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ミステリの祭典

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ようこそ地球さん

作家 星新一
出版日1961年01月
平均点8.00点
書評数3人

No.3 9点 クリスティ再読
(2022/12/21 17:43登録)
「ボッコちゃん」を読んだら、猛然と「処刑」を読みたくなった。急遽本短編集。子供の頃読んだきりだけど、やはり「処刑」って本当にササる作品。いやこれ「生死」の問題なんだけども、子供だって「明日、死ぬんだったらどうする?」とかね、シンプルかつ真正面から問われるからこそ、しっかりとササるんだ。まさに実存ブンガクって言っていいくらいの「哲学的」小説だと思う。
いや実際、「ボッコちゃん」のB面に当たるこの本は、陰鬱な話が多いんだよね。ラストを飾る「殉教」なんて、

「みんな、死んじゃったね」
「ああ、楽しそうに死んじゃった」

という話。まさに星新一の「SF」って「科学です」で理屈を回避して本質を提示する仕掛けなんだと思うんだ。けしてアイデアストーリーと呼ばれるようなものじゃない。

心の底は、きっとさびしかったのでしょうね。そのさびしさを埋めようとして、物質をいろいろと組み合せて、まぎらしていたのでしょうか。そして、こんなさびしい生活なんか、もう子孫にはやらせたくないと考えて、文明を終らせたのかもしれませんね

こんな悲観的な厭人癖が「輝かしい未来」と衝突するときに、あえてそれが話のオチに設定されるならば、それが「星新一のショートショート」になるだけのことではないのだろうか?実際、未知の惑星に到達した宇宙船が錆びついて廃墟になっている設定も多いしなあ...サイバーパンクって言って、いい?

だからこそ「処刑」のラスト、死刑囚が悟りを啓いて、死の恐怖を克服する姿は、何よりも尊いものだと思うのだ。

地球から追い出された神とは、こんなものじゃあなかったのだろうか。

まさにそんな湯浴みする神が、星新一のストイシズムの保証人なのだろう。

No.2 5点 人並由真
(2017/07/25 20:27登録)
( ネタバレなし)
およそ一年前に『ボッコちゃん』を読んだときは初期のど傑作短篇に再会する喜びも込めて「時代を超える星新一すごい」だったのだが、現行の定本二冊目といえる本書収録作では、ショートショートの作り方に慣れて来た作者の余裕が悪い意味で感じられるようで今一つ。
もちろんよくできた作品もあるんだけどね。

No.1 10点 斎藤警部
(2017/04/25 01:47登録)
『ボッコちゃん』と双璧を成しちゃっている感がありますね。後年にも傑作がいっぱいありますが、短篇集の括りで見るとやはりこの二作こそ胸にずっしりです。言ってみりゃ『冒険』と『童心』が一緒になって盆と正月にやって来たみたいなもんでしょうか。(『ボッコちゃん』同様オリジナル短篇集じゃないんだけど、今やこの文庫版が定本でしょう)

デラックスな拳銃/雨/弱点/宇宙通信/桃源郷/証人/患者/たのしみ/天使考/不満/神々の作法/すばらしい天体/セキストラ/宇宙からの客/待機/西部に生きる男/空への門/思索販売業/霧の星で/水音/早春の土/友好使節/螢/ずれ/愛の鍵/小さな十字架/見失った表情/悪をのろおう/傲慢な客/探検隊/最高の作戦/通信販売/テレビ・ショー/開拓者たち/復讐/最後の事業/しぶといやつ/処刑/食事前の授業/信用ある製品/廃墟/殉教
(新潮文庫)

間違っても「日本のフレドリック・ブラウン」なんて喩えられない個性の突出は素晴らしいね。ここまで突き抜ければもう『個性派』なんたァ呼ばれない。ミフネや裕次郎と同じです。

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