が起きたのか、そもそも消えた幻の女は誰なのか、北部メイン州港町を舞台に、人物トリックを巻き込んだ、痛ましく陰惨な「カインとアベル」物語のミステリ展開・・と思いきや、クックにしては珍しく救いある終末に決着。
怒涛の救済解明は良いが、「家族Commedia大団円」は、行き過ぎかな。あれは「毒親・闇落ち」のままにしとかなきゃ。
" 忘れる事のできない痛い記憶の数々で、己自身が己自身を蝕まみ、さいなみ、苦しめて・・ " 身につまされるな


No.651 6点 サーカスから来た執達吏
夕木春央
(2022/12/05 23:38登録)
異装文盲の元サーカス曲芸妓少女が探偵役。ヒロイン兼ワトスン役にして暗号解読役の零落貴族少女(+牝馬一頭)を相棒に、失われたお宝を求めての冒険ミステリ。見どころは、十数年前の密室お宝消失のHow・・これがまたトンデモな捻りカラクリ・・で、財宝Where?エンドに見事に収束。
※サーカス少女のエキセントリック度は・・期待した程ではなかった。


No.650 4点 ギルフォードの犯罪
F・W・クロフツ
(2022/12/04 16:27登録)
クロフツ第十七作。倒叙変化球二作の後、王道直球・・緻密まったり捜査・アリバイトリック崩し・乗り物チェイス劇(英仏ベ蘭またぐ路線図の大仰な事)・・に戻り、経営危機企業トップ達の苦し紛れ犯罪が殺人事件に連動し・てな既視感溢れる設定もナカナカ居心地良く。 ※仮にも業界トップ会社の重役が貧民街に住んでるてのが、時代言うか・・


No.649 6点 夜の記憶
トマス・H・クック
(2022/11/30 19:03登録)
十三歳の時に、二人暮らしの姉を殺人鬼に嬲り殺されたミステリ作家。一晩中、少年の目の前で行われた言語に絶する凄惨な拷問。三十数年を経て、殺人鬼とその従者、彼らを追う探偵警官のシリーズ物を書く事で、辛うじて生きる糧と世界への繋がりを得ている中年作家。彼のおぞましい追想・・これ以上に念入りな残酷描写となったら読むの止めよか躊躇するが、綾辻行人「殺人鬼Ⅱ」みたいな悪趣味には陥ることなく筆は止まる・・に、小説内の世界と、ある過去の少女殺害事件の「探偵」仕事が重なり合って、物語は進む。メインテーマは依頼された少女殺害事件の方だが、その真相解明よりも、姉の事件の真相暴露の方が、どうしてもどぎついアクセントで心に疼く。
※痛さ・・わが「ジュン文学」同様に・・が売りのクックだが、ここまで鬱に痛いと、彼自身の生い立ちに何かあったんじゃないか?て疑いたくなる。


No.648 6点 地球の長い午後
ブライアン・W・オールディス
(2022/11/28 22:56登録)
さらにさらにこれも。ここまで行くと、SF超えてファンタジーさえ超えて、もう、メルヘン・・素晴らしい!


No.647 4点 夏への扉
ロバート・A・ハインライン
(2022/11/28 22:50登録)
SFをミステリサイトで採点できるてのよいなあ。で、これも。
タイムワープで未来へ行くことは、リロン的には可能・・時間は速さに反比例(時間=距離/速度)するから、自分だけ「世界」の100倍の速さで「運動!? (';')」すれば、自分だけ時間進行が100倍遅延し、自分の1年後には「世界」は100年後・・ま、浦島太郎やね・・が、過去スリップてのはァ・・「世界」のマイナスX倍の速さでウンタラなんて・・ありか? まあ、固いことは言わずファンタジーてことで。


No.646 7点 愛はさだめ、さだめは死
ジェイムズ・ティプトリー・Jr.
(2022/11/28 22:42登録)
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、71歳で不治の病の夫を射殺し自身も銃自殺を遂げた女流SF作家。その死まで誰もが男性であると思い込んでいた短編SFの名手。「最後の午後に」「男たちの知らない女」「愛はさだめ、さだめは死」の三短編で、政治的、社会的進化ではどうすることもできない、生物としての雄-雌-生殖構造が、意識・自由・実存とぶつかる時に生じざるを得ない暗い「宿命」を描いている。
※素晴しきダン・シモンズ「ハイペリオン」(第一部だけなのが残念だが)を採点できたのに調子に乗って、これもと。「星を継ぐもの」みたいな宇宙レベルの謎解明ミステリがそのままSF展開になる話ではないにしろ、SF叙述が真理の暗い核心を仄めかすミステリになっていると強引に評価して・・・


No.645 6点 夏草の記憶
トマス・H・クック
(2022/11/22 19:32登録)
深南部州アラバマの小さな町、五十路を迎えんとする開業医。妻と娘を持ち、地元でそれなりの地位を得ている彼の脳裏にフラッシュバックするのは、三十年前ハイスクール時代の悲恋。シングルマザーに連れられた、不思議な情熱に焼かれた転校生少女への失恋物語が、少女の「痛ましい事件」の裁判描写をカットバックしながら語られる。米国スクールカースト・・「ジョック」「クイーンビー」etcキャラ達の数十年の変容譚もチラつかせながら、黒人問題もの?思わせて、「ドクターモロー」ネタへ捻じられ、実に痛いWho・・いやWhatダニット解明に終わる。

※三島由紀夫が、鴎外の「雁」の主人公は・・「青年」の主人公とは違い・・将来、俗物男になっただろう、て書いてたが、漱石「三四郎」なんかどうなんだろう。美穪子が俗物肥満オバサンと化した戦後譚とか読みたいな。


No.644 7点 ハイペリオン
ダン・シモンズ
(2022/11/20 18:05登録)
おお、ハイペリオン!! 四部作:「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」「エンディミオン」「エンディミオンの覚醒」からなる大長編SF。「我が生涯の十冊」超えて、「世界文学史上の十数冊」・・ホメロスや「神曲」、「戦争と平和」や「カラマーゾフ」と並べるべき大傑作に在らずや?・・で、四部作全体としてならば、SFサイトであるならば、文句なく10点!!
たーだ、ここミステリサイトで、しかも「第一部:ハイペリオン」のみの評価なんで、涙を飲んでこの点数 (;O;)・・

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