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ミステリの祭典

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連続殺人鬼カエル男ふたたび

作家 中山七里
出版日2018年05月
平均点6.33点
書評数6人

No.6 4点 レッドキング
(2023/02/04 12:15登録)
「カエル男」続編。「ABC~」で「ホッグ連続~」で「意外な犯人」で予想通りの「オチ」で・・最初から最後まで「ありふれた」ミステリで、面白くないことはなく、前作のクドーい劇画風乱闘格闘シーンないので減点なし。また、音楽を「神聖化」してない事と、刑法ネタ出しても人権派vsアンチ人権派の双方を平等に冷眼視するバランス感覚は、なかなかに良く。

No.5 6点 メルカトル
(2019/04/11 22:27登録)
凄惨な殺害方法と幼児が書いたような稚拙な犯行声明文、五十音順に行われる凶行から、街中を震撼させた“カエル男連続猟奇殺人事件”。それから十ヵ月後、事件を担当した精神科医、御前崎教授の自宅が爆破され、その跡からは粉砕・炭化した死体が出てきた。そしてあの犯行声明文が見つかる。カエル男・当真勝雄の報復に、協力要請がかかった埼玉県警の渡瀬&古手川コンビは現場に向かう。さらに医療刑務所から勝雄の保護司だった有働さゆりもアクションを起こし…。破裂・溶解・粉砕。ふたたび起こる悪夢の先にあるものは―。
『BOOK』データベースより。

必ず前作から読みましょう。でないと本作でも人間関係がよく理解できなかったりして、多分イライラすると思います。更には前作のネタバレをしていますので、その意味でも望ましくないでしょう。
残虐な事件の数々は雰囲気的に前作を踏襲しています(グロさも健在です)。それに加えて刑法第39条、ネット社会の問題点などを盛り込み、更に御子柴まで登場させて作品に厚みを加えていますが、構造は意外と単純ではあります。警察機構全体の動きが緩慢な嫌いがありますが、渡瀬と古手川のコンビがその分活躍して真相を追い、テンポは悪くありません。特に個人的に渡瀬の人間性が好みですね。ただ、中山が作家として成熟してしまって、前作と比較すると逆に荒々しさのようなものが薄れてしまっている気がします。続編としては成功の部類だと思いますが、やはり少々物足りなさを感じますし、前作と肩を並べる、或いは凌駕しているとは思いません。

No.4 8点 VOLKS
(2019/03/22 13:06登録)
グロさは引き続き、いや前作よりもパワーアップ。
でも、性的虐待の辺りはぼやかしてあったのでホッとした。
(前作も好きだったが、そのシーンだけは読んでいてとても辛かったので…)

四人目。
殺してくれ殺してくれ今すぐどうかお願いです殺してください殺して
寒気がする描写。
それでもなお読みすすめたくなる一冊、面白い一冊だと感じてしまう、そんな自分が怖い(汗)

御子柴が出てきた、ということは、完結ではないのか?
次回作にも期待大!

No.3 7点 HORNET
(2019/01/05 11:10登録)
 中山氏の作品は、出版社さえも超えて多くの作品で同じ世界が共有されて登場人物がつながっており、いわば「中山七里小説ワールド」が形成されている。読者は作品を単体で楽しむだけでなく、「あっ!この弁護士はあの『〇〇〇〇』に出てきた弁護士だ!」とか、「この監察医はあの『〇〇〇〇』の…」などと、他作品を思い返しながらその世界を楽しむことができ、それがシチリストたちの一つの醍醐味になっている。(このことについて中山氏は「ミステリだけで読者を惹きつけるだけの手腕がないので、付加価値をつけることにした」と言っているそうだ)本作はまず、こうしたシチリストの欲を大いに満たしてくれる登場人物たちである。
 本書を紹介する広告文等で「前作から読むことをお勧めする」といったものが散見されるのはそういった点もあるし、あとはそもそも完全に前作読了を前提として書かれていて、前作の真相が作中で平気で書かれているので、本作「ふたたび」を読んでから前作「カエル男」を読むことはホントにお勧めできない。
 さて、冒頭は前作の終わりの時点から始まるが、その後の展開は前作とそっくりで、酸鼻を極める惨殺が「カエル男」の犯行声明文と共に続く。前回と違うのは、前回は飯能市内に限られていた犯行が、他県や東京都にまで範囲を広げてしまったこと。警視庁との合同捜査本部が置かれた時には「ひょっとして〇〇刑事も登場するのか・・・?」とかなり期待したが、それはなかった。
 この事件に関しては渡瀬よりも古手川が奮闘するパターンも前作から踏襲されていて、そういう点ではちょっと既視感を感じるところもあった。
 真相は、真犯人は読めなかったものの、作中で犯人として追われている人物が当人ではないことはずいぶん前から気付いていたので、驚きはさほどでもなかった。
 氏の多くの作品に描かれる加害者の人権問題や憲法39条についての問題が色濃く描かれており、単なる謎解きだけではない、幅広い物語に仕上げられているのは相変わらずで、さすがだった。

No.2 6点 小原庄助
(2018/08/18 10:26登録)
凄惨な殺人手口、子供が書いたような稚拙な犯行声明文、五十音順になされる犯行など異常な「カエル男連続猟奇殺人事件」から10カ月後、事件を担当した精神科医の自宅が爆破され、前作に引き続き埼玉県警の渡瀬と古手川の2人が事件に挑む。
海外ミステリをとことん消化して書いているのが頼もしい。不快で異様な設定、残虐なゲーム性、過激なユーモア、読者の推理をあざ笑うかのような複数のどんでん返し、そして何よりも挑発的なテーマ把握。心神喪失者を罰しない、もしくは心神耗弱者の刑の減軽を規定した刑法39条の是非をめぐるテーマもしかと追及されていて社会派ミステリとしての性格ももつ。
前作はいささかグロテスクな面があったが、今回は一段とエスカレートしていくものの語りは洗練されていて、辛辣さと酷薄さが逆に心地よい。この不埒な味わいも海外ミステリの近年の傾向と通じている。

No.1 7点 蟷螂の斧
(2018/05/17 10:59登録)
「連続殺人鬼カエル男」(2009)の続編。本作は9年ぶりとなりますが、物語は前回事件より10か月後です。目次では「爆ぜる」「溶かす」「轢く」「破砕」とグロさはバージョンアップしています(笑)。どんでん返し度はそれほどでもなかったのが残念。というより、前作からの流れからして結末はこれしかなかった?。エンタメに徹していますが、刑法第三十九条にも触れています。別シリーズの主人公・御子柴弁護士が「有働さゆり」の担当弁護士として登場するサービスもありました。ということは、「カエル男みたび」?で御子柴弁護士、有働さゆりをメインにした次作があるのか?・・・。

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