home

ミステリの祭典

login
人並由真さんの登録情報
平均点:6.36点 書評数:2327件

プロフィール| 書評

No.287 4点 のど自慢殺人事件
高木敦史
(2018/02/09 14:06登録)
 はい。BLOWさんの書評の通り、ミステリ読者の興味をころころ変えていこうという作者の狙い所はわかる。
 しかしそういう流れに読者を乗せるには、一定数の登場人物にそこそこ以上の感情移入をさせてそれで鼻面を引き回さなきゃならないハズなのに、この作品はその辺がほとんど考慮されてないよ。
 誰が「若いアイドルを女房にしたいという私欲のため、公的なイベントを利用しようとする公務員の主人公」に好感や関心を抱けます? アンチヒーローとしての面白さを狙ってるのかもしれんが、改めてそのように受け止めてもなお物語に求心力がなく、心底どうでもいい。
 2017年の新刊の中では残念ながら下位の一冊でした。


No.286 6点 遠縁の女
青山文平
(2018/02/09 13:59登録)
 収録作の3本とも、どれもとても面白く読めた。しかしこれは特にミステリのフィールドで語らずとも、普通の中編時代小説の満足感ではないかとも思う。
 特に2話の動機の真相など実に心に染みるものの、こういうのもミステリの枠内に入れるのかな、入れなくてもいいんじゃないかな、と言いたい感じ。
(と言いつつ、世のミステリファン全員がこの一冊についてあえてダンマリするなら、自分の方からあえて「いや、この一冊は立派なミステリ中編集ですよ」と言ってやりたいような、そんな屈折した感慨もある。)自分は時代小説との縁が全般的に縁が薄い読者なんだけど。
 んー、なんか、子供時代に、大人向けの江戸時代の逸話をかみ砕いて聞かされるような、そんな心地よさがあったな。


No.285 6点 東海道新幹線殺人事件
葵瞬一郎
(2018/02/09 13:51登録)
 全然ノーチェックだったが、「このミス」のアンケートで誉めてる人がいたので気になって読んでみた。WEBでのレビューの鮎川調とかなんとかいうのも興味を惹かれた理由のひとつ。
 それで2つの死体の首を切った理由は、説得力があるようなあまりにも強引な行為をしたような感じで頗る印象に残る。
 犯人に関しては物語の構造とキャラクター配置から早々と見当がつくが、まずは丁寧に作られた佳作~秀作。次作にも期待したい。


No.284 6点 天帝のみはるかす桜火
古野まほろ
(2018/02/09 13:43登録)
 「天帝」世界のイヤーワンを描く連作中編集。フツーに面白かった。
 といいつつ1話なんか作者が気負うほど特別なことをしているわけではなく、少し考えればすぐ筋道が立つ普通のミステリという感じだけれど。
 あと3つめの話は、これと全く同じネタのものを同じ年(2017年)の、別の作家の連作短編のひとつで読んで、アレレ! であった。これはまあ、たまたま着地点がいっしょだったのでしょうが。


No.283 5点 月食館の朝と夜
柄刀一
(2018/02/09 13:35登録)
 アーサーシリーズは初めてだけど、なんかひたすら本文が読みにくい。Webでの噂を見るに作者は定評の悪文だそうで、さもありなんという感じ。
(とはいえ、自分がこれまで読んできたこの作者の数冊のミステリは、そんなに文章の拙さが気にならなかったんだけど。)
 なんにしろ、殺されたはずの被害者がいきなり普通に話し出したり、眼の不自由な人が顔を見合わせるというトンデモかつ天然な描写はかんべんしてください(笑)。

 犯人を絞り込んでいくロジックはまあ丁寧な印象で、殺人前後のとあるビジュアルイメージもすごく視覚的で心には残るのですが。


No.282 5点 岩田賛探偵小説選
岩田賛
(2018/02/09 13:23登録)
 一時期は高木彬光や島田一男と肩を並べた立場だった「宝石」黎明期出身作家の作品の集成。
 しかしワンセンテンスが無用に長い文章は、自分が手に取ってきた論創のこの叢書の中でも、読みにくさの面で上位の方にくる感じである。
 それでいて中身のミステリとしての面白さが、そんな本文を頑張って読む苦労に見合うかというと・・・・・・う~ん。
 個人的なベスト編は、犯罪の真実が暴かれると同時に切ない過去の人間ドラマが見えてくる日時計の話かな。
 まあ見知ったトリックの数を増やしたいという種類のファンには、それなりに楽しめる一冊かもしれない。某アリバイトリックの話など、相当に乱暴な気もするが。


No.281 5点 宇宙探偵ノーグレイ
田中啓文
(2018/02/09 13:14登録)
 随所のグロ&猟奇趣味はハナについたが、全体的にはまあ楽しめた一冊。ネタバレになるから言えないが、主人公が(中略)という昭和30年代の無責任連作無国籍ギャグ漫画みたいな作りも嫌いではない。
 後半のエピソードになるほど読みやすく、SFミステリ味がこなれていくあたりは好感触。


No.280 8点 ライオン・ブルー
呉勝浩
(2018/02/09 13:09登録)
 いや2017年の国産ミステリの中ではかなりの秀作ではなかろうか。
 連作形式の警察小説として、地方の交番での緊張感ある人間模様と毎回の謎解きミステリの興味を追いながら、終盤で意外な方向に畳みにかかってくるその鮮烈さ。
 久々にミステリでこの種類のぞくりとする怖さと逆転の快感を覚えた。


No.279 5点 愚者のスプーンは曲がる
桐山徹也
(2018/02/09 13:04登録)
 作品総体の狙い所はわかるし、青春ミステリ小説としては悪くはない。強面に見えて実は人の良い中間管理職のキャラなども、よく書けている。
 ただ読んでしばらくしてからの印象が薄いわ。それなりに良かった感触だけはあるんだけれど。


No.278 6点 ディリュージョン社の提供でお送りします
はやみねかおる
(2018/02/09 13:01登録)
 ぶっとんだ? 設定に負けなかった最後の変化球的な解決は、まあまあ悪くなかった。
 それにしてもこの世界観というか物語設定自体は魅力的だな。こんなのが現実にあって、自分がもし莫大な資産家だったら依頼したい案件は山ほどあるw


No.277 5点 皇帝と拳銃と
倉知淳
(2018/02/09 12:56登録)
 連作倒叙中編集としてはまあ手堅い作りかと。とはいえ第1話の犯人なんか(フィクションの中での)実際の現場でそういう見落としをするかなあ、という気もしたが。
 ちなみに連作ものとしてはムニャムニャ・・・。倉知先生、次回は読者の誰もが警戒してきますよ。きっと。


No.276 5点 逆転裁判 時間旅行者の逆転
円居挽
(2018/02/09 12:52登録)
 原作ゲームのシリーズもしたことないし、少し前にやっていたTVアニメ版も未見だが、謎解き部分の面白そうな設定に興味を惹かれて手に取った。
 SFガジェットを謎解きミステリに真っ向から取り込みながら、その趣向そのものを一種のミスディレクションにしていく展開は悪くないんだけれど、最後の真相解明の部分は舌っ足らずではぐらかされた感じもする。


No.275 5点 フォールアウト
サラ・パレツキー
(2018/02/09 12:44登録)
 終盤、かなり大がかりな過去の事件の真相が見えてくるあたりはさすがのダイナミズムだが、とにかく長い! 登場人物が多い!!
 お話の流れは中期以降のロス・マク風の<親の因果が子に報い>ドラマに、巨匠パレッキーが人生の晩年にアメリカ文化に対するルサンチマンを吐き出しておこう、みたいな思いがからみあった感じで、錯綜しっぱなし。
 実に平易な訳文とおのれの内面を全部語るヴィクのキャラの敷居の低さもあって本文そのもののリーダビリティは高いが、それでも国産の新本格作品3~4冊分を読むエネルギーをこの1冊に使った。
 ともあれ読み終わったあとは、最後まで読破した達成感もふくめて、そこそこ悪くない気分でもある。


No.274 6点 死者はふたたび
アメリア・レイノルズ・ロング
(2018/02/09 12:33登録)
 (正統ハードボイルドなどの一部をふくむ)私立探偵小説には思いのほかパズラーの興味を乗せやすいという一部ミステリ評論家の見識どおり、謎解きと行動派私立探偵ものの要素ががっぷり組んだ佳作~秀作であった。その意味でとても端正な一作。
 ちなみに、結局、この主人公はレギュラー探偵にならなかったみたいだけど、その辺は特に際立った個性がないから仕方がないか。なんかこのシンプルなキャラクターに独特の魅力は感じるんだけどね。
 ただし警察には協力しすぎ。ここまで警察側と友好的な(一応はハードボイルド風の)私立探偵キャラクターは初めて見た。まあその分、話はサクサク進んでいいんだけど。


No.273 7点 聖エセルドレダ女学院の殺人
ジュリー・ベリー
(2018/02/09 12:27登録)
 ヒッチコックの映画版『ハリーの災難』みたいな、ちょっとだけシニカルながらも上質なスラプスティック・ミステリコメディであった。
 もうこの主人公の少女たちが同じ場に揃う続編はありえないだろうけど、年長のひとりと一番年少の二人だけでも再登場させた新作がぜひ読んでみたい。


No.272 7点 13・67
陳浩基
(2018/02/09 12:23登録)
 世評の通り、実に読み応えのある連作短編形式の長編だった。
 ミステリについての多様なセンスを自家薬籠のものとしている作者の器量には感服。最後の話はちょっとずるいんでないかいと思いつつ、ラストまで、してやったりという感じで幕を引いた送り手の手際に笑み。


No.271 5点 雪と毒杯
エリス・ピーターズ
(2018/02/09 12:19登録)
 犯人に関しては、フェアプレイに務めて丁寧すぎる叙述が仇となり、これしか無いでしょうという感じですぐにわかる。恋愛模様のからんだ人間ドラマの部分は、なんか昭和30年代の手塚漫画の単発中編(少女もの)を読んでいるような感じであった。
 全体としては嫌いじゃないけれど、後半~終盤のまとめ方がやや乱暴に思えてこの評点。


No.270 5点 過去からの声
マーゴット・ベネット
(2018/02/09 12:13登録)
『飛ばなかった男』から60年ぶりのこの作家の翻訳刊行。実にロマンである。

 その『飛ばなかった男』の感触から、今回もいかにも旧クライムクラブ風というかのちの日本の新本格的な内容を予期したが、実際の中身はずいぶんと違ったものだった。
 主人公であるヒロインの彼氏が殺人現場に関わった(犯人ではないらしい?)。
 じゃあ素直に警察に届けるか、いや、ちょっとの小細工でより良い結果を得られるのではないか・・・というグレーゾーンの状況の中、徐々にややこしい立場になっていく主人公の図はなかなか説得力があり、その辺は面白かった。ちょっとウールリッチ風の趣もある、ラブ・サスペンスである。
 ただまあベネットの未訳作品の残りがこのレベルなら、もうあえて紹介しなくってもいいんじゃないかとも思えたけれど。


No.269 6点 崩れる脳を抱きしめて
知念実希人
(2018/01/10 12:09登録)
 ミステリ版『半分の月がのぼる空』。そつなく書けている。主人公の窮地からの逆転劇もお話作りとしてうまい。

 ・・・だけのハズだったのに、最後にページを閉じるとき、眼が潤んでいた。何でだろ。


No.268 6点 透明人間の異常な愛情
天祢涼
(2018/01/09 12:44登録)
 悪い意味でどんどんキャラクターものになっている感のあるシリーズ。
 当初から××機能を使っている透明人間という設定を読者に明かしておいて、その上で謎の怪人の正体を探る趣向はミステリ的にアリだとは思うが、その上でどう読んでいっても想定を大きく外れない解決が少し食い足りない。
 とはいえミスディレクションをイケイケで繰り出してくる作者の手際は、やはり好ましいんだけどね。

 個人的にはこの「タイガ」版路線の美夜シリーズにさっさと決着をつけて、当初の『キョウカンカク』的な単発ものに戻してほしい。

2327中の書評を表示しています 2041 - 2060